伏黒恵（呪術廻戦）とは【徹底解説・考察まとめ】

中学二年生の時、津美紀が呪詛の対象となって寝たきりとなる。誰よりも敬愛していた津美紀が呪いによって健全な人生を奪われたことに大きなショックを受け、「善人が幸せになれない世界」に激しい憤りを覚える。生活のため半ば流されるまま選んだ呪術師の道だったが、この出来事によって「不幸が無差別に振りかかるのなら、救いの手もそうであるべきだ」との思いを抱き、”不平等に（自分が助けたいと思った）人を助ける”という信念を掲げるようになる。

東京都立呪術高等専門学校に入学

呪術高専東京校に入学し、五条の下で呪術師としての心得を学ぶ。甚爾らが見込んだ才能は伊達ではなく、たった二か月で二級呪術師の資格を得た。
その後呪物の回収のために仙台に赴き、虎杖と出会う。あと一歩のところで間に合わずに呪物の封印が解かれ、虎杖の通う高校に無数の呪霊が出現。これを祓うべく奮戦するも、虎杖を庇って負傷する。すると今度はその伏黒と学校の仲間を救うため、虎杖が呪霊たちに対抗しようと特級呪物“宿儺の指”を飲み込み、特級呪霊・両面宿儺の宿主となってしまう。
一度は呪術規定に従い虎杖を祓う（殺す）ことを宣言するも、この時点で自分や仲間を救うために我が身を顧みず行動した彼にかなり入れ込んでおり、実際に攻撃することはなかった。そこに五条が駆け付け、表面上は宿儺の自我を抑え込んでいるように見える虎杖を無力化。改めて虎杖の処遇への意見を乞われ、呪術規定では問答無用の処刑対象であることを承知の上で「死なせたくない」と正直な言葉を口にする。

伏黒のこの意見もあり、五条が各方面に強引に働きかけた結果、処刑対象としての扱いは覆らなかったものの虎杖には執行猶予が与えられることとなる。彼が宿儺に自我を奪われない稀有な才能を有していたことから、全部で二十本ある“宿儺の指”を全て飲み込ませた上で、虎杖ごと宿儺を完全消滅させるという話ではあるものの、これにより虎杖は即座に殺されることを免れ、自身も呪術を学ぶべく呪術高専東京校に編入。伏黒の同級生となり、その明朗快活な人柄もあって、後に合流した同級生の釘崎野薔薇ともども親しくなっていく。

虎杖の死

西東京市の少年院に任務で赴いた際、自分たちの力量を遥かに超える特級呪霊と遭遇。殿を買って出た虎杖にその場を任せて釘崎と共に撤退するも、その虎杖は特級呪霊に対抗するため宿儺に肉体の主導権を明け渡し、そのまま取り戻せなくなってしまう。
自由を得た宿儺に集中的に狙われ翻弄されながら、なお虎杖を救うために粘り続け、ついには自身の死を覚悟して切り札たる最強の式神を使うことを決意。しかしその瞬間、伏黒を死なせたくない虎杖が自らの死と引き換えに肉体の主導権を奪い返す。
これにより命拾いするも、「幸せになるべき善人」だと感じていた虎杖を救えなかったことを静かに嘆き、釘崎とさらに強くなることを誓い合う。

そんな折、交流会（模擬戦）の打ち合わせのために呪術高専京都校の生徒たちが上京。特級呪術師たる東京校の乙骨憂太との対戦を心待ちにするも、彼の不在を知って不満を募らせた京都校の雄東堂葵に因縁を付けられる。そのまま小競り合いになり、格上である東堂を相手に巧みな立ち回りを見せ、彼から一定の評価を受ける。

交流会

交流会当日、五条曰くの“サプライズ”で実は生きていた虎杖と再会。釘崎ともども“虎杖の死”をとっくに乗り越えていたため感動の対面とはならず、ひたすら冷めた視線を送る。
呪術界上層部の謀略によって自分たちごと虎杖が殺されそうになったこと、再び狙われることを避けるため五条に匿われつつ修行していたことを彼の口から聞き、改めて仲間として受け入れた。

交流会では、京都校の学園長楽巌寺嘉伸の密命を受けた先方の生徒たちが、虎杖を殺そうと行動しているのを見抜き、これに即応して相手方を分断。自身は呪術師の名門加茂家の出身である加茂憲紀と相対する。東堂ほどではないが格上の呪術師である憲紀を相手に、新たに調伏した式神を披露しつつ善戦。しかしそこに特級呪霊である花御が現れ、両校の生徒に襲い掛かる。
対戦していた憲紀、東京校の先輩である狗巻 棘と共に花御から逃げ回り、同じく東京校の先輩禪院 真希と合流してからは彼女をサポートしつつ立ち向かう。呪力を糧に育つ種子を撃ち込まれて倒れるも、間一髪で虎杖と東堂が駆け付け、彼らにバトンを委ねる形で戦線離脱。そのまま虎杖らが時間を稼ぎ、救援に来た五条が花御を撃退したことで、九死に一生を得る。

治療を受けた後、今の時点で虎杖が呪術師として自分の上を行く力を持っていることを認め、強くなってすぐに追いつくと宣言した。

領域展開を修得する

呪霊による連続刺殺事件の調査のため、虎杖や釘崎と共に出身校でもある埼玉の中学校を訪れる。学校の近くにある八十八橋こそは呪霊の潜伏先だと突き止めるも、そこで姉の津美紀もかつてそこで肝試しをしていたことを知る。期せずして姉を苦しめる呪いの源を突き止め、津美紀が呪殺される前に祓うべく危険を承知で呪霊の潜む結界に踏み込む。

しかしそこに呪胎九相図の壊相と血塗が出現、虎杖と釘崎はそちらの対処に回る。当初の目的である八十八橋の呪霊を早々に片付けて二人の援護に向かおうとするも、“宿儺の指”を取り込んだ新たな呪霊に襲われ、窮地に陥る。しかし土壇場で「自分の命と引き換えに相手を倒せる奥の手を持っているから、本当の意味で命懸けになったことがない」との五条の助言を思い出し、覚醒。不完全ながら呪術の究極の形とされる領域展開「嵌合暗翳庭」を発動し、単身で“宿儺の指”を取り込んだ呪霊を撃破する。

伏黒が“宿儺の指”を回収する一方、虎杖と釘崎もそれぞれに呪胎九相図の壊相と血塗を撃破。しかし三人とも消耗激しく、注意力散漫なまま合流した結果、虎杖の中の宿儺に“宿儺の指”をうっかり回収されてしまう。

渋谷事変

五条封印編

渋谷駅一帯が“帳”に覆われ、通常の方法では出入りできない状態となる。犯人たる呪詛師の夏油と特級呪霊たちの要求に従い五条が内部に向かう中、そのフォローのため近隣から呪術師たちが集められる。伏黒も虎杖や釘崎と共にそこに加わった。
しかし特級呪霊たちが張り巡らせた無数の罠により、五条は封印されてしまう。京都校の与 幸吉が残したミニメカ丸からの情報でそれを知り、五条を救出するため動き出す。

五条奪還編

二級呪術師である猪野の指揮下に入り、まずは人の行き来を遮っている“帳”を解除するべく行動。“帳”の基を守っていた呪詛師と交戦し、虎杖との連携でこれを撃破する。しかし単独行動を取っていた猪野が倒されてしまい、彼の救護のため虎杖とはいったん別れることとなる。

猪野を治療班に預け、再び五条奪還のために渋谷駅一帯に赴く。特級呪霊の陀艮を相手に苦戦する真希たちに合流し、これを援護。格上である陀艮の領域展開に自身のそれで抗う中、呪詛師の霊媒によって一時的に現世に呼び戻された甚爾が参戦する。
甚爾の猛攻で陀艮は倒れるも、今度は伏黒が狙われる。真希たちと離れ離れになり、ただ一人甚爾と対峙。常識外れの身体能力にただただ振り回されるも、これをしぶとく耐え凌ぐ。

そんな中、不意に甚爾から名を尋ねられる。伏黒がそれに答えた刹那、甚爾は「良かったな」と言葉を残し自害して果てた。
「息子ほどの才能があれば禪院家で大切にしてもらえる」との想いもある一方、甚爾の胸の内には自身を切り捨てた禪院家への不信と憎しみがあった。再会した息子が、禪院家とは無縁の場所で呪術師としての才を開花させつつあることを知って、甚爾の中で現世への未練は消滅した。であれば、後は“ろくでなしの父親”などいない方がいいと判断したのだ。
ついさっきまで戦っていたのが実の父であることも、彼の真意も知らぬまま、伏黒は霊媒の解けた甚爾（を憑依させていた呪詛師）の遺体を見詰める。そこに夏油に与する呪詛師の重面 春太が不意受けを仕掛け、重傷を負わされてしまう。

もはやこれまでと覚悟を決めた伏黒は、せめて重面を道連れにしようと今まで幾度か使おうとしていた最強の式神「八握剣 異戒神将 魔虚羅」を召喚。しかしそれは歴代の術者の誰もが調伏できず、宿儺ですらその力に興味を引かれるほどの正真正銘の怪物だった。
調伏のための儀式は複数人で挑むことも可能なため、「敵ごと調伏の儀式を始めることで無理矢理相打ちに持ち込む」というのが、伏黒の“切り札”だった。真っ先に伏黒が倒されるも、“調伏の儀式の参加者”である重面が健在であるため危ういところで即死は免れる。勝てるわけがないと重面が逃げ惑う中、「魔虚羅を調伏した（＝完全に制御した）伏黒との戦い」を望む宿儺がその場に乱入。力のままに暴れる魔虚羅と激しい戦闘を繰り広げ、ついには“避難していた無数の一般人ごと”渋谷の街の一区画を切り刻み、これを撃退。参加者以外に魔虚羅が倒されたため、調伏の儀式は失敗となる。
戦いの余波で重面が両断される一方、意識を失ったままの伏黒は、宿儺によって治療班の下へと届けれられる。

東京壊滅

加茂憲倫が放った無数の呪霊により、東京は甚大な被害を受ける。23区はほぼ壊滅、政治も経済もストップし、一千万もの呪霊がただただ都心を蹂躙する。もはや事態の完全収束は不可能で、なんとか被害を最小限に食い止めようと呪術界上層部が苦心する中、伏黒は姿を消した虎杖を探して仲間と共に東京中を探索する。
その頃、渋谷事変の中で重傷を負っていた禪院家の当主直毘人が息を引き取る。彼は「五条悟が死亡もしくはなんらかの形で意思能力を喪失した場合、伏黒甚爾との誓約を履行し伏黒恵を次期当主にする」という遺言を残しており、次期当主の有力候補だった禪院直哉がこれに激怒。自身の預かり知らぬところで恨みを買うこととなる。

死滅回游

自身の目的の達成がため、加茂憲倫は新たな策を仕掛ける。自身が強制的に術者に仕立てた者たちによる殺し合い、「死滅回游」の開催である。以下がその総則（ルール）である。

1、泳者（プレイヤー）は、呪術覚醒後十九日以内に任意の結界にて「死滅回游」への参加を宣誓しなければならない。
2、前項に違反した泳者からは呪式を剥奪する。
3、非泳者は結界に侵入した時点で泳者となり、「死滅回游」への参加を宣誓したものと見なす。
4、泳者は他泳者の生命を絶つことで点（ポイント）を得る。
5、点（ポイント）とは管理者（ゲームマスター）によって泳者の生命に懸けられた価値を指し、原則術師5点、非術師1点とする。
6、泳者は自身に懸けられた点を除いた100点を消費することで、管理者と交渉し、「死滅回游」に新たな総則を1つ追加できる。
7、管理者は「死滅回游」の永続に著しく触る場合を除き、前項による総則の追加を認めなければならない。
8、参加または点取得後十九日以内に得点の変動が見られない場合、その泳者からは術式を剥奪する。

今東京は「死滅回游」の舞台となりつつあり、そこに伏黒の義姉である津美紀も巻き込まれる。それを止めるために、津美紀を守るために、伏黒は乙骨の協力で再会した虎杖に助けを求める。友からのSOSに、虎杖は「もしも次に自分が宿儺に体を乗っ取られた時は即座に殺してほしい」と注文を付けつつ、伏黒の力になることを了承する。
その後虎杖、乙骨、特級呪術師の九十九由基（つくも ゆき）、虎杖と行動を共にしていた特級呪物の受肉体である脹相（ちょうそう）と共に、「五条の解放」と「加茂憲倫が次に打ってくるだろう手とその対策」について知恵を借りるため、日本呪術界の中枢たる天元への面会を目指し、そのお膝元たる薨星宮への侵入を試みる。

天元は敵方と通じていることを危惧して一度は伏黒たちを拒絶するも、その可能性は無いと見るや一転彼らの前に姿を現す。彼は加茂憲倫の正体が羂索（けんじゃく）という千年以上昔の術師であることを一行に教えると、協力する代わりに自身の護衛をしてほしいと要求してくる。

天元は不死の術式を持つ術師ではあるが、五百年置きに星漿体と呼ばれる特殊な資質を持つ者との同化を果たさないと肉体を維持できなくなる。十一年前にこれに失敗し、不死のまま自我と肉体を失った彼は、「地球上のあらゆる場所に遍在する幽霊」のような状態になっていた。
もはや人間より呪霊に近い存在で、羂索が我が物とした呪霊操術の対象ともなりうる。この状態の天元が羂索の支配下に置かれ、無為転変で全人類との融合を果たせば、それは「個としての人類」の消滅と、剥き出しの自我同士が延々と互いを呪い合う地獄絵図が完成することを意味していた。

事情を聞いた九十九由基と脹相が護衛に就くことを承諾すると、天元は獄門疆「裏」（ごくもんきょう うら）という呪具を伏黒らに見せる。これは羂索が五条を封じる際に用いた獄門疆の“裏門”であり、内部には封じられた五条がいるという。
羂索すらどのように戦っても勝ち目がないほどの圧倒的実力者である五条が解放されれば、戦況は文字通り一変することとなる。しかしそのためには獄門疆「裏」の強固な封印を解除しなければならず、その役に立ちそうな道具は行方不明。そこで天元は、羂索が自身の全人類との融合の下準備として仕掛けている死滅回游の名を持ち出し、そこに参加している“全ての術式を解除する”術式を持つ天使こと栗栖花（くりす はな）の協力を取り付けることを提案する。

羂索が目論む「人類と天元の同化」の準備が整うまで、およそ二カ月。それまでの間に、真希は禪院家と組屋鞣造の有する呪具の回収、乙骨は先行して死滅回游に参加し情報の収集、伏黒は虎杖と共に謹慎中だった三年の秤金次（はかり きんじ）に協力を取り付ける役を担当することとなり、各々がそれぞれに動き出す。

秤への接触

停学中の秤金次が、栃木県で術者同士の賭け試合の胴元になっているという情報を天元から入手し、虎杖と共に彼への接触を図る。試合場となっている立体駐車場に赴き、ブラフとハッタリで飛び入り参加を認めさせ、虎杖がこれに挑むこととなる。
虎杖に派手に立ち回らせて人目を集める一方、自身は術を駆使して立体駐車場に潜入。見つかればいっそう警戒され、あるいは敵視されるかもしれない。「秤の協力を得る」という目的からすれば逆効果になるかもしれない手ではあったが、津美紀を救うために残された時間は限られ、それを無駄にしたくないとの想いからの行動だった。

しかし秤は姿を見せない伏黒への警戒を緩めず、自身の恋人で呪術高専3年生の星綺羅羅（ほし きらら）に、彼の動きを見張るよう命じるのだった。
虎杖がパンダとの賭け試合に勝利したことで、虎杖は秤と会う機会を与えられた。しかし虎杖は嘘を吐くのが下手なため、秤に高専関係者だとバレてしまう恐れがある。そうなると秤に逃げられてしまう可能性があるため、退路を断つため伏黒はパンダと秤がいるモニタールームの出口を占拠することにした。

伏黒は立体駐車場の各階を見張る男達の影に潜み、男達が監視カメラの死角に入ったところで奇襲をかける。別ルートからパンダも同様に屋上を目指した。伏黒とパンダは無事に合流できたが、警備に出ていた綺羅羅に見つかってしまい、そのまま戦闘になる。
説得を試みる伏黒だったが、綺羅羅は「自分たちを先に斬り捨てたのは呪術高専の方だ」と譲らない。それでも綺羅羅さえ説き伏せれば秤を味方につけるための大きな助けになると考え、伏黒はそのためのさらなる一手として十種影法術・脱兎を呼び出す。

物量で綺羅羅を封じようとした伏黒だったが、呼び出した脱兎と自分の体にいつの間にか星形のマークと「Acrux（アクルックス）」という文字をつけられていたことに気付く。以前に津美紀から聞かされた星座に関する話を思い出し、その名称から綺羅羅の術式が南十字星をモチーフにしたものであることを看破する。
南十字星はアクルックス、ガクルックス、ミモザ、イマイ、ギナンという五つの星で構成されており、綺羅羅はこれに準じた呪力を他者や特定の場所に施す「星間飛行（ラヴランデヴー）」という術式の持ち主だった。この呪力は同じ星のものなら引き合う一方、違う星のものであれば強烈に反発して近づけなくなる。しかし違う星の呪力を貼り付けられた自分とパンダは合流できることから、「呪力の効果が発生しない星の組み合わせがある」と推理する。
この推理は正鵠を射ていたが、綺羅羅は「賢い相手なら自分の術式の仕組みを見抜いて解除しようとしてくる」ことを予想してさらなる罠を張っていた。しかしそれさえ読み切って逆に綺羅羅を追い詰め、ついにこれを組み伏せる。土下座までして「話を聞いてほしい」と懇願する様を見て気勢を削がれ、綺羅羅は話し合いに応じる旨を彼らに告げるも、そのタイミングでモニタールームの中から虎杖が殴り飛ばされてくる。
その虎杖から「手を出すな」と釘を刺され、秤の猛攻をひたすら耐えながら説得を続ける相棒を見守る。そのすさまじいまでの執念に感じ入った秤が拳を収めたことで、彼の説得が成功したことに胸を撫で下ろす。

総則追加