Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

Maison book girlのワンマンライブには「Solitude HOTEL」という名称が付けられている。
「Solitude」に孤独という意味があり、他人が不在であることの寂しさという意味だけでなく、他人が不在であることの自由さを歓迎するという意味も含まれている。
Maison book girlは2021年3月現在までに以下の「Solitude HOTEL」を開催している。
2015年3月27日 Solitude HOTEL B1(東京・渋谷チェルシーホテル)
厳密な意味でのワンマンライブではなく、ekomsが主催したライブでありオープニングアクトとしてGOMESSが出演している。
また、宗本花音里のラストライブでもある。
2015年11月23日 SOLITUDE HOTEL 1F(東京・渋谷WOMB)
初のワンマンライブ。
2016年11月6日 Solitude HOTEL 2F(東京・渋谷WWWX)
2017年5月9日 Solitude HOTEL 3F(東京・赤坂BLITZ)
初のワンマンツアーの千秋楽。
2017年2月28日 Solitude HOTEL 4F(東京・Zepp DiverCity)
2018年5月4日 Solitude HOTEL4.9F(東京・東京キネマ倶楽部)
2018年6月23日 Solitude HOTEL 5F(東京・日本青年館ホール)
2018年11月25日 Solitude Hotel 6F hiru / Solitude Hotel 6F yoru(東京・日本橋三井ホール)
昼夜2公演。
2018年12月16日 Solitude Hotel 6F yume(東京・ヒューリックホール東京)
「Solitude Hotel 6F hiru / yoru」の追加公演。
2019年4月14日 Solitude HOTEL 7F(東京・昭和女子大学 人見記念講堂)
2020年1月5日 Solitude HOTEL ∞F(東京・LINE CUBE SHIBUYA)
また、2021年4月2日には、東京・ヒューリックホール東京でのSolitude HOTEL9F(全楽曲披露)が予定されている(この記事を作成しているのが2021年3月であり、コロナ禍において上記のSolitude HOTEL9Fが無事に開催されるかは未定)。
このようにしてSolitude HOTELのライブはMaison book girlにとって重要な意味を持っているが、この「Solitude HOTEL」という名称を考えだしたのはコショージメグミである。

以下、2015年3月28日付のコショージメグミのオフィシャルブログより抜粋。
SOLITUDE HOTEL B1
ありがとうございました!
嬉しかった
このタイトルこしょーじが考えたやつが採用されたわーいってかんじで
よく考えたらホテルってあの建物の中にはたくさんの人がいて部屋がたくさんあるから孤独だとおもった目に見えるタイプの
SOLITUDE HOTEL B1は部屋一個だったから良いホテルだっただね
こしょーじはみんながモヤモヤするずっとまえからモジャモジャと一緒だったから
かおりんたの衣装と一緒にモジャモジャもちょきちょき切ってかおりんたもモジャモジャももう帰ってこなくていいようにしたら、少しすっきりしました
かおりんたはこしょーじの一部だったから、そしたらこしょーじもかおりんたの一部だったことを知って昨日知って、こしょーじはまだ知らないことばかりだとおもいました
ありがとうとバイバイの間にどれだけの言葉がはいるのかたぶんわかりません
ついてきて!くださ!い!

最後の最後で再試になってしまた井上唯

井上唯

井上唯は短大の栄養科に通っていた。
彼女がオーディションに合格し、Maison book girlが結成されたのが2014年11月5日。
彼女が短大を卒業し、上京するのが2015年3月なので、学生とグループ活動が重なっていた時期が短期間ながら存在した。
短大での成績は良かったようで、卒業試験までは一度も再試がなかったという。
ところが最後の最後で一科目のみ再試になってしまい、相当の衝撃を受けたと告白している。

以下、2015年2月20日付の井上唯のオフィシャルブログより抜粋。
みなさん私が短大に通っているのをご存知であろうか
そして柄にもなく栄養科という女子力高めな科であることをご存知であろうか
それはさておき
私はこの二年間要領の良さで全てノー再試のフル単できた。
だがこの最後の最後のテストでやってしまった
一教科。
再試や。
まさかすぎてショックを隠せない
気が緩んでたんだ。
過去の自分もっと頑張れや
そんな感じで今日はショッキングな日でした
遊戯王でいうと10000ポイントくらいのダメージうけた(適当)

東京・新宿駅が鬼門の井上唯

2020年9月現在の新宿駅構内図。

地方出身者である井上唯にとって東京の新宿駅は鬼門になっている模様。

以下、2015年6月23日付の井上唯のオフィシャルブログより抜粋。
東京のまじ迷路な駅TOP3
1位新宿2位新宿3位新宿
です。
この駅ほんとにもっとコンパクトにできんかったんかいと毎度毎度新宿駅に降り立つ度にキレそうになってますし一人で来て迷子にならなかったことがないです。駅員さんに聞いても迷うし出口ありすぎる。やっと外にでれた!!!!と思ったら思ってたとこと違うとこに出てたとか真反対だったとかよくある~最近新宿を避けて目的地に行こうとするくらいです。

また、井上唯はある意味矢川葵を巻き込む形で自身の土地勘のなさを暴露している。
以下、2014年11月15日付の井上唯のオフィシャルブログより抜粋。
葵ちゃんと私はちょっとアレで、
駅から徒歩五分って書いてある場所に行くのに三十分かかったりします
その前に駅で自分が出たい出口になかなか出れなかったりします
2人で必死にGoogleマップ開いたり人に聞いたりして頑張ってるんだけどな!不思議!
かわいく言えばお茶目☆~(ゝ。∂)
悪く言えば…………☆~(ゝ。∂)
お茶目って使い方あってんのかな
ドジっ子みたいなことだよね多分
yes!地方組!

井上唯がMaison book girlの面接を受けたのは2014年9月13日

井上唯は短大生時代にMaison book girlのオーディションを受けているが、面接を2014年9月13日に行っている。
この2014年9月13日は井上唯の20歳の誕生日でもあった。

以下、2015年9月14日付の井上唯のオフィシャルブログより抜粋。
てか私がメゾンブックガールの面接うけたのが誕生日だったんで去年の昨日は面接うけてたんですけどすごくないですか?
初めてライサクさんに会って蒼◯純ちゃんのシールがペタペタ貼ってあるパソコンをみてモノホンや…って思った日から1年。
今ではあのパソコンも見慣れました。

矢川葵にいい加減に扱われたサクライケンタの誕生日プレゼント

しっかりと「蒼波純」と書かれたサクライケンタの誕生日プレゼント。

サクライケンタ誕生日パーティの模様。
「蒼波純」と書かれた誕生日プレゼントをしっかりと持っているサクライケンタ。

サクライケンタの誕生日は1983年11月10日である。
そんな彼の31歳の誕生日を迎える前日の2014年11月9日の井上唯のブログに、矢川葵によるこんな発言が掲載された。
以下、ブログより抜粋。

コンビニにて
葵ちゃんと、サクライさん誕生日だから何かあげよってなりまして、
葵ちゃん「とりあえず蒼波純って書いとけば喜ぶよ」

ある意味、メンバーとプロデューサーの「よい関係」がここに示されている。

Solitude HOTELの空間演出を行うhuez

左からコショージメグミ、和田輪、矢川葵、井上唯。

続いて、Maison book girlのワンマンライブ「Solitude HOTEL」の舞台の空間演出を担当しているhuez(ヒューズ)を紹介する。
huezは、2011年に東京で結成された空間演出ユニットで、「フレームの変更」をコンセプトに、レーザーやLEDなどの特殊照明、MVやガジェット、催事場展示などでの空間演出を行っている。
以下、Real SoundよりSolitude HOTEL 4Fから空間演出を担っているユニット・huezのインタビューを引用。
ライブは演者は勿論、観客がいて、そしてその間を取り持つ舞台演出が存在して成り立っている(実際にはもっと多くの裏方的仕事もあるが)。
いかにして彼らがSolitude HOTELの舞台を作り上げてきたかを知ることで、Solitude HOTELの舞台をより深く知ることができる。

huez(ヒューズ)。
■としくに
ステージディレクター・演出家。渋都市株式会社代表取締役市長。演劇領域での舞台監督や、メディアパフォーマンスの「インターネットおじさん」などの活動を経て、2016年に渋都市株式会社を設立し、代表取締役に就任。「笑い」と「ホラー」をテーマとして、既存の枠組みを越えた映像・空間演出のディレクションを手掛ける。

■ YAVAO / 小池将樹
VJ・LJ・ステージエンジニア。「身体的感覚の混乱」をキーワードに、デジタルデバイスやゲームシステムの企画・制作をおこなう。2011年にhuezを立ち上げた人物でもあり、現在は、huezのライブ演出の中心人物として、レーザーやLEDなどの特殊照明のプランニングおよびエンジニアリングを担当している。

■YAMAGE
テクニカルディレクター・オペレーター。2015年よりアーティストユニット・huezおよび渋都市株式会社に所属し、レーザーデザインおよびオペレーションを主軸に活動。「目に見える音」を表現し楽曲の世界観を拡張したレーザープログラミングと精密なオペレーションを得意とする。

設定を理解して世界観を成立させる
ーー「Solitude HOTEL」におけるhuezのみなさんの役割と、ライブが生まれる流れについてお教え下さい。
としくに:前段として、ライブ演出におけるhuezの役割について話すと、例えばtofubeatsのワンマンでは照明・レーザー・映像・VJと、舞台装置を使った演出を全般に担当していて、昨年のCY8ERのワンマンのときはセットリストを含めた内容物にまでガッツリ干渉するレベルで演出を行っています。
「Solitude HOTEL」の場合はtofubeatsの事例と近く、Maison book girl側の作りたいもの、ライブでやりたいことを僕らの技術でどうやって成立させるのか? という視点で演出を行っています。プロデューサーのサクライ(ケンタ)さんとメンバーのコショージ(メグミさん)に、うちのYAVAOも加わって、その3人で舞台演出についてのアイデアなんかを話し合うんですけど、僕はそこから一歩離れて「それが実現可能なのか」をジャッジするような立ち位置です。
YAVAO:僕はコショージさんとサクライさんが最初に持って来る「ストーリーと世界観」を見せてもらって、それに沿ったプランをお二人に提案して組んでいくような立ち位置です。考えられた世界観やストーリーを、具体的にどんなメディアを使ってどのようにステージ上に具体化するのかプランを提供するっていう。楽曲のセットリストを一緒に考えることもあります。当日のVJや映像のオペレーションも担当しています。
としくに:その後、3人の「あれをやってみたい」というアイデアに対して、それが実現出来るのかを僕がジャッジしたり、逆にアイデアが煮詰まっちゃうと、気づいたら最初に決めた設定から3人が外れてたりすることもあるんですよね。煮詰まりすぎてゲシュタルト崩壊しちゃったみたいな。そういうときに、客観的に見て「それ世界観的に合ってますか」というようなこともたまに言ったりする。3人の見ている世界観が全員ピッタリ合っているとも限らないので、そういうズレを見つけて落とし所を決めたりすることもあります。
イメージとしては、ライブに楽曲のセットリストがあるのと同じように、huezの演出にもセットリストがあるというか。アーティストがセットリストを決め打ちで持ってきた場合には、僕らは僕らの使える機材や出来る演出でネタを集めてセットリストを考えるんです。たとえばこの曲では映像にフォーカスしよう、ここはレーザーを使おう、みたいな。huezの演出セットリストを組むときに、その内容物を決めてるのがヤバ(YAVAO)です。ブクガの場合は特にヤバが「世界観」に注意しながらネタを組んでいます。というのも、ブクガのワンマンライブは世界観が強固で、つまりその世界のルールというか、「設定」が細かいので、僕らはまずその設定を理解して、その中で「やってOKなこと」と「NGなこと」みたいな基準をある程度見つけていきました。
あとはライブ当日、舞台で実際に手を動かす音響さん、照明さんや、舞台を仕切る舞台監督さんとのやり取りも僕がやります。ブクガのライブでは音と映像が完全に同期した素材なんかも使うので、音響さんとの細かいすり合わせが必要になるんですが、そういう裏方的なやり取りもそうですね。自分の作家性を出すというよりは、3人が作ろうとしている世界観を成立させることに尽力しています。
あと、ウチで関わってるスタッフはYAMAGEですね。YAMAGEはかかわり方がちょっと違って、基本的にVJとかの演出はYAVAOがプランニングするんですけど、huezの武器というか、表現の一つとしてレーザーがあって、YAMAGEはレーザーの専門家なんです。
YAMAGE:曲と公演のテーマにもよるんですが、レーザーについては、YAVAOからもらったリクエストに応じて僕が製作しています。例えば「karma」のレーザー演出などは事前に作ったデータとその場で即興で作ったデータとか混ぜたりして作りました。
としくに:YAMAGEはレーザーで音を表現できるんです。「言選り」の演出なんかはそこが強く出ている部分ですね。加えてYAMAGEはもともと音楽自体が超好きな人なので、アーティストの文脈とか、ファンの気持ちとかを汲んだ演出を考えられるんですよね。僕やヤバはテクニカル的な視点で「この演出がハメやすい」とか考えてしまうところをYAMAGEはアーティストやファン目線に立って、「ここはあえて何もしないほうがいい」みたいな演出の取り方ができるので。
ーーhuezが初めて手がけたMaison book girlのワンマンライブが2017年12月28日に行われた「Solitude HOTEL 4F」ですよね。どのような経緯で演出を担当されたのでしょうか。
としくに:もともとはサクライさんと僕らに共通の知り合いがいて、その人が僕らを紹介してくれました。サクライさん側でも「4F」はかなり挑戦的で難解な脚本を使ったライブにしようと画策している中で、テクニカルの部分で手が回らないというような事情があり、僕らに声がかかりました。そのときは僕らも仕事をどんどん受けていく時期だったのでぜひ、ということで受けたんですが、「しょっぱなからすげー難解な曲が来たな」みたいな(笑)。
YAVAO:進捗もどういう感じで進めるか手探りだったから、プランシートをまとめて。世界観を解釈するところから毎回ライブの仕込みが始まるんですけど、4Fのときは何もかも初めてでしたし、サクライさんやコショージさんの中でもMaison book girlの世界観が明確に言語化されているわけじゃなかったので。
としくに:ストーリーを読み解くのが難解なのは全然いいんだけど、「こういうものを提示すれば分かる」っていう共通言語がないままスタートしてしまったので大変でした。huez側もブクガ側も「こういう言い回しならお互い伝わるぞ」みたいなことを作りながら掴んでいく作業の連続でした。実際ハコ入りした後でも、サクライさんは照明とか光にすごくこだわりを持っている人なんですが、メンバーが立ってゲネプロをやっている状態で、僕らの横でリクエストを出してくる。それを都度反映したり、実現できるかを相談していく……みたいな現場でした。
そうした意思疎通の効率を上げるために、4F以降のワンマンではそれを踏まえて、照明とVJだけで舞台を照らしてサクライさんにシーンごとに確認してもらう、っていう方法をとっています。その横にコショージさんもいて、あ、私たちはこういう光の中に立ってるんだ、イメージと合ってるな、合ってないなっていう感覚も持ってもらって、その後メンバーを入れてゲネプロ、というような流れですね。効率もクオリティも上がるしイメージの共有も出来る。

出典: realsound.jp

空間演出イメージ

技術屋とアーティストの間で空間を彩る
ーーMaison book girlのプロデューサーであるサクライさんが舞台演出についてジャッジをする一方で、現場の照明さんなんかは「Cueシートありき」みたいな面もあり、大変そうです。
としくに:現場での僕は翻訳家に近いです。照明に関してはYAMAGEが話してくれることが多くて、僕はおおむね舞台監督や大道具の方とやり取りしています。
YAVAO:4Fに関してはコショージさんとサクライさんが演出アイデアをたくさん持っていたので、僕らはそれを成立させることに徹してました。強いていえば後半、ノイズの中でメンバーの衣装がどんどん変わっていくシーンがあるんですけど、そこの演出がちょっと浮いていたので、「大量にストロボを設置して影が出るようにする」というプランを提案したくらいだったと思います。テクニカルとして全力で関わった印象ですね。
としくに:逆に言うと、ブクガが1~3Fの間で持っていた演出アイデアを僕らがテクニカルで表現した、というような関係性でした。ライブの内容に対してコミットすることは4Fの時点ではほぼなかったです。結構ノリもスタッフに近かったというか、業者っぽかったですね。僕が通訳担当で、YAMAGEとヤバでネタをたくさん作って追いつかせる、みたいな。
YAVAO:「時計」をね、成立させなきゃいけなかったので……。
ーーライブ後、ファンの方の反応などは見られましたか?
としくに:僕はエゴサをよくするので(笑)。4Fの時はサクライさんの作った仕掛けに対してお客さんがとても驚いていた印象ですね。きょとんとして、拍手していいのかもわからないような状態。で、お客さんの反応も賛否両論までは行かなかったですけど、びっくりしていて。あのライブ後から、「考察するファン」がとても増えたと思います。
YAVAO:のちのちになって、「4Fを超えた」とか「4Fと比べて〜〜」みたいな比較をよく目にするようになって、それくらいインパクトのある体験だったんだろうなと。ブクガのライブのフォーマットとしてああいう演劇的なアプローチがあるという。ライブの最後にコショージさんが「これがMaison book girlです」って締めたのも象徴的でした。
ーーその後、年が明けて2018年5月4日に「Solitude HOTEL 4.9F」が行われました。
YAVAO:4.9は「再演やります」みたいな形でお声がけいただいて、4Fの続きのような世界観で、引き続き演出に入ってます。
としくに:「今後もお願いします」って言ってもらえて。
YAVAO:信用してもらえたよね。
としくに:どんな現場でも相性って絶対あるし、ブクガはすごく特殊なアーティストで、例えば仮に僕らが全員ステージ演出を出来ない状態になった時に、「huezチームの代わりに演出できる人を紹介してください」って言われても、ブクガに関しては絶対無理です。やっていることが特殊すぎるし、かなり深いレイヤーで一緒に仕事をしているので。僕らはテクニカルに明るい技術屋的な面も持ちつつ、アーティストとして仕事をしている自負もあり、「一緒にいい作品を作る」というような、バンドメンバーと変わらないくらいの責任感で制作に携わってます。だから例えば「新しいバンドメンバーを募集します。合う人いますか?」って言われても答えられないですよね。「業者ならいるけど……」みたいな。
YAVAO:4Fで思ったこととしては、Maison book girlは解像度の高い質感を表現したいアーティストなんだろうなって。だから4.9FではVJにオーバーヘッドプロジェクター(OHP)という投影機材を使いました。透過素材に強い光を当てて、レンズで投影して像を作る、昔の学校の視聴覚室などにあった機材なんですが、その上にアクリルケースをのせて水を流す、みたいな表現を提案しています。

出典: realsound.jp

OHP
下部の台座が光源になっており、それを上部のレンズから壁に投影する。

としくに:VJの世界に「OHP使い」っていう界隈があって、多分日本全国で20人くらいだと思うんですけど(笑)、そこにハラタアツシさんというOHP専門のVJプレイヤーが居て。
YAVAO:日本で5本指に入るくらいの方で。前々から知り合いだったんですけど、絶対ブクガにはハラタさんが合うなと思って4.9Fでアサインしてもらったんです。
としくに:OHPって、透過した物体をレンズで壁に投射する機材なので、「解像度」っていう概念が存在しないんですよね。フルハイビジョン投影とか、デジタル機材と像を並べてみるとよく分かるんですけど、もう質感が全然違う。その場にリアルなものが映っているっていう。お客さんには「今解像度が変わった」みたいには伝わらないと思うんですけど、でも「何か明らかに質感が変わった」って気づく。これはハラタさんしかできないことで。あと、水とかインクなんかを投射するんですけど、本当に現場で生でやっているので「同じ像」は撮影でもしない限り二度と見られない。でも撮影しちゃったら面白みも何もなくなっちゃうので。そういう意味で体験として強い。
YAVAO:それで、4.9Fのときはストーリーとか、一連のセットリストはサクライさんからもらったんですが、ライブ後半の演出はhuezで決める部分が多かったですね。
YAMAGE:4.9Fは2部構成だったんですよ。10曲目までが前回の4Fをなぞった構成になってて、そこから先は演出がガラッと変わる。その10曲目以降の演出を割と丸ごとやらせてもらえることになったので、レーザー入れる場所を決めたり、OHPをアンコールで入れたり、YAVAOがプランを詰めて行きました。「レインコートと首のない鳥」でハラタさんのOHPが初お披露目になって。あと、「言選り」にレーザーの演出を入れたのもこのライブが初めてで、割とhuezの色を出せたライブだったと思います。
としくに:「huezなりにブクガを表現してもいいよ」というようなパスを渡された印象です。だからハラタさんのOHPもご提案できました。「faithlessness」では「もしもブクガが普通のアイドルグループだったら」っていう照明プランも試して、だから超カラフルにしましたね。あとは「音ハメの限界値」みたいなのをずっと作ってました。
YAVAO:キネマ倶楽部がそこまで電源の容量がなくて、そんなに照明がつけられないよ、ちょっと困った!ってのもあったよね。
としくに:4Fから引き続いて課題だったのは、アーティストと舞台制作スタッフの翻訳の部分でした。アーティスト本人の言葉を生でスタッフさんに伝えても理解してもらえなかったり、スタッフさんの言葉はアーティストからするとネガティブな意見に聞こえたり、そこのコミュニケーションの齟齬を埋めるのは僕の仕事だな、と思っていて。今ではサクライさんにも「こういう言い方をしてくれれば分かりやすいです」とか、「僕はこういう伝え方しますね」って都度伝えていくことで齟齬はどんどん埋まって来ているんですが、それが4F〜4.9Fではすごく多かった。4.9が終わった段階で次(5F)の舞台が日本青年館だとは聞いていたので、「日本青年館のキャパでやるなら舞台監督入れないと無理です、回せません」ってお願いしたんです。

出典: realsound.jp

システム図

システム図

ホール公演の可能性を探った5F
ーーひと月後の6月24日に日本青年館で「Solitude HOTEL 5F」が行われました。
としくに:僕の5Fのテーマは「ブクガなりのホール公演」でした。4Fとか4.9Fはストーリーが強かったから、極論ライブハウスでもホールでも同じことができるんですよ。でも「5F」ではせっかくホールでやるんだからというところにフォーカスして作りました。もちろんとんがってる演出も一部入れつつですが、ブクガの範囲内でホールライブをやろうと。セトリをみて、曲の盛り上がりを考えて……っていうベタな考えで作ってます。
YAMAGE:特に2ブロック目はコショージさんから「huezゾーン」って呼ばれてた記憶があります。「お試し演出しまくってください」みたいなことを言われた。
としくに:ステージ上の色味とかは暗いし、照明も「もろブクガ」なんですけど、作り方としてはかなりベタベタの構成だったと思います。途中で変化球を投げて、MCで喋って、アンコールやって終わり、みたいな。5Fでは前述のとおり初めて舞台監督の方が入ってくださったんですけど、アーティストから要望をヒヤリングして、実現可能性を見て舞台監督に返事をするのが僕なので、舞台監督からすると「演出家」は僕になるんですよね。結構勉強することが多かったです。
YAVAO:サクライさんが、4.9Fでうちから紹介したハラタさんのOHPをすごく気に入ってくださったんですよ。それで5Fの最初のブロックは全部OHPでやることになりました。OHPゾーン、huezゾーン、オチが照明、とゾーン別にまとまってる綺麗な公演でした。「huezゾーン」では「sin morning」と「rooms」で背景映像を使ってモーショングラフィックを使った音ハメをやってます。
としくに:これもhuezならではの演出なんですが、細かい音ハメをするために、専用のクリック音が入った音源をサクライさんに用意してもらってます。それをTouch Designerっていうソフトウェアで解析して、クリック音をトリガーにして背景の白線が切り替わっていく、というVJを作りました。実はhuezでVJ素材をゼロから作ったのは「5F」が初めてなんです。
YAVAO:それまでは既存の映像をサンプリングしてVJしていたんですけど、この時Touch Designerっていうソフトのパワーに気づいて、ゼロから作りました。このソフト、一度ざっくりビジュアルを組んだら、そこから音に反応する速度を変えたり、表示する図形を四角から線にしたり、その場でザクザク組んでいけるのがすごく便利で、「5F」以降は ブクガ以外のLiveでもこの技法を使ってます。リアルタイムで出力できるので、その場で映像を取り込んでエフェクトをかけて表示する、とかもできます。
先端技術への造詣をもって全く新しいライブ演出の可能性を提示しつつ、現場での緻密なやり取りによって舞台を成立させていく。huezの真摯な姿勢が制作シークエンスにも現れていることがわかる取材となった。Solitude Hotelはhuezの可動域を使い切ったワンマンライブだといえるだろう。後半では、追加公演を含めたら異例の3公演開催となった2018年12月開催の「Solitude Hotel 6F hiru/yoru・yume」、そして2019年4月に人見記念講堂で行われた「Solitude Hotel 7F」の事例に迫る。

出典: realsound.jp

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