Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

ブクガがさらに大きくなる未来が見えてきたから
──ワンマンツアーに関して、ファンが皆さんのMCについて触れているツイートをよく見かけるのですが、その中でいくつか気になるものがありまして。まず1つ、井上さんがグループの終わりについて話しつつ、「誰かに自信を持って紹介できる存在になりたい」とお話ししたそうですね。
井上 あ、ありましたね。
──それからもう1つ、和田さんは成長することによって変わっていくパフォーマンスがあること、だからこそ今できるステージを届けたいとお話ししていたとのことで。一連のMCを見て、皆さんが今後の活動について考える機会が増えたのかな……と感じたんです。
和田 このMCはグループ全体の今後を考えたと言うより、私たちとお客さんの今の関係性について話した、という感じでした。例えばちょっとつたない歌声が好きな人がいらっしゃったとして、今後技術が上がったとき、もうその歌い方を聴かせることはできなくなってしまう。つまり今しか体験できないことがあるからこそ、今の私たちを観てほしい、ということなんです。
井上 大きい会場でのライブが増えて、ブクガの活動の規模もさらに大きくなる未来が見えてきたんです。それこそLINE CUBE SHIBUYAでワンマンができることも、何年か前だったらまったく想像できなかったし。でも自分たちができると思っていても、観に来てくれる人がいないと成り立たない。できることもできなくなってしまう……ということをそのMCでは言いたかったんです。
──なるほど。
井上 もちろんこれまでも自信を持って活動してきたんですけど、ライブ映像を観直してみたときとか、「下手くそだな……」と反省することがよくあって。でも最近は「好きになるから絶対観て!」って胸を張って言えるようになったんです。だからこそ、今度のワンマンは絶対来てほしい。
──これからのブクガについて、メンバーの皆さんで話し合うことはありますか?
コショージ あんまりないなー……。
井上 それよりも「テープの特効とか早くできるようになろうね!」とか話すことはあります(笑)。
矢川 火薬がボーン!とかね(笑)。前回のワンマンでは終盤、全身ビシャビシャになりながらパフォーマンスを行ったんですけど、席が遠い方からはあんまり見えなかったみたいで。せっかく演出したのに伝わっていないと、もったいないですよね。
井上 もうデカいスプリンクラーを用意するしかない。
矢川 わーって水が出てるところを見せられたら、後ろの席の人にも伝わったと思うので、そういうのができるようになりたいよねー……ってみんなと話してました(笑)。
井上 やっぱり大きい会場になると、できることも増えますからね。
矢川 そして会場を大きくするには、そこに来てくれる人を増やさないといけない。
──今後ワンマンで皆さんがやってみたいことはありますか?
矢川 トロッコに乗ってみたいです(笑)。移動しながらお手振りしたいね。
コショージ 気球とかも乗りたい。
井上 ポップアップもいいし。
コショージ でもそういう演出に合う曲がない(笑)。
井上 近いうち、サクライさんに作ってもらおう……。

出典: natalie.mu

ベストアルバム

2020年6月24日:『Fiction』

『Fiction』Blu-ray付 初回限定盤A、Blu-ray2枚付 アマゾン完全生産限定盤

『Fiction』アルバム楽曲インストCD、詩集付 初回限定盤B(詩集付きのため長方形仕様になっている)

『Fiction』通常盤

01. bath room_
02. snow irony_
03. lost AGE_
04. cloudy irony
05. river
06. sin morning
07. faithlessness
08. townscape
09. rooms_
10. 言選り_
11. レインコートと首の無い鳥
12. 狭い物語
13. 夢
14. 長い夜が明けて
15. 闇色の朝_
16. 悲しみの子供たち
17. Fiction
18. non Fiction

Maison book girl初のベストアルバム。
当初は2020年4月29日の発売が予定されていたが、制作上の都合により2020年6月24日に延期された。
初回限定盤A、アルバム楽曲インストCD・詩集付 初回限定盤B、Blu-ray2枚付 アマゾン完全生産限定盤、通常盤の4タイプがリリースされた。
Blu-ray付 初回限定盤Aには、2020年1月5日にLINE CUBE SHIBUYAで開催された「Solitude HOTEL∞F」の全編が収録されているBlu-rayが付属されている。
アルバム楽曲インストCD・詩集付 初回限定盤Bには、全楽曲のインストゥルメンタルが収録されたCDとコショージメグミ作による詩集が付属されている。
詩集には以下の11篇が掲載されている(カッコ内は収録されている作品。ただし詩の朗読内容と詩集に記載されている内容とは若干異なる)。
・白い箱(EP『summer continue』収録の「empty」)
・教室(シングル『elude』)
・水(アルバム『bath room』収録の「water」)
・満月の夜(シングル『SOUP』収録の「まんげつのよるに)
・告白(シングル『umbla』)
・雨(シングル『cotoeri』収録の「雨の向こう側で」)
・14(シングル『river』収録の「14days」)
・記憶(アルバム『海と宇宙の子供たち』収録の「思い出くん」)
・風船(アルバム『yume』収録の「不思議な風船」)
・猫と老人(アルバム『image』収録の「opening」)
・明日(シングル『412』収録の「a-shi-ta」)
Blu-ray2枚付 アマゾン完全生産限定盤には、2020年1月5日にLINE CUBE SHIBUYAで開催された「Solitude HOTEL∞F」の全編が収録されているBlu-rayと、Amazon prime videoで配信された「Pick Ups! -Maison book girl- 全4 EPISODE」(未公開映像+オーディオコメンタリー付)が収録されているBlu-rayが付属されている。通販サイトアマゾンでの限定商品。
通常盤の初回プレス分には、ランダムでアナザージャケットが封入されていた。これは今までにリリースされた作品毎に用意されたものであり、その作品のリリース当時の衣装を着たメンバーの写真が使用されている。
アナザージャケット全8種類は以下の通りである。

01 bath room Version

02 river Version

03 cotoeri Version

04 elude Version

05 yume Version

06 SOUP Version

07 umbla Version

08 海と宇宙の子供たち Version

曲のタイトルの終わりに「_」が付けられている楽曲は、本作の収録にあたりリアレンジを施されたことを示している。

Maison book girl初のベストアルバム。
3曲の再録ヴァージョンと、1曲のマッシュアップ(複数の楽曲をミックスしたもの)、2曲の再アレンジヴァージョン、新しい詩の朗読が1つ、そして1曲の素晴らしい新曲から構成されている。
曲順は各楽曲のリリース順となっており、再録ヴァージョン、再アレンジヴァージョン、そして新曲以外の楽曲もリマスタリングが施されている。

●楽曲概説
01. bath room_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『bath room』に収録されていた楽曲の再録ヴァージョン。
『bath room』では、「bath room(intro)」と「bath room」の2曲に分かれていたが、ここでは1曲として扱われている(よってイントロが1分以上ある)。
ヴォーカルが録りなおされており、『bath room』のそれと比べると、各メンバーの歌唱力の向上具合は明らか。
無機質的だった『bath room』ヴァージョンに、新しい息吹が吹き込まれたようである。
細かいことを言えば、この「bath room」の新録は2回目となる。
初出はライブ会場限定でリリースされたシングル『white』であり、アルバム『bath room』に収録される際にヴォーカルの録りなおしが行われている。
この新録音について、矢川葵とコショージメグミはKKBOXでのインタビューにおいて以下のように答えている。
KKBOX:自分は好きな演劇が再演されるとよく観に行くのですが、初演で見落としていた微妙なニュアンンスとか、ディティールを発見できるのが魅力です。今回の『Fiction』を聴いていると、その感覚とすごく近いものを感じました。以前の「bath room」と比べると、再レコーディングされた今回の「bath room_」は息遣いとか、声の残像感などが、すごく立体的に伝わってきます。
コショージ:私の中ではめちゃくちゃ変わりましたね。ブクガがスタートした時から歌っていますが、ソロパートが無くて全部ユニゾンだったんです。今回はひとりひとりが歌うパートが増えました。もしかしたら「こういう風にやりたかったんだ」という想いと同時に、こっちが本当の「bath room」なのかなと、私自身も感じています。
KKBOX:すごくわかります。一つの塊だった4人の歌が、ダイナミックレンジが広がったというか、解像度が深まり、さらにエモーショナルな表現になっていますよね。
矢川:「bath room」は深い歌詞なのに、声が幼かったんだと思います。MVも「森の中で遊んでいる女の子」というイメージだったし。今回の「bath room_」は、自分が聴いてもすごく大人になっている感じがするし、まったく新しい曲のように聴こえました。
本楽曲の概要に関しては、アルバム『bath room』の項も参照のこと。

02. snow irony_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『bath room』に収録されていた楽曲の再録ヴァージョン。
ヴォーカルが録りなおされており、前曲「bath room_」と同じように『bath room』の幼さの残るヴォーカルから大きく飛躍した歌声を聴くことができる。
また『bath room』ヴァージョンよりもキーが高くなている。
この新録音について、和田輪はKKBOXでのインタビューにおいて以下のように答えている。
KKBOX:「snow irony_」も、終盤のサビパートの表現が大きく変わりましたね。以前の「snow irony」は歌詞の言葉を歌っている感じでしたが、今回は言葉の行間を歌っている気がします。
和田:声が大人っぽくなった、上手くなったということだけではなく、ちゃんと「許さない」と言っているなと思いました。それだけの変化が、この5年間であったんだと再認識できました。私は以前の「snow irony」も好きなので、これだけ雰囲気がガラッと変わったことで、違う曲になったのが良かったなと思います。
本楽曲の概要に関しては、アルバム『bath room』の項も参照のこと。

03. lost AGE_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
EP『summer continue』に収録されていた楽曲の再録ヴァージョン。
ヴォーカルが録りなおされており、この曲も幼さの残っていた『summer continue』ヴァージョンから大きく成長したメンバーの歌唱を聴くことができる。
この新録音について、メンバー4人はKKBOXでのインタビューにおいて以下のように答えている。
KKBOX:「lost age_」は歌と楽器が激しく戦うパワーを増し、大きな変化を感じます。再レコーディングされた3曲は数々のステージで歌われて日々アップデートされていると思いますが、ステージとレコーディングで何か違いを感じることはありましたか?
矢川:最初の頃は、感情表現をどこまで振り切れるのかわかりませんでした。それが、ライヴを重ねていくうちに「ここまで、こんなに声を出せるんだ、ここまで歌いたいと思える瞬間があるんだ」ということを気付けるようになりました。レコーディングの時も同じような気持で臨めるようになったことが大きいかなと思います。
井上:「bath room」「snow irony」「lost age」はずっと歌ってきているので、ライヴでの表現力が増してきていると感じてはいました。サクライさんのディレクションで改めてレコーディングすることで、違った形になったのかなって思います。
和田:成長の過程でライヴは本当に大きく影響しています。ライヴを重ねていくことで肉体性を伴う表現が成長し、それが私たちの強みに繋がっていることを改めて理解できました。ライヴがあったからこそ、いまのカタチに進化してきたのだと実感しています。
コショージ:初期のライヴは“被せ”が基本だったんですけど、ある時期に「生の歌を届けていきたい」という気持ちになっていきました。それ頃から、今のブクガの方向性がより明確になっていったのかなという気がします。
本楽曲の概要に関しては、EP『summer continue』の項も参照のこと。

04. cloudy irony
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『river (cloudy irony)』に収録されていた楽曲。
本楽曲の概要に関しては、シングル『river (cloudy irony)』の項を参照のこと。

05. river
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『river (cloudy irony)』、及びアルバム『image』に収録されていた「karma」のトラックに、シングル『river (cloudy irony)』に収録されていた「cloudy irony」の歌詞を乗せた楽曲(歌詞は楽曲に合うように若干の手直しがされている)。
また、「karma」のトラックのキーはオリジナルより高くなっている。
2020年1月5日m東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された「Solitude HOTEL ∞F」で初披露されており、この時点ではまだ「river」というタイトルは付けられておらずセットリストなどには「karma」(ただし歌詞は「cloudy irony」)といった表記で紹介されていた。
この楽曲について、和田輪はMusic Voiceでのインタビューにおいて以下のように答えている。
――本作では新曲「Fiction」、ポエトリー「non Fiction」、そしてマッシュアップ曲「river」がありますね。「river」はどういったアプローチのトラックでしょうか。
和田 輪 「river」は、「karma」という曲のトラックとメロディに「cloudy irony」の歌詞と振り付けを当てはめたパフォーマンスをライブでやって、その時は収録する予定は特になかったんですけど、今回こういう形になりました。
また、矢川葵は音楽ナタリーでのインタビューで以下のように答えている。
──話を戻すと、既発曲を合体させた「river」の発想は驚きました。シンプルに「やりにくくない?」と思ってしまうんですが(笑)。
(小声で)やりにくい……(笑)。少しずつスタジオでの練習を始めているんですけど、「cloudy irony」と「river」を続けてやると「あれ?」ってなるんですよ。でもライブでは何があっても動じないようにならなきゃいけない。「river」は原曲の振り付けを使いつつ、違う振り付けを足しているところもあるんですけど、最初に作った振り付けの構成をサクライさんに送ったら「もっと『cloudy irony』の振り付けを使ってほしい」という注文がきて。先生がまた構成を練り直して、それをまた覚えるっていう長い作業があって。
──原曲との差が少ないとこんがらがりそうですね。
歌割りは「karma」のままだけど歌詞は「cloudy irony」なので、体に入るまで何回も何回も練習しました。

「river」
2020年6月24日、ベストアルバム『Fiction』リリースと同日に東京・表参道WALL&WALLで開催された無観客配信ライブ「Solitude BOX Online」からの映像。

06. sin morning
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『image』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『image』の項を参照のこと。

07. faithlessness
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『image』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『image』の項を参照のこと。

08. townscape
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『image』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『image』の項を参照のこと。

09. rooms__
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『412』、及びアルバム『yume』に収録されていた楽曲の再アレンジヴァージョン。
アルバム『yume』に収録される際にイントロが数秒追加される再アレンジが行われており、今回そのイントロが長くなったヴァージョンに対して再アレンジが行われたために、曲のタイトルの最後につけられているアンダーバーは二つになっている。
今回はブレイク時の無音の時間が長くなっており、より印象的で効果的な無音となっている。
この再アレンジヴァージョンについて、和田輪とコショージメグミはKKBOXでのインタビューにおいて以下のように答えている。
KKBOX:「rooms_」のアレンジは、ブリッジや中盤の転換の時の無音の時間が微妙に倍になっていますよね。その微妙な違和感にヤラれました(笑)。もともと「rooms」の無音の部分に、余白の美学を感じていたんです。アートでの絵画や写真なども、余白があるから主題が生きてきたり、あるいはその余白の中に本質があるように感じるのと似ています。
コショージ:ちょうど倍になっています。私はもっと長くしても、より違いがわかりやすかったのかなと思いました (笑)。
和田:「rooms」は無音の中でステージの上で立ち尽くしていることが「すごい!」と言われたことがありました。最初は私たちもどきどきしていましてが、この5年間でその余白を何度もやってきた結果、ブレイクの長さの変化もいまだからできる表現の一部になったなと思います。
楽曲の概要に関しては、シングル『412』、及びアルバム『yume』の項も参照のこと。

10. 言選り_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『cotoeri』、及びアルバム『yume』に収録されていた楽曲。
アルバム『yume』に収録される際にイントロが数秒追加される再アレンジが行われているために、ここでのタイトルの最後にもアンダーバーがつけられているが、実際に収録されているのはシングル『cotoeri』のヴァージョンである。
楽曲の概要に関しては、シングル『cotoeri』、及びアルバム『yume』の項も参照のこと。

11. レインコートと首の無い鳥
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『elude』、及びアルバム『yume』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、シングル『elude』、及びアルバム『yume』の項を参照のこと。

12. 狭い物語
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『yume』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『yume』の項を参照のこと。

13. 夢
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『yume』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『yume』の項を参照のこと。

14. 長い夜が明けて
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『SOUP』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、シングル『SOUP』の項を参照のこと。

15. 闇色の朝_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
シングル『umbla』、及びアルバム『海と宇宙の子供たち』に収録されていた楽曲の再アレンジヴァージョン。
この曲のMVのように、1番が終わった瞬間に無音状態が続き、再び1番の頭から曲が始まる、という構成に再アレンジされている。
ちなみに無音状態はMVの方が数秒長くなっている。
この再アレンジヴァージョンについて、井上唯はFanplus Musicでのインタビューにおいて以下のように答えている。
――ブクガって、いろいろな仕掛けを盛り込みますよね。例えば、今回収録されている新バージョンの「闇色の朝_」も、1番が終わった後に無音状態がしばらくあって、また1番を頭から歌い始めたり、タイムリープ的な構成になっているじゃないですか。
井上:「闇色の朝」のMVが、これに近いバージョンだったんです。評判が良くて、こういう形のものを作ったということなんだと思います。ブクガは、曲で遊びがち(笑)。
楽曲の概要に関しては、シングル『umbla』、及びアルバム『海と宇宙の子供たち』の項も参照のこと。

16. 悲しみの子供たち
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバム『海と宇宙の子供たち』に収録されていた楽曲。
楽曲の概要に関しては、アルバム『海と宇宙の子供たち』の項を参照のこと。

17. Fiction
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本ベスト用の新曲。
再び新しいMaison book girlを象徴するような楽曲であり、名曲がまた一つ増えた瞬間でもある。
少しソウル風なバックに、この楽曲を歌いこなすに充分な歌唱力を付けたメンバーの歌声。
今までにはあまり見られなかったスケールの大きな解放感に溢れている。
この新曲について、メンバー4人はKKBOXでのインタビューにおいて以下のように答えている。
KKBOX:新曲「Fiction」は穏やかなメロディの中、4人がソロで歌い紡いでいくドラマチックな曲になっていますね。
コショージ:「bath room_」から始まった『Fiction』を最後に回収してくれている曲になったのかなと思います。
井上:サクライさんが新しく提示してくれる曲って、無音とか変拍子など含めて毎回新鮮なんです。今回の「Fiction」は、こんなにもストレートな曲なんだと思いました。
和田:最初の頃だったら歌えなかったかもしれません。私たちが成長して表現の範囲が広がってきた今だからこそ歌えるということが、よく現されている曲です。
矢川:部屋にいることが多かったブクガの曲の登場する主人公たちは、少しずつ外の世界に気がついて、部屋から出てくるようになってきました。その変わった部分と、でも根っこでは変わらない部分含めて「ブクガなんだ。私なんだ。 」というイメージを持つ曲なのかなと感じています。
またReal Soundのインタビューでは以下のように答えている。
ーー初期は「無気質な感じだった」という話がありましたけど、新曲「Fiction」の表現からは生々しさを感じます。
和田:曲は歌によってどのような表情にもなるというか。「私たちの歌で左右できる余地のある曲が増えたな」と改めて感じました。
コショージ:AメロやBメロのような音が少ないところは声が聴こえやすいし、個々がボイトレで歌い分けをした成果がよりわかりやすいんじゃないかな。
ーー矢川さんは今回「Fiction」を渡されてどう感じました?
矢川:なんでそう思ったのかはわからないんですけど、レコーディングのときにすごく悲しいというか、せつないというか……そんな気持ちになってしまって。泣きそうになるのをこらえながらがんばって歌った曲です。メロディなのか、音の感じなのかはわからないけれど、なぜか私の涙腺にきて……。
ーー今までそういうことはあったんですか?
矢川:そこまではなかったです。「いい曲だな」と思うことはたくさんありましたけど、喉が詰まる感じまでになったのは初めてでした。
井上:私も毎回新曲をもらうたびに「いい曲だな」と思うんですけど、今回は壮大さが今までとは違いますよね……。歌が前面に出ているところとか、4人の個性が立っているところとかも含めて、この5年、6年やってきた私たちだからこそ歌える曲なんじゃないかなと思います。

18. non Fiction
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本ベスト用の新しい詩の朗読。
ささやくような朗読が殆どを占め、最後は10秒ほどの沈黙が続く。
この詩について、作詞を行ったコショージメグミはReal Soundでのインタビューにおいて以下のように答えている。
ーーコショージさんは最後の「non Fiction」でポエトリーリーディングを書き下していますけど、サクライさんが作った「Fiction」に対して書いたものですか?
コショージ:いや、これは同時にスタートしました。書く前に、お互い「こういう感じの曲にしよう」というイメージは話しましたけど、同時進行です。
ーーポエトリーリーディングで書くテーマや自分の感覚が、初期と変わってきたところはありますか?
コショージ:今回で12作目なんですけど、初期の頃は、特に考えなくても自分の内から出せたんですよ。でも、だんだん考えないと浮かばなくなったり、「前にこういうことしたから、被っちゃうし」とか考えちゃったり。だから今回は考えるのをやめようと思って、ある意味で制作方法は原点に戻ったのかもしれないですね。
ーーじゃあわりとこれは自然に出てきた?
コショージ:そうですね。私的にはこれが正解だった感じがします。逆に今までがどんどん自分で難しくしていたと思います。

左から井上唯、コショージメグミ、矢川葵、和田輪。

以下、音楽ナタリーよりインタビューを引用。
個々のメンバーとのインタビューであり、同時にコロナ禍における自粛期間中に行われたインタビューでもあったので、個々のメンバーの「スティホーム」中の過ごし方や、これまでのMaison book girlとしての活動、各メンバーにとって「ブクガ」とはどういう存在なのか、本ベストアルバムへの思い、今回再録や新録された楽曲についてなど、興味深い内容が語られている。

矢川葵

矢川葵。
不安だったので資格の勉強を始めました
──近況を伺いたいと思っているのですが、ベスト盤「Fiction」のリリースに合わせて予定されていたツアー「BEST ALBUM "Fiction" TOUR」がどんどん延期になってしまっていて。
本当にすることがなくてどうしようかと思いました。だから「あつ森」(※Nintendo Switch用のゲーム「あつまれ どうぶつの森」)を延々とやってました(笑)。外にも行けず1日中やっていたら、Switchの本体が熱くなっちゃって。熱くなったらやめて、ご飯を食べたりして、冷めたらまたやって……っていうのを繰り返してました。
──この期間、いろんな人に取材しているんですが、リリースしてライブして……というサイクルが止まってしまったときに、「自分ってなんなんだろう」と存在意義を考える人もけっこういて。
それは私も思いました。ライブがない日でも朝起きて練習に行ったり、毎日ブクガに関することを何かしらしていたはずなのに、それがなくなって「私は何もできないな」って。筋トレするとか、歌の練習のためにカラオケに行くとか、オシャレな服を着なきゃいけないから服を探したりとか、生きるモチベーション全部がブクガのためだったんですよね。もうコロナとは関係なく、ブクガが終わったときのことを考えたら不安になってしまって、資格の勉強を始めました(笑)。
──資格ですか!
就職のことを考えて、歯科助手の資格の勉強を(笑)。損はないかなと思って。
──そんなことまで考えていたんですね。体力を維持するため、動いたりはしました?
外出できなくなった最初の頃はやってたんですけど、もともと筋トレが好きじゃなくて。今まではライブがあるからジムに行って、筋トレして、ダンスレッスンもやって……という感じだったんですけど、1人だとそのモチベーションも2週間くらいしか続かなくて。そこから先は親指しか動かしてないです(笑)。

できていない“何か”を克服した先に
──でも、3月の頭あたりは「2週間くらい過ぎたらコロナは落ち着くのかな」と思われていましたよね。
私も思ってました。
──それがどんどん先行きが見えなくなっていったという。この状況になる前の話を聞きたいのですが、1月にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行った単独公演「Solitude HOTEL ∞F」は達成感みたいなものがあったのではないでしょうか。
すごいありました。今までで一番かも。これまでのワンマンはセトリや演出を決めて、全員でリハーサルして、本番を迎えるまでの期間がけっこう短かったんですよ。前日まで「ここどうしよう」って考えてたんですけど、今回はダンスの先生も付いて、準備期間が長かったんです。それでも当日は練習で疲れていたのもあるし、ギリギリまでチケットが完売しなかったのでそのプレッシャーもあったし、毎度のことながら演出がいっぱいあるので、いろんなことを覚えなきゃいけなかったり、いっぱいいっぱいになってて。あんまり緊張しないほうなんですけど、ワンマン当日はすごい胃が痛かったんですよ。出番前にボイトレの先生から胃薬をもらったりして、切羽詰まってました。でも、終わったあとの解放感がすごくて。終演後すぐご飯が食べれるくらい胃も治ってて、「あの痛さはなんだったんだろう」って(笑)。
──振り付けのHIROMI先生はグループに大きな変化をもたらしたと思っているのですが、ダンスの先生を付けたいというのはメンバーからのリクエストだったんですよね。
ずっと「先生を付けてほしい」と言っていたんですよ。ただ、これまで振り付けを担当してくれたミキティー(本物)が作ってくれた土台があるので、どの先生にお願いすればいいのかサクライ(ケンタ)さんも悩んでいて。いろいろ考えた中でHIROMI先生を見つけてくれて、ようやく落ち着いた感じでした。これまでメンバー4人とも正解がわからないまま踊っていて、1人ひとりのニュアンスが違うときも「こうかな?」ってなんとか擦り合わせてきたけど、先生がいると正解がわかるんです。時間をかけて悩んできたことが「こう動いたらやりやすくなるよ」とか、ひと言で解決する。「何ができていないのかわからないけど、何かができていない」と思っていることに、先生がすぐにアドバイスをしてくれたんです。
──感覚的に捉えていたものを理路整然と説明してくれると。かねてから歌がレベルアップしているという話はよくしていますが、こうしてダンスの面でも進化し、演出もどんどんスケールアップしていく中で、自分たちでもかなり納得のいくものが見せられたわけですよね。あの日のライブを観て、「きっとブクガの2020年はすごいことになるぞ」と思いました。
はい。あの日のモチベーションはめちゃめちゃに高かったですね……最近は「あつ森」でずっと島を作ってますけど(笑)。

ここまできたからこそ、満足しちゃいけない
──ベスト盤のリリースが決まったときはどんなことを思いました?
活動開始から5年くらいでキリがいいと言うか。最初のベスト盤を出すのはこのくらいの時期になると思っていたので、けっこうすんなり入ってきた感じで。レコーディングは新たに録り直した曲で始まって、最後に新曲「Fiction」と「non Fiction」を録りました。
──録り直しでキーが上がった曲もありますよね。
「snow irony_」と「river」(「karma」のトラックに「cloudy irony」の歌詞を乗せた楽曲)ですね。
──年齢を重ねていくうちにキーが低くなることがあっても、上がるパターンは珍しいですよね。
そうなんですか? 昔の曲って私たちが高い声が出なかったのもあって、キーが低いんですよね。今は歌えるようになったので、上げたほうが私たちも歌いやすいし、聴き心地もいいのかなって。
──この段階で音域が広がるのかと驚きました。リリースの都度、「歌が変わりましたよね」という話はしてきましたけど、アルバムを通して聴いてみて、本当に進化し続けているんだなと改めて感じました。
新曲を初めて歌うのは、いつもレコーディングのときなんですよね。そのあとにライブで歌い方をつかんでいくことが多くて、ちょっとずつ変わっていく。だから初めの状態を聴くと、「幼いな」とか「まだつかみ切れてないな」と感じますよね。
──こうして歌やダンスはすごく進化しているじゃないですか。でも変わらないところもあって。
ん?
──いつも集客を気にしているし、「このタイミングで売れたい」みたいなことを常に言ってるんですよね(笑)。
それは……(笑)。今も変わらずですね。このベストアルバムで新規のお客さんが増えますようにって願ってます。
──どこか1つのゴールはあったりするんですか?
ワンマンライブだったら「チケットをソールドアウトさせたい」「前よりいいパフォーマンスをしたい」というのは全員考えているんですけど、4人で明確な目標を決めたことはないですね。どこかで「もっとお客さんが来てもいいはずなのに」「もっと聴いてもらっていいはずなのに」と思っていて、「自分たちに対する自信があるけど、数値的な部分の自信がないのかもね」と話したことがあって。これだけライブの演出にお金をかけてもらったのに、集客を考えると「足りてないのかな」って不安になったり。
──それこそ「Solitude HOTEL ∞F」は大勢の人が観たじゃないですか。
親に「渋谷公会堂でワンマンをやる」と言ったら、やっと「すごいね」って言ってくれたんですよ。田舎の人なので、東京では有名なライブハウスを教えても「どこかしら?」みたいな感じで。東京ドームとか京セラドーム大阪くらいの規模の会場しか知らないけど、さすがに渋谷公会堂は「聞いたことある、松田聖子さんがライブした場所だね」って言っていて。ワンマンライブに初めて親を呼んだんですけど、感動してくれました。
──いい感じじゃないですか。
だからこそ、ここで終わりたくないんですよ。満足しちゃいけない。
──ということは、集客への不安を口にするのはネガティブではなくて、超ハングリーということなんでしょうね。
そうかもしれない(笑)。

ブクガの曲で泣きそうになったのは2度目
──話を戻すと、既発曲を合体させた「river」の発想は驚きました。シンプルに「やりにくくない?」と思ってしまうんですが(笑)。
(小声で)やりにくい……(笑)。少しずつスタジオでの練習を始めているんですけど、「cloudy irony」と「river」を続けてやると「あれ?」ってなるんですよ。でもライブでは何があっても動じないようにならなきゃいけない。「river」は原曲の振り付けを使いつつ、違う振り付けを足しているところもあるんですけど、最初に作った振り付けの構成をサクライさんに送ったら「もっと『cloudy irony』の振り付けを使ってほしい」という注文がきて。先生がまた構成を練り直して、それをまた覚えるっていう長い作業があって。
──原曲との差が少ないとこんがらがりそうですね。
歌割りは「karma」のままだけど歌詞は「cloudy irony」なので、体に入るまで何回も何回も練習しました。
──アルバム全体を聴いてどんな感想を持ちましたか?
初期はサクライさんの作風が色濃い曲が多くて、ブクガのことをあまり知らない人から「似たような曲だな」と言われたりしたんですけど、メンバーもサクライさんもだんだん変わっていって、バリエーションが増えてきて。こうして聴くといろんなタイプの曲がそろっていて、5年間活動してきたかいがあったなと思います。
──新曲「Fiction」はいい意味でストレートに感動的な曲ですよね。
メロディに「ううっ」となってしまって、レコーディング中泣きそうになりました。あと印象深かったこともあって。この曲はサビのキーが高いんですけど、のどが詰まって上手に歌えなかったんですよ。それでみんな録り終わったあとに「録り直していいですか」ってレコーディングブースを出たら、ほかのメンバーがクラッカーを鳴らしてくれたんです。その日は4月1日で、私の誕生日だったんですよ。
──すごくいい話ですね。
曲に泣きそうになりつつ、サプライズにびっくりして変な顔をしてたと思います(笑)。ブクガの曲で泣きそうになったのは2度目で、「blue light」のバンドアレンジ版でsugarbeansさんが弾いてくれたピアノに感動したとき以来です。
──そろそろ時間になります。今現在で気になることはありますか?
この自粛期間がいつまで続くか心配ですし、活動していない期間で離れてしまったファンがいるかもしれない。だからツアーを早く始めたいですね。「配信でライブをしようか」という話も出ているので(※取材は6月上旬に実施)、今はそれに向けて練習している感じです。
──ekomsは配信に積極的ですよね。
そうですね。メンバーで生配信をすることもあるんですけど、和田(輪)が1人で全部準備してくれて。私たちは和田の説明を聞くだけで、IT大臣に任せっきりです(笑)。

出典: natalie.mu

コショージメグミ

コショージメグミ。
「売れたい」と思うタイミング
──矢川さんにも話したんですけど、これまでのインタビューを振り返ると、ブクガはいつも「このタイミングで売れたい」という話をしているなと思ったんです。で、話をしているうちにそれはストイックだからだと感じたんですよね。
うんうん。でも難しいですよね。新曲ができます、CDを作ります、ライブをします……って感じに活動してきてるじゃないですか。それでインタビューで「これで売れたい」と言い続けてきたんですけど、“これ”は「CDリリースのタイミングだったのか」って気付きました。わかります?
──どういうことですか?
今までは「このライブで売れたい」だと思ってた。ライブが主体になってる感じ。でも売れたいって感じるのはいつもCDリリースのタイミングだったんですよね。いろんな人に知ってもらえるのもCDだし。
──もちろんいろんなパターンがあるけれど、新規の人が最初に触れる機会はやっぱりWeb検索とかYouTubeが多いと思うんですよね。そう考えると新曲のリリースが入り口になるんじゃないかなと。
確かに。自分たちが一番力を込める活動はライブだから、勝手にそう思っちゃってたのかな。がんばった分だけお返しがくるわけでもないのに。曲を作るのはサクライさんというのもあるし、私たちがすることはレコーディングとその練習くらいだから、CDが完成した瞬間って「ああ、がんばったね」みたいな感じで……なんて言うんだろう、努力の詰め方が難しいというか。
──ライブに比べると、ということですよね。
そういうことです。もちろんレコーディングもめちゃがんばってるんですけどね。気付いたらそういうスタンスになってました。
──それも納得というか、ベスト盤のBlu-rayにも収録される「Solitude HOTEL ∞F」は本当にすごかったです。
ありがとうございます。マジで今回、めっちゃどうしようか考えたんですよ。これまでワンマンの演出は私とサクライさんで一緒にアイデアを出してきたけど、関わってくれる人が増えていって。途中からは映像制作とか舞台装置を手がけてくださるhuezさん、ダンサーのHIROMI先生、私の3組で演出を考えて、何度も打ち合わせをしたんです。例えばリリースイベントの帰りの新幹線でも、デッキで「あの曲のこの部分どうしよう」みたいにずっと電話してて。
──すごいスケジュールで動いていた。
2019年はライブの演出に付きっきりでした。「∞F」の準備は去年の9月くらいに始まったから、自分たちで納得のいかないものを出すわけにはいかなかった。みんなでがんばったと思います。
──演出も驚きましたが、身体表現も明らかに変化しましたよね。
うれしい。ダンスは今まで振り付けだけミキティーにお願いして、あとは自分たちで練習してたんですけど、細かい部分まで着手できていなかったんですよね。ここ最近は基礎的なこともやってきたから、それが振り付けに応用されるようになっていきました。ベスト盤に入る新曲「Fiction」の振り付けはミキティーとHIROMI先生の共作でやってもらおうと思っていて。面白そうじゃないですか?
──それは面白そう。
私のわがままなんですけど、2人にお願いしたら、「もうやるしかない」と思ってくれるはずなんですよ(笑)。これまでの活動を総括するベストアルバムだし、ちょうどいいかなって。

なんか、自分自身を俯瞰して見てるんですよ
──コショージさんは演者としてだけではなく、ステージ制作にも同じくらい力を注いでいるんですよね。
そうなのかも。
──いつからそうなっていったんですか? 昔はそこまでではなかったですよね。
いや、けっこう早かったかな? セトリも最初はサクライさんが考えてたんですけど、途中から私が決めるようになって、「普段からライブのセトリを考えてるから、ワンマンのセトリ組みも担当する」って流れになったはず。それからセトリが決まらないと演出も決まらなくて、「この曲順はこういう意味が込められているから、こんな演出がしたくて」みたいに言い出して、ステージ制作に関わり始めた感じですかね。でもVJとかはしばらくお任せしてたから、ちょっとずつ深く関わるようになっていきました。
──それこそ、「Fiction」の振り付けを2人に付けてもらうアイデアも出してますし。
「Fiction」はもともとサクライさんがミキティーに振り付けをお願いしようとしてて、私も「いいですね」と言ってたんです。でも曲を聴いたら、間奏から急にぶわっと開ける感じになるじゃないですか。そこのイメージが……ミキティーの考えてくれる振り付けもすごくいいんですけど、もっと体を使うダイナミックなダンスにしたら、すごくカッコいいんじゃないかって想像しちゃって。それにこれまで以上に一生懸命ダンスの練習をしているから、共作にした方が面白そうって思い付いたんですよね。それで2人を巻き込んで(笑)。
──ベスト盤にはこれまでコショージさんが作ってきたポエトリーリーディングの詩も、詩集としてまとまりますね。思い起こすとブクガの活動が始まる前のソロライブでも詩の朗読をしていて、長く続けてきましたよね。
本当ですよね。「ネタ尽きたわ」みたいなことも全然あったんですよ。意外といけました(笑)。今まであえてテキスト化してなくて、「詩集出したいです」みたいなこともなくて。曲に合わせて朗読する形で完成していて、文字とは結び付いてなかったんですよ。
──どちらかというと音で聴く作品だった。
そうそう、メンバー4人の声で表現するものだから。舞台とか映画も、本にしたらまったく違うじゃないですか。それと同じで、文字でどう表現するんだろうって。意外と大変でした。
──だから詩集のレイアウトも凝っていて。
はい。わがまま言って寄り添ってもらいました。
──話を聞けば聞くほど、コショージさんは作る側の人なんだなと思います。
でも、なんか自分自身を俯瞰して見てるんですよね。パフォーマーとしてのめり込まないというか。私、ちょっと冷めてません? 本当は行き切りたいんだけど行き切れない。それがこういうスタイルになったのかな。

コショージ、縄跳びは3回で飽きる
──矢川さんはコロナの影響でライブがなくなっていく中、「モチベーションがブクガだけだったから、することがなくなった」と言っていて。
私もそうですよ。「何もないわ」って。
──それこそ創作に向かったりはしました?
マンガとか描けたらよかったんですけどね。でも自分の創作するものはブクガとして披露するから、価値があるのかなと勝手に思っているんですよ。
──仮にブクガがなくなったとして、コショージさんは一般職に就職はしないんじゃないかなと思うんです。
そうなんですよ。だから何もないんです。ヒモになりたい(笑)。自粛期間で何かするところまではいってなくて、「私はブクガがないと価値がない人間だわ……」とか考えながら天井を見る、みたいことはありましたよ。仕事してないとダメなんだなって思いました。休みの日ができるのはいいんですよ。でも自粛期間中はこの先どうなるかわからなかったじゃないですか。「この日から活動できますよ」みたいな線引きもないし、ファンの人も大丈夫かなって思いました。
──お客さんの心配もしている。
1月にワンマンがあって、4月にツアーが始まる予定だったんですけど、その間はライブが1、2本しかなかったんです。そもそもライブができていないし、ファンとも会えてなくて。お客さんも「やっとライブを観れる」と思ってたかもしれないし、ずっとは待てないだろうし。そのうち「もしかしてブクガがなくても生きていけるんじゃないか」とか思われたら終わりじゃないですか。アーティストの友達ともそういう話はしましたよ。「これがないと生きていけない」と思ってCDを買ってくれたり、ライブに来てくれていたと思うんですけど、私たちが何もできなくなって、みんなの生活も変わりますよね。そこで「ライブに行かなくても生きていける」って気付かれたら終わる(笑)。
──ふと冷静になられたら困る(笑)。
あとは3カ月くらい経ったんですけど、歌ったり踊ったりしなくて大丈夫なのかって思いました。今は走ったりしてます。
──えー!
意外でしょ? それから友達が縄跳びにハマってて、私もやってみたんですけど、3回跳んだくらいで無理だったんですよ。
──飽きるのが早い(笑)。
疲れるとかじゃなくて、跳んでるだけなのがヒマだと思っちゃった。だから特にあてもなく、試しに走ってみたんです。そしたら景色が変わるから、意外と楽しくて。
──ステイホームするのも大変じゃないですか。
アニメを観るのは好きなんですけどね。映像は景色が変わるから。縄跳びは同じ場所でずっと跳んでるから、景色が変わらないんですよね……って全然ブクガの話してないじゃん!
──大丈夫ですよ。前半で触れてますし。
確かに。細かいところはほかの人に話してもらったらいっか。

この状況で保守的にはなりたくない
──最近の調子はどうなんですか? ツアーが延期になっていく中で落ち込んだりはしたと思うんですが。
落ち込みました。去年、台風で初めてライブが中止になったんですよ。そのときにめちゃくちゃヘコんだんですけど、今はそれが延々続いている感じ。だからキツかったんですけど、6月に入ってこうして取材もできるようになってるし、配信ライブも考えているので、今動けているのがうれしいです。ブクガならお客さんがいないこと、配信だからこそ面白くできることがあるんじゃないかと思っていて。それを考えることによって気持ちが助かってます。
──ブクガで配信ライブとなると期待しちゃいますよね。ハードルが高いと言いますか。
やっぱそう思います?
──普通にはならないのかなと。
「普通にはならない」、OKです。でもそうなるだろうなって思います。人によってハードルが違うからわからないところもあるんですけど、この状況で保守的にはなりたくないですよね。

出典: natalie.mu

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