Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

嘘っぽいなとか思っちゃうんですよ
サクライ 唯ちゃんはメンバーの中で一番まともで。ほかのメンバーは……。
井上唯 ヤバい人の集まりです(笑)。
サクライ 自分も含め、ヤバい集まりなんですけど、唯ちゃんはしっかりしてるんですよ。正気を保って冷静に見てる感じは助かる。唯ちゃんは一般的と言うか。普通って言い方も変ですけど、芸能人とかに詳しかったりするんですよ。
井上 ミーハーなんです。音楽もオリコンシングルチャートに入る曲とかが好きです。
サクライ 僕はそのへんのことが全然わからないから、僕とはまったく違う感覚を持っている人なんだなと思います。だから唯ちゃんがどういう気持ちでブクガをやっているのか興味があるんですよ。ブクガに入ってなかったらこういう曲を聴いてなかったと思うし。
井上 でも今は染まり切ったので楽しくやっております。
サクライ 唯ちゃんの感性でも「ブクガのこの曲っていい曲だな」みたいに思うことがある?
井上 全然ありますよ。私の友達も「この曲いいよね」って言ってくれますし。
サクライ それはよかった。多分、唯ちゃんの友達とは友達になれないタイプだと思ってるから。
井上 うん、絶対ならないっす(笑)。この前、友達とカラオケに行ったらRADWIMPSの「前前前世」を歌ってたけど、その子は「faithlessness」が好きって言ってましたよ。
サクライ そういう人にも曲が届くのは本当にうれしい。今回のアルバムについてはどうですか?
井上 よいと思います。
サクライ シンプル(笑)。もうちょっと具体的に教えてよ。自分もメンバーにはライブの感想とかをそんな言わないけど、メンバーから曲の感想をあんまり言われないから。
井上 そうなんだ。
サクライ あんまり聞かない気がするね。だから仮歌の段階で「メンバーはこの曲の完成度についてどう思ってるのか」みたいに思うことはある。
──お互いシャイというのもあって、そういうのはあまり言わなさそうですよね。
井上 普通言うのかな。
──アイドルでそういう人は多いんじゃないですかね。SNSでよく見る光景だし。「曲を書いてくれた誰々さんに感謝してます」みたいな。その感じは一切出さないですよね。心に秘めているとは思うんですけど。
井上 そういうのをSNSに書いたところで、嘘っぽいなとか思っちゃうんですよ。ひねくれてると言うか。
サクライ そこは似たところがあるかもしれない。ブクガのインタビューでメンバーが「この曲がいいよ」みたいなことを言っていると「ホント思ってるのかな」みたいな。
井上 あはは(笑)。それは思ってるでしょ。サクライさんが作った曲でこれはちょっとなっていうのは一度もないです。いつもよいと思ってますよ。
サクライ ああ、素晴らしい。ありがとう。自分も唯ちゃんのライブパフォーマンスはすごい好きで。唯ちゃんのダンスとか歌にすごい気迫を感じるんですよ。目付きがすごくて、グッとくるときがあります。
井上 ありがとうございます。これからもがんばります。

歌うたびに歌えるようになるのは楽しい
サクライ コショージとか和田はもともとブクガの世界観が好きだったかもしれないけど、唯ちゃんはそうではなかったと思うので、「よくぞここまで」っていう思いがすごいあるんですよ。
井上 自分でもすごく思います。わかるようになったのは最近なんですよ。
サクライ わかるようになったというのは?
井上 ブクガのよさと言うか、ブクガの世界に対して自分がどうしたらいいのかが。わかりやすい言葉で説明するのが難しいんですけど、感じられるようになってきました。単純にできることが増えてきたっていうのがあるんだと思うんですよ。歌もダンスも経験ゼロの状態で入ったので、できる幅が広がったのが大きいと思います。
サクライ そうだね。ブクガは毎回着実にステップアップを続けられている感じがするから、もし曲がいいと思ってなくても、それがやりがいにつながってるといいなって。
井上 曲もいいと思ってますって!
サクライ ずっとやってきた中で、今回のアルバムまでで一番好きな曲はどれ?
井上 私、すげー飽き性なんですよ。1週間単位で好きな食べ物が変わったりするくらいなので。だから自分でも好みがよくわかんなくて。今のマイブームは「狭い物語」です。ちょっと前までは「言選り」でした。
サクライ なるほど。だいたい最新のやつがいいのかな。
井上 よく聴くのは新しいやつですね。新鮮に聴けるっていうのがあるのかもしれないけど。
──新しいものをよく聴くという話ですが、「my cut」を新たに歌い直したことに関してはどう思っているんですか?
井上 私は特にそうなんですけど、前はマジで歌がヘタクソだったんですよ。でもボイトレに通えば通うほど上手になっているのを実感するんです。ちょっと前に録ったものよりも最新のもののほうが歌えているので、歌うたびにどんどんよくなるのは楽しいです。だから過去の曲を今の感じで歌えるのはいいなって思ってます。
サクライ 「my cut」は「MORE PAST」としてアルバムに入れるかわからないままレコーディングしていたんですよね。全曲できるまで入れるかどうかを決めていなかったんですけど、夢というコンセプトにうまくハマったなと思って。曲の展開に合わせて景色が移り変わったり、時間や場所が変わったり、そういうことをうまく表現できたと思っているんですが、唯ちゃんはどうですか?
井上 「my cut」ってめっちゃ最初の頃にできた曲じゃないですか。振り付けもミキティーがパッパと10分くらいで付けてたし。
サクライ 楽屋の前で5分くらいでやってたイメージ。
井上 実はいい曲なのにすごいもったいなって思いながらこの3年やってきてたんですよ。だからこういう形で新たに磨かれたのはよかったなって思います。ホントに昔の歌はヘタクソすぎなので聴きたくないんですよ(笑)。
サクライ 自分も大概だけど、唯ちゃんは滑舌が本当に悪かったじゃん。昔は滑舌のことばっかり注意してたけど、最近はそれをレコーディングで注意することがなくなった。もっと歌の表現の部分で「もっとこういうふうに歌って」っていう話をすることが増えたよね。
井上 やったぜ。
サクライ まあそれが普通なんだけど。そういうふうになってよかったなって思ってます。
井上 うれしい。滑舌を直すために何かをしたわけじゃないんですけど、ボイトレに通うようになったのが大きいです。
サクライ ポエトリーリーディングとかしゃべるところは難しかったりするよね。
井上 舌の長さとかもあるのでね。そこはあきらめてます。
サクライ 体の構造的な問題だからね。でもミックスエンジニアさんと「この感じがかわいいよね」っていつも言ってるよ。個性のアクセントになってる部分もある。
井上 じゃ、そういうことで(笑)。

それがダメなんですよ!
──井上さんからサクライさんに言っておきたいことはありますか?
井上 めっちゃ普通のこと言いますけど、もっとしっかりスケジュールを立てて動いてほしい(笑)。いつもカツカツになってしわ寄せがこっちに来たりするんですよ。すぐ歌入れだ、すぐ振り付けだってなる。
サクライ すいません。精いっぱいやっているのはわかってもらいたいなとは思ってるんですけど……それについてはがんばります。
井上 こないだ「狭い物語」をライブで初披露したんですけど、それの振り入れ期間が3日しかなくて。私、もうホントに無理だと思って2日目は泣きそうになってましたよ。無事にできたからよかったものの。
サクライ 今までなんとかなってきてるから。
井上 それがダメなんですよ! 私はもっとダンスの精度を高めたい。
サクライ お披露目の段階でもね。そのためには曲も早くできてないといけない。逆算してスケジュールを考えないといけない。
井上 そういうことです。
──ブクガの歌が成長しているように、サクライさんの成長物語でもあるから、スケージュリングもよくなっていきますよ。
井上 そこはまだまだですね。
サクライ すごいスピードで成長するよ。自分がどのくらいできるかっていうのがわかってきたから。
井上 まだわかってなかったか……そこの把握は大至急でお願いします(笑)。

出典: natalie.mu

左から矢川葵、サクライケンタ。

推しって偉大だなと思います
サクライ 葵ちゃんとは出身が同じ大阪というのがあって……。
矢川葵 でもサクライさんの地元知らない。
サクライ うそ?
矢川 どこで生まれ育ったか知らないし、その地名を聞いても多分私はわからない。
サクライ あ、そう……。
──同郷感は特になかった(笑)。
矢川 その点について強いて言うなら、ポエトリーのレコーディングのときに私の関西のイントネーションをあんまり責めないでくれるのがサクライさん(笑)。
サクライ いつも葵ちゃんだけ、ほかの3人に言われてるんですよ。また関西弁が出てるって。
矢川 4人で同じ部屋に入って、マイク1本を2人で分けてしゃべってるんですけど、私の関西弁が出ると3人が一斉に「違う!」って言ってくるんですよ。
サクライ いつもその音声データを家に持って帰って切り貼りして整えてます。葵ちゃんはどういう気持ちでブクガをやってます?
矢川 今はめちゃめちゃモチベーションがあるからもっとがんばろうってすごい思ってます。
サクライ なんで?
矢川 推しが曲を聴いてくれてるから(笑)。
──ああ。元モーニング娘。の工藤遥さんがブクガを聴いているんですよね。
矢川 はい! 今までも「ファンの人ががっかりしないように」とか「ファンの人がブクガ好きって言っても恥ずかしくないようなアイドルでいよう」って気持ちがあったけど、あの推しの工藤さんが好きって言ってくれているんだから、私はもっとちゃんとしなきゃいけないってさらに思っていて。
サクライ 葵ちゃんは工藤遥さんのライブ映像とかをめっちゃ観てるけど、あれを見始めてからパフォーマンス面にいい影響が出ている気がしていて。
矢川 そんな気がする。コショージもよくほかのアイドルのライブ映像を観るじゃないですか。「ヒントがある」って言って。私は明確にここをこうしようって思って観てるわけではないんですけど、観ると気合いの入れ方がまた一段変わる気がします。
サクライ この前のライブで披露した「狭い物語」の、落ちサビの葵ちゃんのパートとかすごくいい感じだもんね。
矢川 お披露目の日は直前までずっと工藤さんの動画を見てたので(笑)。本当にモチベーションが上がります。推しって偉大だなと思います。
サクライ 偉大だと思うよ。
矢川 だから私のファンの人にもそう思ってもらうようにしなくちゃいけない。
サクライ そうそう。ブクガではビジュアル的には葵ちゃんが一番アイドルらしいから、モチベーションがそういう方向に行くのはすごくいいなと思いました。頼もしいですね。

本当にブクガに入ってよかった
──今回の個人面談では総じて「歌がよくなった」って話をしているんですが、矢川さんも本当に変わりましたよね。
サクライ 今と比べると、なんでそこまでできなかったのか不思議に思えるくらいの変化ですね。個人的に好きな葵ちゃんの歌い方があって、それが歌メロにハマるとめちゃくちゃ気持ちいいんです。ソロボーカルとしても使いやすいなと思う。
矢川 やった。歌かダンスかで言えば歌のほうが好きです。ボイトレの先生が付くようになって練習の仕方も教えてもらったし、1人でカラオケ行く機会も増えて。ダンスはまだ苦手だなと思ってるんですけど。
サクライ カラオケの動画をSNSに上げてたよね。
矢川 はい。好きで行ってるだけなんですけど、必然的に練習になるんです。高い音が出るようになると「あの曲を歌いたいな」ってなるし。あと、ブクガの歌を何回も聴いてるうちに自分の声が気持ち悪いと思わなくなったんですよね。今回のアルバムでは、曲に沿った、私が歌いたいなって思う歌い方ができました。サクライさんがいいパートをくれたので、より練習しようって気持ちになったし。でも、カラオケですっごい気合い入れて練習してからレコーディングに行ったら、「今日の歌い方はあんまりよくなかった」って言われたんですけどね(笑)。
サクライ あったね。気合い入り過ぎてたのかも。でも、誰が聴いてもはっきりとわかるくらいメンバーが昔より歌えるようになったから、表現できることの幅が広がった。「歌で十分だろ」ってことでオケの音源を減らしたりもしたし。
矢川 へー!
サクライ アルバムはどうだった?
矢川 今回のアルバムはわかりやすいなと思いました。キーワードになってる「夢」って誰でも見る、共通認識があるものだから。fMRIとかAIを使って曲を作るのはブクガっぽいし、でも「ボーイミーツガール」みたいなこれまでなかったような曲もあるし、「ブクガは曲が似てるからどれがどれだかわからない」って言われがちだけど、このアルバムにはいろんなバリエーションの曲があるよって言える。だから……。
サクライ だから?
矢川 アルバムを工藤さんに送りたくて(笑)。送るときはお手紙を添えるので言ってください。
サクライ わかりました。確かに推しの存在って大事だよね。すごいわかる。
矢川 サクライさんもかわいい推しがいるじゃないですか。
サクライ 和田あずさ(君の隣のラジかるん)ちゃん。最近あずあずのためにがんばってる。
矢川 ふふ(笑)。私も工藤さんにまた曲を聴いてもらうためにがんばってる。一生工藤さんの話をしたいくらいなんです。朝起きたら工藤さんのSNSをチェックし、DVDを再生し。寝る前も映像を観てます。先にコショージがモーニング娘。にハマっていて、それを横目で見てたんですよ。以前の私は「松浦亜弥さんが最後の推しだから、ほかの推しなんてできないわ」って言ってたんですけど、胸ぐらつかんで「もうちょっとしたら天使が降りてくるから」って教えたい(笑)。
サクライ 僕も加入した当初の工藤さんが好きで。写真集とかも買ってました。
──小学生のときに入りましたからね。
サクライ 昔から知ってた人が今ブクガを聴いてくれているのが感慨深い。
矢川 本当にブクガに入ってよかった。

サクライさんがあずあずのためにがんばれば、私も工藤さんのためにがんばれる
──アルバムは推しに聴いてもらってもバッチリな仕上がりですか?
矢川 恥ずかしくないです。聴いてもらいたい。直接会うのは無理だけど。
サクライ 会いたくない?
矢川 会いたいけど会いたくない!(笑)
──いつになくテンションが高いですね。
矢川 熱く語るものがなかったからテンション低い人だと思われがちなんですけど、本来はこんな感じです。
サクライ 僕もあずあずが大切ですけど、まだ中3だから、ブクガのよさをわかってくれるかわかんないな。そういう意味で、誰にでも受け入れてもらいやすそうな曲を作らないとダメかもしれないね。
──推しに聴いてもらいたいがためにわかりやすい曲を作る(笑)。
矢川 でも今回はそういう曲もありますよ。私もブクガに染まってるから麻痺してるかもしれないですけど。
サクライ 唯ちゃんの友達はカラオケで「前前前世」を歌うような、ヒットチャートに入る音楽を好むタイプだけど、ブクガで好きな曲もあるってさっき聞いた。
矢川 工藤さんも生誕イベントで「前前前世」を歌ってますよ。あと、フェイバリットソングにOfficial髭男dismさんっていうおしゃれなバンドの曲とブクガの「言選り」が並んでるんですよ!
サクライ いいことだね。
矢川 スクショを何度も確認しました(笑)。「レインコートと首の無い鳥」にハマってるって書いてくれたから、もう大丈夫ですよ。あれに比べたらアルバムのほかの曲は全然かわいいです。
サクライ 聴きやすくなってるよね。
矢川 私、普通に買いたいと思うくらい好きな曲ばっかりです。
サクライ それはすごいうれしい。メンバーは直接感想を言わないから、曲を渡したときに、いつもどう思ってるんだろうって思ってた。
矢川 「言選り」は初めて聴いたときから好きだったけど、「レインコートと首の無い鳥」は、聴いて、覚えて、レコーディングして、振り入れして、なおかつライブで何回かやって、やっと好きだなって思い始めたんですよ。で、今さらサクライさんに「『レインコート』いい曲ですよね」って言うのもヘンだから、そのまま流れちゃってるかもしれない。でも本当にいいと思ってますよ。街でアルバムを手に持って「皆さんいいですよー聴いてくださーい」って言いたいくらいです(笑)。友達にも早く聴いてほしい。
──そして工藤さんにも聴いてもらいたいと。
矢川 はい(笑)。
サクライ 僕もあずあずのためにがんばろう。
矢川 あずあずのためにがんばったらブクガのためになるから。
──深い理解を示している(笑)。
矢川 サクライさんのあずあずのためのがんばりがブクガの活動を活発にして、私も工藤さんのためにがんばれる。みんなハッピー。相乗効果です。
サクライ 最後がただのヲタトークみたいになっててヤバいですね。

出典: natalie.mu

左から和田輪、井上唯、矢川葵、コショージメグミ、サクライケンタ。

以下、skream!よりサクライケンタとメンバーによるインタビューを引用。
本作品の項目で引用したインタビューの中では、最も各楽曲に深く踏み込んだ内容となっており、本作品をより理解する上での手助けになる内容となっている。

-今年は"Maison book girl - UK May Tour"(2018年5月開催)、"Maison book girl tour 2018"(2018年5月~6月にかけて開催)、"SUMMER SONIC 2018"などがありました。少し気が早いですが、2018年を振り返ってみてどんな1年でした?
井上:今年は何から始まったかな? ツアーかな?
サクライ:去年の年末にワンマン・ライヴ"Solitude HOTEL 4F"(2017年12月28日開催)をZepp DiverCity TOKYOでやって、年明けて......そこからって感じだよね?
コショージ:1~4月は何をしてたか覚えてない。
サクライ:"Solitude HOTEL 4F"の重みがすごくて、僕も1月は半分くらい記憶が......。
一同:(笑)
-充電してたような感じですかね?
サクライ:そうなんですよ。なんか、Zepp DiverCity TOKYOでやりすぎちゃったよね。そのあと、次のリリースが――
コショージ:「レインコートと首の無い鳥」(2018年6月リリースのシングル『elude』収録)じゃない?
サクライ:え? もう(「レインコートと首の無い鳥」)?
和田:上半期の記憶がまったくない......。
-(笑)思い出せないくらい忙しかったってことですね。
コショージ:良く言えば......。
-では、2018年で特に記憶に残っていることはありますか?
コショージ:5月がめっちゃ濃くて。それで前の記憶が全部なくなったんですよ。"Solitude HOTEL 4.9F"(2018年5月4日に東京キネマ倶楽部で開催)と、そのあとすぐに"VIVA LA ROCK EXTRA ビバラポップ!"があったんです。
サクライ:そこから"Maison book girl - UK May Tour"に行って、帰ってきたら"Maison book girl tour 2018"と、そのファイナル(2018年6月23日に開催した"tour final Solitude HOTEL 5F")が日本青年館ホールであって......シングルのことも重なりバタバタしていた気がしますね。
-そこから夏を経て本作『yume』の制作に入っていたという感じですかね。ブクガ(Maison book girl)の世界観って、色で言えば"白に近い灰色"または"白に近い青"みたいなイメージなのですが、本作は音源だけでも"黒に近い赤"のような印象を感じました。実際にジャケット写真や新衣装も黒と赤がベースになっていますが、今までと別の一面を見せたい、などの狙いはありますか?
サクライ:新しい一面というか、今まで積み重ねてきたものをさらに濃くしたようなイメージですね。今回、昔からブクガのテーマのひとつである"夢"をタイトルにしてアルバムを作りました。
-このタイミングで何か変えてみようというよりは、ブクガの進化というか、進んでいった結果での本作なんですね。
サクライ:そうですね。シングルも3枚リリースしている状態でのアルバムだったので、濃度が高いアルバムになるだろうなっていうのは制作前から思っていました。シングル曲と新曲のバランスも考えて"夢"というテーマで仕上げたという感じです。
-普段は、サクライさんからメンバーのみなさんへ、曲の意味やコンセプトについて深く説明することはあまりないそうですが、本作のコンセプト"夢"についても過去作と同様に詳細の説明はなかったんですか?
和田:なかったですね。前のアルバムで"どういう意味ですか?"って聞いたことがあるんですけど、"それぞれの解釈でいいよ"って言われて、それ以来は聞いていません。
-コンセプトや意味についてはメンバー間でも捉え方が違うのかなと思っているのですが、そこについてお互いの理解を話したり認識を合わせたりすることもあるんですか?
矢川:しないですね。
井上:改まって話をすることはないですけど、ライヴをしていくなかで個々に感じていることはあるかもしれないです。
矢川:振付についてはニュアンスを揃えるんですけど、曲となるとデモ音源を貰ってその日にレコーディングすることもあるので、自分自身の解釈でやってます。
-振付で言うと、今までの振付はミキティー本物(二丁目の魁カミングアウト)さんが担当してきたのかと思いますが、今作の新曲もミキティー本物さんが担当したんですか?
井上:そうですね。
-ミキティー本物さんも、自身の感性で振付をしてるんですかね?
コショージ:ミキティー(ミキティー本物)が作ってくれた振付に"ここをこうした方がいいと思うんだけど"とか言うと、振付に取り入れてくれることはあります。
-本作は約半分がインスト曲というのも斬新でした。メンバーのみなさんはこういうアルバムになることをどう感じましたか?
コショージ:前回のアルバム(2017年4月リリースの『image』)は間に10分くらいのインスト(「int」)があったのであまり驚きはなかったですね。
井上:私もインストに対して驚きはなかったんですけど、これまでにない新しいやり方なので、これから新たなことができるなとは思いました。
コショージ:でも"21曲入りです"って言っていて半分はインストだと、ファンは残念がらないかなって。
一同:(笑)
コショージ:"新曲がいっぱい聴けるぞ"って思ったら30秒のインストだったら大丈夫かなって思います。
矢川:"もう終わっちゃった"みたいな。
サクライ:でも、アルバム自体は意外と長いからね。1時間以上あるから。
-聴き応えがありますよね。インスト曲のタイトルは"fMRI"という医学用語だったり、夢を連想させるタイトルだったりと意味深に感じました。
サクライ:京都大学に神谷(之康)さんという夢について日本で一番研究している方がいるんですが、その方に話をうかがいに行きました。「fMRI」の音も、夢の実験をしているときの実際のMRIの音だったりとか、メンバーのセリフもその実験を再現していたりとか、「夢」という曲では、脳波の動きをクラップの音のベロシティにしたりっていうこともやっています。
-また、トラックリストを見たときに、既発曲に"_"を付けているところにも目がいきました。
サクライ:既発曲も全部変更されているんです。前の曲から繋がりやすくしたりとか、前後を意識してたりします。新しく聴こえる部分はあると思いますね。

出典: skream.jp

和田輪。

井上唯。

-ブクガってミステリアスな部分があるので、こういった部分にもついつい深読みしたくなっちゃいます。
矢川:イントロがちょっと長くなってる曲とかあるよね。
コショージ:「rooms_」とかそうだよね。("_"じゃなくて)"☆"とかでも良かったかもね。
和田:"言選り☆"とか?
コショージ:"\(^o^)/(オワタ)"とか。
一同:(笑)
-ブクガの世界観が台無しですよ......(笑)。レコーディングで印象に残っている部分とか成長を感じた部分はありますか?
和田:いつもは最初に歌ったものからサクライさんに"もうちょっとこうやって"って言われて擦り合わせていくんですけど、今回は1発目に歌ったフレーズの一部を使ってもらうことがあったんです。自分発でOKにしてもらうことができたんだなって思うと成長を感じました。
-成長は、技術的な部分だけでなく曲の捉え方みたいな部分もあるんですかね?
和田:歌が昔より下手じゃなくなったっていうのもあると思うんですけど、感覚的に合うようになってきたのかなって感じました。
-サクライさんもそういう部分は感じましたか?
サクライ:そうですね。ブクガとして今までやってきたメンバーの成長を考えて、"歌を聴かせたいな"という気持ちが大きくなりました。アルバムに入る曲も歌が中心になっています。
-矢川さんはいかがですか?
矢川:私は成長というよりは、「狭い物語」の変拍子に全然対応できなかったんです。何度も何度も録り直して、タイミングを合わせて......ってすごい苦戦したので、これからもっと頑張ろうと思いました。
コショージ:私はレコーディングの日が誕生日でした!
-みなさんに祝ってもらえましたか?
コショージ:はい。レコーディングのエンジニアさんの奥さんがいつもお菓子をくれるんですけど、その日はケーキの詰め合わせをくれて嬉しかったですね。あとサクライさんから誕生日プレゼントを貰いました。
サクライ:Amazonギフト券です。
-実用的なやつですね(笑)。
コショージ:メンバーからはモーニング娘。'18さんの舞台のDVDを貰いました。誕生日の1週間くらい前に発売されたんですよ。最近ブクガでハロプロが流行っているんです。今度3人(コショージ、矢川、井上)でイベントに行こうとしているんですけど、握手しているところを見られたら恥ずかしいので、まだ公言はしていないんですけど(笑)。
和田:私も行きたかったな。
コショージ:和田が仕事の日なんですよ。和田が働いているおかげで私たちが休める(笑)。
-(笑)さて、具体的な曲についても訊いていきたいのですが、メンバーのみなさんが思い入れのある曲や気に入っている曲はどの曲ですか?
井上:まだ振り入れをしているのが新曲の中では「狭い物語」しかないんですけど、この曲をずっと聴いていたのもあって、今はこの曲がお気に入りですね。
-10月13日に新木場STUDIO COASTで行われた"ekoms presents IN CLOSET 2018"で新衣装と共に披露してますよね。反応や手応えはいかがでした?
井上:みんな"いい曲だね"って言ってくれました。
コショージ:......浅い(笑)。
井上:難しい曲だから。1回聴いただけだと"まだよくわからないけど、いい曲だね"みたいな感想が多かった気がします。
-なるほど。そういうのってブクガではあるあるなんですかね?
井上:多いですね。
矢川:ほぼ毎回(笑)。
-そしてこの曲は"浮かんでいるベッド"などジャケット写真にも通じる歌詞が入っていますよね。
サクライ:そうですね。全編通してなんですけど、歌詞のイメージも、"夢"というものをテーマに全体を聴けるような仕上がりになっていると思います。

矢川葵。

コショージメグミ。

すごい複雑で......"はちゃめちゃ拍子"ですね(サクライ)
-和田さんの思い入れのある曲はいかがですか?
和田:私は「夢」ですね。今までのブクガの曲って、イントロやAメロが変拍子で、サビは4拍子でキャッチーっていうのが多かったんです。この曲は4拍子、3拍子で素直にきたと思ったらサビがめちゃくちゃで。デモの仮歌を聴いたときにサビで"おっ"って思ったことが印象に残っています。
コショージ:サビは何拍子なんですか? 3拍子っぽいところもありますよね。
サクライ:すごい複雑で......"はちゃめちゃ拍子"ですね。
一同:(笑)
サクライ:"僕拍子"です。気持ち良く作ったらこうなりました。
和田:できあがった4人のユニゾンの感じも良かったのでお気に入りですね。
-矢川さんはどうでしょうか?
矢川:今回全部の曲が大好きなんですけど、「夢」の音源が届いた日の前日に嫌なことがあって、すごい落ち込んでいたんですよ。それで翌朝起きたら「夢」の音源が届いていて、この曲を聴いていたら前日のこともあって泣いちゃったんです。
サクライ:そんな話、初めて聞きました。
矢川:メロディを聴いて"うわー"ってなって。情緒を不安定にさせられたけど、すごくいい曲でした。この曲のおかげで気持ちを切り替えられたという曲です。
サクライ:良かった。
-作曲者冥利に尽きますね。
サクライ:尽きますね。
-では、コショージさんは?
コショージ:このアルバムを代表しているのは「夢」だと思いますけど、ふたりが言ったから――
井上:"Boy Meets Girl~♪"
コショージ:"それぞれの~♪"
矢川:それうちのやつじゃない(笑)。
コショージ:「ボーイミーツガール」みたいな男女の話題の曲があまりなかったんですよ、ブクガって。
サクライ:たしかに。たしかにそうだね。
コショージ:私は「不思議な風船」っていう曲の作詞をしたんですけど、もともと恋というか、ある視点から見た恋愛、ラヴ・ストーリーみたいなものを書きたいなって思っていたんです。でもブクガにはそういう感覚がないから、どうだろうなって思っていたら、今回「ボーイミーツガール」があったので、"書いていいんじゃん"、"許されたな"って思った曲ですね。
-インスト曲についても訊きたいのですが、インスト曲と言いつつ歌の入っている「MORE PAST」は「my cut」(2015年リリースの1stアルバム『bath room』収録曲)のピアノ・バージョンですよね。
サクライ:録音したときはアルバムに入れるかどうかも未定だったんですけど、わりとうまくハマったというか、この曲を入れることによって、さらにアルバムの意味とかも見いだせるようになったので収録しました。この曲のピアノは、大森靖子さんのバンドでも一緒に活動しているsugarbeansさんに弾いてもらったんです。
井上:いい曲になりましたよね。
-全然別のタイトルで収録されたっていうのは面白いですよね。
サクライ:そうなんです。聴いた人はちょっとびっくりするんじゃないかなって。
コショージ:あと"下手くそ"な「blue light」(『image』収録曲)もあるんですよね。
サクライ:そう。7曲目の「PAST」。
和田:あれ「blue light」か!
サクライ:下手くそすぎてわからないかも。あれも実はsugarbeansさんに"下手くそにやって"って言って弾いてもらったんです。
-なるほど。では次に、ポエトリーの「不思議な風船」についても聞かせてください。先ほど、"ラヴ・ストーリーみたいなものを書きたかった"という話もありましたが、この曲はどういう思いで作詞しましたか?
コショージ:このアルバムを作るって聞く前から、"次に書くとしたら風船と女の子が出てくるお話を書きたいな"と思っていたんです。"風船が女の子のことを好き"っていうのを書いてみたいなと思っていて、このアルバムのコンセプトの夢にもかけて作りました。
-この曲は、サウンドの部分でもコショージさんの意向が反映されているんですか?
サクライ:"こんな雰囲気で"みたいなものは貰ってます。
-非現実感とか不安感とかが入ってくる感じで耳から離れない曲ですよね。
コショージ:これぐらいの高い音が入っている曲を他のアルバムで聴いたんですけど、その曲が流れた瞬間に急に緊張感が走ったんですよ。この緊張感は"風船が割れてしまうかもしれない"とか"手を離したら行ってしまう"とか、そういう感覚に合うんじゃないかと思って、サクライさんに曲のイメージを伝えました。
-そんな本作のリリース直後には"Solitude Hotel 6F hiru"、"Solitude Hotel 6F yoru"(2018年11月25日に日本橋三井ホールで開催)も予定されていますが、言える範囲内でどんなライヴになりそうですか?
サクライ:実は12月に追加公演を予定していて、"hiru"、"yoru"、"yume"という感じでやります。
-追加公演が決まったんですか。3部作みたいな感じのタイトルですね。
サクライ:ある意味そんな感じでもありますし、ひとつずつの作品としても観ることができるようなライヴを、みんなで作っていけたらなと思っています。
-最後にSkream!読者に向けてメッセージをお願いします。
井上:素敵な1枚なのでぜひたくさん聴いてください。
矢川:CDだけでもすごいボリュームがあるので十分聴き応えがあると思うんですけど、このアルバムを聴いて気に入っていただけたらライヴにも来てほしいなと思っています。ぜひ、みなさん来てください。

ニューアルバム『yume』リリース―Skream!動画メッセージ

音楽サイト「snacc」に掲載された、本アルバムのリリースを記念して行われた約90秒の動画インタビュー。

2019年12月18日:『海と宇宙の子供たち』

『海と宇宙の子供たち』

01. 風の脚
02. 海辺にて
03. 闇色の朝
04. 悲しみの子供たち
05. ノーワンダーランド
06. シルエット
07. LandmarK
08. 鯨工場
09. ランドリー
10. 長い夜が明けて
11. 思い出くん

Blu-ray (初回限定盤Aのみ)
「EXCLUSIVE STUDIO LIVE」
1. SE
2. 鯨工場
3. 長い夜が明けて
4. まんげつのよるに
5. 闇色の朝
6. シルエット
7. 告白
8. 海辺にて
9. ノーワンダーランド

ポニーキャニオンからの第二弾アルバム。
Blu-ray付 初回限定盤A、書籍付 初回限定盤B、アルバム楽曲インストCD付 アマゾン完全生産限定盤、通常盤の4タイプがリリースされた。
ジャケットは共通。
Blu-ray付 初回限定盤Aには、本アルバムの為にのみ作成された、演出:huez、映像監督:二宮ユーキによるスタジオ・ライブが収録されている。
書籍付 初回限定盤Bには、オールカラー104頁の「EXCLUSIVE BOOK」が付属されており、内訳は以下の通り。
・海と宇宙の子供たち 歌詞:(9P)
・SOLITUDE HOTEL B1 ▶ ∞F:(66P)
2015年3月27日開催公演「SOLITUDE HOTEL B1」から2020年1月5日開催公演「Solitude HOTEL ∞F」への軌跡を追う、Maison book girl&サクライケンタへの16,000字を越えるロングインタビューと、1Fから7Fまでのライブフォトをふんだんに収録。
・EXCLUSIVE PICTURES:(14P)
Maison book girl 撮り下ろし写真。
・Album Commentary:(6P)
Maison book girl アルバムインタビュー
その他。
アルバム楽曲インストCD付 アマゾン完全生産限定盤には、全楽曲のインストゥルメンタルが収録されたCDが付属されている。通販サイトアマゾンでの限定商品。

シングル、アルバムを通じて日本語のタイトルが付けられた初めての作品。
ここでいう「海」とはシングル『SOUP』で表現されたもの、「宇宙」はシングル『umbla』で表現されたものであり、それらから生まれた「子供たち」ということでこのタイトルが付けられた。
Maison book girlの総合プロデューサーはサクライケンタであり、彼の「現音ポップ」を具現化しパフォーマンスするのがMaison book girlだとの位置づけがされてきたように思われる。
そこには変拍子があり、独特の音色があり、独特のポリリズムが存在していたし、ある意味Maison book girlの音楽はそれらに代表されてきた。
アルバムにおいても、勿論メンバー各自の存在感はあるのだけれど、やはり「サクライケンタ」の存在の方が大きかった印象が強い。
そして本作。
登場回数は減ってはいるが変拍子は使用されているし、独特の音色とポリリズムは健在。
ところが本作を圧倒的に支配しているのはMaison book girlの4人のメンバーの歌声なのだ。
以前のインタビューで「サクライケンタがMaison book girlに寄ってきている」という主旨の答えがあった。
そして本作リリース時に行われたインタビュー(本項目で引用している)でもメンバーからサクライケンタへの楽曲に対する提言があったことが示されている。
つまり今までは良し悪しは別として、サクライケンタの楽曲がMaison book girlのメンバーを導いてきていたのが、本作ではMaison book girlのメンバーがサクライケンタの楽曲を誘導しているのだ。
「サクライケンタがMaison book girlに寄ってきている」のではなく、「Maison book girlがサクライケンタを引き寄せて」きた結果が本作なのだ。
当然、上記のような思考は聴き手の勝手な思い込みなのかもしれないが、そう思わせてくれるだけの(しかもそれが間違いなく正しいと実感できるだけの)力強い歌声がここには溢れている。
そして一番大切なポイントは、その結果として作成された本作が「本当に素晴らしい」ということであり、この点に関しては思い込みでもなんでもない事実である。
前アルバム『yume』が「サクライケンタとMaison book girlの集大成」だとしたら、本アルバム『海と宇宙の子供たち』は「Maison book girlとサクライケンタの新しい第一歩」なのかもしれない。

●楽曲概説
1. 風の脚
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
Maison book girlのアルバムの恒例でもある、オープニングのインストゥルメンタル。
このオープニングのインストゥルメンタルは、各アルバム全体のムードを語っている場合が多い。
例えば『bath room』の「bath room(intro)」はパーカッシブな楽器群と変拍子によって、デビューアルバムの登場(つまりMaison book girlの登場)を宣言していたし、『image』の「ending」ではゆったりとしたテンポにのって、サクライケンタ特有の音色が登場する中、Maison book girlの音として定着しつつあった音世界を広く紹介するアルバム導入への役割をしていた。
『yume』の「fMRI_TEST#2」では、京都大学神谷之康先生から借りてきた夢の実験をしている際の実際の音声を使用することで、「夢」のコンセプトアルバムであることを象徴的に語っていた。
そして本アルバムのオープニングである「風の脚」は、今までのMaison book girlにはあまりなかった、穏やかで暖かい、優しく柔らかい、Maison book girlの新しい一面を披露するための簡単な自己紹介のように響いてくる。

2. 海辺にて
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
「風の脚」で自己紹介された新しいMaison book girlがここにいる。
変拍子や特有の音色は影を潜め、地を這うような低音が控えめに曲を支え、メンバーのコーラスワークが曲のムードを決定している。
そしてなんといってもメロディが秀逸。
この曲のレコーディング風景の一部、バックトラックの作成方法、及び振り付けの練習方法を、2019年12月5日にAmazon Prime Videoにて配信された、Maison book girlのドキュメンタリー番組「Pick Ups! -Maison book girl-」EPISODE:02「"こだわり"と"わだかまり"」の中で見ることができる。

「海辺にて」
MV Director:かとうみさと
2019年12月18日に配信されたAmazon Prime Videoのドキュメンタリー番組「Pick Ups! -Maison book girl-」EPISODE:04「過去と、未来と、現在と。」の企画で制作されたミュージックビデオ。
メンバーが感じる楽曲イメージをもとに作成されており、同番組にはMV制作の打ち合わせの様子やメイキングなども収録されている。
ちなみに映像のなかで、小説を読んでいるコショージメグミから本を受けとっているのが、監督のかとうみさとである。

3. 闇色の朝
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの約4ヵ月前にリリースされたシングル『umbla』に収録されていた楽曲。
変拍子は使用されているが、もはや作り手も演者も聴き手もそれに混乱することはない。
こうしてアルバムに収録されていても、何の遜色もなく、アルバム全体のムードを壊すこともないのは、すでにこのシングルの時点で本アルバムの方向性が決定していたことを証明している。
むしろ本アルバムに収録されたことで、より暖かみを増したように感じられる。
本楽曲の概要に関しては、シングル『umbla』の項も参照のこと。

4. 悲しみの子供たち
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
Maison book girlの中でも最も情熱的な楽曲。
フラメンコやシャンソン、中近東風のテイストが感じられるが、そのどれとも違うようで、それらのハイブリッドのようでもある。
メンバーのエモーショナルな歌声の勢いが変拍子を凌駕している。
サクライケンタによるこの曲の仮歌の一部、及びバックトラックの作成方法を、2019年12月5日にAmazon Prime Videoにて配信された、Maison book girlのドキュメンタリー番組「Pick Ups! -Maison book girl-」EPISODE:02「"こだわり"と"わだかまり"」の中で聴くことができる。
サクライケンタによると、本楽曲はアコースティック・ギターで作曲されており、バックトラックにはギターとピアノしか和音を奏でる楽器が使用されていない。

「悲しみの子供たち」
MV Director・Animator:水江未来
監督とアニメを担当した水江未来は、細胞や微生物が蠢く抽象的な作風で、多くの短編アニメーションを制作しているアニメーター。
アヌシー国際アニメーション映画祭で2度受賞している。

5. ノーワンダーランド
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
ミドルテンポの勢いのよい楽曲。
ここでもメンバーのヴォーカルが楽曲をグイグイと引っ張っている。
コーラスワークも素晴らしいのだが、それ以上に各メンバーのヴォーカル力が飛躍的にアップしており、それぞれがそのヴォーカルにおいて全面に出てきて自己を主張している。

6. シルエット
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの約4ヵ月前にリリースされたシングル『umbla』に収録されていた楽曲。
「悲しみの子供たち」「ノーワンダーランド」と続いた情熱的で熱い風に吹かれた後にこの曲が登場するとそれはまるで、白昼夢の中に浮かび上がるミラージュのような風景へと変貌する。
この振り幅の大きさも大きな魅力になっている。
本楽曲の概要に関しては、シングル『umbla』の項も参照のこと。

7. LandmarK
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの中では、音色などは割と従来のサクライケンタに近い。
ただし変拍子はなく(サクライケンタは意図的に変拍子を抑えている)ヴォーカルパートの歌割も複雑に、そしてより効果的になっている。
この楽曲において、サクライケンタの楽曲に対するこだわりと、和田輪による歌に対するこだわりがぶつかり合うシーンを、2019年12月5日にAmazon Prime Videoにて配信された、Maison book girlのドキュメンタリー番組「Pick Ups! -Maison book girl-」EPISODE:02「"こだわり"と"わだかまり"」の中で聴くことができる。
これはお互いに「最良の物を作ろう」という気持ちのぶつかり合いである。
以下のインタビューで大まかな内容が触れられている。
──先日行われたワンマンのMCでは、和田さんがアルバムのレコーディング中、ボーカルに関してどうしても納得できない部分があり泣いてしまったとお話ししていました。現在Amazon Prime Videoで配信されている番組「Pick Ups!」にもそのシーンが収められています。
和田 特に揉めたわけではないんですよ。サクライさんは「俺はこれでいいと思うねんけどなー」と言ってくれたんですけど、どうしても自分ではしっくりこなくて、何度も録り直させてもらったんです。歌入れのときはまず自分たちがやってみたい歌い方で録音して、そのあとにサクライさんから意見を聞いて調節していく、という流れになるんです。それが大掛かりになっちゃったんですね。
──録り直しした楽曲は「LandmarK」でしたが、和田さんの中で具体的に気になっていたのはどの部分だったんでしょうか?
和田 この曲のサビは高いパートと低いパート、2種類あって2人ずつ分かれて歌うんです。私は低いほうを担当したんですけど、サクライさんから要望があった歌い方があまり耳なじみがよくないように聴こえたんです。最近では声の表現の幅が広がったんですけど、私が好きではない歌い方もできるようになったところもあって。表現力が上がったからこその弊害なのかもしれません。

8. 鯨工場
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの約8ヵ月前にリリースされたシングル『SOUP』に収録されていた楽曲。
ベースが大きく楽曲を支えている以外は、従来のサクライケンタのサウンドを継承している楽曲。
聴き手にとっては「ああ、慣れ親しんだMaison book girlだ」という一種の安堵感を覚えるかもしれない。
本楽曲の概要に関しては、シングル『SOUP』の項も参照のこと。

9. ランドリー
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
これまた低音部が充実した作りになっている楽曲。
今までのMaison book girlにはなかったシャッフルのリズムが使用されている。
変拍子には慣れているメンバーも、このシャッフルのリズムには手こずった様子で、インタビューで以下のように発言している。
──歌録りではサクライさんからどんな意見をもらうんでしょうか?
和田 漠然としたものがほとんどですね。「もうちょっと葵ちゃんっぽく」「空間的に広い感じに」とか、イメージ的なものが多いです。
井上 「ランドリー」も大変だったよね? なんだっけ、「リュックサック」って言いながら練習したリズム。
コショージ・矢川 シャッフル?
井上 そうそう! それを感じて歌えるよう、ボイトレの先生に「リュックサック、リュックサックって頭の中で意識しながら歌うの」と教わったんです。「もっとリュックサック!」とか言われたり(笑)。それがすごい難しかった。

「ランドリー」
MV Director・Animator:大鳥
監督とアニメを担当した大鳥は、ヨルシカの「パレード」やアクアノートの「夕立とアンチノミー」なども手掛けたアニメーター。

10. 長い夜が明けて
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの約8ヵ月前にリリースされたシングル『SOUP』に収録されていた楽曲。
「悲しみの子供たち」と双璧をなすようなエモーショナルな楽曲で、「悲しみの子供たち」以上に西欧風にも聴こえる。
そして「悲しみの子供たち」と同じくらいに秀逸な作品で名曲。
本楽曲の概要に関しては、シングル『SOUP』の項も参照のこと。

11. 思い出くん
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
コショージメグミ作詞による詩の朗読。
以下、初回限定盤Bに付属された書籍に掲載されたアルバムコメントより、コショージメグミ本人による本作「思い出くん」についてのコメントを抜粋する。
「今回のポエトリーはある意味、聴く人のことを考えて作っているかもしれないです。鍵が4つあるんだけど、でもトビラは3つしかなくて、4つ目のトビラはどうなっているのか……私の中では4つ目のトビラがどういうものかはわかっているけど、聴いた人には自分が思う部屋を思い描いてくれたらいいなという思いがあるんですね。今までのポエトリーは聴く人に寄り添うというよりも表現にこだわって、『こういう話を書きたい』と考えて、せいぜい『聴いた人が好いてくれたらいいな』くらいの気持ちだったんですけど、今回はある意味『この曲は全部自分のことだ』と感じてほしいなと思っています」

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

yamada3desu
yamada3desu
@yamada3desu

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サクライケンタとは、作詞家・作曲家・編曲家・音楽プロデューサーであり、株式会社ekomsの代表取締役。彼が頭角を現したのは、いずこねこのプロデューサーとしてであり、その後はMaison book girlの総合プロデューサーとして活躍している。スティーヴ・ライヒなどの現代音楽家に影響を受け、ポピュラー音楽にその現代音楽をミックスさせた「現音ポップ」を提唱している。Maison book girlだけでなく、クマリデパートのプロデュースや開歌-かいか-、大森靖子との仕事などで知られている。

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