Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

以下、Fanplus Musicよりインタビューを引用。
こちらも上記2本のインタビュー同様、、本アルバムを聴く際の手助けになる内容となっている。

EMTG:今作は1曲目「ending」から始まって11曲目の「opening」で終わる構成になっています。プロデューサーのサクライケンタさんは曲についての説明はあまりしないそうですが、この終わりから始まって、始まりで終わることについてはそれぞれどう思いましたか?
コショージメグミ:このアルバムを通して聴いてみると、「ending」から始まって「sin morning」で朝が来て、「end of Summer dream」で夏が終わってみたいに、作品の中で始まりと終わりが繰り返されているから納得って感じです。
和田 輪:歌詞に闇とか嘘みたいなものが救いとして書かれているようなところがあって、♪君がくれた夜は、永遠に続いていく♪♪闇が助ける♪(「townscape」)とか。そこは、始まりが終わりだったり終わりが始まりにもなりうるし、闇が助けになりうるみたいなことなのかなって自分では解釈しました。終わって始まって「opening」で何かが終わるみたいな。
矢川 葵:最後の「opening」のポエトリーの中にも始まりと終わりがあって、私は最終的にはこのアルバムの次の作品に繋がるように最後が「opening」になったのかなって思いました。
井上 唯:私は終わりの始まりみたいなのは次に繋がるってところもあるんだろうけど、そこは楽観的な終わり方ではないなって感じがしました。
EMTG:1stアルバム『bath room』同様に、今作もインストから始まってポエトリーリーディングで終わっています。作品を通して聴いた感想を教えてください。
コショージ:6曲目のインスト(「int」)が11曲の中心にあるし、アルバムを象徴しているように感じましたね。この空白みたいなのがちょっと不安な気持ちになるんですけど、曲が終わりそうなところからまた開いていく感じもあったりして、私の中でこのアルバムはこの曲かなってすごく思っています。あと、通して聴くと寝ちゃうんですよ。疲れていると闇に落ちちゃうんです(笑)。
矢川:今までのブクガらしさを残しつつ、今まではあまりなかった爽やかなところもあるなって。振りでも「end of Summer dream」は、これまでやってなかったようなテンション高めの振りになっていたりするし、タイトルどおりブクガのイメージが広がった気がしました。
和田:前のシングルの「cloudy irony」(1stシングル「river」収録)は、パッと聴いて“あぁ、こういう曲か”っていうキャッチーさがあったと思うんですけど、アルバムは聴き込めば聴き込むほどいろんな音が聞こえてきたりとか、ここのリズムってこういうことだったんだとか良さが出て来る曲が多いなって思ったんですよ。だから、通して何度も聴き込んでもらうと面白いと思います。
井上:前のシングルから「cloudy irony」じゃなくて「karma」を入れてくるところとか、そういう選曲も含めてブクガらしいし、グループを象徴するようなアルバムが出来たなって思います。
EMTG:なるほど。聴いていて思ったのですが、いつも青や白という色が多い歌詞に、今作では赤が結構入っていますよね。そこは歌っていて気になりませんでしたか?
矢川:気になりました。私は2回ぐらい違う曲で赤って言っている気がするんですけど、サクライさんが違う色も感じ始めたのかな?(笑)。
和田:前も傷とか怪我みたいな歌詞から赤っぽい色は連想していたので、私は言われてみればって感じです。
EMTG:あと“部屋”というワードも今回多いなと思ったんですよ。調べてみても過去の作品ではそんなに多くは使われていなかったので。
和田:何かブクガは段々部屋の外に出て行っているっていう印象があるんです。なので世界が広がったことで部屋を部屋として呼ぶ必要が出て来たのかもしれないですね。今までは部屋の中だから部屋って言わなかったのかなって。
EMTG:なるほど。レコーディングについても聞きたいのですが、サクライさんがTwitterで“「townscape」は仮歌を入れるのすら練習した”と書いていましたけど。
和田:レコーディングはやばかったです。
コショージ:その「townscape」なんですけど、私が“あぁ、この曲はこういうクセで歌うんだ”って思ってサクライさんの仮歌どおりに歌ったら、「あ、それオレが必死になり過ぎて間違ったやつだから普通に歌って」って言われて(笑)。すごいクセで歌うなと思っていたら間違えだったって言う。
全員:(笑)
EMTG:サクライさんの仮歌はいつもどんな感じなんですか?
コショージ:粗削りな感じはあるんですけど、いつもはもうちょっとちゃんとした感じなんです。なので“新しいアルバムだからクセつけてきたな”みたいに思っちゃって(笑)。
矢川:サクライさんの仮歌はいつも割とたんたんとしていて、とりあえず音や言葉を切るところだけを目安にするって感じなので、“コレはめっちゃノッて歌うやん”て思ったら間違えていただけだった(笑)。
全員:(笑)
EMTG:コショージさんが書いているポエトリーリーディングの「opening」は、どんなイメージから出来上がった詩なんですか?
コショージ:これは希望のストーリーがテーマで書きました。いちばん最初に書いたのが最後の猫とおじいさんの会話で、そこから最初のほうを書いたんですけど、そういうセリフから書いて話を発展させていくことが結構多いんです。ひとつの感情みたいなものを書き出して、その後そこにいくまでのストーリーを作るみたいな。
EMTG:今回のテーマは希望ということですが、コショージさんがこれまで書いてきた詩には死や喪失感みたいなものが描かれていることが多い気がします。そこは意識していたりしますか?
コショージ:今回はサクライさんから希望のあるストーリーというテーマを言われたんです。でも実は毎回希望を持ってほしいって思いながら書いているんですよ。私は希望を説明するときに、絶望の中からしか希望は見えないんじゃないかと思っていて
EMTG:それが死や喪失感なんですね。
コショージ:そういうものを説明してわかってもらった上で、これが希望って書いたほうがわかりやすいんじゃないかなと思うんです。
EMTG:この詩に関して3人はどんな感想を持ちました?
和田・矢川・井上:いい話だねー。
全員:(笑)
矢川:レコーディングのときに唯ちゃんとコショージがふたりでマイクに立って、私と和田ちゃんが別のマイクに立ったのでふたりの顔は見えなかったんですけど、録りながら私ちょっと泣きそうになったんです(笑)。それで終わった後コショージを見たらコショージも自分で書いたのに泣きそうになっていて。
全員:(笑)
コショージ:自分で書いたから感情移入し過ぎて。
矢川:それで“いい話じゃない、私も泣きそうになったよ”って盛り上がった(笑)。
和田:いつも哲学的なのが多いから(頭を抱えてるポーズで)“うぅー”ってなるのが、今回は純粋に“良かったねー”って。
井上:出来上がったものを聴いても、今までのポエトリーリーディングは喋った文を途中で切られてサクライさんの音が入ったりしていたんですけど、今回はお話がメインな感じで聴きやすかったから泣けます。
EMTG:そんなアルバムをリリースしたあとはツアーがあって、5月には赤坂BLITZ公演があります。
井上:昨日からチケット販売のページを開いているんですけどね、ずっと「○」なの。(※取材は3月中旬)
全員:(笑)
和田:全然「△」にならない(笑)。
矢川:昨日とか1時間経つ度に“もう売れたかな?”って。
井上:“そろそろかな?”って。前回が即完だったからね。でも今回は大きい会場だしワンマンでツアーを回るのも初めてだし。
EMTG:そう言いつつWWW Xでの前回ワンマンの完売もそうですけど、メジャーデビュー以降お客さんが増えているという実感はあるんじゃないですか?
コショージ:そうですね。
和田:特典会とかで「今日二回目なんです」って言う人がいるといちばんうれしいですね。一回で終わらなかった人がいるって思って。
EMTG:では最後に、そんな動員を気にしている赤坂BLITZワンマンへの宣伝をしっかりしてもらって終わりましょうか。
コショージ:じゃあ、めっちゃ太字で(笑)。アルバム『image』を聴いてくれたらBLITZに絶対行きたくなると思うので、来れなくてもいいからとりあえずチケットを買ってほしい!
全員:(爆笑)
井上:サイアクだなー(笑)。
コショージ:いや、来られるかどうかはあとから考えてもらってね。
EMTG:リハなどはまだだと思いますが、何かBLITZでやってみたいこととかはないですか?
コショージ:あります!それ、昨日サクライさんに言ったら「いいねー」って言っていたので、当然ここではまだ書けないですけど、それも楽しみにしていてください。

出典: music.fanplus.co.jp

Maison book girl『image』コメント動画

2018年11月21日:『yume』

『yume』

01. fMRI_TEST#2
02. 言選り_
03. SIX
04. 狭い物語
05. MOVE
06. ボーイミーツガール
07. PAST
08. rooms_
09. MORE PAST
10. 十六歳_
11. NIGHTMARE
12. 影の電車
13. fMRI_TEST#3
14. 夢
15. ELUDE
16. レインコートと首の無い鳥
17. YUME
18. おかえりさよなら
19. GOOD NIGHT
20. 不思議な風船
21. fMRI_TEST#1

Blu-ray (完全生産限定盤のみ)
01. レインコートと首の無い鳥
02. bath room
03. faithlessness
04. end of Summer dream
05. townscape
06. sin morning
07. rooms
08. 言選り
09. 十六歳
10. lost AGE
11. karma
12. my cut
13. last scene
アンコール1
1. cloudy irony
2. snow irony
3. おかえりさよなら
アンコール2
1. 教室
2. レインコートと首の無い鳥

徳間ジャパンコミュニケーションズからポニーキャニオンへ移籍後の第一弾アルバム。
Blu-ray付 完全生産限定盤、アルバム楽曲インストCD付 LPサイズケース アマゾン完全生産限定盤、通常盤の3タイプがリリースされた。
ジャケットは共通。
Blu-ray付 完全生産限定盤には、2018年6月23日、東京・日本青年館ホールにて開催された5thワンマン・ライブ「tour final Solitude HOTEL5F」の模様がフルサイズで収録されているBlu-rayが付属されている。
アルバム楽曲インストCD付 LPサイズケース アマゾン完全生産限定盤には、全楽曲のインストゥルメンタルが収録されたCDが付属されており、LPサイズケースの仕様となっている。通販サイトアマゾンでの限定商品。

アルバム全体で一つの作品となるよう作成されたコンセプトアルバムで、作品全体で描かれているテーマは「夢」。
全21曲中、インストゥルメンタルが10曲あり、それらは歌入りの各楽曲を有機的にリンクさせる役割を担っている。
曲のタイトルの終わりに「_」が付けられている楽曲は、本作以前に既にリリースされたものであるが、本作の収録にあたりリアレンジを施されたことを示している。
また、「PAST」は「blue light」の、「MORE PAST」は「my cut」の新録ヴァージョンとなっている。
プロデューサーのサクライケンタは、今回のテーマ「夢」をモチーフにするため、京都大学で夢の研修をしている神谷之康先生の所に赴き、色々と話を聞いたり、実際に夢の実験をしている際の音声を借りて今回のレコーディングに使用したりしている。
このように、アーティスティックな内容を目指した作品であり、かつペダンティックにならずにポップな側面も共存したアルバムに仕上がっており、前作以上に歌唱力が向上したメンバーのヴォーカルも相まって、非常に優れたアルバムに仕上がっている。

●楽曲概説
1. fMRI_TEST#2
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバムのオープニングを飾るインストゥルメンタル。
「fMRI」とは、MRIを利用して、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つで「functional magnetic resonance imaging」の略。
この曲と、13曲目の「fMRI_TEST#3」、そしてアルバムのラストナンバーである「fMRI_TEST#1」では、前出の京都大学神谷之康先生から借りてきた夢の実験をしている際の実際の音声が使用されている。

2. 言選り_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2017年12月13日にリリースされたシングル『cotoeri』に収録されていた楽曲だが、イントロが4小節長くなっている。
cotoeriというAI(人工知能)とサクライケンタとの共同作業によって作成された歌詞をもつ楽曲で、意味を持つような持たないような、一種道筋のきっちりとしていない歌詞はある意味不条理であり、本アルバムの「夢」というテーマとも相まって、シングル収録時とは異なった意味合いを持つ楽曲となっている。
サビに関してはサクライケンタが独自で行なっている。
本楽曲の概要に関しては、シングル『cotoeri』の項も参照のこと。

3. SIX
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
ピアノとSEによるインストゥルメンタル。
前曲の「言選り_」が鍵の落ちる音で終了するが、本楽曲は前曲の続きのような厳かなピアノに、ドアに近づく足音とそのドアを開けるSEで始まる。
タイトルの「SIX」は、本アルバムのリリース直後に行われたワンマンライブ「Solitude Hotel 6F」の「6F」を指しているのかもしれない。

4. 狭い物語
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムで初めて登場する歌入りの新曲で、本アルバムからのリード曲でもある。
今までのMaison book girlのイメージは「青」がメインだったように思われるが、ここでは「赤」が支配している。
メンバー各自のヴォーカル力にエモーショナルな力強さが加わったように感じられ、特に最後のサビで聴かれる矢川葵のヴォーカルは絶品。
音数は意外と少なく、メロディもポップなのでスムーズに耳に入ってくるが、かなり難解な変拍子が使われている。
サクライケンタによると、この楽曲にはエレキ・ギターが使われているとのことだが、あまり表立って聴こえてはこない。

「狭い物語」
監督 : suzzken
共同監督 : 二宮ユーキ

5. MOVE
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
信号音で始まるインストゥルメンタル。
46秒と短い楽曲で、「狭い物語」と「ボーイミーツガール」のリンク役のような存在。
足音と共にその「ボーイミーツガール」につながっていく。

6. ボーイミーツガール
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
今までのMaison book girlにはなかった、飛び跳ねるような勢いのよいポップな楽曲で、変拍子は使用されていない。
ここでもエレキ・ギターが使われており、従来であればチェロの音色などが使用されていたようなフレーズを奏でていたり、ミュート気味にリズムを刻むなど、ここでも今までのMaison book girlにはなかった新機軸を聴くことができる。
また、出だしの歌パートは和田輪によるものだが、ここでも彼女は今までにない新しい歌唱を試している。

7. PAST
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
ピアノによるインストゥルメンタル。
「PAST」というタイトルではあるが、2017年4月日リリースのアルバム『image』に収録されていた「blue light」の伴奏ヴァージョンである。
ピアノは当時の大森靖子のバックでピアノを担当していたsugarbeansで、サクライケンタは「わざと下手に弾いてください」と依頼しているという。
ちなみにsugarbeansと共にサクライケンタもギターで当時の大森靖子のバックを務めている。
最後はせわしない足音の後にドアが軋む音で終わる。

8. rooms_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2017年7月19日にリリースされたシングル『412』に収録されていた楽曲で、イントロが10秒ほど追加されている。
前曲の軋むドアを開けた部屋がこの「room_」なのかもしれない。
本楽曲の概要に関しては、シングル『412』の項も参照のこと。

9. MORE PAST
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
ピアノの伴奏のみによる「my cut」の新録ヴァージョン。
2015年3月14日リリースのシングル『white』、及び2015年9月23日リリースのデビューアルバム『bath room』に収録されていた楽曲。
『white』や『bath room』の幼さの残るヴォーカルから比べると、ここでの情緒に満ちた、ささやくようでそれでも存在感を強く放っているヴォーカルは、わずか3年程の間で大きく成長したメンバーの歌唱力を聴き取ることができる。
ヴォーカルがオフ気味にレコーディングされているのも、淡い、あるいは脆い、それでも「そこに確かにある」といった風景を映し出しているようで、本アルバムの「夢」というテーマと合致していると思わせてくれる。
ここでのピアノも「PAST」と同じくsugarbeans。
また、「PAST」の原曲である「blue light」の初出が2017年、本楽曲の原曲である「my cut」の初出が2015年であり、「PAST」よりもより古いので「MORE PAST」というタイトルが付けられたものと想像できる。
最後には古いアナログレコードのノイズ音で締めくくられる。

10. 十六歳_
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2017年12月13日にリリースされたシングル『cotoeri』に収録されていた楽曲で、イントロの心臓の鼓動のような音がシングルよりも長く収録されている。
本楽曲の概要に関しては、シングル『cotoeri』の項も参照のこと。

11. NIGHTMARE
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
インストゥルメンタル。
タイトルを直訳すると「悪夢」となる。
電車の音は次の「影の電車」への伏線となっている。

12. 影の電車
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
これも従来のMaison book girlにはあまり見られなかった、歌謡曲テイストの強い楽曲。
サビのメロディはとてもキャッチー。
最後は「夢」のように、唐突に次の「fMRI_TEST#3」で断ち切られる。

13. fMRI_TEST#3
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
オープニングの「fMRI_TEST#2」と同じく、夢の実験をしている際の実際の音声が使用されている。
前曲の「影の電車」を唐突に断ち切るように始まり、次の「夢」にはシームレスに流れ込んでいく。

14. 夢
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの表題曲と言える楽曲で、前曲の「fMRI_TEST#3」とはシームレスにつながっている。
非常に面白い制作過程があるので、以下にサクライケンタのインタビューをそのまま引用する。
「今回、14曲目が“夢”というタイトルなんですけど、京都大学で夢のことを研究している神谷之康さんという方がいて、その方に話を聞きに行って作ってるんです。実は、わりと具体的なところまで踏み込んでいて。1曲目と、最後の“fMRI(_TEST#1)”は、夢の実験をしているときの実際の音声をお借りして、使ったりしていて。14曲目の“夢”に関しては、夢を見ているときの脳波を左右で鳴ってるハンドクラップの強弱、ベロシティにして、変な感じで音が強くなったり弱くなったりしてるんですけど、まさにあれは夢を見ているときの脳の動きで。だから、聴いていると本当に夢を見てる感じになるんじゃないか、と思って。ちょっと迷い込んだ感じになる、というか」
ここでいう「ベロシティ」は音の強弱のことである。
スケールの大きなゆったりとしたバラードであり、サビではかなり難解な変拍子が使われており、サクライケンタによれば「"僕拍子"です。気持ち良く作ったらこうなりました」とのこと。
これだけの曲をリリースすることが出来るのも、各メンバーの歌唱力の向上があってのことであり、ここでの各メンバーのヴォーカルにはコーラス、ソロ共に目を見張るものがある。
最後は「fMRI_TEST」の音と、何かをこすりつけるような音で終わる。

「夢」
監督:suzzken
共同監督:二宮ユーキ
DVCAM撮影:稲垣謙一
本MVに登場する映像は、サクライケンタの詩世界によく登場する5つのモチーフ"鳥"、"神社"、"扉"、"ベッド"、"鍵"を被験者(メンバー)に見せ、その脳活動の情報から再構成した過程を映し出したものとのこと。
各メンバーは被験者として実際に眠り、夢を見ている。

15. ELUDE
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2018年6月20日にリリースされたシングル『elude』と同じタイトルを持つ曲だが、シングル『elude』にはこのタイトルの楽曲は収録されていない。
鳥のさえずりと雨だれの音、摩擦音のようなノイズ、そしてカメラのシャッター音からなるインストゥルメンタルで、いずれのSEも次の「レインコートと首の無い鳥」への伏線となっている。
本アルバムの中では最も収録時間の長いインストゥルメンタルになっている。

16. レインコートと首の無い鳥
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2018年6月20日にリリースされたシングル『elude』に収録されていた楽曲。
本楽曲の概要に関しては、シングル『elude』の項を参照のこと。

17. YUME
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
本アルバムの表題曲であるインストゥルメンタル。
前曲の「レインコートと首の無い鳥」を引きずるように雨の音で始まり、そんな雨の中からモールスのような信号音と共にメンバーのコーラスが聞こえてくる。
このコーラスは次の曲「おかえりさよなら」の一部を逆回転させたもの。
この逆回転の手法は2017年7月19日にリリースされたシングル『412』に収録されている詩の朗読「a-shi-ta」でも使用されている。
雨の音は次の「おかえりさよなら」のイントロへとシームレスに流れていく。

18. おかえりさよなら
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
2018年6月20日にリリースされたシングル『elude』に収録されていた楽曲。
本楽曲の概要に関しては、シングル『elude』の項を参照のこと。

19. GOOD NIGHT
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
オルゴールで奏でられている子守歌のようなインストゥルメンタル。
バックからゴソゴソと色々な音が聞こえてくるが、それが何を意味しているのかは不明。
「夢」をテーマにしたアルバムの終盤で「おやすみなさい」と告げられるのはどういうことなのだろう。
今までの「夢」は白昼夢だったのか。
あるいは「夢」の中で「夢」を見ているような重層的な世界の話なのか。

20. 不思議な風船
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
恒例となった、コショージメグミ作詞による詩の朗読。
メンバーの朗読の声に比べてバックの演奏の音量が大きく、耳をそばだてないと何が語られているかよく分からない作りになっている。
勿論、これは意図的な仕掛けなのだろう。
ミュート気味の小さな鐘を叩いたような音がシーケンスに乱打されているようなバックの演奏は時として恐怖すら感じさせる。

21. fMRI_TEST#1
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
アルバムのオープニングと13曲目に位置されている「fMRI」のTEST#1。
ラストにTEST#1が収められている、ということはここから物語が始まり、アルバムのオープニングであるTEST#2に続くということになる。
聴き手はこの「夢」という無限に続くループに閉じ込められたことになる。
サクライケンタはメンバーに対しても多くのことを語らないという。
ましてや各楽曲やアルバムのコンセプトの解説などはしない。
各メンバー、そして聴き手のそれぞれが自分なりの解釈をする。
「悪夢」だろうが「吉夢」だろうが、それがこのアルバムに対する正しい対処の仕方なのだろう。

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、ダ・ヴィンチ ニュースよりサクライケンタのインタビューを引用。
いわゆるコンセプトアルバム的な存在である本作品に対するプロデューサーとしてのビジョンやこだわり、本作品を作り上げたメンバーへの思いなどが語られている。
また、ここではサクライケンタのインタビューのみを引用するが、下の「ブクガの“自己紹介”」「ブクガ、進化の理由」からサイトに飛べば、メンバーへのインタビューも閲覧可能。

ddnavi.com

ddnavi.com

考えれば考えるほど、確かにむかついてたかもしれない
──メジャー2ndアルバムの『yume』、すさまじい力作が完成しましたね。
サクライ:ありがとうございます。ちょっと1周するのが長いアルバムなんですけど。今の時代、アルバムで60分を超えるのってけっこう長めなんですよね。最近、短めの曲が多かったりするので、聴くのが大変なのかなあ、と思っていて。
──ひとりのリスナーとしては、完全にサクライさんの思惑にハマってる感じですね。最後の曲と1曲目がシームレスになっているから、気づいたら何周もさせられてます(笑)。
サクライ:気づいたら元に戻ってる(笑)。よかったです、嬉しいですね。
──サクライさんは以前、ご自身のことを完璧主義者であるとおっしゃってたことがあって。でも、このアルバムについてはさすがに満足しているのではなかろうか、と思ったんですけども。
サクライ:なるほど(笑)。前作のアルバム以降にシングルを3枚出していてその曲を入れたい、プラス新しい曲たちを入れたい、ということを、アルバムのリリースにあたって考えて。3枚のシングルの楽曲がけっこう硬いというか、尖っているし個性があるので、「どうやったらうまくまとめられるのかな」って思ってました。そこで、前々からブクガの詞のモチーフにもよく出てきている「夢」をタイトルにしよう、と思って。
──完成したときにまず思ったことってなんでしたか?
サクライ:えっとね……「もう聴きたくない」と思いました(笑)。
──ははは。
サクライ:けっこう、ミックスが大変で。それはいつものことなんですけど、このアルバムって1周通してミックスチェックしたい感じのアルバムじゃないですか。エンジニアさんと「ここ直したい」とか、曲のつなぎを相談しつつ、そのたびに1時間集中して聴いてたので、終わったときは「もう聴かなくていい」みたいな(笑)。ただ、やれるだけのことは詰め込めた、というか。全曲のミックスが終わって、マスタリング段階でチェックするときにもう一回ミックスに戻ったり、けっこう突き詰めてやりましたね。
──メジャー1stアルバム『image』ができた当時、サクライさんは「死にかけながら作った」と言ってました。それを思い出したときに『yume』の制作でサクライさんは1回死んだんじゃないかと(笑)。
サクライ:そうですね(笑)。『image』のときは、今回よりも曲のストックがなかったんです。今回は新規曲もけっこうあるんですけど、テーマである「夢」のことを考えてましたね。『image』は真ん中に10分のインストが入っていて、わりと自分の中ではシンプルな構成だったんですけど、今回は全部つながってるので、構成もすごく考えました。
──実際、67分1曲のイメージがありますね。
サクライ:そうなんですよ。そのイメージで作りたくて。
──ある意味、アルバム単位で音を聴く行為自体が珍しい今、かなりチャレンジングなことをしてますよね。ただ、毎回そうなんですけど、サクライさんの音楽で選び取られた手法には必ず理由があるし、「俺がこうしたい」だけでは絶対にない。たとえば、よく言われる変拍子を使った楽曲を作るのはなぜか。それは、サクライケンタが作る音楽を最もポップに聴かせられる手段だからである、という。
サクライ:はい、そうですね。夢というテーマに関しては、昔からやりたかったことでもあるんですけど、Maison book girlの曲を使いながらどういうアルバムを作ったら表現できるのか、を考えました。もちろん死にそうになりながら作ったんですけど、完成したときに自分の中で安心感があって。全体を通して聴いたときに、あたたかさというか――曲自体は冷たかったりするんですけど、全体を通すと生々しいあたたかさが感じられるアルバムができたんじゃないかな、と思います。どの曲も、自分から自然と出てくるものを大切にしていて。音って、空気の振動じゃないですか。その場の空気が変わる感じのアルバムができたと思います。でも、実際どうですか? このアルバム、大丈夫ですかね。
──最高ですよ。
サクライ:よかったです。僕も、昨日通しで一回聴いたんですけど、ミックスの直後よりは気持ちよく聴けて。自分の中で、時間が経過するにつれて、だんだん「納得のいくものが作れた」っていう思いが強くなっていくんじゃないかな、という感覚があります。
──このアルバムの制作に向かうモチベーションの部分の話をしたいんですけども。ひとつは、以前から思い描いていた「夢」というコンセプトですよね。それともうひとつ、これはいちリスナーの感想だけど、「サクライケンタはいい加減むかついてたんじゃないか?」と思いまして。
サクライ:なるほど。それは何に対して?
──ブクガの音楽はとてもいいものであるし、もっと広く届くべきだと思います。それは、サクライさんの願いでもあると思うんですけど。
サクライ:そうですね。
──広く聴かれるために、自分が満足できるものだけを作っても意味がない。その点で、ブクガの音楽は十分に普遍的である。でも、そのアウトプットに現実は追いついていないですよね。
サクライ:うんうん、そうですね。
──それはもちろんリスナーのせいではないし、メンバーのせいでもないし、サクライさんのせいでもない。ただ、今がそうである、というだけ。でも、思い描いてる状況とは確実に違う。少なくとも、このアルバムのリリース前にブクガが置かれている状況はそういうものであって。で、サクライさんにしてみれば今のままでいいはずがない。そこで、このアルバムに執念を持って取り組めた、制作にものすごく打ち込めた背景には、サクライさんのむかつきがあったんじゃないか、と。
サクライ:それはいつもあるといえばありますけど、確かに今回はけっこうありましたね(笑)。
──たぶん、サクライさんはずーっとむかついてるんですよ。で、いい加減むかついたから、この『yume』ができあがったんじゃないですか。
サクライ:確かに。「いい加減にしろ!」「さすがにわかってくれ」みたいな感じなんですかね(笑)。真面目に自分の気持ちとエネルギーを使ったら、さすがにもうちょっと外側に広がってくれるんじゃないか、とは思いますよね。曲の細かい話をすると、“狭い物語”と“ボーイミーツガール”の2曲にはエレキギターが入っているんですけど。
──ほう。
サクライ:昔はがっつり使ってたんですけど。エレキギターって、入れたら音がすごくまとまるんですよ。めっちゃ楽なんです。今、世間にあふれてる音楽の中で、エレキギターが入ってないポップスの曲を探すほうが難しい。僕は、簡単に曲がまとまるエレキギターを使うのは甘えだと思ってたんですね。でも、今回のアルバムを作り始める際に、さっきおっしゃった「むかつく」に似た感情で、「これはエレキギター入れよう」と思って。もちろん、絶対にちゃんと意味がある形で、ですけど、やっぱり耳心地がいいのはわかっているし、みんなその音を聴き慣れてるわけで、耳馴染みのいいものを心地いいと感じると思うので、入れてみようと思ったんですよね。逆に、「その感じを利用してやろう」みたいなところもあって。本来、エレキギターがなくてもアレンジは全然できるんですけど、自分の中で「エレキギターなしでもカッコいい曲は作れる」という自信がついたので、だったら無理にそこに囚われる必要もないのかな、と。それは自分の中では大きな決断だったというか。たぶんそういう、むかつき的なことを含みつつ、「これでいいんか?」みたいな感じで(笑)。
──(笑)おお、だいぶむかついてますね。
サクライ:はい、そうですね(笑)。わかりやすくて流行ってる音楽って、だいたいエレキギターがビャーッて鳴ってるじゃないですか。「誰がやってもできるでしょ?」みたいな。
──エレキギターを使わずにいい曲を作るのも、ある意味こだわりとしては異質だとは思うんですけど、今回は「曲のためだったら、そのこだわりも要らないわ」とジャッジしたわけですね。
サクライ:そうです、そうです。曲のため、というか。そのおかげで誰かに聴いてもらえるようになったりするなら、ということですね。ちゃんと必要なところにだけ必要な音色を入れているので、意味がある使い方ができたかな、と思います。けど、考えれば考えるほど、確かにむかついてたかもしれないです。アルバムに入ってるシングル曲の制作期間から含めて、けっこうむかついてたかも(笑)。そうでなかったら、“レインコートと首の無い鳥”みたいな曲は出てこないと思います。
──別の言葉で言うと、このアルバムからは気迫を感じるんですよね。いろんな人が聴けるものを作れている手応えは、ここ数枚のシングルで感じてたんじゃないかな、と。だけど思うほど伝わってなかったんだとしたら、その状況をある種覆すような気迫がこもっているというか。
サクライ:嬉しいです。今回、14曲目が“夢”というタイトルなんですけど、京都大学で夢のことを研究している神谷之康さんという方がいて、その方に話を聞きに行って作ってるんです。実は、わりと具体的なところまで踏み込んでいて。1曲目と、最後の“fMRI(_TEST#1)”は、夢の実験をしているときの実際の音声をお借りして、使ったりしていて。14曲目の“夢”に関しては、夢を見ているときの脳波を左右で鳴ってるハンドクラップの強弱、ベロシティにして、変な感じで音が強くなったり弱くなったりしてるんですけど、まさにあれは夢を見ているときの脳の動きで。だから、聴いていると本当に夢を見てる感じになるんじゃないか、と思って。ちょっと迷い込んだ感じになる、というか。
話が若干飛んじゃうんですけど、夢って調べれば調べるほど面白くて。よくアニメとかでタイムリープってあるじゃないですか。あれって、オカルトかもしれないけど、経験した人がいっぱいいたりして。で、タイムリープで過去に戻ったりしたときって、100%夢が絡んでるんですよ。明晰夢みたいなものを見て、そっちに意識が取り込まれてそのまま過去に戻った、みたいな話があって、自分の中ではテーマとして単純に面白いな、と思っていて。このアルバムも、行ったり来たりする感じ、過去に戻ったり場所を移動したり、夢を見てる感覚を味わってもらえるんじゃないかな、と思います。

出典: ddnavi.com

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

ちゃんとメンバーと僕とで階段を上っていって、曲自体の強度が増していった
──「サクライケンタ、いい加減むかついてた説」とともに、このアルバムの何がすごいかというと、今まで以上にクリエイションが自由になってる、ということで。「夢」をコンセプトに掲げて、インタールードを挟みながら21曲をシームレスにつなげていく、1枚の物語として描くのは、字面だけ見ると敷居が高いものに見える。にもかかわらず、サクライさんの曲が持つポピュラリティ、普遍性は、このアルバムにおいて俄然増している。普遍性と自由なクリエイション、このふたつがすごく高いレベルで融合したアルバムである、そこがすごいと思うんです。
サクライ:嬉しいですね。成長したかもしれないです。あと、聴いていただけるとすぐにわかると思うんですけど、メンバーの歌がうまくなったこともあって。新しい曲を作るたびにメンバーの成長も見られたので、「もっとこういうアプローチも通用するんじゃないか」という感じで重ねていったというか。ちゃんとメンバーと僕とで階段を上っていって、曲自体の強度が増していった感じはありますね。
──実際、彼女たちの実力の向上は、このアルバムのクリエイティブをより自由にした最大の要素のひとつだと思います。たとえば、あるフレーズが浮かびました、今までなら「これは歌えないか」って諦めてたことを、どんどん曲にぶち込めるようになった、というか。
サクライ:そうそう、それはあります。制限が減ったのかもしれない。レコーディングの際に、キーが高いメロディがあって「ここまで出るかわからないけど、実はこういうメロディもあるからちょっと歌ってみてくれる?」みたいな感じでやったら、意外と普通に出たりして。以前は絶対出なかったような部分が出たりして、それを採用することはけっこうありましたね。歌の自由度が増した部分はすごくあるし、レコーディングでも、以前に比べて頼もしくなったなあ、と思います。
──メンバーのインタビューをしていて印象的だったのが、「自分がブクガなんだ」的な話で。自分が、自分たちがブクガであって、他の誰でもない。そこに対して自信を持っているし、この場所を守りたいとも思っている。自分が出す表現がブクガの表現として正しいんだ、という自信を感じました。
サクライ:そうですね。メンバーも、できあがったものを聴いて自信がついたり、1曲ずつできていくごとに、それぞれの曲が階段になっていってるというか。自信につながって、さらによくなっていった印象はありました。
──このアルバムの場合、彼女たちが鍛錬して実力をつけたこともありつつ、今まで以上の力を出さないと説得力が宿らない曲が数多くあって、そこに追いつくために頑張った結果がよいものになった、というか。曲自体が、あやふやを許さない感じがあるなあ、と思いますし。
サクライ:確かに。説得力がないと伝わらないようなメロディや歌詞は、多いかもしれないですね。
──当初のブクガって、サクライさんの曲に不安定な歌が乗ってる、そこが面白かったと思うんですよ。でも、今はただ乗ってるわけではなくて。曲が歌と重なってひとつの塊、有機体になってますよね。
サクライ:そうですね。曲の一部として存在してます。必要不可欠だし、代わりがないというか。「他の人が歌ってもそれでいいや」ではなくて、あの4人がやっているからこそ意味を成している、形になっているんじゃないかな、と思いますね。歌がよかったら、メロディもよく聞こえたり、言葉が伝わりやすかったりするので、そこは聴いていて単純に嬉しかったです。
──今回の『yume』は、もとから頭にあったコンセプトを具現化しつつ楽曲の普遍性が増している1枚である、というのは先ほどお話した通りなんですけど、サクライさん的にも、「ブクガって、こういうことなのかな」っていう確かな感触を得られたんじゃないですか。
サクライ:はい。もともと僕は、音数が少なくて、必要なものだけがある曲を作るのが好きで。でも、たとえばインディーズ時代の『bath room』とかは、歌が頼りないからエレキギターを入れないと音楽として成立しなかったんですよね。だけど歌が頼りになることによって、さらに音数を減らせるようになったし、ピアノ1本でも聴いていられるし。そうなると、足し算や引き算ができるようになるし、曲作りの幅が広がっていくわけで。Maison book girlでできることの幅が広がった気がします。
──歌詞の面でも、いくつか象徴的だな、と思った曲があります。まずは“レインコートと首の無い鳥”なんですけど、ブクガの歌詞って出口は示されていない、だけど閉塞もしていない世界だな、と感じていて。それと、ほぼ必ずと言っていいほど部屋のモチーフが出てきますよね。外に何かイヤなものがあっても、部屋の中は誰かに害されたりしない、居心地のいい場所であるという。その点で言うと、“レインコート~”の歌詞は部屋の中ではあるけれども、部屋の中だけじゃない感じがあるんですよね。アルバムが開けたアウトプットになる流れが形になって現れ始めたのは、この曲なんじゃないかな、と。
サクライ:そうですね。けっこう、この曲を書いたあたりから、「もっと壊してやろう」じゃないですけど、そんな感じはありました。音の面でも、それはちょっと出てると思います。
──部屋の中から見える明るいものは今までも歌詞の中で描かれていたと思うんですけど、視点が外に移ったのは、わりと大きな違いなんじゃないですか。
サクライ:なるほど、確かに。言われてみればそうかもしれないです。
──逆に、改めて『yume』の収録曲の歌詞を読んでいて思ったのは、「よくこんな同じモチーフを繰り返し使って歌にできるなあ」ということだったんですけど(笑)。
サクライ:(笑)それ、自分でも思います。改めて見てみると、同じモチーフがいっぱい出てくるし。そういう意味でも、やっぱり根底にあるのは一緒のものなんですよね。それと、アルバム全体で1曲、という意味合いもあって。1曲というか、ひと塊というか。ここに入ってる曲たちが、全部同じ人が見ている夢の可能性は高いですよね。もちろん、絶対ではないですけど。
──夢の中の話という前提で、ついに居場所が部屋ではなくなった曲がふたつありますよね。“ボーイミーツガール”と“影の電車”。「うわっ、めっちゃ外にいる!」って思いました(笑)。
サクライ:ははは、なるほど。
──ずっと、歌詞の主人公たちは部屋に庇護されてたじゃないですか。そうではない場所に立ってるなあ、と。こじつけかもしれないけど、「言い訳ができない普遍性」は、特に超ポップな“ボーイミーツガール”と“影の電車”に現れているような気がするんです。
サクライ:そうですね、自分の中では超ポップです。その2曲は、今までにないくらいすごくポップ。なんでしょうね、「外堀埋めてやろう」みたいな感じ(笑)。アレンジ面でも、2曲とも音数はすごく少ないんですけど、その音数とボーカルの中でポップな空気感を出せたのは、自分にとってもいい経験になったし、「これでちゃんと成立するんだ」という自信にもなりました。
──以前、サクライさんは歌詞について「行き止まりっぽく見えてるところに光がある、常にそう考えている」というような話をしてましたけど。行き止まりのところに見えている光のちょっと先が、今話してもらった2曲なのかな、という気もします。
サクライ:そうですね。ちょっと移動したりしているのかもしれない。だけどもしかしたら、部屋があったとして、その部屋の外に出たと思ったら、外にもうちょっと大きな部屋があったのかもしれない、とも思ってたりします。
──なるほど。あるいは、外に出たと思ったけど夢だった、とか。
サクライ:そうですね。
──「夢」というコンセプトを入れたことで、今後さらなる広がりがイメージできますよね。
サクライ:そうですね。このアルバムがきっかけで、Maison book girlを好きになってくれる人、初めて聴く人がいっぱいいたら嬉しいです。
──このアルバム以降のブクガはどうなっていくのか、サクライさんのビジョンを教えてください。
サクライ:Maison book girlは、ちゃんとした音楽を作っている集団であって。僕からしたら、4人がいないとできないことなので、世間からもちゃんとそういう目で見られたいですね。色目なしで、素直に見てもらえたらいいな、と思います。

出典: ddnavi.com

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、音楽ナタリーよりサクライケンタと各メンバーの「個人面談」を引用。
プロデューサーであるサクライケンタと、各メンバーが1対1で向き合うことにより、各メンバーの本音やサクライケンタに対する思い、本作品への感想など、三者三様の面談となっており、非常に興味深い内容となっている。

左からコショージメグミ、サクライケンタ。

ちゃんとしてくださいよ!
サクライケンタ コショージとはブクガについてけっこうしゃべるよね。ワンマンのセットリストとか演出のことを相談し合ったり。昨日も次のワンマンについて1時間くらいしゃべってた気がする。普段の対バンイベントとかでもコショージがセットリストを考えてたりするんですよ。
コショージメグミ そうですね。
サクライ コショージは今どういう気持ちでブクガをやっているのかな?
コショージ 何それ! と言うか、その質問は逆にサクライさんが答えるべきじゃないですか? 私はブクガしかやってないけど、サクライさんはいろいろ手を付けてますよね? 大森(靖子)さんのバックバンドもだし、クマリデパートもだし……と思ったらZOCも始まったし。
サクライ ZOCは今のところ曲は作ってないけど。
コショージ きっとやりそうですよね。少なくとも編曲くらいはやるんじゃないですか。あ、二丁魁(二丁目の魁カミングアウト)もやってるじゃないですか!
サクライ やってるね。
コショージ だからこっちのセリフじゃん。どういう気持ちでブクガをやってるんすか?
サクライ ブクガは当初から「自分が一番やりたいことをやる場所」という意識が強いかな。
コショージ と言うことは?
サクライ 本体。それがなかったらほかも成り立たない、みたいなところはある。
コショージ だったらもうちょっとさあ……こないだのレコーディングのときも「大森さんのリハとブクガの作曲が重なりすぎてタクシーで意識失ったわ」とか言ってて。知らねーよって(笑)。ちゃんとしてくださいよ!
サクライ がんばります。
コショージ あはは!(笑) 私からサクライさんに言うことってなると、こういう話になっちゃうんですよね。
──実際サクライさんは忙しそうだし、もうちょっとブクガのことを見てほしいなという気持ちがある?
コショージ みんな思ってると思いますよ。
サクライ そうなのかな……。
コショージ いろいろやりすぎて、いつも進行がギリギリじゃないですか。ブクガを見れてないのは絶対あると思うんですよ。
サクライ すごい不信感(笑)。そんなことはない。それは誤解です。
コショージ そんなこと言っても行動が伴わないと意味がないんでね。クマリと君ラジ(君の隣のラジかるん)のツーマン観に行ってブクガのライブに来ないとかさ、ブクガ主催イベントの1発目に来ないで大森さんの生誕祭に出演しちゃうとかさ。
サクライ あれはたまたまかぶった。
コショージ たまたまじゃないでしょ。ブクガの主催イベントとかぶっちゃってるのに自分への出演オファーに「OKです」って言っちゃうのは。
サクライ それは……すいませんでした。
コショージ 素直(笑)。
サクライ でも本当にね、比べるわけではないけれど、ブクガには一番思い入れがある。二丁魁はミキティー(本物)のものだし、クマリに関してはむしろ自分っぽくなくしていったほうがいいと思っていて。ブクガは曲を作るエネルギーが一番かかる。そのくらいの思いで作っているんですよ。
コショージ そうなんですか。

振り上げた拳を下ろしました
──今回のアルバムはものすごい出来じゃないですか。それはきっと、サクライさんが大森さんのバンドで全国を回ったりとか、ほかのアイドルに作家モードで曲を作ったりしなかったらできなかったものなんですよ。
サクライ それはマジである。大森さんのバンドでは自分が作っていない曲をバンドで演奏することがあるじゃん。そこで自分にない引き出しを学ぶことがたくさんあって、それがブクガにも影響を与えてる。
コショージ 去年ブクガが「TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)」に出たときに、サクライさんはほぼ同じ日程でやってた「ロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)」に大森さんのバンドで出てたんですよ。その日の夜、私はいろんなアイドルを観たあとだったので、サクライさんに「ブクガにはライブの一体感が足りてないと思う」って言ったんです。そしたらサクライさんもロッキンでいろいろ観て同じことを感じていたみたいで。ブクガの突き放した感じのライブは、フェスに出ると浮いてしまうんです。サクライさんがそれに気付いたのは大森さんのライブに出ていたからだっていうのは理解しているんですけど。
サクライ けど?
コショージ 大森さんの誕生日なのは最初からわかってるのにブクガの主催イベントの一発目をかぶせて、大森さんのほうに行っちゃうとか! しかも、アルバムの曲もまだできてないっていうのに。そういうのはマジよくない。ブクガのスケジュール見てます?
サクライ 見てる見てる見てる。
コショージ 何回も言うってことは見てないわ。見てないときに言うやつだわー。
サクライ すごい見てるよ。毎日メンバーのこと考えてるよ。1人30分ずつくらい。それで睡眠時間が2時間くらい減ってるから。
コショージ へー(笑)。それ、私は理解したけどほかのメンバーにも伝えてくださいね。
──こういうことは普段話さない?
コショージ 話さないし、そもそも会わない。
サクライ 制作期間はけっこう会うけど。
コショージ 会ったとしても歌を録るときだけなので、レコーディングの話しかしない。
──そのわりに、アルバムに収録された新曲を聴いて、曲の理解度とか歌の表現が一気に進化していると感じました。
サクライ それは僕も思ってます。アルバム用に録った新曲と、それ以前のシングルの曲を比べたときに、新曲のほうが全然よくなっていて。半年前と比べてみても、今だったらもっとよく録れるかなと思ったりするんですよ。成長の速度が早いんじゃないかと思いました。それについてはどう?
コショージ 確かに新しい曲を聴いたら歌がうまくなってる気がしたんですけど、ミックスでいい感じにしてもらったって聞いて、「そうだったんだー」って(笑)。
サクライ いや、ミックスの前段階の歌が変わった。声の出し方がうまくなっていて、1人ずつの声が一層際立っているんだよ。
コショージ 今回のアルバムは私もけっこういいと思います。
サクライ 「けっこう」って何(笑)。
コショージ うちらにはそれまでのサクライさんに対して「曲できるのおっそいなー」みたいなマイナスイメージがあったんですよ。だから生半可なものを出されたら殴りかかるところだったんですけど、いい曲揃いだったので、振り上げた拳を下ろしました。
サクライ よかった。許してもらった。
コショージ ホントにギリギリですよ? ギリギリですからね! でも、ということはですよ? 私たちみたいに負の感情を持ってない人が聴いたら「すごくいいアルバム」ってことですよ?

いや、要経過観察です
──「コショージさんはどういう気持ちでMaison book girlをやっているのか」っていう質問の返事を聞いてなかったですね。どうでしょう?
コショージ ブクガを通して、自分がライブの構成を考えたり、詩を考えたりするのが好きだっていうのがわかりました。もし私がブクガじゃなくてほかのアイドルさんだったら、セトリとか詩とかを自分から発信することはないと思う。私はある意味サクライさんに近いんだと思う。
──アルバムにもコショージさんが書いたポエトリーリーディング「不思議な風船」が収録されていますが、サクライさんはコショージさんの書く詩についてはどう考えているんですか?
サクライ いつも面白いなと思ってます。自分では書けない感じでもありますし。
コショージ あざっす!
──書いた詩についてコショージさんからサクライさんに説明することはあるんですか?
サクライ ないですね。でも「わかるわかる」って感じることはあります。ブクガを始めるときから、コショージとは好きな世界観がわりと似ているから、認識のズレはないんですよね。今回のアルバムでもコショージが「これ足したほうがいいかな」って悩んでたら、「それはわかりやすくなりすぎるからやめたほうがいい」とか言ったりして。
コショージ メンバーみんなに読んでもらって、意味がわかったか聞くと「ちょっとわかんない」って言われるんですよ。でも「これはこういう意味なんだよ」って伝えるとわかってもらえるから、ということは足したほうがいいのかなって思ったんです。それでサクライさんに聞いてみたら「なくていいよ、わかるよ」って言ってくれて。もしサクライさんがそう言ってくれなかったらたぶん足したんですよ。いつもは「みんながわかる詩を書かないと」なんて思ったりはしないんですけど、今回は「どうせ書くならみんなにわかってほしい」と思っていたので。
サクライ 足さなくて正解だと思う。全体のバランスを考えてもちょうどいい。
コショージ 舞台の演出でもそういうことありますよね。「こういう演出でやろう」ってなったときに、私とサクライさんにとっては普通のことなのに、周りの人たちからしたらなんか違う、みたいな。
サクライ 僕ら2人にはどうしてそうなるのかわからないんですよ。でも、最終的に決めるのは僕なんですけどね(笑)。
コショージ もし私たちがバラバラにやってたら意見が周りに掻き消されてますよね。「普通じゃないんだ、じゃあみんなに合わせるよ」ってなっちゃってたと思う。
サクライ なので、頼りにしてます。
コショージ 私も。サクライさんを使ってやりたいことをやれてるので。
──丸く収まってめでたしめでたしということで。
コショージ いや、要経過観察です(笑)。

出典: natalie.mu

左から和田輪、サクライケンタ。

和田がブクガのメンバーじゃなくても好きになってくれるんじゃないかな
サクライ アルバムを通して聴いたときにどういう印象を受けた?
和田輪 今回のと比べると昔の音源は頭がパーで歌っていたから、「これまでのを全部録り直したい」っていう気持ちになりました。
サクライ なるほどなるほど。歌は最近よくなっているのが明らかにわかる。
和田 アルバムだとまとめて聴けるから特にわかりますよね。だから曲名もトラックも変わってますけど、今回「my cut」を録り直せたのはよかったです(「MORE PAST」と改題して新たに収録)。
サクライ アルバムのテーマが夢なので、それに沿うように作り直しました。このアルバムでブクガを知る人が聴いたら、けっこう衝撃を受けるんじゃないかなと思っていて。例えば和田がブクガのメンバーじゃなくてこれを聴いたとしたら、和田は好きになってくれるんじゃないかなと思う。
和田 そう思います。今回のアルバム好きですよ。リスナー的な目線で聴いたりしてます。
サクライ 和田はもとから歌を歌ったりするのが好きで。言い方が難しいんですけど、メンバーの中でも音楽好きが聴くような音楽を聴く人なんですよ。そういう面で、和田が本当に好きなものにわりと近付けているんじゃないかなと思っていて。
和田 そうですね。
サクライ どの曲が一番好き?
和田 「夢」かなあ。
サクライ ああ。和田はそんな感じがする。「夢」はサビだけ変なんだよね。
和田 そうそう、入りは耳あたりがいいというか、スッと入っていける感じなんですけど、サビで「おお」ってなりました。いい曲ですね。
サクライ ありがとうございます。あの曲に関しては音の面でいろいろやってはいるんですけど、曲としては優しいところと強いところ……エモさみたいなものをうまく表現できたのかなとは思っていて。
和田 Aメロとサビで歌い方が違うのはこの曲が顕著ですよね。最初の部分、レコーディングのときに私の歌い方はけっこう直されたじゃないですか。でも、上がったものを聴いたら確かにこっちがいいなって思いました。
サクライ 僕の仮歌だとニュアンスがわからないもんね。
和田 自分が出せる声の中では仮歌に寄せたつもりだったんですけどね。全体の雰囲気を見れば直してもらって正解でした。

やっぱり私は間違えてなかった
サクライ アルバム用に録った歌は全員本当によくなっていて。歌録りにいつもより時間をかけた気がする。
和田 たぶん今までは、NGテイクの中からOKテイクを探すのに必死だったんですけど、今はある程度歌いこなせることを前提にしてる気がします。みんながいろんな声色を出せるようになったから。
サクライ それはある。メンバーが歌えるようになってきたから、欲しがりになっちゃって。前だったらOKにしてたテイクでも「まだいけるんじゃないか」みたいな欲が出てきた。
和田 今回はそういうことがいっぱいあった気がします。「サクライさんはこっちのほうが好きって言うけど、私はあっちが好きです」みたいな意見の相違がけっこうありましたよね。「夢」の2番の「ビルの影」ってところとか。
サクライ それ、スタジオでは僕が選んだテイクにしてたんですけど、和田は別のテイクを推してたんですよね。「私はこっちがいい」って。
和田 どちらも譲らず(笑)。
サクライ それで家に持ち帰って聴いたら、何か違う気がしたんです。で、和田がいいって言ってたテイクにしてみたらしっくりきて。最終的にはそっちを選んだんですよね。
和田 やっぱりそうだったんだ。できあがりを聴いて「マイルドなほうにしたんだ」と思いました。やっぱり私は間違えてなかった(笑)。最終的に気が合ってよかったです。
──テクニカルな話は2人でけっこうするんですか?
サクライ しますね。振り付けのことで和田から連絡が来るんですよ。和田は拍子がわかる人なので、例えば7拍子の部分があったとして、4・3でリズムを取ったほうがいいのか、3・4のほうがいいのかみたいな質問が来たりします。
和田 私やサクライさんが何も言わずにミキティーに振り付けを全部任せたら、それはそれで面白いのができるとは思うんですけど、変拍子をある程度噛み砕かないと観ている人に伝わりにくいと思うので、そこは私が率先してやったほうがいいのかなと思ってます。
サクライ ミキティーの振り付けは自由で面白いんだけど、和田はそれをわかりやすくする役目ができている気がする。助かってます。

お互いに「もうちょっとやっていいのかな」合戦になってる
サクライ 今回のアルバムは、もし自分ではない誰かが出していたとしたら悔しいなって思うくらいの感じにできたかなと。
和田 私は文学的なことはあまりよくわからないので、歌詞もよくわかんないなって思っていたんですけど、今回みたいに医学的な要素を絡めたりするのはすごい面白い試みだなと思いました。
サクライ 今回、全体のテーマを「夢」に決めたときに、京都大学に行って、神谷之康さんっていう夢について研究している先生に話を聴いたり、研究データを貸してもらったりしたんです。クラップ音も、夢を見ているときの脳波を使ってベロシティをつけて、それを拍にはめていたりしていて。夢を見ているときの脳波の強弱がリアルに音で聞こえるようになっているんですよ。fMRI(MRIを利用して脳活動を調べる方法)の実験の音声ファイルをもらって曲に使ったり、実際の実験内容のテキストをもらって参考にしながら作ったんです。
和田 事実に基づいてるのがグッとくる。そういうのがツボなのですごく面白いと思いました。
サクライ ただ、そういうことをメンバーに説明しないんですよね。面倒くさいから。
和田 面倒くさいからなんだ。
サクライ 歌に集中してほしいから。だからマスタリング後にそういう背景を知らせることが多いよね。
和田 あと、録ったあとにアレンジが変わることもありますよね。「レインコートと首の無い鳥」で「冷たい朝」っていうところのビブラートがきれいに歌えたんですけど、完成した音源を聴いたらその部分はトラックが抜かれてたんですよ。「よっしゃ」ってなりました。
サクライ ミックスにはいつも時間をかけているけど、今回のアルバムはチェックが死ぬほど大変で、頭がおかしくなるかと思った。曲単位で調整しつつ、フルで聴いたときに気になるところを直すんだけど、収録時間が長いから、通してチェックしようと思うと1時間以上かかるので。和田は音楽的に細かいところまで聴いてるんじゃないかな。
和田 感情的な表現ができるメンバーはほかにもいるけど、サクライさんがせっかくこういう緻密なリズムの音楽を作っているから、私はそれを崩さない要員にならないとって思ってます。
サクライ ありがとうございます。
──歌の話に戻りますけど、今回のアルバムでは声が曲のパーツの1つという感じじゃなくて、歌が歌らしく存在していますよね。初期はパーツ的な考え方だったと思うんですよ。
サクライ それは本当にそうですね。
和田 恐る恐るちょっとずつ自分のテイストを出してみたら、「どうやらもっとやっていいらしい」と気付いた感じです。
サクライ 最近は和田もほかのメンバーも自分の歌い方を出せるようになっていて、それがいい感じの混ざり具合になっているなと。
和田 4人のユニゾンのバランスもいいですよね。
サクライ 4人のタイプがめちゃくちゃバラバラだから、ユニゾンでもそれぞれの声が聞こえる。
和田 4人が自我を出して歌い上げるようになるって、初期から想定してました?
サクライ そうなればいいなとは思っていたけど、正直「これ以上はうまくならないのかな」って不安に思うときはあった。でも、毎回レコーディングのたびによくなってるなって実感できるから、僕もいい刺激になっていい曲を作れると言うか。「次はあんなふうに歌ってもらおう」とか想像しやすくなるから。
和田 お互いに「もうちょっとやっていいのかな」合戦になってるのが、いい結果につながってますよね。

出典: natalie.mu

左から井上唯、サクライケンタ。

yamada3desu
yamada3desu
@yamada3desu

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