Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

以下、Fanplus Musicよりインタビューを引用。
2017年12月28日に行われたワンマンライブ「Solitude HOTEL 4F」以降の約半年間の活動を振り返ると同時に、本シングルの制作過程やMVの裏話、衣裳のコンセプトなどを語っている。

EMTG:去年の12月28日に観たワンマンライブ『Solitude HOTEL 4F』が衝撃でした。タイムリープっぽい設定を採り入れていて、演劇的でもありましたが、あれはみなさんもアイディアをいろいろ出したんですか?
矢川葵:やりたいことをなんとなく出しただけです。「ドアがあったらホテルっぽくてかっこよくないですか?」とか。
和田輪:あのライブが終わった後にいろんな意見があったんですけど、やってみてよかったなと思っています。
コショージメグミ:歌とダンスだけを届けるライブが怖いところもあるんですよね。プラスアルファの要素も加えて表現したら、よりいろんなことが伝えやすくなるのかなと。
EMTG:5月6日のVIVA LA ROCK EXTRA『ビバラポップ!』では、さいたまスーパーアリーナのステージに立ちましたけど、ああいう大舞台も似合うグループになってきていると思います。
コショージ:あの時はヤバかったですよ。他の出演者さん、すごい方々ばかりでしたから。
井上唯:花道なんて使ったことなかったですし。図面を事前に見て「21メートル」って知っていたんですけど、実際に会場に行って体感すると長かったですね。
EMTG:カオティック・スピードキングがバックを務めている生バンド編成のライブもどんどんかっこよくなってきていますし、最近のブクガはすごく力強いです。
矢川:ありがとうございます。でも、新しい曲の振り入れをする度に、打ちのめされているんですけど。
和田:ブクガの曲を歌って踊るのは、ずっと大変なんだと思います。多分、その時の私たちに合わせた大変な曲と振り付けをやり続けるんでしょうね。
井上:最終的にどうなるんだろうね? ポールダンスとかしだすの?
和田:ライブの度にポールを用意するの、大変だよ(笑)。
EMTG:(笑)5月はイギリスツアーもありましたが、現地のお客さんから良い反応をもらったらしいじゃないですか。
和田:お客さんが集まってくれたので、すごくホッとしました。
矢川:すごく不安だったんです。海外はカナダでライブをやったことがありますけど、また新しい場所でしたし。でも、ブクガのTシャツを着て待っていてくれている人もいて、嬉しかったです。
井上:YouTubeの動画とかでブクガのことを知ったお客さんもいたみたいですね。
和田:わたしたちのことを知らないお客さんの素直な反応を感じられたのも嬉しかったです。「rooms」の無音になるところで歓声が上がるのは、日本とは違っていて新鮮でしたね。
コショージ:「karma」もイギリスのお客さんの反応が良かったのを感じました。イギリスは、また行く気満々です。20ポンド残っているんですけど、まだ日本円に両替してないですから(笑)。
EMTG:(笑)ハプニングとかはなかったんですか?
コショージ:スモークマシンのトラブルで足元が見えないくらいなったことがありました。そのライブの最初の2曲くらいは、お客さんもスモークで何も見えなかったかもしれないです。
井上:私たちのライブ、ただでさえ照明が暗いのに(笑)。
コショージ:でも、ライブを観てくださった方が「MCを英語でした辺りから、お客さんが心を開いてステージを熱心に観てたよ」っておっしゃってくださって嬉しかったです。
井上:私たちのライブ、よくスモークマシンが壊れるんです。
和田:唯ちゃんは、よく携帯を壊すよね。
コショージ:一番壊すのは和田でしょ。
和田:物をよく壊すのはたしかに私だけど、いろんな装置を壊す磁場みたいなのを放っているのは多分、唯ちゃんだよ。
井上:そうなの?(笑)。

EMTG:(笑)では、ニューシングルのお話に入りましょう。「レインコートと首の無い鳥」は、ブクガならではの変拍子とミステリアスな雰囲気のサウンドが、すごく刺激的です。
和田:最初聴いた時は混乱したんですけど、何度も聴き込んでいく内に、カチッとハマる瞬間みたいなのが来ました。東京キネマ倶楽部のライブ(5月4日に行われた『Solitude HOTEL 4.9F』)で初披露して、終わった後の特典会で「すごい曲来たね!」って興奮気味に言ってくれるお客さんが何人もいたので嬉しかったです。
井上:私はブクガのメンバーだから「ポップな曲だなあ」って思うんですけど、みなさんはどうなんですかね?
EMTG:聴いているとワクワクします。心地よい違和感みたいなのがあって、何度も味わいたくなるのがブクガの音楽の不思議な魅力ですけど、この曲もまさにそういうものになっていると思います。
矢川:拍子の捉え方を教えてもらいながら歌ったり踊ったりしながら、私もいろんな発見をしています。「ここで鳴ってる音、かっこいいな」というのがたくさんありますから。
コショージ:イントロとアウトロで2人1組になる振り付けがあるんですけど、「首を刈られる人と刈る人」みたいな感じなんですよ(笑)。ライブではそこも見どころだと思います。
和田:タイミングを誤ると、たまにマイクで小突かれちゃう曲です(笑)。
井上:ライブで間違えないように、私たち、一生懸命頭の中で拍を数えています(笑)。
EMTG:(笑)衣装は、「忘れることを覚えた服」というコンセプトなんですよね?
コショージ:はい。特殊加工で、光が当たると千鳥格子模様が浮かび上がるんです。AIに一旦、千鳥格子模様を覚えさせて、それを忘れさせた途中で印刷したらしいです。
EMTG:今回の曲も、具体的なテーマとか意味に関しては、プロデューサーのサクライケンタさんからの説明はないですよね?
コショージ:今回もないです。でも、このシングルのタイトルの『elude』は「逃れる」という意味ですし、この衣装も「忘れることを覚えた服」ですし、そういうものからいろいろイメージがふくらんでいます。2曲目の「おかえりさよなら」も「レインコートと首の無い鳥」と繋がるものがあるなと感じていますね。
EMTG:その2曲からイメージしたものを表現したのが、コショージさんが詩を書いたポエトリーリーディングの「教室」?
コショージ:はい。これは今までのポエトリーリーディングの詩とは作り方が違うんです。私が体験した本当の記憶なので。でも、「記憶」っていうものは完璧ではなくて、どこかで実際に起こったこととは違っているところもあると思うんです。だから記憶していることを描くというのは「100%創作」ではないけど、創作も入っているんでしょうね。人間の記憶って、そういうところがあるのが面白いと思っています。
EMTG:今おっしゃったことは、「レインコートと首の無い鳥」と「おかえりさよなら」のテーマと繋がりそうですね。
コショージ:そうなんです。
EMTG:サクライさんは、「その通り!」と明言しないと思いますが。
コショージ:はい(笑)。「教室」は、本当に何も思い浮かばなかったからこうなったというのもあるんですけど、ピンチに対していい形で切り返せたのかなと思っています。
EMTG:「教室」のサウンドに関しては、サクライさんとの間にどういうやり取りがありました?
コショージ:今回も私の詩に対してサクライさんが音をつけてくださったんですけど、この曲が今回のシングルのための締め切りのギリギリだったみたいなんです。だからサクライさんは出来上がってすぐにメールしてくれました。でも、それがちょうどイギリスに行く日だったんですよね。電車に乗ってから聴いて「今、聴きました。ここをこうした方がいいかなと思います」って連絡したら、「イギリス行くの今日なの?」と(笑)。
EMTG:(笑)今回もいろいろ想像しながら聴く楽しさがすごくある作品ですね。
井上:楽しんでいただけたらなによりです。サクライさんの頭の中にある世界をわかりやすくみなさんに届けるのが、私たちなのかなと思っています。
矢川:私たちがポップにしているのかも(笑)。
和田:私たちが解釈してみなさんに届ける過程があるから、いろんな人に伝わりやすいものにできているのかなと感じることがあります。今回の2曲目の「おかえりさよなら」は、特にわかりやすさがある曲なのかもしれないですね。
コショージ:「おかえりさよなら」は、仮歌が入ったものを聴いた時から、「これはライブの最後に歌うのが合っている曲だな」というのを感じました。レコーディングの時にサクライさんに、「これはライブの最後に手を振る曲ですよね」って言ったら、「そう!」って(笑)。
矢川:新しいタイプの曲だと思います。とがった面もあるのがブクガですけど、こういう面も出せるようになってきているんですよね。
井上:じっくり歌を聴いていただけるタイプの曲ですよね。でも、振り付けは特殊な感じが入ったものになっているので、ライブではその点もぜひ注目してください。
和田:王道にメロディアスな曲ですけど、イヤホンで聴いていたりすると、変わったリズムを採り入れている部分もあるんですよ。ちゃんとブクガの世界になっている中で、こういうメロディアスさも出すというのは、パフォーマンスがまだまだだった初期の私たちでは表現できなかったのかしれないです。成長したのかなと少し思っています。
コショージ:まだまだ自信がないところがあるんですけど、自信を持たなきゃいけない瞬間ってあると思うので、そういう時には自信を持てるようになっておきたいですね。
EMTG:このシングルがリリースされた直後は、ツアーファイナルの公演が日本青年館でありますが、どんな意気込みで臨みますか?
和田:ブクガのワンマンライブでは初めての椅子のあるホールの会場なので、ゆっくり観たい派のみなさんにもじっくり楽しんでいただけるものになると思います。
井上:ブクガは今年に入ってからいろんな経験をしたので、そういうことも活かしたいですね。
矢川:初めての会場なので当日になってみないとわからないこともあるんですけど、ホールなので音の広がりがきれいなんじゃないかなと、楽しみにしています。
コショージ:「びっくりさせたい」みたいな気持ちは変わらずに持ち続けているので、そういう何かも感じてもらえるんじゃないかなと思っています。

出典: music.fanplus.co.jp

Maison book girl『elude』コメント動画

2019年4月3日:『SOUP』

『SOUP』

1. 鯨工場
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場 (instrumental)
5. 長い夜が明けて (instrumental)
6. まんげつのよるに (instrumental)

Blu-ray (初回限定盤のみ)
01. fMRI_TEST#3
02. 夢
03. ELUDE
04. レインコートと首の無い鳥
05. YUME
06. おかえりさよなら
07. GOOD NIGHT
08. 不思議な風船
09. fMRI_TEST#1 #2
10. 言選り
11. SIX
12. 狭い物語
13. MOVE
14. ボーイミーツガール
15. PAST
16. rooms
17. MORE PAST
18. 十六歳
19. NIGHTMARE
20. 影の電車
21. fMRI_TEST#3
22. 夢

前作「elude」から約10ヶ月後にリリースされたポニーキャニオンからの第二弾シングル。
Blu-ray付 初回限定盤と通常盤の2タイプがリリースされた。
ジャケットは共通。
Blu-ray付 初回限定盤には、2018年12月16日、東京・ヒューリックホール東京にて開催された6thワンマン・ライブ「Solitude HOTEL 6F yume」の模様がフルサイズで収録されているBlu-rayが付属されている。

従来のジャケットと異なり、本作は初のイラストでのジャケットとなっており、タイトルの英語表記がすべて大文字なのも初めてである。
また、イラストとはいえ、メンバーの姿がジャケットに登場するのも初めてである。
イラストは「エイリアン9」「ゆめにっき」などの作品で知られるマンガ家・富沢ひとし。

●楽曲概説
1. 鯨工場
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
今まで以上にベースが楽曲を大きく支えているようなサウンドになっている楽曲。
それ以外のサウンド的にはいつものサクライケンタ節に聞こえるが、歌詞の内容は今までにはなかったような内容になっている。
下のインタビューでも触れられているが、例えば「僕らの唄はどこに届いているんだろう」「僕らの朝は次の唄て゛明けてゆくの」といった「僕ら」という主語は今までになかったし、この「僕ら」は明らかにMaison book girl自身のことを指している。
極めつけは「本の家の少女たち」という一文。
Maison book girlの「Maison」はフランス語で「家」を意味する。
つまり「Maison book girl」を直訳すると「本の家の少女たち」となるのだ。
自分たち自身のことを歌うことで、自分たちを解放し、新たなステージへと向かおうとしている、とも解釈できるのだ。
実際にサクライケンタから楽曲の設定に対する文章が送られてきたとのことだが、これは今までのサクライケンタからは予想できない行為である。
以下、インタビューから抜粋する。
コショージ ー楽曲的にもだし、詞の世界観も。今までのMaison book girlと大きく違うかなと思ったんです。確か「鯨工場」をレコーディングしているくらいに、サクライさんから謎の設定の文章が送られてきて。
矢川 ーあったね。
コショージ ー今までのMaison book girlは海よりもっと深いところにいてただ歌っていたんですけど、そこから外に気づき始めたみたいなことが書いてあって。
井上 ー「この曲はある意味ブクガのことを歌っているんだよ」みたいな。
コショージ ーそう。確かにブクガの歌だなと思いました。だから、〈誰か泣いているの。〉みたいな歌詞に「次に伝えたいことはこれなのかな」と思って。

歌詞にはまた、直近の作品であるアルバム『yume』からの繋がりが感じられる。
例えば「夢の中のあの話、本当は何処かで続いていた」「鯨の歌声が夢を崩してく」などがそれにあたる。
そして本シングルの次の収録曲である「長い夜が明けて」につながるような「僕らの朝は次の唄で明けてゆくの」というフレーズもある。
「本の中の少女たち」が気づかないままでいた「夢の中のあの話」は「鯨の歌声が夢を崩し」て「次の唄で開けていく」ことになる。
「長い夜」に見続けていた「yume」は終わり「夜が無い世界(「長い夜が明けて」の歌詞の一部)が始まる。
つまり『yume』で一つのステージに達したMaison book girlは、このシングルで新しいステージへと向かおうとしている、とも解釈できる。
第一楽章は『yume』で完結し、これから次のステージに飛び立とう、という決意表明にも受け取れる。

「鯨工場」

2. 長い夜が明けて
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
前曲の「鯨工場」の最後の歌詞に「僕らの朝は次の唄で明けてゆくの」とある。
そしてこの曲のタイトルが「長い夜が明けて」とあるように、前曲とこの楽曲は一つの物語になっていると考えることもできる。
「鯨工場」でも考察したように、これはMaison book girlの新しいステージへの第一歩となる楽曲になるのだろう。
「首のない鳥」を「神社の影」に「静かに佇ませて」おいて、その真逆である「首だけの鳥」が飛び立つのである。

アコーディオンを模したような音を使用したバックは、フランスのシャンソンのようでもあり、曲自体も今までのMaison book girlにはあまり見られなかった情緒的な楽曲である。
そしてなんといってもメンバーたちのヴォーカルがとてもエモーショナルに響いてくる。
今まで見られなかった楽曲、というよりも、こういう楽曲もこなせるくらいに歌唱力が向上してきた、と見るほうが正しいかもしれない。

3. まんげつのよるに
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
コショージメグミ作詞による詩の朗読。
どことなく宮沢賢治的な世界を感じる瞬間がある、切なくともとても優れた内容になっている。

以下、オフィシャルサイトよりインタビューを引用。
本シングル作成時の裏話などを知ることができる。
また、同じサイトにはプロデューサーのサクライケンタを含めた「2018年を振り返る」ロングインタビューも掲載されており、こちらも興味深い内容となっている。
下の「2018年を振り返る ロングインタビュー」から閲覧可能。

www.maisonbookgirl.com

ーーまずこのニューシングルに関して、タイトル『SOUP』と各楽曲のタイトルは別々に知らされたんでしょうか?
コショージ ー同時ぐらいだったと記憶しています。
矢川 ー曲のタイトルは「(仮)」と付いたものでしたけど、一緒に全部届いて。最初は『SOUP』の意味がよくわかっていなくて、「なんでスープなんだろう?」と思っていました。
コショージ ー『yume』公演(2018年12月16日にヒューリックホール東京で開催された『Solitude HOTEL 6F yume』)の最後に、このシングルの情報が解禁されたじゃないですか。そのときに海っぽい映像が流れていましたけど、そこから「次のテーマは海と生命」みたいな感じの話を聞いていて。
ーー普通に“スープ”というワードを耳にしたら、食事のほうのスープをイメージしますよね。でもそうではなくて、“生命の源=海”でスープにつながっていくわけですよね。収録曲の「鯨工場」というタイトルも、そこにつながっていく印象がありますし。曲タイトルに関しては、皆さんどう思いましたか?
和田 ーちょっと「えっ?」みたいな空気が流れました(笑)。
矢川 ーサクライ(ケンタ)さんに「本当に『鯨工場』なんですね?」と聞いたら「そう」としか返ってこなかったので、「あ、合っているんだ」と思って。
井上 ー確かに何かの間違いだと思ったよね(笑)。私は毎回タイトルで「ん?」って一回引っかかるんですけど、「鯨工場」は過去イチで引っかかったかもしれないです。
ーー実際に曲を聴いたときの感想はいかがでしたか?
和田 ーまず、「あ、4拍子だな」って思いました。
井上 ーすごくキャッチーで可愛くてわかりやすい曲で、寄せてきているなって。
コショージ ー「寄せてきている」?
井上 ーうん。「レインコートと首の無い鳥」みたいに尖りきっていたところから、ちょっと丸みを帯びてきたなと。
コショージ ーなるほど。私はわりとすんなり入り込んできたかな。そういう歌を歌いたかったというか、『yume』の次に出すシングルで何を伝えたいかをすんなり吐き出せている気がしました。
ーーそれは楽曲的に?
コショージ ー楽曲的にもだし、詞の世界観も。今までのMaison book girlと大きく違うかなと思ったんです。確か「鯨工場」をレコーディングしているくらいに、サクライさんから謎の設定の文章が送られてきて。
矢川 ーあったね。
コショージ ー今までのMaison book girlは海よりもっと深いところにいてただ歌っていたんですけど、そこから外に気づき始めたみたいなことが書いてあって。
井上 ー「この曲はある意味ブクガのことを歌っているんだよ」みたいな。
コショージ ーそう。確かにブクガの歌だなと思いました。だから、〈誰か泣いているの。〉みたいな歌詞に「次に伝えたいことはこれなのかな」と思って。
ーーなるほど。アルバム『yume』までは“閉じた”世界の中で自分たちを表現していたのに対し、この「鯨工場」はストレートなキャッチーさ含めてもっと解放していく感じがします。
和田 ー今まで内に向けて話していのが急に外に向いたようで、ある意味ベクトルが真逆だなと感じますし。だからなのか、私は「鯨工場」と「長い夜が明けて」を聴いて「これから私たち、どうなっちゃうんだろう?」って思いました。これからブクガがどう転がっていくのかっていう、このちょっとハラハラした感じというか、今までと違うことをやろうとしているぞ、みたいなことを聴いている人も感じてくれたら面白いんじゃないかなって。
ーーそれこそ、シングルのアートワークでも今までとは違ったことに挑戦していますものね。色彩も前作までとはまったく異なりますし。
井上 ー色が付いてますからね。

出典: www.maisonbookgirl.com

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。
Maison book girl結成当時のアーティスト写真と同じ場所で撮影されている。
また随所に当時のアーティスト写真が入り込んでいる。

book house girl(仮)改め、Maison book girlが結成当時のアーティスト写真(2014年)。
左から宗本花音里、矢川葵、井上唯、コショージメグミ。

ーーもしMaison book girlという生きものが存在するのだとしたら、いよいよ自我が芽生え始めたところかもしれませんし。そこで気づいた外に世界に対して扉をこじ開けようとしている、その入り口となるシングルなのかなと思いました。
和田 ー確かに入り口感は強いのですよね。
矢川 ー「鯨工場」の最後のサビに〈僕らの朝は次の唄で明けてゆくの。〉という歌詞があって、そこから2曲目のタイトルが「長い夜が明けて」。もうそのまんまだなって。サクライさんがやっと、人にまっすぐものを伝えたくなったのかなという気ががしました(笑)。
井上 ーでも私、そこにも「ん?」ってなりました。
和田 ー歌い出しでいきなりタイトルが出てくるしね。
井上 ーあと、「鯨工場」で新しめのことに挑戦していたのに、「長い夜が明けて」の仮歌が届いたときは「また同じこと言ってるわー。〈首のない〉とか言ってるわー。あんまり好きじゃないなー」と思ったんですよ(笑)。なので、最初は1番だけ聴いて閉じたりしたんですけど、でもみんなの歌が入ったら普通に好きな曲になりました。
ーー確かに「長い夜が明けて」の歌詞にはキーワードとなるものに、今までのブクガの作品の登場するものも含まれていますものね。それこそ〈首のない鳥〉だったり、逆に〈首だけの鳥〉も登場しますし。
井上 ーですよね?
ーーでも、実は「鯨工場」にも……。
コショージ ー〈体だけ無い鳥〉がありますし。「鯨工場」から「長い夜が明けて」はストーリー的につながっているなと私は思っていて。外の世界に気づいたブクガが今いる自分たちの世界から抜け出そう、外が気になってそっちに行ってみようみたいな曲だから、不安もあるけどそうと決めたらやるという覚悟もあるし、そんな2つの気持ちが同居しているいい曲だなと思います。
ーーそこに3曲目の「まんげつのよるに」が加わることで、より大きなストーリーがひとつ完結する感もありますし、3曲聴いたときに『SOUP』というタイトルの意味がより深く理解できるところもあるでしょうし。今回、歌モノ2曲を聴いて感じたことですが、皆さんの伝えようとする表現力、歌唱力が格段にアップしているなと。
矢川 ーやったー!
和田 ーめちゃめちゃうれしい(笑)。
ーーできることが皆さんの中で少しずつ広がってきているのかなと思って。
和田 ー確かにその実感はありますね。レコーディングに比べて今ライブでやっている表現というのはまた表現の仕方が違うと思うんですけど、サクライさんはそれを観たりすることで「こういうこともできるんだ、こういうことをしても大丈夫なんだ」といろいろ新しいことを与えてくれる。それによってできることも増えたし、やってOKなことも増えたし。今は本当に楽しいです。
矢川 ー『yume』の曲がすごく難しかったのに、今回はさらに難しいこと、具体的に言うとキーが今までよりちょっと高かったりとか、そういうことも増えていて。毎回「いける、いける」って言われながらレコーディングしています(笑)。でも、それ自体も期待の表れだと思うし、だったらできるようにならなくちゃって気持ちになって、モチベーションもどんどん高くなっていきますし。ちょうど昨日ライブがあったんですけど、久しぶりにやった曲があって。別に振り付けとか何も変えていないんですけど、ファンの人から「あれ、振り付けとか変えた?」って言われたんです。「何にもしてないよ?」って答えたんですけど、「どこか変えたのかなと思うぐらい良くなっていて、すごいびっくりした」って言葉はすごくうれしかったですね。きっとそれも、以前より成長できているからこそなのかな。
ーー実際、僕も先日イベントでのパフォーマンスを観たときに、『yume』以前の楽曲がリリース当時パフォーマンスしていた頃と違って感じられたんですよ。
井上 ー何が違うんですか?
ーーそれこそ表現の仕方だと思うんです。『yume』を経て何か掴んだものを自然と出せているのか、あるいは曲の理解が深まったところに技術が追いついたのか、いろんな要素があるとは思うんですけど、新曲を聴いているぐらいの気持ちで楽しめましたよ。
全員 ーへ〜。
ーーだから、ここ最近のライブは毎回新鮮なんです。もしかしたら、ブクガのライブって今が一番面白いタイミングなんじゃないかと思いましたし。
矢川 ーやった!(笑)
コショージ ーそれは素直にうれしいですね。

出典: www.maisonbookgirl.com

矢川葵

井上唯

ーーそこに加えて、特に今年に入ってからの井上さん、コショージさんの歌における成長が著しいなとも感じていて。
コショージ ーありがとうございます(笑)。最近いろんなアーティストさんのライブを観ると、歌ってめっちゃ大事だなと改めて思うことが多くて。今までちゃんと歌ってなかったわけではないんですけど、最近はより意識して歌うよう心がけています。
井上 ー私、最近やっと自分の声に興味が湧いてきたんです。今までずっと自分の声が好きじゃなかったけど、ちゃんと聞けるようになってきたのもあって、しっかり歌おうと無意識のうちに考えるようになったのかな。
コショージ ーでも、こんなこと言うのはあれですけど、「長い夜が明けて」の自分のボーカル、あんまり気に入ってなくて。だからライブでそこを取り返そうと思っているんです。気に入ってないとは言っても、そのときに自分が歌える限界があれだったので。なんていうか、自分の声が「木」っぽくて。
井上 ー木? ウッドの木?
コショージ ーうん。なんかこの曲は木じゃないなーと思って。
井上 ーえ、なに? どういうこと?
コショージ ー水の中に木はないじゃん。
矢川 ー属性の話?(笑)
井上 ーポケモンみたいなこと?
和田 ー(笑)。
コショージ ーなんかもっとこう、鉄っぽくというか……そういう気に入らなさがあって(笑)。でも、ライブで歌っていくうちに自分の納得のいくボーカルにできたらいいなと思っています。
ーーそういう気づき含めて、実は今って大きく変化する直前であって、その第一歩がこのシングルなのかなと。サクライさんの中で今後どういう流れを考えているかはわかりませんが、皆さんの中の成長を感じながらさらに違ったものが次々と出てくるのかもしれませんね。
和田 ーだから楽しみですよね。
井上 ーそういえば、レコーディングでも以前と比べて、サクライさんとめちゃめちゃ話して作るようになったと思います。
ーーどんなことを話すんですか?
井上 ー以前はちょっと音が外れていてもサクライさんは「直します」って感じで済ませていたんですけど、今は「このリズムにはこう歌いたい、機械で直すんじゃなくて自分がもっと正確に歌いたい」ということを私から伝えたり。こだわりが強くなってきたのかな。
ーー直そうと思えばいくらでも直せるけど、直さないでちゃんと歌ったものの良さは絶対にあるはずですし。そういう2曲のあとに、コショージさん作詞による「まんげつのよるに」が収録されています。
コショージ ー確か「鯨工場」を「長い夜が明けて」を聴く前には書いていて。次のシングルのコンセプトとして海と生命っていうのをもらっていたので、そこからなんとなく書き始めていたんです。以前私が出した詩集に「きのこから生まれたくらげ」というタイトルの詩が載っていて、そこに出てくるくらげがマッシュという名前だったんですよ。
和田 ーだからマッシュなんだ。
コショージ ーそう。自分の中で、くらげといえばマッシュで。でも、「まんげつのよるに」のくらげはきのこから生まれているからわからないですけどね(笑)。
井上 ー「まんげつのよるに」までを含めて、全体的に絵本みたいですよね。可愛いけど怖いみたいなところもあるし。
ーーそういった部分含め、これまでを引き継いでいるんだけど、またちょっと違う新鮮さがある。まさにアートワークでは象徴的ですし、イラストとはいえジャケットにメンバーがいること自体が初めてですから。
コショージ ーそうなんですよ!
ーーやっと姿を現しました。ここまで長かったですね。
矢川 ー長い夜が明けました(笑)。
和田 ー4年かあ。私が加入した当初は4人それぞれが普通に“普通の女の子”だったので、4人のパーソナルな世界を出しすぎるとブクガの世界が崩れる感じがあったんですけど、4年続けてきてやっと完全にMaison book girlになったからこそ、今できることなのかなというのは感じました。

出典: www.maisonbookgirl.com

和田輪

コショージメグミ

ーーそれぞれが何を発信したとしても、もう揺るがないものが確実にありますものね。それを聴き手側も「これがブクガだ」とちゃんと受け止めてくれるし。この4年というのはそれに必要な期間だったんでしょうね。
井上 ー土台を死ぬほどしっかり固めて、耐震性はバッチリみたいな。
和田 ー長い夜が明けていくことのインパクトがこんなに強いのは、4年間ずっとそれをやってきたからだなと思います。
ーー確実に今しかやれないことですものね、この表現って。そういう意味では、やっぱり『yume』でひとつ完結した感があるのかなと。
全員 ーあー、確かに。
ーーここから外に向けてというところ含めて“Maison book girl第2章”じゃないけど、そういう始まり感も今回のシングルにはある気がします。
コショージ ー確かに第2章感はありますね。
ーーだから、今からでも間に合いますよ感もすごくあるんですよ。「俺、『yume』新規だけど、今からなら『SOUP』から入っても間に合うよ?」みたいな。
矢川 ー確かに、まだ全然いけますよ。
ーーむしろウェルカムですと言ってるようなシングルですし。
和田 ー私、こないだ個人的に観に行ったライブで、3〜4年前にブクガを応援してくれていた人にたまたま話しかけてもらったんですね。そのときに「またライブに来てね?」と言ったら、「俺、オタ卒したんだよね」と返されてしまって。私たちは女性4人が歌って踊るという形態を取っているけど、こんなにいい音楽を表現しているのにオタクを辞めたら聴かれなくなるのかというのがすごいショックだったんです。今回のアーティスト写真って最初のアー写と合成したものになっているじゃないですか。だからこそ、あの頃聴いていた人にも新たな視点でブクガを見つけて感じてもらえたらうれしいなって思うんですよね。
コショージ ー特にブクガを聴く人たちには在宅と言われる方が多いらしくて。それって私たちには伝わらないことじゃないですか。実はスタッフさんから最近、通販でグッズがめちゃめちゃ売れているという話を聞いたんですけど、その中でもチェキ帳は売れないというんですよ。
ーーああ、在宅ファンはチェキを撮らないから必要ないと。
コショージ ーそう。それを聞いたら、もっとライブにも足を運んでほしいなという気持ちが強くなって。なので、今回のシングルでライブまで引きずり出したいなと思っています。
ーーこのシングルでブクガと一緒に外の世界に出て行きましょう!と。
矢川 ーそれだ(笑)。
井上 ー「一緒に出よう!」って(笑)。
ーーそれこそ今回のシングル初回限定盤には昨年末の『Solitude HOTEL 6F yume』公演がまるまる収録されたBlu-rayディスクが付きますし、これを観て「ライブに行ってみたい!」と思う人も絶対に少なくないと思いますよ。
井上 ー最近、Twitter上で「音楽が好きな人にブクガを薦めたらめっちゃ気に入ってくれたので、今度のライブに連れて行くんだ」っていう声をよく目にするので、そういうネットでつながりそうな層にも届いているんだなって思いました。
ーー昨年の『Solitude HOTEL 6F』3公演の評判を耳にした人から、4月の東京公演を楽しみにしているという声もよく聞きますよ。
コショージ ー本当ですか?
井上 ー私たちには届いてないですよ?(笑)
矢川 ー全然知らなかったよー(笑)。
ーーその評価に対する最初の答えが、3月後半の全国ツアーと4月の東京公演でひとつ出るんじゃないでしょうか。
井上 ーそうかもしれませんね。自分たちでも『Solitude HOTEL 6F』を乗り越えた今、なんでもかかってこい!ぐらいの勢いなので。
コショージ ーへー。
井上 ーいや、ウソウソ。ちょっと言い過ぎた(笑)。 他のメンバー (笑)。
井上 ーでも、あれはちょっとした修行だったから、わりともっとできる気がするので、私も楽しみです。

出典: www.maisonbookgirl.com

以下、以下、JUNGLE LIFEよりレビューを引用。
メンバー本人の口から本シングルの持っている意味合いや重要性が語られていて、興味深い内容となっている。

●昨年11月にメジャー2ndアルバム『yume』をリリース後に“Solitude HOTEL 6F”の“hiru”・“yoru”・“yume”という3公演を開催されたわけですが、そこで何か見えたものもあったのでしょうか?
和田:3公演それぞれで違うことをしたので、自分たちの得手不得手がよくわかったというか。個人的に“これからどこを伸ばせば良いのかな”という目標みたいなものが何となく見えましたね。
●今後の目標が見えたと。井上さんはどうでしたか?
井上:私は、達成感がすごくありました。全公演で違うことをやったので、覚えることがすごく多かったんですよ。特に“hiru”・“yoru”は、1日2公演でそれぞれ違うことをやったので大変で…。でもちょっと前だったら1公演でコンセプチュアルなことをやるというだけでもいっぱいいっぱいになっていたところが、今回はそれなりに心の余裕を持って色んなことを考えられたので、そこは積み重ねてきたことの結果だなと思いましたね。
●3公演とも違うことをやるとなると、確かに準備が大変そうですね。
コショージ:3公演がセットになっている感じで見せたいけど、“1公演ずつ観た人もちゃんと楽しめるように”ということも考えていて。そこをすごく意識するあまり、“hiru”・“yoru”公演の時は曲数をどうするかといったところでギリギリまで悩んでいたんです。その点、“yume”公演では“これ!”というものがあったので、すっきりできたというか。終わり良ければ全て良しではないけど、“yume”ではちゃんと見せたいものが見せられたかなと思っています。
●1本1本の内容にもこだわってできた。
矢川:3公演で色んなことをしたけれど、つながりもちゃんとあって。どれも『yume』というアルバムの曲を軸に表現した中で、色んな側面を見せられたかなと思っています。次にワンマンをやる時は、3公演でそれぞれ表現していたものを1公演の中で全て見せられれば、もっと良くなるかなと思っていて。次がすごく楽しみになる3公演でしたね。
●“yume”公演では、ほぼアルバム『yume』を再現するものだったわけですが。
和田:『yume』というアルバムは、それ自体で1つの完成した作品だったと思うんです。でもライブでは物を使ったり、ダンスや生歌で表現したりすることで、音源とはまた別の見せ方ができて。“こういう表現もできるようになったんだな”という実感が、自分の中ではありましたね。
井上:『yume』では曲間にインストも入っていたので、それをライブでどう表現するかというところも1つの見せ場だったと思うんです。“yume”ではステージにベッドを置いたり、バックにVJの映像を流したりしながら、音源とはまた違うものを見せられたんじゃないかなと思います。
●確かにインストがどうライブで表現されるのかは、気になるところでした。
矢川:インストに関してはライブのリハーサルで照明やVJの映像と一緒に流れているのを見て、“こういうイメージだったんだ!”と自分たちも新鮮な気持ちになりましたね。目で見てわかるイメージをちゃんとお客さんに見せられたことで、“yume”が終わってからもう一度アルバムを聴いた時にライブでの光景を思い出せるのも良いなと思いました。
●“yume”公演ではアルバムの曲順と違って「夢」から始まり、また最終的に「夢」に戻って終わるという流れのセットリストでしたよね。
コショージ:“yume”というタイトルが付いていたので、お客さんもアルバムの曲をやるだろうなと想像はしていたと思うんですよ。でも単にアルバムの曲を同じ順番でやるのはつまらないので、(実際のライブでは)アルバムの中盤から順番にやったんです。そのことに途中からお客さんが気付くという面白さもあったんじゃないかなって思います。
●最初と最後の「夢」は、実は構成が少し違ったわけですが。
コショージ:最後にやった「夢」ではラストのサビをループして歌ったんですけど、元々の「夢」とは違う歌詞だったんです。今まで出てきていなかった謎の歌詞を、ずっとループで歌い続けるという形で終わっていて。そこは今回のシングルにつなぐようなイメージでやりました。
●あの時点で、今回のシングル『SOUP』のことも考えていた?
コショージ:そうですね。今回のシングルの雰囲気は、その時点でもう決まっていたから。それを踏まえた上で、サクライ(ケンタ)さんに(「夢」のラストの新たな歌詞を)書いてもらいました。
●M-1「鯨工場」の“夢の中のあの話、本当は何処かで続いていた”という歌詞も、『yume』から続いていることを暗示しているというか…。
井上:ああ〜、本当ですね…!
●そこは気付いていなかったんですね(笑)。最初にこの曲を聴いた時の印象は、いかがでしたか?
矢川:私は前作の『yume』がすごく気に入っていたので、“こんなに良いアルバムができちゃったら、次はどうなるんだろう?”と思っていたんです。でも「鯨工場」は今までとまた違った雰囲気もありつつ、ブクガらしさは残っていて。“2019年もブクガをやっていくぞ”というサクライさんの気合いも感じられて、すごく良い曲だなと思いました。
井上:今までのブクガらしさもある曲だけど、次のストーリーに進んだ感じがして。第2章というか、新たな幕開けを感じましたね。
●今までにない感じもある。
矢川:歌詞(の表現)が今までよりもストレートになっていて、私たちのことを歌っているような曲になっているんです。
井上:実際に“ある意味、ブクガのことを歌っているんだよ”とサクライさんから言われたので、歌により感情が込めやすいところもありますね。
●“本の家の少女たち”というのは、まさにブクガのことですよね。
井上:本当にそうなっていますね。
和田:“今、ブクガが周りで話題になっているよ”とか人から又聞きすることはあるんですけど、(歌詞中の)“僕らの唄はどこに届いているんだろう”というのが本心だったりもするから。そういうことをお客さんの前で歌うというのは、今までにない経験なんです。そういった面でも“これから新しいことをやっていくんだろうな”と感じられるので、“始まりの曲だな”という印象がありました。
●新たな始まりを感じられる曲になっている。
和田:この曲だけにとどまらず、これから先また何かが始まりそうな予感を私は感じました。
矢川:今回のアーティスト写真も結成して最初に撮った場所と同じところで撮影したり、その時に着ていた衣装の写真がコラージュされていたりして。もう結成から5年目になるので“初心に返って、またスタートする”という意味も込められているのかなと感じました。
●なるほど。M-2「長い夜が明けて」も、「鯨工場」と世界観がつながっているように感じたのですが。
コショージ:「鯨工場」の最後で“僕らの朝は次の唄で明けてゆくの”と書かれていて、その次の曲が「長い夜が明けて」なので、1枚のシングルの中でもつながりをはっきり感じられるものになっていますね。
和田:私たち自身も「鯨工場」を先に聴いていて。“僕らの朝は次の唄で明けてゆくの”という歌詞を見ていたので、“次はいったいどんな曲を書いてくれるんだろう”と期待していたんです。
●まさにそこに出てくる“次の唄”が「長い夜が明けて」なんですね。
和田:だから(歌い出しで)“長い夜が明けてゆく”と書かれているのを見て嬉しかったのと同時に、最後に“夜が無い世界が始まってゆく”と書かれているので“今までとは全然違うことになっちゃうのかな…?”とソワソワする感じもあって。この曲をキッカケにして、“今後ブクガはどうなっていくのかな?”と今も考えています。
●ここからさらに変わっていく予感もある。
井上:「長い夜が明けて」は「鯨工場」とはまた違う曲調で、今までにはないものになっていて。でもちゃんとブクガの曲になっているんですよね。この前、ツアーの初日(※3/16@福岡DRUM SON)で初めてやったんですけど、“音源だけを聴いていた印象とライブを観た印象とでは、熱量が全然違うね”とスタッフの方も言ってくれたので、ライブ映えする曲なのかなと思っています。
●音源とライブでは、印象が違うかもしれないと。
矢川:単純に曲がすごく難しくて、今まで以上にレコーディングで苦戦したんですよ。サクライさんも“もっとできると思う”と励ましてくれたので、みんなで頑張って録って。完成した曲を聴いた時に、“すごくカッコ良くなったな”と思ったんです。でもライブでやっていく中でだんだん慣れてきて、もっと上手に歌えるようになっていくと思うから。これができたことで、また次に難しい曲が来ても挑戦できるだろうなと思えています。
●漫画家の富沢ひとしさんの描き下ろしによるジャケット写真も『yume』より明るいイメージになっていて、音源の開けた雰囲気と重なる気がします。
井上:そうですね。まさに夜が明けた感じで、また広がった1枚だと思います。サクライさんがジャケット写真のラフ画を見た時の感想として、“イメージにピッタリだった”とツイートしていて。サクライさんのイメージ的には、こういう感じなんだなと思いました。
●メンバー自身はジャケットを見て、どんなイメージを持ちましたか?
矢川:鯨のお腹的なものと工場と私たちっていうイメージですね。
和田:今回はイラストですけど、ジャケットに私たちの姿が出ているのは初めてのことで。4年間やってきた中でこれだけ作品を出してきても、まだ新しいことがどんどん出てきていることに希望をとても感じています。
●次に向けての期待感も増しているのでは?
井上:『yume』まではわりと色味が一貫していたんですけど、今回の『SOUP』ではもう少しイメージが変わった気がしていて。“じゃあ、次はどうなるんだろう?”と思っています。
矢川:毎回“良い曲ができたな。次の曲はどうなるんだろう?”と思っていても、また良い曲が来るという経験を繰り返していて。だから、“次もきっと大丈夫だろうな”と心のどこかで思っているんですよね。
●自分たちの想像や期待を超えたものが、次も来るだろうと。
コショージ:そんなに上から目線ではないですけどね(笑)。私たちが今回の曲をライブで完璧に表現することで、サクライさんの創作意欲を刺激したいという気持ちはあります。
●メンバーが進化することで、サクライさんの創作意欲も増していく。
和田:サクライさんは歌の面やライブの演出面でも“もっといけるやろ?”っていうマインドがある人なので、その高いハードルを超えるために私たちも頑張っていて。私たちが変わっていくことで、サクライさんにも“もっとこういう曲が書けるんじゃないか”とか“こういうこともできるんじゃないか”と考えてもらえると思うんです。そういう感じで、お互いに上へ上へと行けたら良いなと思っています。
●リリース後の4/14には“Solitude HOTEL 7F”公演も控えていますが、どんなライブになりそうですか?
コショージ:前回はアルバム『yume』を意識したライブだったので、今回は『SOUP』の鯨の壁を突き破るようなライブができたらと思っています。…って、“何を言っているんだ?”と思いますよね(笑)。
●そうですね(笑)。
コショージ:“この鳥はこっちには行けない”とか、そういう話をサクライさんとずっとしているんですよ。今言えるのは、そういうことだけですね。
矢川:いつも照明や映像の制作を担当してくれているhuezのとしくにさんという方が、Twitterで“今度のSolitude HOTEL 7Fもヤバいものになりそう”とつぶやいていて。きっとまたすごいことをやってくれるんだろうなと、私自身も期待しています。
コショージ:ライブをやるのは、自分たちなんだけどね(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
●どんなものになるか予測不能だけれど、とにかく面白いものになりそうな予感はします。
井上:ブクガのライブは私が今まで行ってきたライブとは全く違うものなので、本当に想像できないんですよ。“よくこんなことを思い付くな…”って、毎回思います。
和田:私たちを知ってくれている人の中には前回のワンマンを観てくれた人もいれば、対バンライブで観てくれた人や、まだ音源でしか聴いたことのない人だったり、色々いると思うんです。自分たちとしては、いつでも最新のライブが最高だと思いながらやっていて。“これまでのブクガよりも良いものが見せられるように”という気持ちで毎回ライブをしているので、ぜひ観に来て欲しいなと思います。

出典: www.jungle.ne.jp

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