Maison book girl(ブクガ)とは【徹底解説まとめ】

Maison book girlとは、2014年11月5日に結成された日本のアイドルグループ。作曲家・音楽プロデューサーのサクライケンタとBiSのメンバーであったコショージメグミを中心として誕生。サクライケンタの「現音ポップ」と称する変拍子を多用した楽曲をバックにコショージメグミが詞の朗読を行うというパフォーマンスを発展させた形といえる。一筋縄ではいかない「現音ポップ」に合わせてパフォーミングを行う、という独自の世界を持っている。2021年5月30日、活動終了が公表される。

「karma」
撮影・編集:田山百華

3. 14days
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
コショージメグミ作詞による詩の朗読。
「billboard JAPAN」のインタビューの中で、コショージメグミ本人がこの詩のイメージやアイデアを語っている。
以下、そのインタビューより抜粋。
--「14days」の作詞はコショージさんですよね。どういったイメージやアイデアから書いていったものなんですか?
コショージメグミ:サクライさんから「ポエトリー入れようと思うから、お願いしていいか?」って電話来たときに「「cloudy irony」と「karma」の世界観に繋がるようなものを書いてほしい。あんまり直接的な表現じゃないほうがいい」というお題だけもらって。それで書き始めたんですけど、シングルのタイトルが「river」だったから最初に川をイメージしたんです。川を「cloudy irony」と「karma」の中に登場させてみて、その川から始まるような物語を書いていった感じですね。
--それのテーマをなぜ「14days」にしたんですか?
コショージメグミ:最初は「30日間ぐらいにしようかな?」って思ったんですけど、それだとちょっと長いから「2週間ぐらいがこの話にはちょうどいいんじゃないか」と思って。10でも13でもなく15でもなく「14」っていう数字がなんとなくしっくり来たんですよね。で、物語の中に出てくる「……は」は元々「○○は」って特定した一人称があったんですけど、完成したときにそこは消えてて。でもそこは私の中でもたしかにそうだったんですよ。無くてもいいもの。「それは何なの?」っていう感じの話なんで、それがサクライさんは分かったのかな?って思って。なんとなく伝わったんじゃないかなと思ったんですけど。
--14日間の物語の中で、4日前に「目が覚めると……はいなくなっていた」、3日前に「……がどこにもない」、2日前に「……を探して部屋を出た」、1日前に「……はどこにもいない」ってなるじゃないですか。どんどん苦しくなっていく感覚を覚えたんですけど、あれは別に誰かが死んでしまうとかそういう悲しいストーリーを描こうとした訳ではない?
コショージメグミ:途中で視点が切り替わるんですけど、私的には「感情」と「温度」の話というか、感情さんと温度さんみたいな。詞の中にちょっと書いてる「寂しいの」「冷たいね」っていう言葉は一応それを象徴していて。「感情」は「温度」のことは分からないじゃないですか。感情って形がない。口もない。温度もどういうものなのか分かんない。でも感情を「感情」として形を作ったらどうなるのか。温度を「温度」として形を作ったらどうなるのか。っていう二人のただのやり取りで、そんなにツラいような話ではない。あくまで私の中ではですよ? でもたしかに怖い感じはある(笑)。
--このトラックでカウントダウンされていくとなおさら怖さは引き立ちますよね。あと、個人的には「これ、エヴァの欝モードのやつだ」って思いました。
コショージメグミ:ハハハハハ! たしかに「○日前」っていうのは『式日』(脚本・監督 庵野秀明)をイメージしました。で、この曲のレコーディングのときに「ここ、こういう感じで」ってサクライさんに言ったら「あ、エヴァいやつね」って。「エ、エヴァい? エヴァいって言葉めっちゃ良いじゃないですか! そう、エヴァいやつです!」ってなりました。

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、CINRA.NETよりインタビューを抜粋して引用。
サクライケンタとコショージメグミの2人のみのインタビューではあるが、Maison book girlのメジャーデビューまでの簡単な総括、及びサクライケンタによるメジャーデビューシングルの各楽曲のこれまた簡単な「役割」が語られていて、非常に興味深い内容になっている。

―結成から2年経って、メジャーデビューも果たしましたが、現状を振り返って、ここまでの活動をどう感じていますか?
サクライ:最近はメンバーもやっと実力がついてきたなと思っていて。11月にメジャーデビューしましたけど、自分の中ではブクガはまだインディーズのレベルだと思うんです。なので、これから本気を出します。
―まだまだ満足しているような感じではないと?
サクライ:全然満足してないですね。ライブひとつにしろ、演出にしろ、グッズにしろ、楽曲にしろ、もっとお金があれば、もっとこういうことをやりたいというアイデアがいくらでもあるんです。メジャーというフィールドで、それがうまく噛み合えば、表現したいものがもっとクリアに見せられると思うので、今後はその純度を上げたいです。
―やりたいことをさらにやるためのメジャーデビューというか。
サクライ:そうですね。
―コショージさんの2年の総括も聞かせてください。
コショージ:私は、その時その時に最大限のことをしてきたと思っているので、ここまでは100点満点です。でも、それを1000点とか、100万点とかにしていきたい。だから私もここからが本番だと思ってます。
―そのメジャーデビュー作は、どんな作品になりました?
コショージ:『river』という作品名なのですが、ひとつの川がつながっている世界でできた楽曲が詰まっている作品という感じです。リード曲の“cloudy irony”は、ここから先、晴れるのか雨が降って嵐が起きてしまうのかわからないような状態だけど、どこへでも行けるという、メジャーデビューを意識した楽曲だと思うので、それも踏まえて聴いてもらえるとうれしいです。
―サクライさんは、そういう意識で作ったんですか?
サクライ:“cloudy irony”は、そういうことを意識しました。ラジオなどいろんな媒体で流れる機会も増えるので、一聴でのわかりやすさは重視しています。自分の中では2曲目の“karma”のほうが好きなんですが難解さもある曲なので、まず“cloudy irony”を聴いてちょっと慣れていただいた状態で“karma”を聴いてもらえたらいいなと。
―“cloudy irony”はウォーミングアップ的な役割が。
サクライ:そうですね。それで3曲目にポエトリーリーディングの“14days”が入って、その3曲でひとつの作品と考えています。
コショージ:“cloudy irony”ももちろんですけど、ブクガの音楽を知らなくてもファッションを入り口に、どんどんブクガの世界観にハマってもらえたらうれしいです。

出典: www.cinra.net

左から矢川葵、井上唯、コショージメグミ、和田輪。

以下、billboard JAPANよりインタビューを引用。
デビュー2年目にしてメジャーデビューを果たしたMaison book girlのメンバーたちによる回想や4人のメンバー間の微妙な関係(非常にユニークで面白い会話が展開されている)、メジャーデビューシングルへのコメント、特にコショージメグミ自身による「14days」に対する自己解説などを知ることができる。

「目標は“闇堕ちしたPerfume”」と掲げていたら本家Perfumeの古巣である徳間ジャパンからメジャーデビューできちゃった件から、4人から見た各メンバーのキャラクター像、和田輪へのイジメ(?)問題、矢川葵の中に棲む魔物、コショージメグミが天才ともバカとも言われてきた真相、井上唯が受けた想定外の衝撃、生半可なアイドルが多い昨今におけるブクガの説得力、エヴァいメジャーデビューシングル、コショージにってのBiSとブクガ、そして発売日が被っている欅坂46へのライバル心(?)等、話題満載で語ってもらいました。ブクガ、相当面白いです。

「え!? マジで闇堕ちしたPerfumeじゃん!」って思って(笑)。
--今春のインタビュー(http://bit.ly/2fDDI65)で「目標は“闇堕ちしたPerfume”」と語っていましたが、その後、まさかのPerfumeの古巣である徳間ジャパンコミュニケーションズからメジャーデビュー決定。どんな気分でした?
矢川葵:お母さんにすぐ言いました。「Perfumeさんがメジャーデビューしたところだよ!」って。お母さんもそれで「えー!?」ってなってて(笑)。あと、1年前のワンマンライブが終わったあたりで「2年目はまたもうひとつ上へ行けるようになりたい」って思っていたので、それが具体的に何なのかまでは考えてなかったんですけど、こうして2年目で「メジャーデビューします!」ってなったときは「ちょっと大きめな階段上っちゃったな」って(笑)。三段飛ばしぐらいしたような気持ちになりました。でもすごくうれしいです。
コショージメグミ:私は「絶対メジャーデビューする」って思ってたんで、メジャーデビューも普通にアルバムが1枚出来たぐらいの気持ちかもしれないです。葵みたいに「三段飛ばしで嬉しい」とかじゃなく「ここからだな」って。ようやく最初の地点に来れたぐらいの気持ちです。
井上唯:私、Perfumeさんがメジャーデビューしたところって知らなかったんですけど、ファンの人から「Perfumeといっしょだよ!」って言われて「え!? マジで闇堕ちしたPerfumeじゃん!」って思って(笑)。
和田輪:Perfumeさんは、音楽を自発的に聴き始めた時期から聴いてて。小学生ぐらいのときに過去の曲を掘って聴いてたんですけど、そのあとにアーバンギャルドさんとかCAPSULEさんとかテクノポップを聴くようになっていたので、Perfumeさんは自分にとってルーツ的なところもあって。なので、同じところからメジャーデビューできたのはうれしい。
--そもそもなんで“闇堕ちしたPerfume”を目標に掲げていたんですか?
和田輪:あの頃は、自分たちがどういった完成形に向かっていけばいいのか分からない時期だったんですよ。それで例えば「セカオワとかどう?」とか言ってたよね(笑)?
コショージメグミ:「セカオワかな?」みたいな。
井上唯:分かりやすいお手本がなかったんですよ。
和田輪:私たちが目指すべきところがどこなのか分からなくて。
井上唯:でも「Perfume」って名前が出たときに、私的にしっくり来て。
--私達は結構Perfumeっぽいんじゃないかと。
一同:(笑)
--笑っちゃいましたね(笑)。そう思ったからしっくり来たんじゃないの?
井上唯:今世に出ている方々の中から探すとしたら「強いて言うならPerfume」って感じでしたね。ボイトレの先生とかに「世界観はセカオワとかじゃない?」って言われてたんですけど、最終的にPerfumeに辿り着きました。
和田輪:ブクガのライブにはPerfumeが好きな人も結構来るので。
コショージメグミ:カナダに結構いました、Perfumeファン。
井上唯:いた!
矢川葵:PerfumeのTシャツを着た人が結構来てくれました。
--徳間ジャパンからのメジャーデビューもそうですし、カナダ遠征もそうですし、ここに来てデカい動きが増えてますよね。カナダはなんで行くことになったんですか?
コショージメグミ:バンドが好きなカナダ人の方がいて、その方はアイドルにあんまり良い印象を持ってなかったんですよ。でも「ブクガを観てハマっちゃった」って言ってくれて、それで呼んでくれました。
和田輪:毎年日本のバンドを呼んでカナダでツアーをやってる人なんですけど。
コショージメグミ:それで10日間ぐらいいました。
矢川葵:カナダ旅行と言っても過言ではないぐらい楽しめました。ライブは4回ぐらいしかなかったんですけど、ずっと「楽しいね」って言ってました(笑)。
コショージメグミ:「帰りたくなーい」って。
井上唯:それぐらい良いところなんですよ、カナダ。行く前は「海外なんて行ったら死ぬ」と思ってたんですけど、いざ行ってみたら全然楽しかった!
--ブクガのライブはカナダでも評判は良かったんですか?
和田輪:想像していたよりはずっと良かったと思います。
コショージメグミ:カナダの新聞というか、フリーペーパー? にもブクガが載ったんですよ。あれ、なんだったんだろう? すごく大きく載せてくれて。いろんなアーティストと出演したイベントの記事のはずなんですけど、ブクガだけどーん!って。おそらくブクガを呼んでくれた方のプッシュがあったんだと。テレビ取材も来たんですよ。だからカナダのテレビにブクガが流れたんです。でもウチら英語喋れないから、インタビューなしでリハの映像だけだったんですけど(笑)。
--メジャーデビューまでの2年間、ブクガはどんな道程を辿ってきたなと思いますか?
コショージメグミ:コショージ的には、最初からずっと同じことをやってきた感じ。それが今「ブクガ独自の世界観」って言われるようになった。2年経ってみんなが「ブクガってこういう感じ」と認識し始めた。あと、これは結成当初に思ったんですけど、「コショージが好きなことをしていいんだなぁ」って。「こういう曲を歌いたい」って言ったらそういう曲が出来るし。そこから何も変わりなくここまで来た感じがします。
井上唯:私は、最初は何を目指しているのか全然分からなくて、歌もダンスも未経験だったし、何をどう頑張っていいか……頑張り方も分かんないし、本当に手探りな感じだったんですけど、いろんな方と出会って、ワンマン含めライブも重ねて、時間をかけてやっと私自身がブクガのことを分かったと思っていて、ようやくブクガを作っていける一員になった感じがします。だから最初の頃って写真見ても愛想悪いし「尖ってんなー」って感じなんですよ。それに比べたら丸くなったと思います(笑)。
コショージメグミ:ブクガの始動が決まった頃、私が出演していた舞台を観に来てくれたんですよ。でも挨拶しないんですよ。「しろよ!」と思いました(笑)。
井上唯:全然覚えてない。
コショージメグミ:多分緊張してたんだよね。恥ずかしがり屋さんなんですよ、唯がいちばん。でもそこからは変わったと思う。
--途中加入の和田さんはいかがでしょう?
和田輪:入った当時は、曲とかはすごく良いけど、このフィールドで、これをやっていくって、これからどうしたらいいのか分からなくて、すごく手探りでした。でも歌とかダンスとかパフォーマンスが、ブクガのことを何も知らない人がパッと見ても「形になってる」と思えるぐらいにやっとなれて、サクライさん(サクライケンタ/Maison book girlプロデューサー)とかコショージのやりたかったことをメンバーも理解して、やっと伝えられる段階になった。そしたらメンバーにやりたいことも出てきたし、やっと腑に落ちた感じがあったんですよね。だから「これからいっぱいやることあるぞ」って感じです。
--和田さんがブクガの新メンバーとして初めて登場したライブ(http://bit.ly/2fmeV8d)を観てるんですけど、結構異様な状況での「はじめまして」だったじゃないですか。
和田輪:(笑)
--みんなで泣きながら脱退するメンバーの衣装を切ってるし、脱退する子も寂しくなって「辞めたくない!」って泣きながら叫んでるし、そこに新メンバーとして「はじめまして、和田輪です」って出て行くのって……
井上唯:カオス!
--この状況の中で受け入れてくれるのか不安にはなりますよね(笑)。
和田輪:ファンの人たちもそうだったんですけど、ここ3人がしきりに「これから大丈夫かな? どうする? どうする?」って言ってるんですよ。「ごめんね、私で!」ってずっと思ってました(笑)。
--そこからどうやって馴染んでいったの?
一同:…………
--まだ馴染んでないの?
一同:(爆笑)
--さすがに馴染んだでしょ?
コショージメグミ:さすがにね(笑)。
和田輪:人見知りだから時間はかかりました。
井上唯:でもオーディションのときに初めて観たときから「歌うめぇ!」とは思ってました。あの中から新メンバーを選ぶなら、私だったら「和田しかいないな」って。キャラクター性も立ってたし。
矢川葵:私も人見知りなんで、これは和田ちゃんじゃなくてもそうだったんですけど、しばらくは「本当に信用して良い人なんだろうか?」っていう壁はあって。コショと唯ちゃんは最初からイジり倒してたんですけど、私は様子を見てましたね。でもだんだんと、面白いし、歌も上手いし、全然良い人だったので「信用してもいい!」ってなりました。
和田輪:コショージと唯ちゃんは「受け入れてくれてる」ということだったとは思うんですけど、入った直後にイジり倒してきてて、当時はすごく怖かったんです。ゴミ呼ばわりされてたんですよ! いじめっ子気質なんです、コショージは。
コショージメグミ:違うよ!「もし自分の体がゴミだったらどうする?」っていう話をしてたんだよ。

出典: www.billboard-japan.com

左から矢川葵、井上唯、コショージメグミ、和田輪。

コショージは左脳を使ってないんですよ。右脳ばっかりで生きてきたらしく
--そんな会話ある(笑)?
コショージメグミ:いや、1週間ぐらいみんなで長野で生活してたんですけど、本当にヒマで、話すこともなくって……
コショージメグミ:「体の一部がゴミのほうがいいか、全部がゴミがいいか、どっちがいい?」って聞いて、そしたら和田は「それは一部がいい」って。みたいな会話を普通にしていただけです。
和田輪:って本人は思ってるんですけど、こういうエピソードがいっぱいあるんですよ。
井上唯:私たちの性格的に誰かをイジるのは普通なんだけど、当時はまだ和田があんまり馴れてなかったんだろうね。
和田輪:それを把握したんでもう大丈夫なんですけど。
井上唯:打たれ強くなりました。
--何を「私たちのおかげです」感出してるんですか(笑)。
和田輪:だから当時は「葵ちゃん、天使!」って思ってました。
矢川葵:もし私が和田ちゃんの立場であんなイジられ方したら、多分3日で辞めてる(笑)。
コショージ&井上:そんなに!?
和田輪:イジめられてました。
コショージメグミ:思い出補正だ。
井上唯:楽しい思い出。
--無自覚そうな2人ですもんね。決して悪意とか悪気はなくイジってる。ただ、イジられる側からしたらしんどかったという。
和田輪:しんどかったですねー。
井上唯:だって、見るからにイジり甲斐あるじゃん。
一同:(笑)
--そんな当時の和田さんにとって天使だった矢川葵さん。「葵ちゃんこそアイドルだ」「かわいい!」といった声もよく耳にするんですが、自分ではこの2年間でどんなメンバーになれてるなと思いますか?
矢川葵:自分も「アイドル担当でいたい」と思って活動してきたので、そういう評価があるのはすごく嬉しいです。
コショージメグミ:葵の中には魔物が棲んでるんです。それが魅力。多分、葵がブクガじゃなくAKB48系にいたら普通だと思うんですよ。というか「暗い」ってなる。だけど、ブクガにいるから「可愛いアイドル担当」みたいな。
井上唯:その魔物がいるからブレない。
--その魔物の説明をもうちょっと具体的に……
コショージメグミ:ハハハハ! 魔物がかぶってるんですよ、矢川葵を。
--では、本性は魔物なの?
コショージメグミ:いや、違うな(笑)。魔物が棲んでる。
和田輪:性格が悪いとかそういうことじゃなくて……
矢川葵:根が暗いんですよ。
コショージメグミ:そういうことじゃない。強ぇ奴がいるんですよ。「倒せなそう」みたいな。大魔王みたいなやつがいて……
--『NARUTO』の九尾的なこと?
コショージメグミ:あー! でも会話はしてない!
--会話してたら本当にヤバい人だよ(笑)。
矢川葵:私はキャピキャピしたアイドルが好きで、本当はキャピキャピしたかったんですけど、実際に自分がアイドルになって、ブクガに入って、キャピキャピした他のアイドルさんを見ると、すごく憧れではあるけど、自分がそれをやったら途中で心折れてそうだなって思うから、ブクガに辿り着いてよかったと思っていて。だからサクライさんは私の魔物を見抜いたのかもしれない。サクライさんも闇を抱えてるから(笑)、多分そうなんじゃないかな。
--では、そんな御三方から見たコショージメグミはどう映ってるんでしょう?
和田輪:宇宙人。
井上唯:最近判明したんですけど、コショージは左脳を使ってないんですよ。右脳ばっかりで生きてきたらしくて……
和田輪:左手に対して右手の動きが悪いんですよ(笑)。
井上唯:これまでもいろいろあったんですよ。ちょっと物覚えが悪かったり、同じことを何遍も言ってきたり、ちょっと疑惑はあったんですけど、手の動きで左脳を使ってないことが判明して(笑)。
--大問題じゃないですか!
コショージメグミ:ハハハハハ!
井上唯:でもだからこそ右脳の世界が広がって、サクライさんが描く世界観もしっかり理解できるし、自らも独自の世界観を作っていける。
和田輪:計り知れない部分担当。右脳担当。Maison book girlという体の中の右脳がコショージ。
矢川葵:ボイトレの先生にも「この子はしょうがないから普通に戻そうとしちゃダメ。この子は可能性に懸けるしかない」って言われて(笑)。
コショージメグミ:昨日ずっと「右脳大魔王」って呼ばれてました。その先生から「右脳大魔王は……」みたいな。
和田輪:ボイトレの先生にも振付師のミキティーにも「コショージには触れないほうがいいよ。何を言っても無駄だから」って。その意味をこの2年間でやっと理解しました(笑)。
--コショージメグミが何故こうなのか、その理由が明らかになった訳ですね。答えは「左脳を使っていなかった」という。
井上唯:悪気があってこうなった訳じゃないんです。不真面目とかじゃなくて。
矢川葵:やる気がない訳でもない。
井上唯:ただ出来なかった。
一同:(笑)
--でも右脳ばかり使っているからこそブクガの独自の世界観も創造できている訳ですよね。まさにコショージメグミにとっての理想的なグループじゃないですか。
コショージメグミ:いろんな意味で理想的なグループにはなってると思います。今、生半可なアイドル多いじゃないですか。すぐ繋がっちゃったり、それですぐ辞めちゃったりするじゃないですか。そうなると「あんだけライブで熱く語っていたものは何だったんだろう?」って思うじゃないですか。説得力が無くなってしまう。でもブクガは説得力めっちゃあると思うんですよ。ある意味、メンバーの引きが良かったと思うんですけど、誰か辞めそうだとか思われてないだろうし。それは最近よく思う。
井上唯:ミキティー(振り付けの先生)にも「あんたたち、この4人でずっとやっそうだよね」って言われて、別に確信はないけど、たしかにそうだなって自分でも思います。
--どうやってそれだけ強い結束力を育くんだんですか?
コショージメグミ:逆に何もしなかった。
--新しい(笑)。
コショージメグミ:話し合いとか一切設けないし、このあいだも4人で鍋したんですけど、みんなして写真撮るの忘れてて。他のアイドルグループって「鍋しました、いぇーい!」みたいな写真をツイッターで上げたりするじゃないですか。
--その為に鍋してるグループもいるでしょうね。
コショージメグミ:だけど、私たちは普通に鍋して、ドラマと借りてきた『101匹わんちゃん』観て、ただそれをしてるだけ。
和田輪:仕事の話とか一切しなかったよね(笑)。
矢川葵:しないしない。
井上唯:ひらすらドラマに集中してた。
和田輪:自分の中に煮えくり返るような想いを持つ人が集まったグループだとは思うんですけど、でもそれをぶつけ合ったりすることはしない。
コショージメグミ:しないですねー。もしコショージがそういう人間だったらそうなってたかもしれないけど、私はまったくそれがないから。
--普通はそれだと組織って機能しない訳じゃないですか。誰か熱く引っ張っていく人がいたり、何度も話し合いを重ねたりして、世の中のほとんどの組織はそうしなきゃいけないと思ってる。でもブクガは引っ張らないし、話し合わないし、誰もギャーギャー言わない。それでここまで来れた新たな成功パターンですよね。
コショージメグミ:そうですね。
井上唯:逆に話し合ってたらガチガチのグループになってたと思う。
コショージメグミ:「あんた、さっきあんな風に言ってたのに、これ全然違いますけど!」みたいな(笑)。でもブクガは空気感でなんとなく伝え合える。メンバーとは喋らなくても会話できそうなんですよ。テレパシー使えると思う。
和田輪:何も言わなくてもきっといつか分かってもらえる、そういう信頼があるんだと思います。
矢川葵:みんなおバカなんですけど、素直で、意外とマジメなのかな。あと、しぶとい。だから2年間この形で続いてるんだと思う。

出典: www.billboard-japan.com

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

エヴァいって言葉めっちゃ良いじゃないですか! そう、エヴァいやつです!
--その結果、この4人でメジャーデビューするに至った訳ですが、今回のメジャー第一弾シングル『river(cloudy irony)』。どんな印象を持たれていますか?
コショージメグミ:ブクガがインディーズでこれまで発表してきた楽曲たちの集大成みたいな感じ。「cloudy irony」も「karma」もブクガの名刺代わりというか、ブクガを知ってもらうにはちょうど良いシングルだと思いますね。最後の「14days」は、これまでやってきたポエトリーリーディングではあるんですけど、これまでと違うアプローチもしてるかなって。
--「14days」の作詞はコショージさんですよね。どういったイメージやアイデアから書いていったものなんですか?
コショージメグミ:サクライさんから「ポエトリー入れようと思うから、お願いしていいか?」って電話来たときに「「cloudy irony」と「karma」の世界観に繋がるようなものを書いてほしい。あんまり直接的な表現じゃないほうがいい」というお題だけもらって。それで書き始めたんですけど、シングルのタイトルが「river」だったから最初に川をイメージしたんです。川を「cloudy irony」と「karma」の中に登場させてみて、その川から始まるような物語を書いていった感じですね。
--それのテーマをなぜ「14days」にしたんですか?
コショージメグミ:最初は「30日間ぐらいにしようかな?」って思ったんですけど、それだとちょっと長いから「2週間ぐらいがこの話にはちょうどいいんじゃないか」と思って。10でも13でもなく15でもなく「14」っていう数字がなんとなくしっくり来たんですよね。で、物語の中に出てくる「……は」は元々「○○は」って特定した一人称があったんですけど、完成したときにそこは消えてて。でもそこは私の中でもたしかにそうだったんですよ。無くてもいいもの。「それは何なの?」っていう感じの話なんで、それがサクライさんは分かったのかな?って思って。なんとなく伝わったんじゃないかなと思ったんですけど。
--14日間の物語の中で、4日前に「目が覚めると……はいなくなっていた」、3日前に「……がどこにもない」、2日前に「……を探して部屋を出た」、1日前に「……はどこにもいない」ってなるじゃないですか。どんどん苦しくなっていく感覚を覚えたんですけど、あれは別に誰かが死んでしまうとかそういう悲しいストーリーを描こうとした訳ではない?
コショージメグミ:途中で視点が切り替わるんですけど、私的には「感情」と「温度」の話というか、感情さんと温度さんみたいな。詞の中にちょっと書いてる「寂しいの」「冷たいね」っていう言葉は一応それを象徴していて。「感情」は「温度」のことは分からないじゃないですか。感情って形がない。口もない。温度もどういうものなのか分かんない。でも感情を「感情」として形を作ったらどうなるのか。温度を「温度」として形を作ったらどうなるのか。っていう二人のただのやり取りで、そんなにツラいような話ではない。あくまで私の中ではですよ? でもたしかに怖い感じはある(笑)。
--このトラックでカウントダウンされていくとなおさら怖さは引き立ちますよね。あと、個人的には「これ、エヴァの欝モードのやつだ」って思いました。
コショージメグミ:ハハハハハ! たしかに「○日前」っていうのは『式日』(脚本・監督 庵野秀明)をイメージしました。で、この曲のレコーディングのときに「ここ、こういう感じで」ってサクライさんに言ったら「あ、エヴァいやつね」って。「エ、エヴァい? エヴァいって言葉めっちゃ良いじゃないですか! そう、エヴァいやつです!」ってなりました。
--では、エヴァのファンにも聴いてもらいたいですね。Perfumeとエヴァのファンに聴いてもらったらミリオンセラーですよ。
一同:(笑)
コショージメグミ:Perfumeとエヴァが重なったらそうですよね!『シン・ゴジラ』のところに置いてほしい! 庵野さんのコーナーに置いてほしい。……あの、○イレ行ってもいいですか?
矢川葵:私も行きたい!
(まさかのコショージメグミ&矢川葵、一時退室)
--凄いなー、○イレ行っちゃった(笑)。今居なくなった2人、ぶっちゃけどう?
井上唯:ハハハ! でもあの2人似てない?
和田輪:似てる。○イレ行っちゃう感じ。
井上唯:多分、コショージも葵ちゃんも結構ラクして生きてきたタイプだと思うから(笑)、ふたりでよくピューロランド行ってます。
和田輪:で、私と唯ちゃんはふたりで箱根へ行く。
--そういう属性の違いもあるんですね。
井上唯:でも私、昨日ボイトレの先生に「あなたも右脳派よ?」って言われて。
和田輪:言われた!「4人とも比べられないぐらい右脳派よ?」って言われたんですよ。
(コショージメグミ&矢川葵、再入室)
--そんな右脳派集団のMaison book girlですが、かつてBiSのメンバーでもあったコショージさんにとって、どんな居場所になっていたりするんですか?
コショージメグミ:うーん……めっちゃ簡単に言いますよ? BiSが中学時代に一緒にいた仲間で、ブクガは高校の仲間(笑)。私は今高校だからめっちゃこの4人でよく会うし、仲も良くなるじゃないですか。でも中学のときの仲間に会ったら会ったで盛り上がるじゃないですか。中学時代は会ってもそこまで嬉しくなかった人も、卒業することによってめっちゃ仲良くなれる。あ、中学時代も仲は良かったですけど! だから仲間という意味ではどちらも一緒ですよね。中学の仲間もなんかあったら助けたいと思うし、高校の仲間ももちろん助けたいと思う。
--コショージメグミとの初対面ってどんな感じだったんですか?
矢川葵:面接で喫茶店に行って「よろしくお願いします!」みたいな感じだと思ってたら、コショのところにカレーが運ばれてきてひとりで食べてるんですよ。話しながら(笑)。「あー、そういう感じかー」って思いました。
井上唯:私は福岡から通ってたんですけど、ブクガに受かってから初めて会う顔合わせみたいなときに、わざわざ福岡から朝イチで出てきたのに寝坊したんですよ……。本当にビックリして。寝坊屋さんとは聞いてたんですけど「マジもんだ」と思って。
コショージメグミ:寝坊屋さん、寝坊売ってるからね(笑)。
井上唯:で、結局来なかったんですよ! 飛行機で福岡から飛んできたのに! だからそのまま会わずに帰って……「すげぇ!」って思いました。
コショージメグミ:マジでまったく憶えてない。
--第一印象、会ってないっていう。
井上唯:会わなかったけど、印象はすげぇ残った(笑)。
コショージメグミ:ハハハハハ!
--そんなパターンあるんですね(笑)。和田さんは?
和田輪:BiSの存在は知っていたんですけど、BiSのコショージメグミさんがどういう存在だったのかは知らなかったんで。ツイッターに上がってくる写真ぐらいでしか見たことなかったんです。最初会ったときは「コショージメグミさんだ!」とは思いましたけど……
コショージメグミ:私、和田にさ、ピアノ弾いてもらわなかった? 和田が「ピアノ弾けます」とか言って……あれ? 和田じゃなかったかなぁ?
井上唯:机で弾けって言ったの?
コショージメグミ:うん。
井上唯:ヒドいな。
和田輪:違う人じゃないかな?
コショージメグミ:違う人か。
--違う人の話、出さないでもらっていいですか(笑)。では、最後に、せっかくのメジャーデビュータイミングなんで、今後の目標を聞かせてください。
矢川葵:先日のワンマンライブにたくさん人が来てくれて、行きたかったけど行けなかった人もいたり、「もっと大きいところで観たい」って言ってくれた人もたくさんいたので、次のワンマンはキャパ3桁じゃなく4桁のところでやりたいなって思ってます。
井上唯:ブクガはいろんなところでジャンル問わずに「良い曲だよね」って言ってもらえるし、カナダでも評判良かったんで、将来的にはもっと世界に出ていけたらなって思います。
コショージメグミ:とりあえずメジャーデビューシングル『river(cloudy irony)』がめっちゃ売れてほしい。今、メジャーデビューっていうことで徳間ジャパンさんが力入れてくれてるじゃないですか。でもコレがあんまり売れなかった場合、もうあんまり力を入れてくれなくなるかもしれない。それは大変なことなので、リリイベもいつも以上に頑張ってるし、できれば……20位以内に入りたい。どうしよう? 23位だったら! でも20位以内を目指したいですね。ただ、私的には「欅坂46、寄せてきたな」って思ってるんですけど。発売日被ってるんですよ! だから欅坂46の新曲買おうと思ってたんですけど「危ねぇ、危ねぇ!」と思って。
--何も変わんないよ(笑)!
コショージメグミ:危うく相手に1点入れるところでした。
--では、最後に和田さんお願いします。
和田輪:私、あんまり具体的に「こうなりたい」っていう野望はなくて。でも今言うのがおこがましいぐらいの、自分が想像つかないぐらいのところまで駆け抜けていきたいと思ってます。自己評価が低い人間だからあんまり大きいことを言いたくないんですけど……
--ちなみに、自己評価はどれぐらい低いんですか?
和田輪:ゴミ。
コショージメグミ:合ってんじゃん。
--話が繋がった!
和田輪:だから「やめて」って思うの。
一同:(笑)
コショージメグミ:普通に暇つぶしで「もしゴミだったらゴミであること隠す? 人間として生きる? ゴミとして生きる?」みたいなことを聞いてたんですけど……
--奇跡的に本当にされたくない質問だったという。
井上唯:初っ端でいちばん傷つく質問してましたね(笑)。

出典: www.billboard-japan.com

左から矢川葵、コショージメグミ、和田輪、井上唯。

以下、rockin' on.comよりインタビューを抜粋して引用。
ここでは各メンバーのデビューシングル収録曲に対する受け取り方や対応の仕方、歌詞の解釈などが語られている。
また各メンバーがMaison book girlをどういうグループであると捉えているかを窺い知ることができる。

ブクガは、何かをはっきり決めてこうなったわけではなく、それぞれの色を出した結果、こうなった
――ブクガの独特なスタイルは、サクライさんを含めたクリエイターの方々や、スタッフのみなさんと一緒に手探りで少しずつ形にしてきている印象がするんですけど、その点に関してはいかがですか?
コショージ そうなんだと思います。昔のアイドルさんはガチガチにコンセプトが固められていることが多かったと思うんですけど、手探りでいろいろ作っていくところは今風なのかもしれないですね。個々のメンバーを尊重して頂いていますし、自分たちで作っているところも結構大きいと思います。「ワンマンライブでやりたいことがあったら言ってください」とか「ミュージックビデオはどういうところで撮りたい?」とか訊かれますから。
矢川 私は歌い方に癖があるみたいで、「その語尾の感じいいね」と言われて、レコーディングの時に「葵ちゃんのあの感じで歌って」と言われたことがあるんです。そういうのも手探りで出てきたことなんでしょうね。
井上 ブクガは、何かをはっきり決めてこうなったわけではなく、それぞれの色を出した結果、こうなったということかもしれないです。
和田 「あなたはこうして」というのを強く言われないことによって、自然とメンバーそれぞれのものが出ているのがMaison book girlなのかもしれないですね。
――なるほど。では、メジャーデビューシングル『river (cloudy irony)』のお話に入りましょう。“cloudy irony”は、不思議な昂揚感を生み出す曲ですね。アッパーに盛り上がるのとはまた別の、靄がかった空間に包まれながら感じるような昂揚というか。
コショージ 《曇り空の切り傷は》から「ぱっ!」と広がるような感じとか、独特なのかもしれないですね。
矢川 『bath room』(初の全国流通盤となったミニアルバム。2015年9月リリース)の曲は、初めて聴くと盛り上がりのポイントが分かりにくいところもあるんでしょうけど、“cloudy irony”は、分かりやすさがあると思います。
和田 “cloudy irony”の仮歌が入ったものを聴きながら歩いていたら、すごい綺麗な天気雨になったことがあったんです。私はそれ以来、大好きになっちゃっています。明るいようでいて風情のある曲だなと感じています。
井上 晴れ間が今までの曲の中で一番見えやすい感じなんですかね? まあ、晴れ間があるとはいえ、曇っていますけど(笑)。
矢川 一番明るい地点が、独特なのかも。普通のアイドルさんの曲の一番明るい地点を真夏のめっちゃ天気の良い日だとするなら、ブクガの場合は秋の涼しい日の「快晴だな」くらいの感じなんだと思います。
――「秋の涼しい日の快晴」って、わかりやすい喩えですね。ブクガの歌詞は、どれも幻想的な雰囲気がありますが、こめられている意味に関してサクライさんが何かおっしゃることはあります?
和田 「これはこういう意味だよ」というような説明をサクライさんがおっしゃることはないですね。質問しても「自分たちの解釈でいいんだよ」とおっしゃっています。
コショージ “cloudy irony”と“karma”に関しては「これは自分たちの言葉として歌わないといけないから」とボイトレの先生がおっしゃったので、メンバーそれぞれなりの解釈は、あるんだと思います。
和田 でも、4人で解釈を確かめ合ったりはしていないです。聴いてくださるみなさんにも自由に受け止めて頂きたいです。

ポエトリーリーディングは、詩の読み方が少しずつわかってきて面白さを感じるようになった
――2曲目の“karma”もリスナーそれぞれの解釈があるでしょうね。でも、猛烈に熱いエネルギーが核にあるのを感じるというのは、大半のリスナーの共通したものかも。カナダでモッシュが起こったというのも納得です。
和田 これは今までのブクガにはなかった感じの曲かもしれないですね。今までで一番速い曲ですし、民族音楽っぽい音が入っているところも独特だと思います。
――この“karma”がまさにそうですけど、ブクガの曲はリスナーの本能をくすぐるような感触がありますよね。エレキギターとかの華々しいパワーで盛り上げるというよりは、打楽器の音色や不思議な残響感やノイズっぽい音とかでゾクゾクを醸し出す方向性ですから。
コショージ ブクガの曲は、マリンバの音がよく入っているんですよね。
矢川 使われている音階も独特なんだと思います。
――特徴といえば、ポエトリーリーディングもそのひとつではないでしょうか。今回も“14days”が収録されていますが、これは“cloudy irony”と“karma”とリンクするように感じられる詩が印象的でした。コショージさんの詩ですよね?
コショージ はい。「“cloudy irony”と“karma”に通ずるような感じがあると良いよね」とサクライさんがおっしゃっていたので、それを踏まえてストーリーを考えました。あと、今回のタイトルの「river」もリンクさせていて、「この2曲の中に流れている川は同じ」みたいなことも想像していました。
――14日間の物語を描いていますけど、「拾ってきた物が何なのか?」に関しては明言されないから想像力がすごく刺激されますし、途中で語り部の視点が切り替わるように感じられる仕掛けもワクワクしました。
コショージ ありがとうございます。私は童話の怖い話みたいなものが好きなので、そういうイメージで詩を書くことが多いんです。
和田 “14days”は、今までの中で一番怖いと思う(笑)。
コショージ ぜひゾクゾクして頂きたいです。
矢川 《蛇口をひねり》というのが私のパートなんですけど、レコーディングの時に関西弁のイントネーションが抜けなくてメンバーに笑われたことが個人的な思い出になっています。《蛇口》ってもう言いたくないです(笑)。
井上 ポエトリーリーディングは、最初の頃はライブで歌う曲が少ないからやっていたところもあったんです。でも、今は詩の読み方とかが少しずつわかってきて、面白さを感じるようになっています。
――今回の3曲、ブクガの幅をかなり表現しているのではないでしょうか?
和田 そうですね。私は“14days”は、ブクガの今までの曲の中で一番「絶望」だと思っているんですよ。“cloudy irony”という明るさがある曲から始まって“14days”で終わるこのシングルは、ブクガの上から下までを網羅しているのかもしれないです。今までで一番深いところまで沈んでいったような感覚もあります。
井上 高低差がすごいシングルということかも。耳キーンってなるね?
和田 うん(笑)。
――生きているとディープなところへ沈み込む瞬間もありますけど、青空が欲しくなるものじゃないですか。人生の中にある感情の幅と自然と重なり合う1枚なのかも。
コショージ ありがとうございます。ブクガは、こういう青空も見せるんです。
井上 青空が欲しくなったら“cloudy irony”ですね。
矢川 ぜひいろんな方々に聴いて頂きたいです。
和田 あんまり眩しいと目を傷めちゃいますから、“cloudy irony”くらいの青空が丁度良いんだと思います。

出典: rockinon.com

2017年7月19日:『412』

『412』

1. rooms
2. last scene (2017Ver.)
3. a-shi-ta
4. rooms (instrumental)
5. last scene (2017Ver.) (instrumental)
6. a-shi-ta (instrumental)

徳間ジャパンコミュニケーションズからの、メジャー2ndシングル。
初回限定盤のみEPサイズ(18×18cm)紙ジャケット仕様でリリースされた。

●楽曲概説
1. rooms
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
肌触りとしてはメジャーデビューアルバムであり直前の作品でもある『image』よりも、それ以前の『bath room』に近いものがある楽曲。
ただし各メンバーのヴォーカルスキルが『bath room』から大きく進歩しているため、『image』からのスムーズな流れに逆らうことはない。
サクライケンタ特有の音色と変拍子により曲は始まり、バックの演奏とヴォーカルのリズムが少し乖離しながら曲は進む。
そしてサビで4拍子になり、聴き手は変拍子から解放された軽いカタルシスを感じるのだが、次の瞬間に無音に襲われて「ハッ」となる。
この「ハッ」となる心地よい驚きと次のブレスの少しなまめかしい音、再び始まる楽曲、そして再度の無音、と聴き手の心を掴んで決して離すことのない展開が待っている。
そして何といってもポップな楽曲でもある。
コショージメグミ「『次の曲、どうしますか?』という話があった時に、私は“次、攻めるとしたら無音とか面白いのかな”と思っていたんです。この『rooms』の無音は、聴いていて面白い感じになっていたので、すごいと思いました」

「rooms」
撮影:二宮ユーキ
監督:二宮ユーキ、サクライケンタ

2. last scene (2017Ver.)
作詞:サクライケンタ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
ライブ会場限定販売シングルだった『black』、及びデビューアルバム『bath room』に収録されていた楽曲のリメイク。
バックの演奏はリマスタリングが施され、音の輪郭がよりはっきりしてきたように感じられる。
ヴォーカルは録りなおしされているが、一聴してメンバーのスキルがアップされていることがわかる。
今回、再録という形で本シングルに収録された要因は以下のサクライケンタ、及びメンバーの発言から読み取れる。
サクライケンタ「ヴォーカルに関しては旧バージョンの時よりメンバーがスキルアップしたため、以前から録り直しをしたかったこの曲を再録しました。(バックの演奏の)変更点については、ありすぎて書ききれません。聴き比べても楽しいかと思います。音が増えたり減ったり、ミックスから全て新しくなっています」
コショージメグミ「赤坂ブリッツのライブの時、最後の曲が「last scene」だったことが大きいんだと思います。「録り直したいよね?」みたいな話は、ちょっと前から出ていたんですよ」
井上唯「振り付けも赤坂ブリッツのライブで一新したんです。ブクガの中で「last scene」が最初にできた曲で、もう3年前くらいなんですよね。当時よりも私たちも歌とダンスで表現できることが広がっていますから、この機会に新しくすることができて良かったです」
和田輪「もともとのものも、あれはあれでいいんですけど、別の作品としても感じて頂けるものになったと思います」
矢川葵「最初にレコーディングした時は何も分からなかったので、「とりあえず歌って」って言われて、そのまま歌ったんですよ。でも、今回のレコーディングの時は「跳ねるように」とサクライさんからリズムの取り方について言われて、雰囲気を自分なりに汲み取って歌いました。とてもいい仕上がりになったと思います」

3. a-shi-ta
作詞:コショージメグミ
作曲:サクライケンタ
編曲:サクライケンタ
恒例の詩の朗読であるが、今回は1分30秒弱と今までで最も短い作品となった。
メインの詩の朗読の後ろでうめくような言葉がコラージュされていて、少々怖い印象を受ける。
以下にそのコラージュの種明かしがされているインタビューを抜粋。
インタビュアー「《朝》とか《透明》とか、不思議なイントネーションの言葉がコラージュされているのが気になったんですけど」
コショージメグミ「あれ、どうやっているか分かりますか?」
インタビュアー「分からないです」
コショージメグミ「逆から読んだ音を逆から再生しているんですよ」
インタビュアー「言葉の音を母音と子音に分解して逆から読んで、それを逆回転で再生するやつ?」
コショージメグミ「そうです」
井上唯「レコーディング中にサクライさんが思いついたみたいです。母音と子音を書いて、「これやってみて」と突然おっしゃったんですよ。読んでいる時は、どの単語なのか分からなかったんですけど、完成したのを聴いたら独特なニュアンスになっていて、ブクガらしいなと思いました」

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

以下、Mikikiよりレビューを引用。
音楽メディアにとって、Maison bool girlがどのようなグループとして捉えられいるかの一端を窺い知ることができる。

ブクガの侵攻は止まらない! 斬新にしてスタイリッシュ、人懐っこくてエッジーなニューエイジ・ポップ・ユニットが届けるニュー・シングル『412』

夏といえば、Maison book girlに欠かせないモチーフのひとつである。活動の最初期から存在していた“bath room”(2015年)などの歌詞に見られる言葉選びはもちろん、言わずもがなの『summer continue』(2016年)、さらには先日のメジャー初アルバム『image』にも“end of Summer dream”が収められていたことは簡単に思い出せるに違いない。とはいえ、それらが喚起するイメージは燦々と輝く太陽のシーズン感ではなく、そこには常に秋の気配が貼り付いている。どこか寂しい思い出や残照、ノスタルジア、失ってしまって取り戻せないものの象徴のひとつとして〈夏〉というワードが印象的に用いられているというわけだ。そうでなくても独特の落ち着いた空気がファンタスティックでスタイリッシュな佇まいと結び付いているMaison book girlの音楽ではあるが、さようにプロデューサー・サクライケンタの永遠のモチーフとする世界観とピュアな美意識こそが彼女たちをひときわスペシャルに装飾しているのは確かだろう。

もちろん、〈ニューエイジ・ポップ・ユニット〉を謳う実体としてのMaison book girlにとって、夏は精力的な活動の季節に他ならない。今年は先述したアルバム『image』のリリースに合わせてワンマンでの全国ツアーを初めて敢行し、5月の東京・赤坂BLITZにおけるツアー・ファイナル〈Solitude HOTEL 3F〉を成功に導いたわけだが、そんな公演の最後に告知されたのがニュー・シングルのリリースだった。このたび予告通りに登場した『412』は、初回プレス分限定で7インチサイズの特製ジャケ仕様となっている。

その〈412〉が日付のような意味のある数字なのか単純にファイルなどの無機質なナンバリングなのかはわからないが、今回も表題曲はなく、リード曲にあたるのは1曲目の“rooms”だ。いくばくかの外向きな眼差しと躍動感を湛えていた『image』よりも今回は『bath room』を思い出させる雰囲気で、隔絶された傷心が淡々と紡がれていくサクライ×ブクガらしさ満点のキャッチーなポップ・チューン。一瞬ドキリとするような無音や環境音も織り交ぜながら変拍子でタイトに進行していくアレンジの妙は今回も見事で、これはステージでのパフォーマンスも楽しみになる一曲と言えそうだ。いずれにせよその部屋の中は、冒頭で述べたような〈夏〉の薫りで濃密に埋め尽くされているのは言うまでもない。

カップリングに収録された“last scene -2017Ver.-”は初作『bath room』(2015年)に収められていた人気曲をリテイクしたもの。稚さを多分に含んでいたオリジナルでの歌唱が、舞台を重ねることで如実に成長している様子をも伝える出来映えだろう。さらに、恒例となったポエトリー・リーディング“a-shi-ta”は今回もコショージメグミがしたためたもので、いつもながらの読後感もしっかり用意されている。

出典: mikiki.tokyo.jp

左から井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ。

yamada3desu
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@yamada3desu

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サクライケンタとは、作詞家・作曲家・編曲家・音楽プロデューサーであり、株式会社ekomsの代表取締役。彼が頭角を現したのは、いずこねこのプロデューサーとしてであり、その後はMaison book girlの総合プロデューサーとして活躍している。スティーヴ・ライヒなどの現代音楽家に影響を受け、ポピュラー音楽にその現代音楽をミックスさせた「現音ポップ」を提唱している。Maison book girlだけでなく、クマリデパートのプロデュースや開歌-かいか-、大森靖子との仕事などで知られている。

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