劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンとは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは、人気アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完全新作映画。2019年に公開された『外伝-永遠と自動手記人形-』に続く最終章である。
孤児として生まれ戦争中に拾われ、幼い頃から兵士として戦い、人の感情が分からないまま育ったヴァイオレット。
そんな中人として育てられた少佐から最後にもらった「あいしてる」という言葉の意味を知るために、手紙を代筆する自動手記人形を通じて人の心と触れ合い、成長していく物語。

依頼人のユリスは、家族に宛てた手紙を依頼した後、「実は友達のリュカにも手紙を書きたい」と言われ、ヴァイオレットは追加料金の提案する。
しかし、手持ちが足りないユリスはその依頼を取り下げようとした。
今までのヴァイオレットなら追加の料金を払えないお客に対して断るところ。
ところが、ユリスに対してヴァイオレットがお子様料金で依頼を受けると返答した。

感情を察することが何よりも苦手だったヴァイオレットが、ユリスに「何でも分かるんだね」と素直に感心させるほど、彼の本心を次々と言い当てていく。
またユリスが本当はリュカにも手紙を書きたいという気持ちを察し、汲み取るように行動する。
教科書通りのことしかできなかったヴァイオレットがユーモアを挟んだやり取りで、困っている少年を思いやり、彼の願いを叶えようとする彼女が人としての成長を垣間見た。

ユリスがリュカに電話で思いを伝える

リュカへ自分の気持ちを電話で伝えるユリス

リュカへの手紙は、ユリスの発作が出たために書くのが保留になってしまう。
そして手紙を書く前にギルベルトのいるエカルテ島に行くこととなる。
そこでヴァイオレットはアイリスとベネディクトに後を頼む。

しかし手紙を書くはずだったヴァイオレットが、ライデンに帰る前にユリスの容態が悪化し、手紙を書くのが間に合わないという事態になる。
後を託されたアイリスとベネディクトは、リュカとエリスを電話で繋ぐという手段を取る。
面と向かっては言えないことでも手紙なら伝えることができる。
TVシリーズから一貫して、手紙という媒体で想いを伝えていた中、大事な想いを届けるのが手紙か電話であるかは関係ない、届かなくていい想いはない、紙から電話に変わった瞬間である。

ヴァイオレットと大佐(ディートフリート・ブーゲンビリア)の和解

ディートフリートの所有する船でギルベルトの話をするディートフリート・ブーゲンビリアとヴァイオレット・エヴァーガーデン

TV版では常にヴァイオレットに突っかかってきていた大佐。
様々な事件を経てヴァイオレットのことを武器としてではなく1人の人間として認め、彼女の良き理解者となる。

お互いギルベルトという大切な存在を失った者同士、同じ心の傷を負う者として理解し合う。
また弟のことを心の底から愛してくれているヴァイオレットのことを、大佐も時間と共に受け入れるようになった。
TV版ではヴァイオレットの負の部分を揺さぶり続けた大佐は、劇場版では彼女の心の支えとして、ギルベルトとヴァイオレットを結びつけるため一肌脱ぐこととなる。

ヴァイオレットが島へ出発する前のためらい、そしてライデンに帰ろうとするヴァイオレット

エカルテ島で帰る決意をするヴァイオレット・エヴァーガーデン

ギルベルトと思われる人がいる島に出発することになったとき、ヴァイオレットが行くことをためらう。
「少佐は自分に会ってくれるだろうか」、「少佐は自分のことが分かるだろうか」、「少佐は自分を見て変に思わないだろうか」と、ためらいの言葉を吐露する。
その姿は恋する乙女であり、愛に苦しむ淑女であり、彼女がギルベルトに対して持つ思いが溢れる。
本当は今すぐ確かめに行きたいが躊躇う。
今まで大佐に抱いていた親愛から恋愛に変わったことを、周囲も彼女自身も自覚し確信する。

ギルベルトに手荒に追い返されて打ちひしがれているヴァイオレットの元に、ユリスの容態が悪化したという電報が届く。
その電報を見たヴァイオレットがライデンに帰ると決意したことから、彼女がドールの仕事に対して持っている誇りと誠意がうかがえる。
本当は会って話をするまでこの島に留まるという決意があったにも関わらず、依頼人のことを優先しようとしたヴァイオレット。

今までは執念のようにギルベルトを追い求めてきた彼女だが、ドールの仕事を通じて多くの人の優しさに触れ、想いを届ける手伝いをしていくうちに、ギルベルト以外の人のことも大切に想うようになった。
「愛しているが少しは分かるようになった」という言葉には、ギルベルトに対する想いだけではなく、彼女を取り巻く人たちへの優しさや思いやりも含まれている。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

劇場版オリジナルストーリー

2019年9月6日に公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』と『劇場版』の制作は同時進行。
『外伝』は藤田春香監督が初監督を務め、彼女のチャレンジも含めて作品にしたものであった。
『外伝』はあくまでも“外伝”なので、『外伝』を受けてさらにヴァイオレットの未来を描く『劇場版』で帰結するという構想であった。
原作者の暁佳奈とシナリオや設定の情報は共有し、原作で最も大切にされていたエッセンスは『劇場版』にもきちんと反映するように制作された。

TVシリーズと劇場版画面比の違い

『外伝』に続き、『劇場版』は画面の比率がTVシリーズの16:9とは違う横に広い2.31:1という映画ならではのサイズ。
この画面サイズでの制作を藤田監督が最初に提案し『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を映画館で観る適切な映像作りとはなんなのか、石立監督とディスカッションを重ねる。
それによって空や海、山々が広くダイナミックに描くことに。制作で使用する紙のサイズも構図に必要なエッセンスも変わるため、『外伝』に引き続き、制作陣にとっても挑戦となる作品となった。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』から試みている、TVシリーズの16:9とは違う横に広い2.31:1という映画ならではのアスペクト比への挑戦をしている。

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主題歌・挿入歌

主題歌:TRUE 『WILL』

作詞:唐沢美帆 作曲・編曲:Evan Call

完全新作の主題歌。作詞は唐沢美帆、作曲・編曲はEvan Call、歌はTRUE。

ED(エンディング):TRUE 『未来のひとへ 〜Orchestra ver.〜』

作詞:唐沢美帆 作曲・ 編曲:川崎里実
(アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』グランドエンディング・ライブver)

完全新作のエンディングテーマ。作詞は唐沢美帆、作曲は川崎里実、編曲はEvan Call、歌はTRUE。テレビシリーズのボーカルアルバムに収録されたイメージソングのリアレンジ版。

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