ろくでなしBLUES(ブルース)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ろくでなしBLUES(ブルース)』とは、森田まさのりによる『週刊少年ジャンプ』に連載された学園ヤンキー漫画で、コミック版は全42巻。東京の吉祥寺を舞台に、帝拳高校のヤンキー達が暴れ回る。ギャグをちりばめた短編と、他校の強敵とのバトルがメインの長編ストーリーの組み合わせによって構成されており、特に他校とのバトルをメインにした長編シリーズはストーリーの完成度が高く、本作の人気を不動の物にしている。

『ろくでなしBLUES』の概要

『ろくでなしBLUES(ブルース)』とは、原作者森田まさのりによる日本の少年漫画作品で、1988年から1997年まで集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載されており、コミックス版は全42巻。その後実写映画やドラマ、舞台などマルチメディア化されている。
舞台は東京の吉祥寺にある帝拳高校。主人公の前田太尊が帝拳高校に入学するところから物語が始まる。頭は弱くて赤点ばかりだがケンカはめっぽう強い、そんな太尊の夢はプロボクサーとなって世界チャンピオンになること。しかし高校生活では毎日トラブルが絶えず、中学時代からの盟友・山下勝嗣と沢村米示を率いて、太尊はケンカ三昧の毎日を送る。そんな太尊の強さは東京中の不良達に轟いていき、太尊が東京四天王の一人に数えられると、争いはさらにヒートアップ。他校との抗争を中心に、ギャグ満載のコミカルな日常、ヒロイン七瀬千秋との恋など、青春要素も織り交ぜながら、太尊の高校生活が過ぎていく。
特に吉祥寺、渋谷、浅草、池袋と東京の実在の街を舞台にした東京四天王編の魅力的なキャラクターたちが人気を博し、最強人物を決める議論があちこちで行われた。
登場人物名はプロボクサーや格闘家から取られており、高校名は有名なボクシングジム名などから引用されている。またサブタイトルのネーミングやストーリーの演出にはローリング・ストーンズ、THE BLUE HEARTSの影響が見受けられ、THE BLUE HEARTS公認でメンバーをモチーフとしたキャラクターも4人登場しており、ボーカルである甲本ヒロトとの対談も誌面で行われた。
本連載は1987年に週刊少年ジャンプに掲載された読み切り短編『BACHI-ATARI ROCK』が基になっており、主人公である前田太尊に近いキャラクターが登場する。また連載中は不定期で番外編『ろくでなしぶるーちゅ』も連載されていた。『ろくでなしブルース』の登場キャラクターが全員2.5頭身になって登場するギャグ短編で、単行本も発刊されている。黄金期の週刊少年ジャンプを支えた絶大な支持を受けたヤンキー漫画である。

『ろくでなしBLUES』のあらすじ・ストーリー

吉祥寺の帝拳高校に入学し、ボクシング部と応援団との抗争をケンカと男気で丸く収めて帝拳高校の実質トップとなった前田太尊は、周辺高校との争いに勝利し続け、やがて東京四天王の一人に数えられるようになっていく。腕は強いが頭は弱く、他校とのバトルに勝利しながらボクシング世界チャンピオンを目指すストーリー。

渋谷の鬼塚編

渋谷にデートに来た山下勝嗣と今井和美の二人は、そこで渋谷楽翠学園の生徒達と小競り合いを起こしてしまい、勝嗣は鬼塚というランチコートにピアスの男に倒されてしまう。一方勝嗣を追って渋谷へやって来た前田太尊と沢村米示は、鬼塚をはじめとする渋谷の不良達に取り囲まれてしまうが、かろうじて逃げ出して脱出する。その際吉祥寺の帝拳高校という事を鬼塚に知られてしまう。
後日鬼塚率いる楽翠学園の不良たちは、太尊たちを追って帝拳高校のある吉祥寺まで上山、須永をはじめとする大勢の配下達を連れて攻め込んで来る。鬼塚の指示で駅のホームや商店街で執拗に吉祥寺の不良達を追い詰め、次々と狩られていく中、太尊のライバルである米倉商業の島袋大や、協栄高校の赤城達も立ち上がり、渋谷対吉祥寺の全面戦争の火蓋が切って落とされる。
鬼塚が小太郎が隠れる喫茶店に現れるが、小太郎を守るよう言い使っている武藤と大橋がその前に立ちはだかる。しかし2人とも驚異的な強さの鬼塚のワンパンチでKO。それでも鬼塚にしがみつく武藤と大橋。自分を捨ててまで太尊に尽くす帝拳の面々が理解できない鬼塚。
実は鬼塚率いる渋谷の軍団は、独善的な鬼塚に対して不満を抱いている。鬼塚は完全に私利私欲のワルで、キレると人を殺しかねない凶暴さをもっている。街中でのカツアゲや仲間へのパー券売り強要、奪った金を散財し、ゲーセンに入りびたったりと、ミスをすれば仲間であっても容赦しない男で、仲間を道具としてしか見ていない。実は仲間たちも誰も関わりたくなかったが、喧嘩が強くて逆らえない。まさに恐怖で人を縛り上げていた。
武藤、大橋、島袋、勝嗣、米示、ジョーと誰も鬼塚に歯が立たず、捕まってしまう。ここに太尊が到着。鬼塚との一騎打ちを始めるべく、無人の吉祥寺駅地下に2人だけで降りていく。勝負は鬼塚が優勢。人間離れした強さで太尊を打ちのめす鬼塚だったが、現役プロレスラーすらKOした起死回生の必殺のアッパーが炸裂。アゴが割れた鬼塚だが、脅威の精神力で立ち続ける。そこに太尊のソバットが炸裂。こうして死闘の末に太尊は鬼塚に勝利、太尊を中心とする吉祥寺の結束の前に鬼塚は負けを認め、去っていく。その後鬼塚はこれまでの自らの素行を恥じ、涙を流して更生するのであった。

浅草の薬師寺編

太尊に並ぶ四天王の1人、浅草笹崎高校の薬師寺という男が鶴田や亀岡と共に吉祥寺へやって来た。薬師寺は空手の達人だが、無駄な喧嘩を好まず名を上げることにも興味を示さず、仲間を大事にしているので人望は厚い。薬師寺はかつて吉祥寺に住んでいた事があり、その頃の同級生である千秋や和美からは「ヤッくん」と呼ばれる仲で、特に千秋には中学時代に転校してからも想いを寄せていた。
薬師寺が吉祥寺へ来たのは千秋に思いを告げる事が目的だったが、鶴田と亀岡の2人は鬼塚を倒した前田太尊を倒すために来ていた。太尊を見つけた2人は戦いを仕掛けるが、太尊の後輩である大場ヒロトや海老原昌利たちに阻まれる。
その頃、薬師寺は千秋と再会し思いを告げるが、千秋はその告白を断る。ホームで薬師寺を見送る千秋の前に太尊が現れると、彼女が太尊を好きだという事を察した薬師寺は、太尊の前で電車に乗り込み千秋を連れ去ってしまう。千秋を追って浅草へと乗り込んだ太尊は2人を探して浅草中を駆け回り、帝拳の仲間たちも鶴田と亀岡を追って浅草へやってくる。
ついに薬師寺と千秋を見つけた太尊は、千秋の見ている前で薬師寺と対峙するが、この闘いを身を挺して止めようとする千秋。自ら隅田川に飛び込もうとする。それでも止まらない2人の対決。ボクシングの前田対空手の薬師寺の戦いは、ほぼ互角。太尊を応援する千秋。立ち上がった太尊は薬師寺の蹴りをかわしてアッパーをフェイントにしてからの新必殺技コークスクリューフックを放つ。薬師寺は体ごと隅田川へ。
浅草に勝利して吉祥寺への帰途へとつく一同だったが、太尊以外のメンバーは太尊と千秋を2人きりにすべく気を遣って走り出す。太尊の後ろから抱きつく千秋。こうして吉祥寺対浅草の戦いは吉祥寺の勝利で幕を閉じた。

池袋の葛西編

かつて前田太尊と戦った渋谷の鬼塚が、池袋の葛西という男にアバラを折られて敗れたという知らせが渋谷から太尊達のもとに届いた頃、四天王の1人、浅草の薬師寺も正道館高校の葛西の襲撃され、バックブリーカーからのアバラ折りという瀕死の重傷を負わされていた。池袋の葛西は太尊や鬼塚と並んで四天王と呼ばれ、その中でも最強と呼ばれて驚異的な強さを誇っていた。葛西は「最強」が4人もいる事が気に入らず、四天王の他の3人を倒してまわっていたのだ。葛西率いる池袋正道館軍団は、いずれも卒業後は半数以上がヤクザになるといわれるほどの集団。
四天王制覇を目論んで、鬼塚や薬師寺が重傷を負わされた話に激怒し、太尊は単身池袋に乗り込んで行き、葛西に対決を挑むが、その破壊的な強さは太尊をも凌駕しており、太尊も打ちのめされて池袋の葛西に完膚無きまでに叩きのめされて病院送りに。立ち直れない太尊、そして初めて敗北した太尊を目にして絶句する仲間たちであった。
一方の葛西は四天王の頂点に上り詰めたものの、その暴走は止まらず仲間達からも孤立。そして孤立を止めようとする親友の坂本にまでその牙を向けてしまう。葛西の暴走を駆り立てていたのは、仲間の信頼を失う事への恐怖だった。正道館入学直後に当時の番長に挑んだが、バットで不意打ちを受けて敗北、その事で仲間からの信望を失い見捨てられた経験から、強さを示すことでしか仲間の信頼を得られないと思い込んでおり、強い人間を倒し続けることに執着する。東京四天王という呼称を嫌い、自分が最強であることを示すために四天王制覇を狙うのであった。それゆえに強くあり続けた孤独な支配者。
一方明るく振る舞っていたが、葛西に敗れたままでは悔しくて終われない太尊は、再び挑戦する決意を固める。そして葛西もまた、太尊との戦いで顎を負傷しており、その借りを返す機会を窺って向かった先は吉祥寺。暴れまわる葛西はヒロト、松村、海老原、誠二、小兵ニ、八尋、島袋、そして石松までも粉砕し、いよいよ前田と遭遇。さらに正道館の面々も吉祥寺に集結。
葛西の親友である坂本から葛西の暴走を止めるように頼まれた太尊は、再び葛西にタイマンを挑む。終始プロレス技を繰り出す葛西が優勢であったが、最後は太尊の壁を利用したジャンピングストレートで葛西をKO。死闘の末に葛西に勝利した太尊に坂本は礼を告げ、葛西は負けを認めるのだった。

新入生との抗争編

前田太尊は高校3年生に進級した。渋谷の鬼塚を倒した事で太尊の名前は一躍東京の不良達に知れ渡ることとなった。そのおかげで今年帝拳高校に入学して来た新入生達の中には、太尊を倒して名前を上げようとする者も少なくなかった。そんな新入生達の中には、米倉中学時代に太尊と出会い、彼にあこがれて米倉商業高校を蹴って帝拳高校に入学して来た大場ヒロトと松村純之助の姿もあった。中学時代に有名だったケンカ実力者たち新入生同士の対立が激しくなってくる中、新入生の1人で一匹狼的存在の海老原も太尊つぶしを目論んでいた。海老原は中学時代に留年しているため、太尊より2学年下だが、年は太尊の1つ下でヒロトの1つ上にあたり、中学で既に留年している事から、入学時に教師からは「前田以上の問題児」と言われていた。
一方の太尊はケンカには全く興味がなく、新入生の相手は全てヒロトに任せていた。太尊を「殿」と慕うヒロトは、太尊に降りかかる火の粉を払うべく、海老原にもつっかかっていく。グループで群れて、1人では喧嘩もできないような大将を憎んでいる海老原は、無視を決め込む太尊に業を煮やして、太尊を「殿」と崇めるヒロトにケガを負わせる。
酷くやられたヒロトを見て、太尊は海老原の前に姿を表すと、海老原が心に孤独を抱いている事に気づき、タイマン勝負を提案する。これまでタイマンと言いながら仲間の力を借りる相手ばかりだった海老原は、初めて太尊のようじ1人で立ち向かってくる相手に出会い、一対一で戦うこととなる。実は海老原は中学時代に不良グループの頭にタイマンを挑むが、大勢で袋叩きにされた挙句、カッターナイフで額に傷を付けられ、その額の傷痕を隠すために常にバンダナを巻いている。その負傷事件以来、人を信じず孤独な一匹狼的スタンスをとっていた。
初めての熱いタイマン勝負で、海老原は得意のプロレス技や身のこなしで太尊を追い詰めるが、最後はバックドロップで敗北する。こうして心の雪解けを迎えた海老原はヒロトとも和解し、以降太尊達の仲間となる。

『ろくでなしBLUES』の登場人物・キャラクター

帝拳高校

前田 太尊(まえだ たいそん)

CV:堀秀行(アニメ1992年版)、平田広明(アニメ1993年版)/演:前田憲作(映画1996年版、1998年版)、青柳翔(ドラマ版)
本作の主人公で、帝拳高校の生徒。実力も信頼も実質トップであるが、そういった地位には全く興味がない。東京四天王の一人であり、男気に溢れ仲間を大切にするため周りからの信望も厚い。怒るとろれつが回らなくなり、完全にキレると関西弁になる。単純な性格で、感動的な話には弱く涙もろい。学業の成績は悪く、試験ではほぼ全ての科目で赤点。大阪府出身で実家は尚輪寺という寺。ボクシング世界チャンピオンを目指してジムに通っている。得意技はアッパーカット、スクリューフック、ライトクロスなどで、ケンカでもよく使用する。女子の髪型の好みはポニーテールに大きな白いリボンで、制服の好みはセーラー服。女子の制服のデザインで帝拳高校入学を決めた。千秋とは互いの想いを伝え合うが、双方奥手で、それ以降も友達以上からあまり進展せず、終盤にやっと改めて交際を申し込む。

山下 勝嗣(やました かつじ)

CV:小野坂昌也(アニメ1992年版)/演:梅木良則(映画1996年版)、江原修(映画1998年版)、小澤雄太(ドラマ版)
帝拳高校の生徒で太尊の親友。パンチパーマで額が広く、それを指摘されるとキレる。バイク屋の息子で、よく太尊にスクーターを貸しては壊されている。同級生の和美と付き合っており、非常に一途である。卒業後は和美と結婚してバイク屋を継いだ。

沢村 米示(さわむら よねじ)

CV:堀川亮(アニメ1992年版)/演:木村輝秀(映画1996年版)、西守正樹(映画1998年版)、 白濱亜嵐(ドラマ版)
帝拳高校の生徒で太尊の親友。鼻が大きく、それを指摘されるとキレる。成績は非常に優秀で、帝拳高校では1、2を争う学力である。小学生時代に勝嗣のクラスに転入したことで知り合い、勝嗣に喧嘩を売られたのがきっかけで秘めていた喧嘩の才能が開花し、結局は勝嗣と親友になる。リーゼントヘアーにはこだわりを持っており、クシを常に携帯している。京都にさゆりという彼女がいる。

七瀬 千秋(ななせ ちあき)

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