ゼロから始める魔法の書(ゼロの書)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ゼロから始める魔法の書』とは、電撃文庫より出版された、虎走かける著・しずまよしのり絵のライトノベル、およびそれを原作としたマンガ、アニメ、ゲームである。「獣堕ち」と呼ばれる半人半獣の主人公「傭兵」と、世間知らずの魔女「ゼロ」が、世界を滅ぼすほどの力を秘めた魔法の指南書「ゼロの書」を探す物語。1~10巻までの本編と、後日談である短編集を合わせた全11巻まで刊行されている。2018年より講談社ラノベ文庫から続編である『魔法使い黎明期』のシリーズが開始された。

獣堕ち

ある日突然、人間の両親の間から生まれてくる半人半獣の怪物のこと。元となる獣は多種多様で、トラやオオカミ、鷹、馬やネズミなど様々であるが、いずれも高い身体能力や獣特有の能力を有している。教会の教えで「堕落の象徴」として知られ、忌み嫌われており、獣堕ちとして生まれた者は生きていくことすら困難である。しかし、その戦闘能力の高さから傭兵として雇われることが多く、戦争時には重宝されている。ゼロ曰く、獣堕ちとは、古の魔女たちの戦いで、魔女が人間の体に獣の魂を呼び降ろし、獣の戦士を作り上げたことが始まりだという。呼び降ろされた獣の魂は、獣の戦士が死ねば術者である魔女の元へ帰るが、その魔女が死んでいた場合、帰る場所を失った獣の魂は呼び降ろした魔女と最も近しい者、つまり魔女の子孫たちの魂に乗り移る。これは「呪術返り」と呼ばれる現象であり、獣堕ちはこの呪術返りによって生まれてくるのである。魔女のほとんどが長命かつ世間から隔絶されているため、子孫が忘れたころにこうした呪術返りが起きることからこの事実はあまり知られていない。

『ゼロから始める魔法の書』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ゼロ「――戻りたいのか?人間に」 傭兵「――戻れるのか?人間に」

『ゼロから始める魔法の書』より

傭兵のささやかな夢は、小さな村で小さな酒場を開き、かわいい嫁を貰って静かに暮らすこと。獣堕ちに生まれてしまった以上その夢は所詮夢でしかないと思っていた。しかし、突如として目の前で瞬いたのは、大嫌いで、そして最後の望みである世間知らずの魔女だった。魔女は言う。「ゼロの書」を探している間の護衛をしてほしい、その対価として、君を人間に戻そう、と。傭兵はその言葉を信じ、護衛を引き受けた。お互いの利害がたまたま一致しただけの、ちょっと変わった依頼だと傭兵はその時感じていた。それが、まさか世界を揺るがすほどの大事に巻き込まれることになるなんて、傭兵は思いもよらないだろう。すべての始まりで、傭兵の最大の行動理念である言葉だ。

アルバス「子どもが悪夢に怯えたときに安らかな眠りを誘う魔法、泥棒が出たときに捕まえる魔法、そんな書き方がしてあって――けど誰も、ゼロの思惑通りに魔法を使わなかった」

『ゼロから始める魔法の書3』より

対象のみを固定し、周りに延焼させることなく燃え上がらせることのできる魔法、〈炎縛(フラギス)〉。ゼロはこの魔法を、「狩猟をしながら料理もできて一石二鳥な魔法」として生み出した。しかし現実には、無差別に大量の人間を最小限の被害で焼き殺す魔法として活用された。ゼロは魔法という、最高の技術が最良の使い方をされる未来しか想像しなかった。さながらそれは、楽しい空想にふける子供である。新しい技術はいつも、純粋な好奇心とわずかな向上心から生まれるものだ。そしてそういった技術は往々にして、開発者の手から離れ、好き勝手に広がっていく。そんな当たり前を想像できなかったゼロは、「こんな本、書くべきではなかった」と、悲しげにつぶやく。

ゼロ「君は、我輩一人では知り得なかったことをもたらしてくれるな」

アニメ『ゼロから始める魔法の書』第4話より

ゼロは今まで、暗い穴蔵の中で他の魔女たちと日々魔術の研究をしていた。魔術の本に埋もれ、同じ考え、同じ価値観を持つ者たちと繰り返す会話。ゼロはそれを、退屈だと感じていた。外に出たいと日々思っていた。だから、傭兵とともに旅をして、初めて訪れた町で、皆が違う仕事をし、違う考えを持っている世界を目の当たりにし、楽しいと感じたのだ。傭兵がいなければ町に入ることもできなかっただろう、そう考えたゼロは、自然と傭兵への感謝を口にする。お世辞でもなんでもなく、なによりも純粋な言葉だった。

ゼロ「ゼロの魔法書、あれは我輩の本であり、我輩の罪だ。その始末をつけるために手を汚さなければならないのなら、我輩はこの手を汚すことを選ぶ」

アニメ『ゼロから始める魔法の書』第6話より

自分の理想だけを見つめて、現実を見ずに作ってしまったゼロの書。それによって苦しんでいる人がいるならば、それは自分の罪で、自分の責任だとゼロは言う。ウェニアス王国での事件は、ゼロの書を取り戻し一件落着した。しかし、今度はウェニアス王国の外で、魔法の広まりが始まっているのだという。その原因は、「ゼロの書の写本」。本というものは、大量に書き写され、多くの人に呼んでもらうために存在している。その本来のことが起こってしまっただけだ。それでもゼロは、「ゼロの書の写本」を集める旅に出る決意をする。広まってしまった技術を止めることはできない。しかし、危険な書物を取り締まることはできる。決意を新たに、ゼロは傭兵とともにウェニアス王国を旅立った。

『ゼロから始める魔法の書』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

小説投稿サイト「小説家になろう」にて後日談が投稿されている

誰でも自作の小説を執筆し、投稿することのできる「小説家になろう」にて、「魔女と野獣の極めて普通な村づくり」と題した後日談が投稿されている。短編形式の小説で、ゼロと傭兵を中心に、本編に登場したキャラクターや、今作オリジナルのキャラクターなど多くのキャラクターが登場する。誰でも無料で読むことができ、「小説家になろう」のアカウントを作ればブックマークや感想を送ることもできる。

講談社ラノベ文庫にて、続編『魔法使い黎明期』のシリーズが開始

『魔法使い黎明期』の主要キャラクターたち

電撃文庫より講談社ラノベ文庫にレーベルを移して、『ゼロから始める魔法の書』の正式な続編である『魔法使い黎明期』のシリーズが開始した。続編であるものの、作者の虎走かけるは「間違いなく新シリーズとして書いた」と宣言しており、本作から読み始めた読者でも楽しめるように工夫されている。舞台はゼロと傭兵の活躍から数年後のウェニアス王国。魔法学校の落ちこぼれ生徒である「セービル」が、魔法学校の学長、「アルバス」より提示された特別実習にて、優等生の「ホルト」、獣堕ちの「クドー」、そして引率の魔女「ロー・クリスタス」らとともに、ゼロと傭兵が住む村へと実習へ行くところから始まる。新たなキャラクター達を主軸に、『ゼロから始まる魔法の書』から引き続き登場するキャラクターたちを巻き込んでの騒動を描く。

『ゼロから始める魔法の書』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):たぴみる『発見者はワタシ』

作詞:鳳シシィ、作曲・編曲:石倉誉之

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