罠ガール(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『罠ガール』とは、電撃マオウで2017年7月号より連載が始まった罠猟をする田舎のJKを主人公としたマンガ。若い女性の猟師が増えた昨今の「狩りガール」ブームにあやかって作られた作品である。山間部の農家であり、罠猟免許を所持している朝比奈千代丸を中心にした女子高生たちが、農作物に対する鳥獣被害の対策のために奮闘する姿を描く。キャラクターや舞台などは架空のものだが、農業従事者の高齢化や、山間の農地の鳥獣被害の深刻さ、猟師や役所の鳥獣被害対策などは現代日本の農業の姿をありのままに描いている。

『罠ガール』の概要

『罠ガール』とは、電撃マオウで2017年7月号より連載が始まった罠猟をする田舎のJKを主人公としたマンガ。若い女性の猟師が増えた昨今の「狩りガール」ブームにあやかって作られた作品である。2017年12月に1巻が発売され、発売後即重版の話題作となった。
山間部の農家であり、罠猟免許を所持している朝比奈千代丸を中心にした女子高生たちが、農作物に対する鳥獣被害の対策のために奮闘する姿を描く。また、女子高生たちは罠猟を通じて、鳥獣被害を受ける農業従事者や指導を行う猟師たちとの関わりを持ち、山間地域の農村の現実を知っていく。
罠猟は狩猟と違い、あくまで農作物を守るために駆除・捕獲するというスタンスで、冒頭に農作物が荒らされるシーンがまず描かれる。罠猟に使用する用具の細かい描写や、狩猟者や鳥獣被害者との関係性などをリアルに描いているのが魅力の作品。作者の緑山のぶひろも主人公と同じ罠猟免許を持つ兼業農家であり、農作業や罠猟作業などは実際の経験をもとに描かれている。また、地区全体での駆除作業や、集落ごと離農した話なども、現実に見聞きしたものを取り入れ、現代日本の農業のリアルを描くことも魅力になっている。
かわいい女子高生の農村生活という和み系マンガである一方、「罠猟」だけでなく「鳥獣被害」や「農業と野生動物との関係」などシビアな現実を知ることができると注目を集めている。

『罠ガール』のあらすじ・ストーリー

イノシシ・くくり罠編

朝比奈千代丸の幼なじみの昼間レモンは、自分のほうれん草畑が順調に育っている話をする。しかし翌日レモンは、千代丸に畑が荒らされていると泣きついてくる。畑を囲う金網を破り、荒らされた畑の様子から、イノシシに入られたことを見抜いた千代丸は、レモンに頼まれてイノシシ捕獲に乗りだす。
罠の説明をしながら、くくり罠の用意をした千代丸は、次に山に入ってイノシシの痕跡を探すフィールドサイン調査を行う。獣道を発見し、捕獲に適したポイントを決め、罠を設置する。
翌日も千代丸は泣いているレモンの訪問を受ける。昨日塞いだ金網がまたも破られ、ほうれん草がイノシシに食べられていた。設置した罠にもかかっていない。千代丸は罠の上に米ぬかを置いて餌付けを始める。
置いた餌だけを食べられて罠にはかからない状態が続いて数日後、ついにイノシシが捕獲された。イノシシを目にして動揺するレモンの前で、千代丸は冷静に止めを刺す。動かなくなったイノシシは役所の人に引き取ってもらった。

タヌキ・箱罠編

千代丸はレモンに生徒会長の夜空つむじを紹介される。つむじは千代丸が18歳で罠猟免許を所持していることを褒めて、学校を荒らしている動物の捕獲に協力を要請する。
校内を見回り、荒らされている様子や足跡から、千代丸は荒らしているのがタヌキだと推測する。タヌキは同じ場所で糞をする「ため糞」の習性があるため、その場所を探すと、そこは園芸部の倉庫の脇であった。
通りかかった園芸部員からタヌキがいる裏付けがとれ、さらに倉庫に箱罠があり貸してもらえることになった。倉庫脇のため糞の近くに箱罠を設置する。
翌朝確認に行くと、箱罠の中にタヌキの姿があった。役所に連絡して引き取りに来てもらうつもりでいたが、放課後に見に行くと罠が壊れてタヌキの姿がなかった。入り口を押さえるバネが錆びていて外れてしまったのだ。修理して同じ場所に設置することにした。
翌朝、またも箱罠の中にタヌキの姿があった。念の為昼休みにも確認に行ったが、タヌキが抜け出すことはなかった。放課後、役所に引き取ってもらい、つむじの依頼を達成できた千代丸だった。

シカ・くくり罠編

千代丸が家で育てているビワが鹿に狙われる。1.5メートルの鹿よけネットを設置するも、鹿はあっさり突破。千代丸はビワを餌にレモンを呼び出し、2メートル以上のネット設置を手伝わせる。しかし翌日見ると鹿がネットを破壊。補強のための鉄棒まで折れ曲がってしまう。ネットだけで防ぐことは難しいと判断した千代丸は、くくり罠で鹿の捕獲を開始する。
鹿の捕獲に成功した千代丸だったが、角も体格も大きい雄鹿を目にし、自ら止めを刺すのは無理だと判断。猟師に来てもらい捕獲した鹿を撃ってもらう。
千代丸とレモンはまだ鹿を食べたことがなかった。それを聞いた猟師が二人を鹿の解体に誘う。翌日、聞いた家に行くとそこは夜空つむじの家であった。猟師はつむじの祖父であり、千代丸とレモンはつむじと共に鹿の解体作業を手伝う。その後、つむじの料理した鹿肉をごちそうになり、鹿肉の美味しさを知る。

鳥獣供養編

休日の朝、つむじは祖父の車で千代丸の家に訪れる。これから鳥獣供養に行くので、一緒に来ないかと誘われる。鳥獣供養は猟友会が主催する、お寺で動物の供養する催し。
お寺には猟友会を始め、狩猟関係者が集まっていた。平均年齢高めな集団に驚く千代丸。そんな中、一人だけ若い女性の姿があった。彼女は清水夏芽という、つむじの祖父の弟子だった。つむじの紹介で挨拶を交わす千代丸だが、彼女は極端な人見知りで、声をかける前に素通りしたり、会話の途中で立ち去ったりと、ぎこちない態度だった。つむじから、次回からは普通になるとフォローされる。
その後、鳥獣供養が始まり、千代丸も周りと同じように手を合わせる。最後にお守りをもらい、つむじと来年もまた来ることを約束する。

カラス編

千代丸のぶどう畑がカラスに食い荒らされる。さっそく対策を取ろうと思った時に、タイミングよく遊びに来たレモンに手伝ってもらう。
二人で偵察を行い、カラスの動きを観察した後、まずは畑の周りを防鳥ネットで囲う。上からの侵入にはテグス糸を張り巡らせた。また、守るだけでは効果が薄いと考え、園芸部から借りてきたタヌキ用の箱罠も設置する。
5日経過後、ブドウの被害は抑えられたがまだ続いており、罠にもカラスがかかる様子がない。この状態に千代丸は奮起し、カラス用の捕獲罠を作成する。ぶどう畑を模した大型の罠は効果があった。翌日遊びに来たレモンは、箱罠の中で鳴いている大量のカラスを目にする。レモンに呼ばれて見に来た千代丸は、罠の中のカラスを順番に始末していく。
千代丸は手伝ったレモンに、お礼でぶどうをあげる。レモンはお返しに、祖母の畑で取れるスイカを今度持ってくると約束する。しかし、レモンが家に帰って祖母に話を聞くと、祖母の畑は獣害でダメになっていた。

レモンの免許取得編

レモンは祖母の畑をなんとかしてあげようと決意する。千代丸に頼んで罠猟免許のとり方を教えてもらう。千代丸から免許に必要な料金や、申請に必要な書類。猟友会で行う初心者講習会のことを聞く。その間も参考書と例題集を使った勉強を続け、レモンは罠猟免許の試験にのぞむ。
午前中の筆記試験では筆箱を忘れるミスをしたが、隣の席の人に借りてなんとか終わらせる。適性試験は視力、聴力、運動能力の試験で、あっさり終了する。
午後の試験は午前中の試験に合格しないと受けられない。控室で発表を待っていると、先程筆記用具を貸してもらった瀬戸さんに会いお礼をいう。
午後の技能試験でも何回かミスをしたと落ち込むレモンだったが、瀬戸さんに励まされて帰宅する。
一週間後の合格発表では、無事に合格していた。

アナグマとアライグマ編

罠猟免許を取得したレモンは、祖母の畑を荒らす動物の捕獲に動く。まずは道具を手に入れるため、千代丸とつむじと3人でホームセンターへ買い物に行く。そこで清水夏芽に出会い、アドバイスをもらって箱罠を購入する。
千代丸に手伝ってもらい、防鳥ネットによる防護柵を設置。レモンの祖父が電気柵を用意してくれたので、それも設置し二重柵とする。
柵が完成し、いよいよ箱罠を設置。初めてのレモンは、千代丸にアドバイスをもらいながら罠を設置する。一方で千代丸は、夏芽からアライグマがいるかも知れないというアドバイスをもらっており、確認用のトラップを仕掛けることにする。
餌の量を調節しながら待つこと5日、無事アナグマが捕獲された。喜ぶレモンだったが、千代丸は確認用のトラップでアライグマがいることを確認。役所にアナグマを引き渡した後、戻ってきた箱罠をもう一度設置する。
そこからさらに3日、アライグマが捕獲される。アライグマは外来種で繁殖も旺盛なため、しばらく設置を続けることになった。

旅行とサルの追い払い編

千代丸とレモンはつむじから、従姉妹の旅館に遊びに行こうと誘われる。一泊三食付きで無料の話に怪しさを感じる千代丸だったが、条件が枝豆の収穫を手伝うというものだったので、農作業好きの二人は応じることにした。
初日は天橋立の観光をしてから、旅館「山吹荘」に到着。つむじの従姉妹で同じ高校3年生の山吹桜子を紹介してもらう。露天風呂でレモンがサルを見たのがきっかけで、桜子からこの付近でのサルの出現の多さと農作物への被害を教えてもらう。
翌日早朝、約束通り枝豆の収穫を手伝った3人と桜子が、休憩でお茶をしていると、桜子の携帯に連絡が入る。山からサルが降りてくるという監視員からの連絡だった。これから地域総出でサルの追い払いを行うと聞き、千代丸たちも参加することになる。
千代丸と桜子はサルの追い払い用に訓練された犬「モンキードッグ」と共に山の中に入っていく。一方、レモンとつむじは畑まで降りてきたサルに大声をあげて追い払う。無事に追い払いを終えて帰ると、収穫した枝豆入のピザが用意してあり、ごちそうになる。
旅館からの帰り際、千代丸たちは桜子から、次に会う時は自分も罠猟免許をとっておく、と言われる。

イノシシ・箱罠編

ある日の朝、千代丸は母親から、イノシシが田んぼの稲を倒したと聞く。現場を見に行くと、かなりひどい惨状だった。先に現場に来ていた父に、電柵の杭が一箇所倒れていて、そこから侵入したと教えられる。倒れた稲を起こしたらと聞くも、イノシシのニオイがついているため全部破棄すると言われてしまう。また隣の地区では、山間を全面フェンスで囲うようにしたらしく、イノシシが全部こちらの地区に来ていることを知る。
放課後、電柵を二重にするのを手伝った後、千代丸は早速くくり罠設置に動く。学校で話を聞いたレモンも合流し、現場調査を開始。千代丸は獣道をたどる途中で、イノシシがドロ浴びをするヌタ場を発見する。ヌタ場から山道に入り、慎重に罠の設置場所を探る。
良さそうな場所を見つけ、3日ほど餌付けした後、罠を設置する。しかし翌日、翌々日と罠が掘り返されているのを確認する。一筋縄ではいかない相手に、千代丸はくくり罠を2個設置し、さらに田んぼの泥水をふりかけ罠のニオイを消す作戦に出た。翌日現場確認に行くと、なんと罠のワイヤーが引きちぎられていた。しかも罠の様子を確認している千代丸にイノシシが姿をあらわす。とっさのことで千代丸は何もできない。だがイノシシはそのまま遠ざかっていき、危機は去った。
その後に合流したレモンと千代丸は、イノシシに出会った恐怖から家に帰ることにした。同じ場所での捕獲はもう無理で、一からやり直しになると話し合っていた二人は、待っていた父親にイノシシ用の箱罠を見せられる。
父親は役所から借りてきたイノシシ用箱罠と、設置の仕方をレクチャーしてくれる人を紹介する。その人とは夏芽だった。夏芽は設置方法を教えた後、千代丸とレモンと共に現場調査に向かう。罠の設置場所を近所の今は使われていない耕作地(放棄地)に決める。3日ほど放棄地で餌付けを行い、箱罠を設置。そこからさらに数日、仕掛けをせずに箱罠の周りで餌付けを行う。数日後、箱罠の中の餌を食べるようになったのを確認して、仕掛けを始める。それから3日、なかなか捕まらないイノシシに餌の工夫を繰り返し、ようやく一頭捕獲された。

夏芽と師匠によって止めを刺されたイノシシは、シカの時と同じようにつむじの家で解体することになった。シカやイノシシのような大型の獲物は一度体温を下げるために、一日水につけておく必要がある。そのため解体は2日かけて行うことになった。無事に解体が終わり、焼き肉でイノシシ肉の美味しさを堪能することができた。帰り際、解体に参加していなかった師匠が戻り、もう一頭罠にかかっていたイノシシを持ち帰ってきた。千代丸にまだイノシシがいるので、しばらく箱庭は仕掛けておいた方がいいと教えてくれた。
翌日、千代丸の父親は稲の早刈りを決めた。刈ってしまえばイノシシからの被害は当分なくなることから、これも獣害対策となる。
さらに父は、千代丸に箱罠に集まる動物を監視できるトレイルカメラを買ってくれた。早速近くに設置して、千代丸は箱罠監視を継続することになる。

ネズミ編

千代丸が学校から帰ってくると、母親がネズミ捕りシートを探しているところに出会う。稲刈り直後の米で一杯の倉庫(稲屋)でネズミが出たという。千代丸は父親が前にネズミ捕獲器を持っていたことを思い出し、それを持って稲屋に向かう。
母親と共に壁ぞいを調べる。するとすぐにネズミの糞から通り道が判明する。痕跡を綺麗に片付けた後、新聞紙を壁にそって並べ、その上にネズミ捕りシートを置く。横に並べるように捕獲器も置いた。
翌日、ネズミ捕りシートに2匹ネズミがかかっており、捕獲器の方も中に入っているのが見て取れた。千代丸は捕獲器の付属品に水をため、捕獲器をそこに沈めてネズミを処理する。シートにかかったネズミは、すでに息を引き取っていたので、母が新聞紙に包んでごみとして捨てた。

園芸部とシカ・囲い罠編

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