H2(エイチツー)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『H2』とはあだち充が1992年から1999年まで『週刊少年サンデー』で連載していた青春恋愛漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。
主人公の国見比呂、親友でありライバルでもある橘英雄、比呂の幼馴染であり英雄と恋仲である雨宮ひかり、高校野球が大好きで比呂が所属する野球部のマネージャーを務める古賀春華を中心に繰り広げられる青春と恋を描く。
優れた心理描写や読者に解釈の余地を残したラストなど、あだち充長編漫画のエッセンスが凝縮された最高傑作との呼び声も高い。

『H2』の概要

『H2』とはあだち充が『週刊少年サンデー』で1992年32号から1999年50号まで連載していた青春恋愛漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。
小学館の少年サンデーコミックスより単行本が全34巻、同ワイド版より全17巻、小学館文庫より全20巻が発売されている。2018年時点でシリーズ累計発行部数は5500万部を超える。同年には「サンデーうぇぶり」にて電子版が連載を開始。
1995年6月1日から1996年3月21日まで朝日放送(ABC)制作、テレビ朝日系列にてアニメ版が、2005年1月から3月まではTBS系の「木曜10時枠」で『H2〜君といた日々』というタイトルで実写ドラマ版が放送された。ドラマ版の主演は山田孝之。

優れた心理描写や読者に解釈の余地を残したラスト、魅力的なサブキャラクターなど、あだち充長編漫画のエッセンスが凝縮された最高傑作との呼び声も高い。
また、主人公である比呂の初恋は敗れるという結末を迎えるなど、本作はあだち充の長編漫画の中では最もほろ苦い最終回を迎えるとされる。

中学野球で共にチームメイトとして地区大会二連覇を果たした国見比呂と橘英雄は大の親友であり、野球、そして比呂の幼馴染で英雄の恋人でもある雨宮ひかりを巡る恋のライバルでもある。比呂は医師から「このまま投げ続ければ確実に3ヶ月でヒジが壊れる」と診断され野球を断念し、野球部のない千川高校に入学する。しかし千川高校には野球愛好会なるものが存在した。のちにヒジの故障が誤診であったと知った比呂は野球に復帰。野球愛好会のマネージャー古賀春華、そして中学時代からバッテリーを組むキャッチャー・野田敦達と共に野球部を創設し、甲子園でのライバル・橘英雄との対決を目指し奮闘する。

『H2』のあらすじ・ストーリー

高校進学

中学時代、幼馴染の三人、国見比呂と橘英雄、野田敦は同じ野球部のチームメイトとして地区大会二連覇を果たし、それぞれ比呂はピッチャー、英雄はスラッガー、そして野田はキャッチャーとして注目を集めていた。しかし医師から比呂はヒジ、野田は腰にそれぞれ爆弾を持っていると診断され野球を断念する。野球への未練を断ち切るため比呂と野田は野球部の無い千川高校へと進学し、それぞれサッカー部、水泳部に入部。一方の英雄は比呂の幼馴染で英雄の恋人でもある雨宮ひかりとともに野球の名門・明和第一高校へ進学。

「野球愛好会」から「野球部」へ

比呂が入学した千川高校に野球部はなかったが実は「野球愛好会」なるものが細々と活動していた。月に2回市営グランドでの社会人草野球チームとの練習試合を楽しみに野球愛好会は活動を続けていたが、あるとき社会人草野球チームの都合が悪くなり練習試合が出来なくなる。代わりに千川高校のサッカー部が野球愛好会の試合の相手となる。サッカー部として試合に参加していた比呂だがサッカー部員たちの野球愛好会を馬鹿にした態度を嫌い、その場でサッカー部を退部。試合を観ていた野田とともに野球愛好会へと入会し、久しぶりのバッテリー復活となる。二人が野球愛好会に参加するのはこの試合だけのつもりだったが、二人の故障の診断を行った医師が実は無免許だったことが発覚し逮捕されたことを知る。別の病院での検査をおこなった結果、それぞれに何の異常もないことを知ると二人は正式に愛好会へ入会。そして再び野球が出来るようになった比呂と野田は千川高校で甲子園出場を果たすことを決意する。「愛好会」から正式な「野球部」への昇格を目指すことになるが、そのためには高校野球嫌いの校長を説得しなければならなかった。校長の母校である草成高校はかつて夏の甲子園30-0のノーヒットノーラン負けを記録した。勉強では名門校で地元では卒業生ということだけで鼻が高かったが甲子園での敗退以来、全国どこへ行っても30-0で敗退したことだけを知られることになり、以来校長は高校野球を嫌うようになる。そんな校長から提示された条件は地区大会の準優勝校である明和一との練習試合に勝利すること。校長の息子にして名二塁手でもある柳守道、英雄に対抗意識を燃やす野球経験者の木根竜太郎も加わり千川は明和一に対し奮闘。惜しくも試合には敗れたものの校長は野球部の創設を認める。野球愛好会のマネージャー・古賀春華の兄である富士夫を監督に迎え千川高校野球部が誕生した。千川高校と明和第一高校はそれぞれ北東京、南東京に属しており、比呂と英雄の直接対決は両校が甲子園出場を果たさない限り実現しない。千川高校野球部は比呂と野田のバッテリーを中心に、まずは甲子園出場を目標に奮闘していくこととなる。

甲子園初出場

比呂たちは2年生に進級し、英雄の幼なじみである佐川周二ら新入生も加わった千川高校野球部は地区大会を順調に勝ち進む。準決勝では北東京ブロックの最有力候補である栄京学園と対戦する。栄京のエース広田のヒジの故障なども重なり千川は栄京に勝利し、千川と明和一はともに甲子園出場を果たす。だが千川は明和一と対決する前に2回戦で比呂が足を負傷し敗退してしまう。海辺で落ち込む比呂は慰めるひかりに対し、自分の初恋がひかりであったこと、初恋では戦えなかったためせめて野球では英雄と戦いたかったことを打ち明ける。ひかりは悔し涙を流す比呂を抱きしめ、春華はそんな二人の姿を遠くから見つめていた。全国大会では明和一が優勝。この夏で英雄はもちろん比呂も注目選手となる。

秋季東京都野球大会

千川は準決勝で再び強豪である栄京学園を破りそのまま秋季大会優勝。春の選抜高校野球大会出場を確実なものとする。一方の明和一は夏の甲子園に照準を合わせ、新エースである1年生石元豊をあえて起用し続け敗退。春の選抜で千川は優勝し、夏の甲子園で前年の優勝チームとその年の春の優勝チームで最後の夏を戦うというヒーロー二人の対決がいよいよ現実味を帯びる。比呂と春華が急接近する一方、英雄とひかりは気持ちのすれ違いが続いていた。その後ひかりの母が急死。

ひかりの母から息子同然に可愛がってもらっていた比呂は深く悲しむ。またひかりと同じ痛みを共有できる絆があるということも改めて実感していた。そして比呂とひかりは今それぞれの隣にいる相手との関係を問い直そうと悩む。英雄はひかりをうまく慰められないもどかしさや自分にはない、ひかりとの絆で結ばれている比呂への嫉妬。そしてそれを感じてしまう自分にも苦しむ。春華は3人の中学生からの因縁を傍から見ることしかできないことを悲しんでいたが、比呂から「今自分が高校で野球を頑張れているのは春華のおかげだ」と伝えられる。

最後の夏、比呂と英雄の直接対決

そして最後の夏、千川は北東京大会、明和一は南東京大会でそれぞれ優勝。甲子園でも準決勝で千川と明和一との対決が実現する組み合わせとなる。準決勝前夜、比呂は英雄がひかりに対して「この対戦を最後まで見届けて、自分か比呂かをもう一度選ばせる」ことを持ちかけていたことを知る。試合開始前、比呂は英雄に対し「自分はひかりが大好きだ」と宣戦布告。そして9回裏二死、2対0での英雄との対峙において、比呂は英雄から三振を奪い試合に勝利し、比呂は涙をこぼす。しかしそれが勝利の嬉しさからの涙ではないことを比呂は自分自身で分かっていた。ひかりが英雄の融通の利かないバカ正直さに惚れたことを、比呂は痛いほどに知っていた。試合後、英雄はひかりに対し「最後の最後の勝負でストレートではなく高速スライダーが来るという考えが頭をよぎり、比呂の真っ向勝負を疑ってしまったことで比呂にも自分にも負けた」と吐露する。ひかりはそんな英雄のカギを閉めたような融通の利かなさを確認し、そのドアを開けた中にひかりの居場所があることを比呂の奪三振から教わったと英雄に伝える。比呂があえて試合前に挑発して悪役に回った理由と、終了時に涙した本当の意味を英雄は知った。野球の勝敗にひかりとの恋愛関係を託し、負ければ身を引くつもりで自分か比呂かをもう一度選ばせようとした自分は何もわかっていなかったということを。ひかりも自分に選ぶ権利など最初からなかったことに気づく。英雄は「だれよりもひかりのことが必要なのは自分だ」と気づき、そして英雄とひかりは抱き合う。

一方、比呂は宿舎で仲間たちと準決勝の勝利を祝いながらも、その胸の内は野田に察されていた。翌日の決勝戦当日の朝、比呂は紙飛行機を飛ばす。比呂と春華、二人はその行き先が大リーグであり「スチュワーデスは私だ」という冗談を交わし合う。今日も変わらず夏の空は高く青く、千川高校野球部を乗せたバスは甲子園へと出発した。

『H2』の登場人物・キャラクター

主要人物

国見 比呂 (くにみ ひろ)

出典: phoenix-wind.com

CV:古本新之輔
千川高校3年(開始当時:千川高校1年)。投手・中堅手。右投げ・右打ち。
物語の主人公。ひかりと野田とは幼なじみであり、英雄・ひかり・野田とは同じ青南中学校の出身。中学時代から豪速球で名を知られた投手であったが、医師からの「3ヵ月で確実に肘が壊れる」という言葉を受け、野球への未練を断ち切るため野球部のない千川高校へ進学しサッカー部へと入部するが、のちに誤診であることが発覚し野球に復帰。
150km/h超のストレート、140km/hのフォークや、スローカーブやチェンジアップなど切れのよい変化球を持ち球とする。さらに対英雄の切り札として高速スライダーも習得。併せて構えたまま動かさないミットへ正確に投げる事のできるコントロールのよさ、無尽蔵のスタミナ、「ピッチャー返しを取らせたら右に出るものはいない」と自ら豪語するフィールディングも兼ね備える超高校級投手。ただし気持ちにブレーキを掛けるのは苦手で、打たせて取るピッチングを指示されても1試合すべてを我慢することはできない。バッティングも得意で足も速く、中・高を通して3番打者をつとめる。特に打撃に集中する状況でみせるバッティングの技術は卓越しており、中学時代のサヨナラ安打数は英雄よりも多かった。外野守備も上手く、木根が登板した際はセンターを守っている。暑さにめっぽう強く、ひかりの誕生日である8月16日には一度も負けたことがなかったが、2年生時の夏の甲子園2回戦で初めて敗北を喫した。
意地っ張りで他人から気を遣われることを避ける性格。ガサツではあるが他人に気を遣うところもある。大したことがない時には大騒ぎするものの、本当に辛い時は誰にも言わない。そうした気質は野球においてだけでなく恋愛をはじめとする私生活においても発揮される。
野球の試合ではプレイ自体を楽しむタイプで、勝敗はあくまでその結果に過ぎないと考えている。明和一監督・稲川曰く「どんなピンチも野球の楽しみに変えてしまう」野球大好き少年。また稲川は「英雄よりも比呂の方が欲しかった」と明かしている。

橘 英雄 (たちばな ひでお)

出典: a29.chip.jp

CV:宮本充
明和第一高校野球部サード。国見比呂の中学時代からの親友でありライバル。高校1年の春から強豪・明和一の4番を打つ超大物スラッガー。堅実な守備でサードを守り肩も強い。中学時代に比呂から雨宮ひかりを紹介され、以来周囲公認の交際を続けている。 当面の最大の目標は甲子園で国見比呂との勝負である。白山エンジェルスの4番として注目され天狗になっていた中学1年の時、紅白戦でいきなり三球三振を奪われた国見比呂との出会いが中学の三年間朝から晩までバットを降り続けることに繋がり、それが英雄の才能を開花させることになる。
解説者からは守っても怪物と評され、野田によると140km/hは余裕で投げられるという。自称「バッティング投手をやらせたらチーム1」。将来はプロ野球の打撃記録を全て塗り替えるつもりだと語る。
落ち着きのある性格で大人びているが、周囲に対して弱みを隠そうとするタイプでもある。融通が利かず、勝負事にはシビア。
実家は酒屋であるが家族全員が酒に弱く、匂いだけで酔っ払ってしまい駄洒落やギャグを連発する。比呂のことを心から親友だと思っており、大ファンであるとも語っている。

雨宮 ひかり (あまみや ひかり)

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