海辺のエトランゼ・春風のエトランゼ(エトランゼシリーズ)のネタバレ解説まとめ

『海辺のエトランゼ・春風のエトランゼ』とは日本のボーイズラブ漫画で、作者は元アニメーターの紀伊カンナ。本作の主人公となる橋本駿と知花実央の離島での出会いと旅立ちを描いているのが『海辺のエトランゼ』、そして続編として離島からの旅路と北海道での新たな生活を描いているのが『春風のエトランゼ』である。作品のキャッチコピーは「心が洗われるようなボーイズラブ」となっており、その言葉通り純情ラブストーリーとなっている。また主人公らの家族との関係や他愛のない日常生活も多く描かれており、家族愛も楽しめる作品。

『海辺のエトランゼ・春風のエトランゼ』の概要

『海辺のエトランゼ・春風のエトランゼ』とは日本のボーイズラブ漫画で、作者は元アニメーターの紀伊カンナ。祥伝社から発刊されている『onBLUE comics』にて連載中。もともとは1話読み切り作品として掲載されていたが、評判が高く定期連載されることになった。ジャンルはボーイズラブとなっているが、女性キャラクターも多く登場しており、女性の同性愛者も描かれている。作品のキャッチコピーが「心が洗われるようなボーイズラブ」という事もあり、爽やかな純情ラブストーリー。また主人公の一人である橋本駿が同性愛者として両親に受け入れられていく様子や突如義理の弟となった文との何気ない日常生活なども多く描かれており、恋愛だけではない愛情で心温まる作品となっている。作者の紀伊カンナが元アニメーターということもあり、繊細な人物描写や背景などの作画も魅力の一つとなっている。『海辺のエトランゼ』は1巻完結となっており、離島に住んでいる橋本駿と知花実央の出会いから二人が北海道へ旅経つ場面までが描かれる。『春風のエトランゼ』は4巻発刊されており、離島から北海道へ旅経つところから二人が駿の実家で生活をスタートさせて以降の暮らしが描かれる。2015年に「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2015」で5位を獲得。また2020年には劇場版アニメ『海辺のエトランゼ』が公開されるほどの人気作。また紀伊カンナの初画集としてエトランゼシリーズの作画がまとめられた『queue -Kanna Kii artbook-』も発売された。

『海辺のエトランゼ・春風のエトランゼ』のあらすじ・ストーリー

海辺のエトランゼ

駿と実央の出会いと別れ

海辺のベンチでひとり黄昏ている実央(上段右、下段)とその実央を眺めている駿(上段左)。

沖縄の離島で暮らす橋本駿は親戚のおばちゃんの稼業を手伝いながら、小説家を目指している。彼はゲイであったが、地元の北海道で暮らしていた時に家族を安心させるために幼馴染の桜子と婚約をしていた過去を持つ。しかし結婚式当日に自身の気持ちを抑えきれなくなり、家族にゲイであることをカムアウトして結婚式から逃げ出してしまう。この出来事をきっかけに家族とは疎遠となっている。駿たちが暮らす海辺にはベンチが置いてあり、ある日を境に美少年が夕方から夜になるまでひとり座るようになる。駿は彼の名が知花実央で同じ離島に暮らす高校生だと知り、いつも遅くまで黄昏ている姿に惹かれるようになる。仲良くなりたくて実央に声を掛け始める駿であったが、実央は警戒心の強い様子で中々心の距離が縮まらない。しかし夜まで海を見ている実央を心配した駿がパンを渡すと、実央は翌朝にお礼に株分けをした花を届けてくれる。まだ寝ていた駿の代わりに花を受け取っていたおばちゃんから、実は実央はずっと2人で暮らしてきた母親を亡くして、よその家に引き取られていたという境遇を聞く。後日、駿はいつものベンチで実央を待ち伏せする。相変わらずぼんやり海を見ている実央に「いつもひとりで寂しくならない?」と駿が尋ねると、実央に「気持ち悪いんだけど」と睨まれてしまう。その言葉から駿は、結婚式で意を決してゲイであることを打ち明けるも家族に強く責められたトラウマを思い出し意識を失ってしまう。駿が目を覚ますと自室で横になっており、同じく住み込みで働いている絵里と彼女の恋人である鈴に看病されていた。実央は駿を送って帰ったという。体調が戻った駿は縁側に座り隣にいる絵里に「俺もお前もたまたま同性が恋愛の対象って、ただそれだけなのになんでそれが世間ではおかしなことなんだろな」と呟く。

離島を離れる前の最後の夜、実央(右)は駿(左)の頬に静かにキスをする。

日曜日の昼に駿が庭で原稿に目を通していると、海辺で意識を失って以来会ってなかった実央が訪ねてくる。海辺で駿に対して酷いことを言ったと謝罪に来たのである。実央は周りから母親を亡くして一人ぼっちになったことを周囲に慰められることに嫌気がさしていたと打ち明ける。駿も周囲の人間と同じだと思って酷いことを言ったのだと実央は言う。そうすると駿は自分の場合、下心があって声を掛けていたのだと自白する。それを聞いた実央は「しょうもない理由、ナンパみたいじゃん」と駿をバカにしながらも「でもよかった」と初めて顔をほころばせる。その場に出くわした絵里は実央を夕飯に誘い、ご飯を食べながら駿がいつも実央のこと話ばかりしていることを話す。恥ずかしさで絵里に怒る駿を傍目に、実央は久しぶりの賑やかな夕食に笑顔を見せる。夕食後、駿が実央を送っている途中で実央が「ねえちょっと寄り道してもいい?」と言う。「俺しか知らない所なんだけど駿にも教えてあげるよ」と言葉を続ける。駿が実央についていくとそこは真っ暗な海辺であった。足元を見ると小さく綺麗な光が点々とあり、それは夜光虫だと実央は言う。そしてこの場所は小さいころ実央が母親と来ていた思い出の場所であり、駿にあげると続ける。そして実は明日、離島を離れ本島の施設に引き取られることを実央は打ち明ける。慌てて連絡先を訪ねる駿であったが実央は携帯を持ってないと笑い、「子供ってひとりじゃ何もできないよ、早く大人になりたい」と言う。そして実央は駿の頬にキスをして、「あっち着いたら電話するねと」と約束をする。そして翌日、実央はいつもと変わらない様子で島を離れる。

3年ぶりの再会に戸惑う駿

島を離れてから3年後、実央は駿と暮らすために離島に戻ってくる。

施設に着いたら電話をすると約束をして離島を離れた実央であったが、駿のもとに電話が来ないまま3年が過ぎた。駿が書いていた小説がとある賞に入選した時に祝いのはがきが一通だけ来ただけで、ほかに実央からのコンタクトは一切なかったのであった。同居人であった絵里が鈴と同棲を始めるため2人で引っ越しをしている様子をひがみながら見ている駿であったが、絵里から彼女と入れ替わりで新たな住人が来ることを知らされる。おばちゃんが男手が欲しいというので絵理が紹介したというのだ。何も知らされていなかった駿はまあどーでもいいやと縁側で荷物にもたれかかって目を閉じていると、門の方から自分の名前を呼ぶ声がする。はっとして声がする方を見ると、門の前に少し大人になった実央が立っている。そして笑顔で駆け寄ってきて、「大人になったから戻ってきたよ、もうひとりでなんでもできるし全部自分で決められる」と言う。そして呆然としている駿に向かって「俺駿のこと好きだよ」と伝える。

同じ部屋で寝たいと言う実央(左)を制止する駿(右)。

実央と駿の同棲が始まるが、駿の態度がどこか恋人らしくないことに不安を募らせ始める実央。実央が駿にキスしようとしたり、同じ部屋で寝たいとねだったりしても断られることが続く。実央は自分が施設から電話をするという約束を守らなかったり、離島に帰ってくるまでに3年掛かったりしたために駿の気持ちがもう自分から離れてしまっているのではないかと思い詰める。実は携帯を持っていなかった実央は本島に着いた日にきちんと施設の電話から駿に電話をしようとしていた。しかし、実央から掛かってきた電話に出たのは駿ではなく絵里であった。同性愛者としての辛さを知っている絵里は、駿のことを恋愛対象として好きなわけでもないのに電話を掛けてくるなんて駿が可哀想だからやめた方がいいと告げる。もともと実央はゲイではなく、施設に行く前に駿に対して抱いていた気持ちが恋心なのか分かっていなかった。絵理に「やっぱガキねー」と煽られて苛立った実央はよく考えて「好きじゃなかったら友達になるし、好きだったら好きっていう」と絵理に宣言していた。そして宣言した通り離島に戻ってきて駿に告白した実央の決意は固かった。そこまでの決意があったが故に実央の不安はピークに達し、駿に「もう好きじゃなくなった?」と直接投げかける。その言葉に驚く駿であったが、返事をする前に駿に掛かってきた仕事の電話で2人の会話は中断されてしまう。

本島のホテルに泊まった夜、実央(上)と恋人らしいことをしようとしなかった理由をようやく打ち明けた駿(下)。

二人の関係が良くならないまま、駿が書いている小説が締め切り間近となり、駿は机から離れられない日々が続く。原稿が出来たら本島にある空港に航空便を手配して送る予定となっており、実央もついていくと声をかけてと言っても、空返事になってしまうほど駿は仕事に集中していた。その為、実央の「好きじゃなくなった?」の問いかけについて二人は話せないままでいた。駿は原稿を仕上げ、実央と一緒に空港に向かう。本島行きの船の中で何事もなかったかのように実央がかぶっている帽子をかっこいいと褒める駿。嬉しくて笑顔になる実央であったが、「モテそうだし彼女でも作ればいいのに、もったいないよな」と言葉を続けた駿に怒りを露わにする。船が本島に着き、実央は自分の用事が済んだら勝手に帰ると言い残し駿から離れる。駿は実央を怒らせたことを認識しながらも、一人空港に向かい原稿を送る手配を取る。手続きが終わり、帰路に着こうとしたところ駿の携帯に知らない番号から電話が掛かってくる。電話に出ると相手は携帯を持っていないはずの実央であった。実央は「約束守ったよ」と、離島から離れる前に駿と交わした約束を果たしたことを告げる。実央は空港に携帯の契約をしに来ていたのであった。そして実央は離島に帰ってくるのに3年掛かった理由を「自活できるまで帰らないって決めてたんだよ」と電話越しに伝える。駿は実央の言葉を電話越しに聞きながら携帯ショップの前に駆け付け実央の手を取る。そうすると実央は「駿が好いてくれてると思ったから、だから好きになったんだよ。俺が欲しいのは彼女なんかじゃないよ」と直接駿に伝える。帰りの船が無くなった2人はホテルを予約し空港から場所を移す。そしてようやく駿は実央との距離を縮めようとしてこなかった理由を打ち明かす。それは駿がゲイであることに後ろめたさを感じており、ゲイではない実央から普通の幸せを奪って申し訳ないという気持ちが強かったことが原因であった。駿は実央が戻ってきてから「俺なんかじゃなくて普通の女の子好きになった方が幸せだったのに」と思ってしまっていたことを伝える。しかし実央の気持ちが確かめられたことにより、ようやく駿は実央に対して恋人として向き合えるようになるのであった。

元婚約者の登場

北海道から駿に会いに来た桜子(右)と自己紹介をする実央(左)。

ある日突然、駿の元婚約者である桜子が北海道から駿を訪ねて離島へやってくる。彼女は駿の幼馴染ということもあり、駿の家族と親しい関係であった。そして駿を実家に帰らせるために来たという。ただ駿は自分と両親の縁はもう切れているも同然と考えており桜子の話に取り合おうとしない。翌日、再度駿を訪れに家までやってくる桜子であったが、駿は仕事中であったため実央に島の案内をお願いする。その間、桜子は駿がゲイであることは元々知っていたが彼のことがずっと好きだったので結婚したいと思っていたことを打ち明けたり、まだ駿と身体の関係がないと言う実央に「駿は上手よ、丁寧でやさしいし」と煽ったりして、実央を不安な気持ちにさせる。そして、駿を実家に連れて帰りたいのは駿の父親の具合が悪いからであることを実央に話す。その晩、再度実家に帰るよう説得する桜子と駿は大喧嘩をする。そして駿は「他人の家のことなんて放っておけよ、もうお前には関係ないだろ」と声を荒げる。その言葉が頭に来た桜子は一人で家を出て行ってしまう。今のは駿が悪いと実央も怒るが、駿は実央「俺はもう離れる気ないからな」と言って絶対帰らないという姿勢を崩さない。その言葉に両親がいない実央は自分の存在が駿を離島に引き留めているのだと思い、「人は死んじゃったらもう会えないんだよ」、「俺はいいよ、いいから帰ってあげなよ」と言い残し、桜子の後を追って家を出ていく。

実家には帰らないと意地を張る駿と喧嘩をして出ていく桜子(下)と彼女を心配して追ってきた実央(上)。桜子は実央と会話する中で優しい彼に文句のつけようがないので気持ちのやり場がなく、「もっと最低な相手だったら良かったのに」とこぼす。

駿の家を出ていった桜子は暗い浅瀬に立っていた。ひとりでこんなところに居たら危ないと実央も海に入ってくる。そんな優しい実央に桜子は苛立ち、実央に対して駿のことを引き留めたり、もっと自分の我儘を言えばいいのにと言う。桜子は駿に自分のことを好きになってくれなくてもいいから一緒にいてほしいと言っていたのであった。だが実央は「いつか駿が別の誰かを好きになって、その時一緒にいるのが自分じゃなくても俺はそれでいいよ」と返す。そして桜子はその言葉に対して「そう思えるのは今あなたが必要とされているからでしょう、だから腹立たしいのよ」と声を荒げる。桜子の駿に対する未練を察した実央は謝るが、桜子は駿と両想いの実央に何が分かるんだと呟く。そうすると実央は「わかるよ、そんなの俺だって君と同じくらい駿が大事なんだよ」と言う。実央が文句のつけようがない人柄であることを思い知らされた桜子は苛立ちのやり場を無くし涙を見せるが、怒りで高ぶっていた気持ちがようやく落ちつく。2人は海から上がって砂浜に並んで座る。そうすると実央は自分の父親が海で遭難して亡くなっていることや、それから二人で暮らしてきた母親も数年前に亡くしていることを桜子に打ち明ける。そして家族を失うということは本当に悲しいことだったし、今でも悲しいと言う。だからこそ駿が離島から離れるのは寂しいことだけれども、変な意地を張っていないで家に帰ってほしいと思っていることを話す。

駿(左)への恋心を諦める代わりに最後にキスをしてほしいと言う桜子(右)と2人の間に割って入る実央(真ん中)。

翌日、桜子が北海道に戻るので駿と実央は船乗り場まで見送りに行く。桜子と駿は喧嘩したままであったが、桜子が最後に駿の父親の具合のことを話そうとすると駿は「わかってる」と言って言葉を遮る。桜子が来た日に駿宛に実家から手紙が来ており、その手紙に父親の具合が悪いことが書かれていたので駿は状況を知っていたのであった。その言葉を聞いた桜子は「そう、それならいいわ」と返事をする。そして桜子は唐突に「ねぇ駿キスして頂戴、それでもう諦めるわ今まで一度もしてくれたことないのよ」と言う。桜子が駿と身体の関係を持っていたということは嘘だったと分かった実央は、駿ならこれが最後だとお願いされたら応じてしまいそうだと焦る。そして実央は2人の間に割って入り、駿の代わりに桜子にキスをする。船が出発の時刻となり「あなたじゃないわよ」と怒った桜子はそのまま船に乗せられて、離島から離れていく。そんな桜子に実央は「駿は良くても俺が無理、また来てね桜子さん」と笑って見送るのであった。その後即座にキスを断らなった実央は駿に怒る。その晩、駿は怒って自分の布団の中で泣いている実央に寄り添い「お前いるのにあんなお願い聞くわけないだろ」と言い甘いキスをする。そして仲直りした二人は身体の関係をはじめて持つことになる。その後、シャワーを浴びてきた実央は縁側で寝転んでいた駿に対して「俺ね女の子が好きだよ、それでも駿のこと好きになったよ、大丈夫だよ男が好きでもおかしくないよ」と声を掛ける。そしてその言葉を聞いて駿は決心がつき、実央に実家に帰ると告げる。

一緒に北海道に行こうと誘われ喜ぶ実央(左)と喜んだ実央に引っ張られて海に入り冷たいと水しぶきを上げる駿(右)。

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