Dolls ドールズ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Dolls(ドールズ)』とは、2002年公開、北野武が監督を務めた日本のラブストーリー映画である。
北野武監督第10作目。人形浄瑠璃『冥途の飛脚』をモチーフに3つの物語から構成される。
青みがかった色彩のキタノブルーで知られる北野武監督だが、本作ではさまざまな色彩に満ちた映像になっていることが話題になった。
第59回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品作。衣装を山本耀司、音楽を久石譲が手がけた。
キャッチコピーは「あなたに、ここに、いてほしい。」である。

有間ダム (名栗湖) 埼玉県飯能市下名栗

繋がり乞食の佐和子が落下した石垣。この時は松本が佐和子を助けた。

タイトルバックのシーンにも登場する桜並木

権現堂堤 埼玉県幸手市

タイトルバックにも使われている、松本と佐和子が「繋がり乞食」となって桜並木を歩くシーンはここで撮影された。
ハラハラと美しく散る桜は周囲の人から「繋がり乞食」と噂され見世物になってしまったような松本と佐和子の無表情さを際立たせている。

北野武の映画の共通項『死』というもの

北野武の映画に共通して、死は突然起きる。理由も、必然性もない。あくまでも突然に、容赦なく、意味もなく急に人は死ぬ。この映画でも同様に、彼らはみな、急に死ぬ。それも、愛が報われたかと思われる瞬間に。映画は、それぞれの死をもって、終わる。
このあたりについては、『武がたけしを殺す理由』という、渋谷陽一の武に対するインタビュー集のなかで詳しく語っている。

北野武「――今回もねえ、撮っている最中にこれは究極の暴力映画だなと思ったわけ。要するに主人公の男も病院に迎えにいかなきゃこんなことになってないわけだし。親分もむかしのこと思い出さなければ、あんなことにならねえで済んだし。追っかけの奴も何もアイドルを熱狂的に応援して、そんなことまでしなくてもいいんだけど、でも実は敢えてそれをやったとき、一瞬でも幸せなときがみんなあるわけ。けど、そうやって一瞬でも仏心出していい思いをした瞬間というのは、同時にいちばんの暴力という死が襲う瞬間なの。だからみんな死んじゃうんだよ(笑)」

だそうな。そういう経験があったんですかね。

「――なまじね。過去を悔いてね、いい人になろうなんて思った奴は大抵癌かなんかになって死ぬんだよ」

とも語っています。

出典: blog.livedoor.jp

この『Dolls』でも、松本は結婚を約束した場所でネックレスを見せ微笑む佐和子と少し心が通じたようなシーンの後で佐和子と共に転落死する。
親分も毎週土曜日に良子のもとに通おう、良子も親分のことを気に入ってくれているというところで背後から撃たれて死ぬ。
温井は春奈と直接会うことができるようになったのに原因不明の死を遂げる。

幸せを感じた瞬間にみんな死んでいる。
武監督に言わせると希望と死は隣りあわせなのかもしれない。

出演女優との確執

北野武監督は演出に口を出してくる役者を特に嫌う。そのうちの1人と挙げているのが佐和子役の菅野美穂。
菅野は武がオーケーを出したのにも関わらず、自分の演技に納得がいかなかったと再撮影を何度も希望してきたため武の逆鱗に触れてしまったという。

「ヨウジヤマモトのファッション・ショーにさせていただく」と宣言

衣装を担当した山本耀司さんは、映画製作時のミーティングで「ヨウジヤマモトのファッション・ショーにさせていただく」と宣言したそうです。

この宣言の意図とは?『Dolls』映画パンフレットのインタビューで山本耀司さんがこう語っています。

ーファッション・ショーという意味は、もちろん、僕のファッションショーという意味ではありません。例えば前作の『BROTHER』のときには、できるだけ匿名のデザインを心がけたわけです。映画の衣装って、普通、そういうそういうものですよね。

(中略)でも、二回目か三回目の衣装合わせのときに、「日本の四季を撮りたい」という武さんの意向がだんだんはっきりしてきたんです。「日本の四季の色だ」と。それを聞いて、「だったら歌舞伎ってことじゃないか」と僕は思ったんです。それで、まるで歌舞伎の一コマ一コマみたいな、架空の、作り物のカップルのファッションショーにしようと考えていったわけです。

山本耀司さんの衣装は北野武監督も絶賛しており、映画の撮り方すらも変えてしまいました。

『Dolls』映画パンフレットのインタビューで北野武監督がこう語っています。

ー細かい打ち合わせはナシ。「ヨウジさんにすべてお任せします」って言って出てきたのがあの衣装。ヤラレたって感じだね。
「秋の衣装ができました」っていうんで衣装あわせにいったら菅野美穂さんがあの真っ赤なドレスで出てきた。椅子から飛びあがったよね。鯉のぼりが出てきたのかと思ったもん。ホームレスの衣装をお願いしたわけだからさ、アディダスのジャージの擦り切れたヤツとか、ボロボロのスカートとか予想してたわけだから。背景は紅葉です、って伝えてあったし、まさか赤に赤を持ってくるとは思わないじゃない。

でも、そこで腹をくくったというか。もともと「人形が語る」っていうコンセプトだったのを、もっとはっきり「人間が人形に操られている物語」にすればいいわけだから。衣装のおかげで「日本の四季」を舞台美術そのものだ、っていうふうに撮ろうという方向性が決まった。それはうまくいったと思うよ。

だからヨウジさんの衣装じゃないきゃ成立していないんだよね。

出典: katsudo.exblog.jp

この映画は山本耀司の衣装なしでは成立していないということは、このインタビューからもわかる。

まず武監督が日本の四季を撮りたいという思いを伝え、山本耀司氏に衣装は任せるとお願いした。
そこで出てきた衣装が色彩豊かな美しい衣装であったため、もともとの日本の四季を撮りたいという思いが強まり、色彩豊かな映画を撮ろうと決まったのである。
『繋がり乞食』の衣装はリアリティーのあるくたびれたアディダスのジャージではなく美しい衣装にすることによって、もともとあった「人形が語る」というコンセプトを「人間が人形に操られている物語」に発展させることとなった。

山本耀司氏も武監督の四季を撮りたいという思いを汲んで、まるで歌舞伎の衣装のような、架空の、作りもののカップルの衣装を作ることを決めた。
それがヨウジヤマモトのファッションショーにさせていただくという宣言に繋がったのである。

映画『Dolls(ドールズ)』受賞歴

●第59回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品作
●ダマスカス国際映画祭・最優秀作品賞
●第4回文化庁優秀映画賞・長編映画部門優秀映画賞
●第12回東京スポーツ映画大賞・作品賞・助演女優賞(菅野美穂)

『Dolls』の主題歌・挿入歌

久石譲 『Dolls』

『Dolls(ドールズ)』の関連映像

予告編

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