宮本武蔵(バガボンド)の徹底解説・考察まとめ

宮本武蔵とは、井上雄彦の漫画、『バガボンド』の主人公。
本作は古川英治の小説『宮本武蔵』を原作としているが、人物設定などに大胆なアレンジをくわえている。
単行本は計37巻、1998年からモーニングで連載開始。2015年から休載が続く。
宮本武蔵が剣術での天下無双を目指す物語。
名作、スラムダンクの作者でもあり、実力派の漫画家として名高い井上雄彦が描く、荒々しい活劇と哲学的な言葉の数々が、双方を力強く引き立てている。
キャラクターの心情と精神的成長が見どころの一つ。

宝蔵院初代・胤栄(ほうぞういんしょだい・いんえい)

武蔵と会話する胤栄。

宝蔵院にて、胤舜に完敗した武蔵に刀と着物を授ける。
胤舜の強化という目的あっての事とはいえ、武術を教えるため、武蔵に稽古をつけた。
普段は、農作業や漬物を作ったりと、穏やかな生活をしているが、武蔵が驚くほどの殺気を放つこともある。
亡くなった後は、武蔵の深層心理に出てくるようになる。

武蔵に影響を与えた胤栄の言葉

「お前自身の殺気が出会うものすべてを敵にする。他人はそれを映す鏡にすぎぬ。そしてそれはお前自身が仕立て上げた敵にすぎぬ」
常日頃から無自覚に殺気を放つ武蔵に指摘する場面。

「天下無双とはただの言葉じゃ」
天下無双と言う言葉に囚われているうちは、本当の意味での強者にはなれないという言葉。この言葉を言われた武蔵は理解できずに難しい顔をする。

「海を泳いでる最中には海の広さはわからんよ」
まさに今、天下無双を追い求めている最中の武蔵に言った言葉。この後に、身近にある一番高いと思い込んでいる崖を登りきるが、頂上からの景色はさらに高い崖が多数あった。上には上がいることを感じ、にやける武蔵であった。

宝蔵院二代目・胤舜(ほうぞういんにだいめ・いんしゅん)

幼いころから、天才と称えられる。故に同等の力を持つ者との命のやり取りを欲している。
訪ねてきた武蔵と戦い、圧倒的な力で、彼が逃げ出すほどの恐怖を与えた。
胤栄による稽古で成長した武蔵と再戦するが、力は互角で共に倒れ「次合うときは命を奪い合うことなく」と言った。

柳生石舟斎(やぎゆうせきしゅうさい)

武芸者からは天下無双と呼ばれているが、お茶目な性格で勝負ごとに負けると、子供のように駄々をこねる。
おつうを世話役として、近くに置きかわいがっている。
柳生石舟斎を標的としていた武蔵に天下無双とは何かを教え、彼に尊敬に値すると認めさせた武の先人。
老衰で亡くなった後は、武蔵の深層心理に出てくるようになる。

すべて見透かすような目で武蔵を見る柳生石舟斎。

武蔵に影響を与えた柳生石舟斎の言葉

「天下無双とはただの言葉じゃ。考えれば考えるほど、見よう見ようと目を凝らすほど答えは見えなくなる。だから目を閉じよ。お前は無限じゃろ?」
天下無双とはなにかという武蔵の問いに答える柳生石舟斎。
天下無双を手に入れた剣術家など居ないということ。ありもしないことについて考えるのなら、目を閉じた方が視界が広がる。存在するのは、日々の斬り合いにて、生き残った者と死んでいくものがあるだけ。そしてこれは、斬り死にするまで続く訳で、そんな殺し合いの螺旋から降りる者も出てくる。

宍戸梅軒(ししどばいけん)

武蔵と対峙する宍戸梅軒。

本来の名は辻風黄平。宍戸梅軒とはすでに死亡している人物で、残された彼の子、龍胴(りんどう)と暮らし始めたことで、宍戸梅軒と呼ばれるようになる。
龍胴が使用していた鎖鎌を自らも習得する。
宍戸梅軒を訪ねてきた武蔵と戦うも敗れ、梅軒は「殺し合いの螺旋から降りる」と命だけは見逃してもらう。

宮本武蔵の来歴・活躍

宮本武蔵が誕生するまで

時代は戦国末から、江戸時代にかけて。
17歳になった新免武蔵は、幼馴染の本位田又八に戦で名前を売ってのし上がろうと誘われ、関ヶ原の合戦に西軍として参戦する。
戦は甘くなく、敗戦する。戦場から宮本村への道中、3人の残党狩りに襲われる。3日近く飲まず食わずの新免武蔵だったが、岩と木の枝で3人をあっという間に撲殺。
残党狩りとの闘いは続き、今度は辻風典馬という男に襲われる。
早々に相手の強さを悟って、怖気づいた辻風典馬は逃げ出すが、武蔵に無残に惨殺される。

残党狩りの追手から逃げ、山に入るが、辻風典馬の弟、辻風黄平に奇襲を受ける。
武蔵は、初めて自分に問う。
「自分は何のために生きるのか。この先にある幾多の戦いの先に何があるのか。最後は切り死にするんだろう」
決着のつかぬまま、戦いは幕を閉じた。

沢庵に諭される武蔵。

山での逃亡生活の末、幼馴染のおつうが現れ、何日もの間、命のやり取りで張りつめていた緊張が解け、放心状態になった所を、沢庵(僧)に捕獲される。
精神的、肉体的にボロボロの武蔵を縄で縛り、木から吊るし、戒める。自力で飯も食べられない。尿を漏らすなど醜態をさらし、「自分を殺せ」と沢庵に命令する。
沢庵は「これまでたくさんの人の人生を終わらせたやつが、自分だけ死にたいときに格好よく死ぬのは自分勝手だ。闇を抱えて生きろ」と諭す。

答えは出ずとも、自分の存在理由、天下無双を目指し多くの命を奪ったことを考える武蔵。
名を新免武蔵改め、宮本武蔵(むさし)として、天下無双の旅に出る。

天下無双への旅(吉岡編)

21歳になった武蔵は、剣術での天下無双を果たすうえで避けては通れない道である、京最強の剣豪、吉岡清十郎との闘いを求め、京の吉岡道場へ、単身乗り込む。

武蔵は吉岡の門弟たちをものともせず、吉岡清十郎にたどりつく。
ここで武蔵は、己の弱さを知る。
吉岡清十郎は一瞬で武蔵の懐にはいり、木刀もろとも、額を割った。武蔵の額の傷はここでできる。
武蔵から、計り知れない向上心を感じた清十郎は、「君のすべてをぶつけさせる器量は、僕にはない」といい、武蔵のもとを去る清十郎。
圧倒的な力の差を見せつけられ、上には上がいることを身をもって体感する武蔵。
清十郎と、今の自分とで、どれだけの差があるか見極めるために道場に来たが、力の差は歴然だった。

続く吉岡伝七郎(清十郎の弟)との闘い。
清十郎に折られた木刀を両手に持ち、二刀流の構えをする。刀の長さは半分だが、武蔵はここで初めて、二刀流を見せる。
足が出ず、体が思うように動かない。自分がこの戦いで命を落とすかもしれない。恐怖を感じていることに武蔵は動揺する。

そんな中、幼馴染の本位田又八が騒ぎを起こす武蔵に乗じ、道場の酒蔵にある酒を盗み飲む。
泥酔した本位田又八がこぼした酒にろうそくの火が引火し、吉岡道場は火事になる。武蔵と吉岡伝七郎は火に包まれる。
吉岡伝七郎は「もっと強くなった貴様が見たい」と言う。
武蔵と伝七郎は1年後に再び相まみえることを約束し、武蔵は、京を出る。

天下無双(奈良・宝蔵院編)

京、吉岡道場を出て、沢庵のもとで、傷を癒すために寝込んでいる武蔵。
宮本村での幼馴染、おつうの夢を見て、頭から離れなくなる武蔵。
天下無双をしようとしている者が女性のことにうつつを抜かしている暇はない、おつうは天下無双に必要ないと捉え、
気持ちを振り払おうとする。結果、剣術以外の邪念が生まれる。そんな武蔵は、僧である沢庵にさえ木刀を当てられるほど、注意散漫だった。

沢庵に「すべてひっくるめて武蔵だ」と言われ、沢庵の言葉から、自分のことを知り、自分の弱い部分も認める。また1つ心境の変化が起きていた。

奈良・宝蔵院への道中、農作業をしている老人に話しかけようとする武蔵。
その時、老人から感じたことのない殺気を感じ怯む。老人曰く、後ろから殺気を感じたから、自分も殺気をだすはめになったといい、常に殺気立っていることを指摘される武蔵。
「他人はそれを映す鏡。お前の殺気が敵を作り出している。強いではなく、不細工だ」老人は言った。

強いとは何かを考える武蔵だったが、考えるより行動が先の男。答えを導き出すため、宝蔵院二代目・胤舜と対峙する。
宝蔵院・胤舜と立ち会った武蔵は、その槍術の圧倒的な力を目の当たりにする。
殺気立つ武蔵は精神面で粗が目立つ。その粗を狙って的確に攻撃しているような胤舜の攻撃。
吉岡道場での戦いの時とは違い、己の無力さに絶望し、感じたことのない恐怖を憶える武蔵。ついにはあとずさりしながら、胤舜の顔面へ砂をまき散らす。
武蔵とは真逆で、胤舜は戦いを楽しんでいる。
「命のやり取りをしよう」そう言って迫る胤舜に底知れぬ恐怖を覚え、ついに武蔵は逃亡する。

逃亡した武蔵は、ここに来る道中で出会った老人に介抱される。この老人が宝蔵院初代・胤栄だったことを知る。
胤栄のもとで、心身ともに鍛えられた武蔵は、不細工な殺気を内に秘め、自分を客観視してみたりと、成長が見える。
客観視することで、相手、自分をよく見て、その情報によって打つ手を考える。それを自然とするようになる武蔵。
本能のまま動くのが武蔵のスタイルでもあるが、洗練された剣術の前では、時にそれが命取りになる。
胤栄は武蔵を鍛え、幼いころから競争相手のいなかった二代目・胤舜に彼をぶつけて命のやり取りをさせることで宝蔵院流槍術の強化を目論んでいた。

徳野雄大
徳野雄大
@go-100750209666658799710

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