フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』とは「Annapurna Interactive」から発売されたゲーム作品。変死や蒸発など、奇怪な事件に彩られたある一族の歴史を紐解いていく重層的なストーリーが高く評価され、数々の名誉ある賞を獲得している。主人公の少女エディス・フィンチはフィンチ家の末裔にして唯一の生き残りだ。彼女は6年前に去った、ワシントン州オルカス島の実家に再び足を運び、屋敷を探検する中で不審死を遂げた親族たちの秘密を知る事になる。

操作キャラクター・エディス

グレゴリーは入浴中に溺死し、たった1歳でこの世を去った。
ケイはよそ見した自分を責め、サムは手紙の中で「君は悪くない」と必死に宥める。サム曰く、グレゴリーはカルビンによく似ていたそうだ。カルビンと同じく夢想家で、何もない所を見てはよく笑っていたグレゴリーを悼み、彼が見ていた世界がどんな世界か知りたかったとサムは切望する。
グレゴリーが見た海の世界は、洗剤が混入した湯を飲んだせいで引き起こされた幻覚かもしれないが、最期に美しいものを見てほしいと祈るサムの親心に偽りはない。
グレゴリーの事故死が原因でサムとケイは離婚し、ドーンとガスは母親を失った。グレゴリーのベビーベッドの隣はドーンの1人目の弟ガスのベッドで、そこにはドーンが亡きガスに捧げた詩が、凧揚げの棒に巻き付けられていた。

操作キャラクター・ガス

ケイと離婚後サムは後妻を迎えたが、思春期のガスはフィンチ家の庭で行われる結婚式に反対しサムと喧嘩する。
普段子供たちに手を上げることがないサムも、ガスの反抗的な態度に怒り、彼を叩いて結婚式を強行する。ドーンも内心再婚には反対していたが、彼女自身まだ子供であり、父親の決定に異を唱える勇気がなかった。
ドーンは結婚式に出る位なら死ぬと言い張り、挙式の間中凧揚げをしていた。ドーンは結婚式に参加するようガスを説得したが、彼は屋敷を去ったケイを慕い、「継母はいらない」の一点張りだ。ガスは結婚式が行われる庭の上空に凧を旋回させ、挙式を妨害する魂胆だった。サムは記念撮影に加われとガスを呼んだが、ガスは高圧的な父親に中指を立て、強風が吹きすさぶ中狂ったように凧を飛び回らせる。

ガスは凧揚げの最中に事故死する。

風はどんどん強くなり暴風の域にまで達した。おまけに激しい雨が降り出し、結婚式が中断されて皆が避難してもなお、ガスは父親への当て付けで凧を上げ続けた。ガスは無人になった式場を凧でひっかきまわし、嵐が椅子やテーブルをひっくり返す光景を愉快がる。ガスが操る凧は椅子やテーブルを率いて空を飛んでいたが、やがてテントすらも吹き飛ばし、そのテントが彼のもとへ向かってくる。ガスは逃げる暇もなくテントに押し潰されて死んだ。

操作キャラクター・エディス

ガスはテントの下敷きになって死んだ。ドーンはガスを見放した事を悔やみ、結婚式の間もガスの事を考えていたと彼への追悼の詩に書いていた。ガスの死はドーンのしこりになり、彼の死因を表立っては話さなかったものの、「もしエディスが男の子だったらガスと名付けていた」とドーンが漏らしたことがある。
ガスの死後ドーンは屋根裏に部屋を移した。その屋根裏へは子供部屋から梯子を通じて行けた。エディスは梯子をのぼり、母親が暮らした屋根裏へ着く。屋根裏には祭壇があり、ドーンが亡くした父親と弟2人の写真、そして聖書が飾られていた。最愛のサムの死にショックを受けたドーンは宗教に救済を求めたのだった。
ドーンは大学を卒業した1週間後にインドへ移住し、そこで英語教師の職を得、現地の男性と結ばれるも数年後に夫を亡くし、3人の子供を連れて実家に帰ってきたのだった。屋敷の塔部分はドーンが3人の子供の為に建て増しした離れだった。
父親に先立たれた母親の心情を思い、同情するエディス。遠く離れた異国で路頭に迷ったドーンは、フィンチ家へ帰るしか選択肢がなかったのだ。ドーンの部屋の窓を開けるとキャットウォークがあり、それを伝ってベランダへ行ける。ベランダからさらに階段を上るとコテージへ行く。このコテージはルイス、ミルトン、エディスの教室として使われていた。3人は学校へ通っていたが、それ以外にも母親ドーンから英語を教えてもらっていたのだった。
コテージからはさらに階段が繋がり、それを上るとミルトン専用の小屋へ行く。ミルトンは絵の才能があり、イーディは彼の10歳の誕生日に、専用のアトリエとしてこの小屋を贈ったのだった。ミルトンは屋敷内に自分の部屋もあったが、イーディにアトリエを貰ってからはこちらで過ごす時間の方が長かった。
アトリエの扉は鍵がかかっていたが、横手に回り込むと窓があり、そこは施錠されていなかった。エディスは窓を開け放って中へ侵入する。
ミルトンのアトリエには絵の具の足跡がたくさん付いていた。部屋には沢山の画材がある。中でも目立っていたのは、縦長のキャンバスに描かれた扉の絵だった。
イーディは自分に次ぐ絵描きが一族の中から出たことに喜び、ミルトンが才能を発揮できる環境を整えたのだ。部屋の中央にはロープがあり、ロフトへ上れるようになっている。エディスはロープをよじのぼってロフトへ行き、ミルトンが自作したパラパラ漫画『魔法の絵筆』を読む。

操作キャラクター・ミルトン

ある日ミルトンが絵筆で自画像を描いていると、絵の中のもう1人の自分が語りかけてきた。ミルトンが手に入れたのは描いた物に生命を与える魔法の絵筆だった。ミルトンはその絵筆を用い、キャンバスに原寸大の扉を描く。
完成した扉は具現化し、ミルトンは優雅に一礼して魔法の扉から異世界へと去っていく。

操作キャラクター・エディス

エディスはパラパラ漫画を元の場所に置く。ミルトンが蒸発した理由はおろか、その生死さえ今に至っても不明のままだ。ドーンは数か月もミルトンの行方をさがしていたが、遂に諦めて彼のアトリエを封じた。弟の蒸発を止められなかったルイスは自分を責め、学校を出てからますます塞ぎこむようになった。ルイスはもともと内向的な性格で人付き合いが苦手だったのだ。
ミルトンのアトリエを出たエディスはキャットウォークを回り込み、今度はルイスの部屋へ行く。

サイケデリックな色調で統一されたルイスの部屋。

ルイスの部屋はサイケデリックな色調で統一されていた。ルイスは仕事以外は部屋にひきこもり、ゲーム三昧の日々を送っていたらしい。室内には数種類のゲーム機のハードと大麻吸引用の水パイプがおかれており、生前のルイスが麻薬の常用者だったことが窺える。
机の上にはドーンがルイスの精神科医に問い合わせた手紙の返事があった。エディスはそれを開いて読み始める。

操作キャラクター・ルイス

手紙にはルイス担当の精神科医の所見が記されていた。
精神科医の話によるとルイスの鬱病が悪化したのは、彼が薬物治療に踏み切った後だった。素面に戻ったルイスは缶詰工場の勤務を続けるうちに、自分の毎日がいかに単調で退屈か思い知らされた。やがてルイスは現実逃避し、自分の好きなRPGの世界の空想に浸り始める。ルイスの空想世界では彼は勇者であり、世界中を冒険していた。カウンセリングにて、ルイスは自分が見ている空想を精神科医に話す。
異世界の勇者となったルイスは迷宮を制覇し、怪物と戦い倒す。それは己の空想に過ぎないとルイスは自覚していたが、単調で無為な缶詰工場での日々よりも、ルイスは空想の世界に生きる事を選んだ。次第にルイスは現実と虚構の区別が付かなくなり、ベルトコンベアーを流れてくる鮭を解体する作業の間も、勇者となって活躍する空想に浸り続ける。
ルイスの症状悪化を危ぶんだ精神科医はルイスの上司に相談するが、上司は「彼は模範的な従業員になった」と取り合わない。几帳面で無断欠勤もせず、文句も言わないルイスの態度は上司にとって好ましく、それを聞いた精神科医はルイスに勤務を続けさせてしまった。

缶詰工場で一日中ベルトコンベアーを見詰め続けるルイス。

ルイスは己の脳内に広がる空想の世界に、自分の名前をとってルイストピアと名付けた。ルイストピアはルイスにとっての理想郷だった。ルイスは精神科医に新しい友達ができたと報告するが、それは現実には存在しないルイストピアの住人だった。ルイスはどんどん架空の友人を増やしていき、やがてバンドを結成する。ルイスのバンドは愉快な音楽を奏でながらパレードし、皆がルイスを褒めたたえる。ルイストピアの繁栄と反比例し、現実のルイスはどんどん無口になり、缶詰工場で一言も言葉を発さなくなった。彼の心は完全にルイストピアに囚われてしまったのだ。
しかしある日突然ルイスは気付く。自分を迎える群衆から足元の墓石に至るまで、全ては自分の妄想に過ぎない事実に。「妄想ならなんでも好きなことができるじゃないか」と吹っ切れたルイスは、ルイストピアで市長選挙を行って当選する。ルイスは船に乗って海に漕ぎ出し、他国に戦争を仕掛けてどんどん制圧していく。妄想にのめりこんだルイスは職場から帰宅するのも忘れ、「現実を見ろ」と諭す母親にも耳を貸さない。
航海のゴールはルイスバーグという国だった。彼は大冒険の末ルイスバーグの宮殿に辿り着き、そこで女王への謁見を果たす。数々の試練を乗り越え、輝かしい伝説を打ち立てたルイスは女王に称賛され、ルイスバーグ国王として迎えられる。
「自分の身体は自分の空想と同じ位本物なんだ」とルイスは痛感するが、王冠を被った彼が宮殿の扉を開けると、その先は深夜の工場のロッカールームだった。タイルを敷き詰めた床には鮭を解体した血だまりができている。完璧な空想と殺伐とした現実の落差にうちのめされたルイスは、次第に家族がいる現実の世界を忘れ始める。
動いてないベルトコンベアーの前でひたすら手を動かし続ける現実のルイス。ルイスバーグの国王となったルイスは、工場勤めのアルバイトでしかないその人物を軽蔑した。

女王が待ち受ける断頭台へ自ら進んでいく空想世界のルイス。

やがてルイスバーグの女王から王冠を授与される日がやってくる。両側に家来が傅く赤絨毯が敷かれた道を歩いたルイスを待っていたのは、王冠を抱えた美しい女王だった。何故か女王は断頭台の向こうに立っており、王冠を貰う為には断頭台の軛に首を入れなければいらない。空想世界のルイスが王冠を戴こうと頭をたれ、現実のルイスもそれをなぞって鮭の切断機に頭を突っ込む。

操作キャラクター・エディス

精神科医からの手紙は「あなたの息子さんは知る人が誰もが惜しむいい人でした。心よりお悔やみ申し上げます」と結ばれていた。エディスの長兄ルイスは、缶詰工場の事故で首を切断されて失血死したのだった。情緒不安定で精神科への通院歴があったため、ルイスの一件は自殺として処理された。エディスは精神科医からの手紙を畳んで机上に戻す。
ルイスの部屋を出たエディスは、ルイスの葬式の後母親に荷造りを命じられた事を思い出す。息子2人を亡くした哀しみに耐えきれず、ドーンはエディスを連れて出て行こうとしたのだった。ドーンは屋敷を去る事を、実行に移す前日までイーディに告げずにいた。止められると思ったのか、それとも単純に話し辛かったのかドーンの気持ちはわからないが、彼女が屋敷を去ると決断した理由ならエディスにもわかる。この屋敷には辛い思い出が多すぎたのだ。
次にエディスが訪れたのは在りし日の自分の部屋だった。彼女はそこで自分の日記を開き、羽ペンで屋敷を去る前夜の出来事を書き記す。
居間にて、エディスとドーン、そしてイーディは最後の晩餐を囲んでいた。イーディは口数少なく、ドーンとエディスの荷造りを無言で見届けたあと、ドーンへのプレゼントを廊下に用意してると彼女に離席を促す。廊下にプレゼントを取りに立ったエディスの耳に、イーディとドーンの会話が聞こえてくる。ドーンはイーディも同行するよう説得したが、イーディは家を守り続ける事にこだわり、頑として首を縦に振らない。
イーディがドーンに用意したプレゼントは新しい日記帳だった。

フィンチ家の書庫へ通じる扉。

日記帳を手にしたエディスはイーディとドーンが喧嘩する居間には戻らず、書庫へと足を向ける。イーディは「あんたが恐れてることは家を出たからってなくならないよ」とドーンをなじり、ドーンは「みんなこの屋敷のストーリーを知ったから死んだのよ」と言い返す。父親や兄弟のみならず、愛する息子2人までもに先立たれたドーンは、屋敷の呪いを信じかけていた。この上娘まで奪われてはたまらないと、エディスを連れて屋敷を去る決断をしたドーンに対し、イーディはここを離れてもフィンチ一族の歴史から逃げきることはできないと説く。頑固なイーディに業を煮やしたドーンは、朝に介護施設から車を送らせるからそれに乗れとイーディに厳命する。
書庫へ入ったエディスは、机の上に置かれた1冊の本を見付ける。それもまたイーディがエディスに贈ったプレゼントだった。イーディは屋敷を去るエディスの為に、彼女が生まれた日の出来事を書き記していたのだった。エディスは本を開き、その記述を読み上げる。

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