日本沈没2020(Japan Sinks : 2020)のネタバレ解説まとめ

『日本沈没2020』とは小松左京の小説『日本沈没』を原案としたNetflix配信のオリジナルアニメ作品、全10話。監督は湯浅政明。ジャンルはSFパニックで架空の2020年東京オリンピック終了後が舞台。日本で巨大地震が発生し、都市機能が崩壊する。未来のオリンピック選手として有望視されていた中学生の武藤歩は倒壊した東京を捨て、両親や弟とサバイバルしながら日本を旅する中で様々な人との出会いと別れを繰り返していくが、日本列島沈没はすぐそこまで近付いていた。

倒れた剛に駆け寄る皆。カイトが医療品をもって手当にあたるが、剛はぴんぴんしている。ポーチに入っていた携帯ゲーム機が矢を阻んだのだ。キャットウォークから下りた老人は「すまない、当てるつもりはなかったんだ」と謝罪し、剛はそれを許す。歩やマリは老人の暴挙に憤り店を出ようとするが、外は嵐で荒れている。老人は罪滅ぼしとして「ここでよければ凌いでいけ」と一同に言い渡す。
老人は疋田国夫といい、現在はスーパーの裏の一軒家で独り暮らしをしているらしい。疋田は壊した詫びに剛のゲーム機を修理する。疋田は手先が器用で、彼が製作した犬のロボットが倉庫を走り回っており、可愛いと剛が喜ぶ。作業台の近くの壁には、老人の孫とおぼしき女の子が描いた、犬のロボットの絵が貼られていた。短気で頑固者だが、いつのまにか剛とうちとけている疋田を「奇妙な爺さんだ」とカイトは評す。
台風の夜、歩たちは疋田が供した漬物とスーパーのレトルトごはんで簡素な食事をとる。野菜が嫌いな剛は漬物に「腐ってるんじゃないの」と文句をたれるが、「発酵っていうんだ」と疋田に訂正される。何日も風呂に入ってない剛と歩はテンションが下がり、「雨でも浴びたい」と外の豪雨を眺めるが、カイト曰く原発事故で雨も多量の放射能を含んでいるらしい。
翌朝、カイトが計測した放射能の濃度はさらに上がっていた。ここに留まるのは危険だと判断したカイトは、歩たちを伴って店を出る。剛は疋田も一緒に行こうと誘い、疋田の車に乗って脱出する。間一髪土砂崩れを避けて車を飛ばす疋田。彼は亡き妻と40年経営してきたスーパーが土砂に押し流れる様に諸行無常を感じる。
助手席のマリは疋田の喫煙を注意するが、疋田はむしゃくしゃして「うるせえ」とどやす。なんとかスーパーを脱出したものの、次の目的地を決めていなかった歩たちは戸惑うが、疋田の提案で「シャンシティ」という場所へ向かうことになる。
その日、焚火を囲んで野宿をした歩たちはラジオニュースを聞く。それによると全国の被災者は1億人以上、万一日本列島が沈没する場合に備え、海外へ脱出するための船舶が日本の各地に用意されたのだそうだ。満員になった船舶から順次出航予定だが、混乱を避ける為に乗船者はマイナンバーの抽選になるとのこと。これらの政府の決定をラジオはD計画として報じる。「ABCがあったの?」と歩はラジオに突っ込む。
翌日、土砂崩れを避けて道路を迂回した疋田の車は、ヒッチハイク中の外国人・ダニエルに遭遇。外国人嫌いな疋田は乗せるのを拒むが、お人好しのマリの「いいじゃない乗せてあげたら」の一言でダニエルを拾って再出発する。ダニエルは北海道から流れてきた大道芸人らしく、車中でも空中から花を出したり、ビックリした時に作り物の大きな目ん玉を出したりと、面白い手品で場を沸かせる。ノリのいいダニエルとマリは意気投合し、疋田はますます不機嫌になっていく。

シャンシティが打ち上げる歓迎の花火を仰ぐ歩たち。

一行はシャンシティに到着する。そこは金継ぎされた巨大な土偶のモニュメントが聳える、不思議なコミュニティだった。職員の話だと新興宗教団体ではないらしいが、皆人当たり良すぎてどこか胡散臭い。職員は歩たちを歓迎しシャワーを勧める。数日ぶりのシャワーと着替え、美味しい食事に歓喜する歩たち。広く快適な食堂はバイキング方式になっており、歩とマリはスリランカ式のカレーライスを頬張る。野菜嫌いの剛は野菜山盛りのカレーライスに「ダッド(お父さん)のカレーのほうがいい」とごねるが、歩は「お父さんのカレーは野菜が入ってない欧風だからいいんでしょ」と茶化す。
カレーを1匙食べた春生が「おいしい……母さんのカレーみたいだ」と呟く。彼の母親は地震発生時に瓦礫に押し潰されて死んでいた。その時台所にぶちまけられていたのがカレーだったのだ。「母さんは目の前で潰れていった」と泣きながらカレーをかっこむ春生の姿にしんみりする一同。剛も「ダッドのお弁当食べておけばよかった」と反省する。マリがカレーに入っていた知らない味を訝しめば、カイトは大麻だと指摘する。しかしマリや歩以外の面々はとくにこだわらずカレーをたいらげる。食材が何だろうと腹が膨れれば越したことないとサバイバル生活で身にしみたのだ。食堂のテーブルには芥子の花が飾られており、この施設が大規模な大麻栽培をしている事実を物語る。
シャンシティの案内人は好きなだけ留まっても出ていってもいいと言い、働くことは強制しないと告げる。シャンシティには自家発電が完備され、何百人もが自給自足できる体制が整っていた。施設内には金継工房があり、シャンシティの人間が陶器の割れ目を金箔で修繕していた。ただ直すのではなく新しいものに作り替える、日本にしかない素晴らしい技術だとダニエルは絶賛する。一行は広場にずらりと並んだモンゴルの遊牧民のテント、ゲルに案内される。ふかふかのベッドに喜ぶ歩だが、このご時世において満たされすぎた生活に疑問を抱くマリ。
夜、カイトが車へ戻ると疋田が運転席で苦しんでいた。彼は麻薬中毒者で、シャンシティに来たのも大麻めあてだ。カイトから貰った大麻を服用して、禁断症状の苦痛を癒す疋田。

第5話「カナシキゲンソウ」

サウナから出た疋田は水風呂で瞑想する。彼がシャンシティに来た目的は大麻以外にもあった。どうやら彼はシャンシティにいる誰かと会いたがっているらしい。
朝、ゲルから出た武藤一家とダニエルは爽やかに挨拶する。朝から元気なダニエルは手品を披露してマリの笑いをとる。ダニエルはマザーに会いに行くと発言し、マリがそれは誰かと問えば、死者と対話できる人だと答える。シャンシティは死者と対話できるマザーの能力を信じて集まった人々の共同体らしい。マザーみたいな異能の持ち主をこの世とあの世の中間の存在、ミディアムというのだとダニエルは説明する。今朝もまたマザーが信者を指名し、死者の声を代わりに告げる。マザーの本名は室田叶恵といい元極道の妻だったが、息子・大地を身ごもった事で不思議な力に目覚め、シャンシティの代表におさまったのだった。武藤一家とダニエル、カイトと疋田もマザーの儀式を見学に行く。
大地の傍らに立ったマザーは死者の遺品に触れ、その言葉を聞かせていく。津波にさらわれた実母に遺産が隠し金庫にあると教えられた女性は泣き崩れ、崩れた家の下敷きになった父親を見殺しにした男性は恨み言を吐かれる。剛も父親の声を聞きたいとごねるが、父親の死に対し負い目がある歩は咄嗟に拒む。元はと言えば彼女が食わず嫌いをしたせいで父親は死んだのであり、ひょっとしたら恨まれてるかもしれないと思ったのだ。
マザーの退出時、カイトが「インチキだな」と野次を飛ばす。マザーの部下の浅田修はカイトを追い払おうとするが、カイトはさらに追い縋り、能力が本当なら武藤家の面々で証明しろと迫る。彼はサクラの仕込みを疑っていたのだ。マザーは春生が七海から貰った眼鏡に触れ、「休憩しようと言ったのは私だよ、気にしないで」と、死んだ七海の言葉を歩にむかって代弁する。それを聞いた歩は七海本人と自分しか知らない休憩の事実をあてられ、マザーの能力が本物だと信じる。
マザーの儀式を見終えた武藤家、カイト、ダニエル、春生は食堂で朝食をとる。シャンシティには学校もあり、マリの命令で歩と剛も通わされる。2人が学校に行ってる間マリと春生は大麻畑で草むしりをする。学校を終えた歩も仕事をする。案内人は働く働かないは自由だと言ったが、おいてもらってる手前暇にしているのも心苦しい。歩に与えられた仕事は下半身不随の病人の介護だった。歩は甲斐甲斐しくその男を世話するが、彼が頻繁な瞬きで何かを伝えようとしているのを悟る。直後に小さい地震が襲い、この男は地震の予知ができるのかもしれないと思う歩。
剛は元力士の大谷三郎の夕食作りを手伝っていた。「好き嫌いせず食べなきゃ大きくなれないぞ」と大谷が言うが、「相撲取りになりたい訳じゃないしいい」と剛はそっけない。それを聞いた大谷は、大柄な自分なら力士としてやってけるかと四股を踏むが、「身体が大きいだけじゃだめでしょ」と剛にだめだしされて落ち込む。
その夜、シャンシティではパーティーが開催された。剛とカイト、それに春生が参加すると聞いて歩も興味を示す。ゲルに帰った歩はパーティーに行くと告げて母の意向を仰ぐが、マリは「うるさいの苦手だから行かない」と背を向ける。歩はやっぱり父親の声が聞きたいとマリに相談するが、マリは「聞きたくない、意味がない」と告げる。歩はカッとし、マリがダニエルと仲良くなって航一郎を忘れようとしているとなじる。マリとダニエルは相性ぴったりで、しょっちゅうふざけてあっていたのだ。歩の勘繰りにマリは一言、「大人になってちょうだい」と返す。キレた歩は乱暴にドアを閉じてパーティーにでかけていく。
パーティーには若者が大勢参加し、DJがかける音楽に乗せて踊り狂っていた。カラフルな照明とグルービーな音楽に浮かれる歩。
ゲルに1人残されたマリをダニエルがパーティーに誘いに来る。歩と喧嘩したマリは落ち込んでおり、パーティーに乗り気ではない。そんなマリをダニエルは外へ連れ出し、広場の片隅のブランコを一緒に漕ぐ。そこでマリはダニエルがユーゴスラビア出身で、戦争で妻子を亡くした過去を知る。愛する家族を失ったダニエルに共感を覚えたマリは、「強くしてないと壊れちゃいそうで」と、気丈に振る舞う胸の内を吐露する。歩にも優しくしたいが、航一郎亡き今自分が大黒柱にならなければと彼女は気張っていた。
パーティーのDJブースに飛び入りしたカイトは、春生の宝物のレコードを勝手にかけ、彼をブースに引っ張り上げる。カイトに背中を押された春生はやけっぱちでDJをこなし喝采を受ける。春生の晴れ舞台に感激する歩。そんな彼女をパーティーに参加していた初対面の男が外へ連れ出す。彼は「マザーと会って死者の声が聞きたいか」と歩を唆し、「自分にはコネがある」と迫る。押し倒されそうになった歩は男の顎に頭突きをかます。そこへ駆けてきたカイトは「やるじゃんワーオ!」と大はしゃぎし、直後に激しく吐く。大麻とアルコールのせいで彼は悪酔いしていたのだ。カイトと2人でパーティーから抜け出した歩は、どうして日本からさっさと逃げなかったのかカイトに聞くが、彼は「面白そうだったから。それだけ」と呟く。
明け方にゲルに帰った歩をマリが出迎える。マリは朝焼けに染まる広場に椅子を出し、長くなった歩の髪を切ってやる。そこでマリは「帰る国がない人だっているんだから我慢しなきゃね」と、ダニエルの身の上話を思い出して嗚咽する。歩はマリも寂しいのをずっと我慢していたのだと知り、母娘の絆が強まる。
一方、疋田は電動車椅子を操作して大地が眠る塔の最上階へ急ぐ。護衛を手製の弓矢で殺害し、大地の寝室へ忍び込んだ疋田は、「もう大丈夫だからな、じーじが助けにきてやったぞ」と大地に語りかける。疋田は大麻の幻覚で死んだ孫と大地を混同し、塔から助け出そうとしていたのだ。そこへマザーと浅田が駆け付け、大地誘拐の現行犯として疋田を拘束する。

第6話「コノセカイノオワリ」

シャンシティののびのびした暮らしで生まれ変わった春生は早朝にジョギングするが、スランプが長引いたせいですっかり脚力が衰えていた。
朝食の席で「走るの楽しい?」と剛に聞かれた春生は「どうかな」と微笑む。剛は姿が見えない疋田を気にしていた。疋田の麻薬中毒を知るカイトは「あの爺さんはもう壊れている」と突き放すが、剛は疋田の帰りを信じて疑わない。その時、空に花火が上がる。今日は大地の10歳の生誕祭で、シャンシティ全体が華やいでいた。夜には露店もでるそうだ。
塔のスタッフルームにはマザーと浅田、研究者の中年女性がいた。研究者は疋田が大麻のもたらす幻覚で死んだ孫と大地を取り違え、暴走したのだと説明する。マザーは大地の生誕祭が済むまでは事を荒立てたくないと、疋田の処分先送りにし独房に監禁する。浅田はマザーの肩に手をかけ、大地の誕生日を盛大に祝ってやろうと呟く。この2人はマザーが極道の妻だった時代から愛人関係を続けていた。
歩は下半身不随の男の世話をしていた。男がベッドパイプをある一定の法則性で叩いてるのに気付いた歩は、それがモールス信号だと思い当たる。剛が空の上の父親と連絡をとろうと、懐中電灯でモールス信号のまねごとをしていたのを思い出したのだ。
歩はスマホでモールス信号を検索し、男の瞬きとパイプを叩く間隔を解読する。歩の勘は正しく、下半身不随の男はシャンシティを大地震が襲うと警告していた。
一体この男は何者なのだと愕然とする歩。男の顔をよく観察すると、彼こそ新聞に載っていた地質学者の小野寺だった。彼は地震発生時に下半身不随になり、シャンシティの病棟に収容されたのだった。歩はマリに地震がくることを告げるが、マリは彼が小野寺で本当に地震が来るのか確かめるのが先だと娘を諭す。
夜、シャンシティでは大々的に大地の生誕祭が行われていた。剛も大谷の露店を手伝い、彼に頼まれて倉庫に包丁を取りに行く。包丁をさがしていた剛は、倉庫の床の空気穴から地下の独房に監禁された疋田の呻き声が聞こえ驚く。剛に相談を受けたカイトは、疋田がヘマをして閉じ込められたのだと告げる。カイトは疋田が大麻の禁断症状で幻覚を見ていたのを知っていた。
歩とマリは広場を駆け回り、地震がくるから早く逃げろと群衆を促すが、シャンシティの人々は半信半疑だ。そこへ小野寺の言う通り大地震が襲い露店が薙ぎ倒され、シャンシティのシンボルの土偶も崩れていく。剛が駆け付けた時には、大谷は既に露店の下敷きになっていた。さらに崩落する瓦礫から剛を庇い、身体を張って彼を逃がす大谷。大谷は八百長で角界を追放された関取であり、シャンシティ以外に居場所がなかった為、剛と一緒に逃げるのを拒んだのだ。ダニエルもまたシャンシティを死に場所に選び、手を振ってマリを送り出す。
マザーは部下にシャンシティの住民の避難誘導とゲート開放を命じる。彼女はシャンシティの体制維持より、信者が散り散りになっても生き延びる方を選んだのだ。しかし利己的な一部の部下は塔の金庫を破り、金塊を持ち逃げしようとしている。身内同士で揉める部下を諫めるマザーだが、研究者に拳銃で撃たれ跪く。そこへ浅田が駆け付け研究者を射殺、マザーに肩を貸して大地を迎えに行く。
最上階へ到達したマザーと浅田の眼前で、「おかあさんありがとおおお」と大地が感謝を述べる。
初めて喋った大地に歓喜するマザーと浅田だが、直後に天井の一部が崩れ落ち、大地が瓦礫で圧死する。最愛の息子を失った絶望で膝から崩れ落ちるマザー。
カイトの手引きで独房から出た疋田も最上階へ行くが、孫の面影を重ねていた大地の死に立ち会い、彼もまた絶望する。疋田は自分の孫が土砂崩れに巻き込まれて死んだのを思い出し、孫の声が聞こえないかマザーに縋り付くが、マザーは「聞こえないと言ってくれとお孫さんがおっしゃっています。煙草もやめてね、と」と伝える。疋田の孫は祖父が自分の死に縛られるのを是とせず、あえて知らんぷりしたのだ。
シャンシティの地面は割れ、ゲートには我先にと人々が群がっていた。パニックが加速度的に伝染していく中、疋田の車に乗った武藤家、カイト、春生、彼らが荷台に運び入れた小野寺は脱出をはたす。車を奪おうと襲撃をかけるマザーの部下を、塔の展望台から疋田が弓矢で射殺すも、彼も拳銃で反撃され絶命する。
塔の最上階にて、マザーは自分は駄目な母親だったと悔やむ。マザーと浅田は大地と一緒に死ぬ覚悟だった。そこへシャンシティに居残った一握りの信者が集合し、自分たちもマザーと死ぬと訴える。彼らは大谷と同じ、外の世界に居場所がない人々であり、そんな自分たちに居場所をくれたマザーに感謝していたのだ。マザーがシャンシティを設立したのは、障害を持って生まれた大地が尊厳を持って生きられる居場所を作る為だった。実際マザーの能力の要となる大地は特別視されたが、それ故マザーとマザーに選ばれた人間しか入れない最上階の豪華な寝室を与えられた大地は天井の崩落で真っ先に死に、「何が間違っていたんだろうね」とマザーは独りごちる。マザーと浅田、残りの信者たちは地震で命を落とす。
疋田の車には彼の形見のロボット犬が残されていた。崩壊するシャンシティを命からがら後にした一行は、あてどもなく車を走らす。

第7話「ニッポンノヨアケ」

陸上のスーパー中学生として将来を有望視された歩は、特別枠で船に乗れることに。

武藤家は日本を脱出する船が停泊している港へ行く。運が良ければ誰かが抽選に当たっているかもしれない。来た道を振り返った剛は富士山が煙を噴いているのに驚く。小野寺の瞬きはまた激しくなり、近いうちに地震がくると暗示していた。ラジオは当選者のマイナンバーを報じていたが、春生と歩は自分のマイナンバーを覚えていない。港へ向かう道路は渋滞しており、人々が車を捨て歩きだす。船は思ったより大きくなく、定員がある現実を痛感する歩。
港では人々が自衛隊に誘導され、乗船待ちの列に並んでいた。しかし割り込みを巡る喧嘩や、自衛隊の目を盗んで船へ忍び込もうとする輩が絶えない。自衛隊のテントではマイナンバーの照合が行われ、当選者が家族に涙ながらの別れを告げて、船への階段を上っていく。マリは誰か選ばれてないか聞いてくると言い、自衛隊員に近付いていく。しかし歩や春生と同じくマイナンバーを覚えてない者が大半な為、現場は非常に混雑していた。
歩は港で陸上部の顧問だった風間コーチと再会を果たす。歩は風間コーチに自分が特別枠に入っていると教えられる。歩は陸上の選抜チームに抜擢されており、将来有望なスポーツ選手として、政府が設けた特別枠で脱出できることになっていたのだ。家族と別れて船に乗ることに難色を示す歩だが、マリは娘を励まし、彼女だけでも脱出させようとする。
マリと別れの抱擁を交わした歩は、彼女の胸の感触に違和感を感じるが、その事を問い質す暇もなく船へと追い立てられる。デッキで合流した風間コーチに船の行き先を聞くが、コーチは未定だと答える。受け入れ先の交渉が難航しているのだそうだ。地震発生時に怪我した歩の足首は化膿し、もし彼女が脱出しても、今まで通り陸上ができるかわからない。そんな自分が特別枠に選出され、うしろめたさを覚える歩。
デッキからマリを見下ろした歩はある可能性に思い当たりスマホを操作、ペースメーカーの説明を読む。マリの胸の固い感触は、心臓にペースメーカーを付けていた為だった。マリが病気を隠して自分たちを守ってくれていたのを知った歩は、出港直前に船から下り、母親の胸にとびこむ。
同時に富士山が黒煙を噴き、地盤が激しく振動する。小野寺が予知した地震がやってきたのだ。急いで車に避難する武藤家。しかし荷台にいた春生の肩を、爆風で飛ばされてきた鉄パイプが貫く。カイトとマリはスマホで応急処置の仕方を検索し、春生に板を噛ませて鉄パイプを抜く。
車を下りた武藤家と春生、カイトは今後の事を話し合う。小野寺が以前主張していた説では、太平洋プレートによって海底に引きずり込まれたユーラシアプレートが地中深くでマグマとなって蓄積する。このかたまりをメガリスというが、日本列島の重みに耐えられなくなったメガリスが太平洋側に傾くのが原因で、日本は沈没するのだそうだ。富士山の噴火を目の当たりにした歩は、渋々その説を認めざるえない。
沿岸の道を車で走っていた歩は、海面に浮かぶ構造体、メガフロートを指さす。そのメガフロートは日章旗を立て、日本人のみ乗船を許す国粋主義者の団体だった。
埠頭に着いた一行はメガフロートへ飛び移ろうとするが、色が浅黒く英語まじりで喋る剛が外国人と疑われ、乗船を拒まれる。フィリピン出身のマリは自分も外国人だと認め、自分は構わないが子供たちだけでも乗せてくれとメガフロートの代表者に交渉する。代表者は純血の日本人以外乗せないと固辞し、それに怒ったカイトが英語で悪態を吐き、結局全員置き去りにされる。埠頭に立ち尽くす一行のもとへ気の良い漁師の老人がやってきて、彼の船に乗せてもらうことになる。一行が乗った漁船の出港直後にまた地震が襲い、油が漏れたメガフロートが炎上する。魚船も大波に弄ばれ、漁師の老人と歩と剛、マリと春生、カイトと小野寺の3組に分かれ、テント型の救命ボートで脱出する羽目となる。
ボートに乗る直前に後ろを振り仰いだ剛は、最前まで港があった陸地が沈んでしまったことに衝撃を受ける。とうとう日本沈没が現実のものになったのだ。

第8話「ママサイテー」

歩と剛と老人はテントで荒れ狂う海を漂流していた。船酔いで気分が悪くなった剛に、老人が酔い止めの薬を渡す。老人は「俺は海の男で漂流の経験もあるから安心しろ」と2人を励ます。母親やカイトたちと離れ離れになった不安をひた隠し、弱音を零す剛を支える歩。
翌日、けたたましい鳥の鳴き声で目覚めた歩は、死んだ老人が海鳥に啄まれている酸鼻な光景を目の当たりにする。パニックを起こした歩は老人の死体を海へ落とし、テントの入口のジッパーを引き上げる。テントの中には食料の備蓄もなく、歩と剛は空腹を抱えて蹲る。剛は以前カイトに貰ったチョコバーを食べずにとっておいたのを思い出し、歩と仲良く分けて食べる。

ボートに2人きりで絶海を漂流する歩と剛。

再び夜を迎え、歩と剛は海面を青白く照らすプランクトンの光を眺めながら父親の思い出話をする。歩は好きなドラマの続きを見たがり、剛はAmazonに頼んだゲームの行方を気にするが、彼らが繰り広げる他愛ない話は死と隣り合わせの過酷な現実からの逃避に過ぎない。テントに寝転がった剛は、「自分たちが死んだらパパやママのこと覚えてる人いなくなっちゃうんだね」としんみりし、歩は「だから生きなきゃ」と気力を奮い起こす。そこへミネラルウォーターのペットボトルが流れ着く。歩は蓋を開け大喜びで剛に呑ませるものの、中身は潮水だった。ペットボトルに穴が開いていたのだ。歩は剛の懐中電灯を借り、マリたちがどこかで見ているかもしれないと信じ、懐中電灯を点滅させ夜空にモールス信号のSOSを送る。
その時テントが揺れる。テントの底に付いた貝を魚が突付いていたのだ。手掴みで捕まえようとしたそばから魚に逃げられた歩に、航一郎なら成功したのにと惜しむ剛。
次の日、歩は死んだ父親が助けに来る夢を見て泣きながら目覚める。しかしそれは所詮夢でしかなく、起きた歩は足首の傷口の悪化を悟る。飢えに苛まれた歩と剛は2人がかりでテントにとまった海鳥をくびり殺し、海鳥が吐き出した生魚を、そのくちばしで裂いて食べる。2人は刺身に舌鼓を打ち、「またお寿司行きたいね」と剛が無邪気に話す。
やがて豪雨が降りだす。歩はビニール袋に雨水を溜めて飲もうとするが、水は火山灰で濁っており、健康に毒な為に捨てざるえない。飢えと衰弱でぐったりした歩と剛は、テントに寝そべってもうすぐ父親に会えるかもしれないと妄想するが、その時マリのボートが漕ぎ寄せ歩と剛を救出する。
数日ぶりに再会した母親に抱き付く歩と剛。ボートには春生もおり、座礁した船で充電できたスマホを見せる。歩と剛を回収して帰る途中、春生は小野寺が自分のスマホに打ち込んだモールス信号を見せる。解読した結果、意味不明な数字の羅列が現れた。剛はそれが緯度と経度を表す数字と見抜き、広島より少し東、岡山あたりと位置を特定する。彼は戦争ゲームをプレイした際、爆心地の座標を覚えていたのだ。ラジオからは九州弁の放送が流れており、歩たちが現在漂流している海域が九州付近と判明する。小野寺が示す座標に行けば道が開けると一行は祈り、海路で岡山を目指すことにする。
途中、歩たちは漂流しているモーターボートを発見する。今乗っているボートで岡山に行くのは時間がかかる為、一行はスピードの出るモーターボートに乗り換えるが、舫い綱が海底の瓦礫に引っかかって出港できない。そこで元競泳選手で泳ぎが得意なマリが名乗りを上げ、潜って綱を解くことにになる。マリのペースメーカーはバッテリー切れでどのみち長くはもたない。既に合併症を併発し余命幾ばくもないマリは、「やっと特技を生かせる」と笑い、泣き縋る子供たちをおいて海にとびこむ。
マリは綱をほどくのに成功するが、戻る前に肺活量が尽きる。歩と春生は溺れたマリを助け、モーターボートのデッキに寝かせる。春生が人工呼吸を施すがマリの意識は戻らず、彼女の生涯は幕を閉じた。

第9話「ニッポンチンボツ」

歩と剛と春生はマリの死体を海に沈め水葬に処す。春生がモーターボートを操縦し海上を駆ける。途中沈没した陸地から流れてきた飲料水を確保する。やがて一行のモーターボートに、日章旗を立てた潜水艇がやってくる。扉を開けて出てきたのはカイトだった。カイトと小野寺の無事を喜ぶカイトと歩たち。カイトが今操縦している潜水艇は、海を漂流しているところを拾ったのだそうだ。カイトは歩たちを回収して海に潜る。そこへ地震が襲い、海底で地殻変動の爆発が起きる。ただのボートなら危なかったと冷や汗をかく春生に、操縦桿を握ったカイトは恩を着せる。
一行はもとは岬の先端だった岩場に上陸する。漸く発見した陸地で休息する歩たち。そこは地殻変動の影響で温泉が湧いていた。剛は呑気に温泉に浸かり、歩とカイトは昔家族で行った旅行の思い出話をする。歩は「温泉があるってやっぱ日本はいいでしょ」と剛に言うが、剛は「エストニアもあるし」とぼやき、「こんな国好きじゃない、こんな国にいなければこんな目にあってない」とふてくされる。
剛の発言で立ち込めた重苦しい空気を吹き飛ばすようにカイトがラップを始め、本音をぶちまけて憂さを晴らせと皆にけしかける。剛はラップなんて無理と拒むが、カイトに乗せられてラップで日本をこきおろす。「お人好しばっかりで弱腰、個性的な外国とは違う、こんな国は沈んで正解、でも道連れはごめんだ」と日本を痛烈に批判する剛に対し、春生もまた「何かと日本が嫌いと愚痴るそのネガティブさがまさに日本人、建前で人を傷付けないそういう心遣いこそ優しさを感じて俺はそこが好き」とラップで返す。

ラップで自分の率直な気持ちを表現する歩。

それを受けた歩は剛と春生どちらにも加担せず、「どこでよりもだれとの方がずっと大事、私はここにいる人たちがいれば生きていける」と、今の自分の率直な気持ちを表現する。地震を生き延び両親を失い、数々の過酷な体験を経た歩は、人と人の繋がりの大切さを痛感したのだった。
小野寺がモールス信号で示した座標には、彼とその協力者の研究所があるらしい。そこに行けば日本を救う手立てが得られるかもしれないと希望を抱く一行。カイトはスマホで位置検索し、着々と目的地へ近付いていく。とうとう目的の座標に到着したカイトは、研究所は断層に出来た洞窟の奥にあると言い、危険だからまず自分と小野寺で様子を見てくると告げる。歩と剛と春生は沈み残った陸地で待機する。
カイトは小野寺を背負って洞窟の奥の研究所に行き、そこのパソコンを操作して小野寺と協力者が集めたデータを呼び出す。
その時激しい揺れが襲い、洞窟が沈み始める。浸水した洞窟から慌てて逃げ出すカイト。研究所の酸素ボンベは1つしかなく、カイトはそれを小野寺と交互に使い泳いで脱出する。カイトの帰還を歩たちは喜ぶが、小野寺が息をしてない。カイトは必死の人工呼吸を施す。実は酸素ボンベには穴が開いており、それに気付いていた小野寺は、自分は息を吸わず節約していたのだ。小野寺の犠牲で生き延びるなど冗談じゃないとカイトは激昂する。小野寺は辛うじて息を吹き返すも直後に高波が襲い、小野寺とカイトのスマホをさらっていく。
カイトのスマホには研究所のパソコンから転送したデータが保管してあり、あれがなければここに来た意味どころか、日本再生の可能性すらも消滅する。
春生は波が打ち寄せる間隔を数え、10秒以内に走って戻れば高波に呑まれずにすむと確信し、「今こそ俺の出番」とスマホを取りに行く。元有名陸上選手だった自分にしかこなせない仕事だと春生は自負し、全速力でスマホを拾って戻るが、あと一歩のところで波に呑まれてしまった。波に呑まれる寸前、春生が投げたスマホを受け取った歩が「先輩!」と呼ぶ。波が引けたあと、春生の姿はどこにもなかった。ヒステリックに叫んで春生を捜すカイト。歩は春生の形見となったスマホを抱いて呆然と立ち竦む。

全速力で津波から逃げる春生。

第10話「ハジマリノアサ」

春生の犠牲でスマホを取り戻した歩たちは彼を悼んで涙を流す。高波を被った小野寺も助からなかった。
潮水にくり返し洗われた歩の傷は酷くなり、歩くたびに激痛が走る。それでも歩は両親や春生が救ってくれた命を粗末にしてなるものかと、諦めず歩き続ける。浅瀬を歩いて海面から飛び出した建物の高層階に到着した歩たちは、そこで夜を明かすことにする。
春生が死守したスマホは潮水に浸かったせいでネットに繋がらなくなっていたが、幸い中のデータは生きており、日本の陸地が再び隆起する順番が記録されていた。
小野寺の研究では、日本列島は沈没したあと再び隆起するという結果が出ていた。
たとえそれが絵空事でも、少しでも日本が戻ってくる可能性があるなら信じたいと表明する歩。カイトは瓦礫を寄せ集めた筏を作り、歩と剛を乗せて漕ぎ出す。
沖に漕ぎ出したカイトは海に落ちた気球を拾い、「俺はツキを持ってるぞ」と確信する。それはカイトのマークが入ったカイトの気球であり、沈没した彼の基地から流されてきたのだった。カイトは気球を膨らませ、それを装着して自分だけ脱出する。カイトに見捨てられた歩と剛は絶望するが、何故かカイトは大事なスマホを筏に残していった。筏から飛び立ったものの荒天に翻弄され凍えるカイト。実は気球にはアンテナが付いており、カイトは雲の切れ間にそれを翳し、自分のスマホに電波を受信させる。インターネットに繋がったスマホに縋り付く歩と剛。
スマホが歩たちの位置を発信した事で、救助ヘリが筏の漂流地点を特定する。歩たちの安全を最優先し、スマホに電波を届ける為に体を張ったカイトは、高空の風に吹き流されて姿をくらます。
歩と剛は回収されたヘリの窓から富士山の大噴火と、本格的に沈没していく日本列島の最後を見届ける。
海外の病院にヘリで搬送された歩は、足首の傷口から炎症を起こし、命が危ない状態だった。再び目を覚ませば剛が歩のベッドに突っ伏して寝ており、病室のテレビではニュースキャスターが日本列島沈没を報じていた。日本とその付近の国々の犠牲者数は数知れず、甚大な被害がでたそうだ。
そこへ看護婦が現れ、傷口から黴菌が回って骨髄炎を併発した為、足首を切断する必要があると歩に報告する。もう二度と陸上ができなくなると歩は思い悩む。
夜、歩が寝付けずにいると枕元に伏せたスマホが着信を報せる。それは歩の誕生日に届くように日付指定された動画だった。動画には剛、マリ、春生、小野寺、そしてカイトがおり、シャンシティを発ったあとに撮られたとわかる。彼らは口々に歩の15歳の誕生日を祝い、彼女が良い人生を歩めるように応援のメッセージを送る。
「今こそ好きなことをするの、いつもあなたを応援しているわ、今日からまた新しいスタートよ」ともういないマリに励まされ、スマホを抱き締めた歩は大声で泣きじゃくる。歩は手術を受ける決断を下す。たとえ片足を失っても、大事な人たちの応援を受けた歩は生きる道を選んだ。
退院後、剛と2人で暮らす家に帰った歩は、剛が母親のクラウドやSNSから集めたデータを閲覧する。母親の結婚指輪にもしもの時の為のパスワードが彫られており、それ故データの回収が可能だったのだ。母親のデータには家族の思い出が沢山保存されていた。動画の中で歩と剛を寝かし付けたマリは2人にキスし、参観日のビデオでは家族をテーマにした作文を読む歩を航一郎がアップで撮り、歩と剛は自分たちがどれだけ両親に愛されていたか噛み締める。
8年後、剛は水泳を習っていた。国土を失った日本人は世界中に散らばったが、ネットに残されたアーカイブを元にデータが復元され、在りし日の日本の姿を後世に伝えていた。世界中の人間が無料でアクセスできる動画サイトに公開されたそのデータには、スーパーの開店40周年の礼を妻と述べる疋田の姿や、幼い大地と波打ち際で遊ぶマザーの姿もあった。
小野寺のデータを解析した結果、日本列島は沈没するが100年をかけて隆起すること、しかも2年後にどこが、5年後にはどこがと、正確な日付と場所が記されているのがわかった。そのデータを元に日本領土の保全が決定し、100年後に日本列島全体が隆起した暁にはまた日本人が戻れることになったのだ。歩は自伝『はじまりの朝』にて小野寺の研究成果を褒めたたえ、彼と過ごせた日々を誇りに思うと結ぶ。
剛はeスポーツの選手としてオリンピックに出る夢を叶えた。彼は日本国籍と移住先のエストニア国籍どちらも選べたが、8年前に出会った人々へのリスペクトからあえて日本代表として出場したのだった。
そして歩も日本代表としてパラリンピックに出場する。彼女は片足義足の陸上選手として堂々と行進し会場を盛り上げるが、観客席で帽子を目深に被った男の、カイトと似通う面影にドキリとする。
しかしすぐ競技に集中し、両親が付けてくれた歩の名に恥じぬように、前へ向かって歩み出すのだった。

『日本沈没2020』の登場人物・キャラクター

主要人物

武藤 歩(むとう あゆむ)

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