魔入りました!入間くん(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔入りました!入間くん』とは『週刊少年チャンピオン』2017年14号から連載している西修のファンタジー漫画作品。主人公の鈴木入間はクズな両親に売られ、魔界の大悪魔・サリバンの孫となり、彼が理事長を務める悪魔学校・バビルスに入学する。非力な人間の少年なのに非偶然と勘違いで天才扱いされる事に困惑していた入間だが、バビルスで出会う個性的な仲間と絆を育むうちに、彼らと肩を並べる一人前の悪魔を目指すという目標ができる。

『魔入りました!入間くん』の概要

『魔入りました!入間くん』とは『週刊少年チャンピオン』にて2017年14号から連載している西修の学園ファンタジー漫画作品。西の『週刊少年チャンピオン』での連載は本作が初めてとなる。TVアニメはNHKEテレにて2019年10月5日から2020年3月7日まで放映、2021年春に第2シリーズが放送。監督は森脇真琴。
友情・努力・勝利の三段構えの王道少年漫画を踏襲した熱い展開、真っ直ぐな心根と向上心の持ち主である入間が癖の強い友人や教師らと出会い成長していく姿を描く、直球青春ストーリーが読者の支持を得た。
初期は一話完結のギャグコメディ要素が強かったが、ストーリーが進むと入間が所属する問題児クラスの面々にも焦点が当たり、個々の悩みや問題を掘り下げた群像劇の趣が強くなる。たとえば入間のクラスメイトのクロケル・ケロリは、優秀な兄姉と比較する家族を見返したい一心で魔界ナンバー1のアクドル(悪魔のアイドル)を目指している。このエピソードでは入間らの協力を得た彼女がコンプレックスを跳ね返し、家族と和解するまでが描かれる。
さらには入間自身にも徐徐に悪魔の自覚が芽生えていき、一人前の悪魔として誇りを持ち、積極的に課題に取り組む姿が見られるようになる。入間は金欲しさから両親に売られた事になっているが、現在は空位になっている魔界の統治者・魔王と関係ある主旨の発言を養子先のサリバンがしていたり、魔王の座を巡る壮大な展開になりそうな予感を匂わす。

主人公・鈴木入間は14歳の中学生。鬼畜外道な両親の金儲けの道具にされ、幼い頃からあらゆる出稼ぎに行き、サバイバルすら余儀なくされる過酷な人生を歩んできた。
そんな入間にある日転機が訪れる。
なんと両親によって、魔界に住む大悪魔・サリバンに売られてしまったのだ。命運尽きたと嘆く入間を予想に反して大いに甘やかすサリバン。サリバンは孫が欲しくて入間を引き取ったと言い、自らが理事長を務める悪魔学校バビルスに彼を入学させる。
魔界生まれの悪魔にとって人間は伝説上の存在であり、その実在すら疑われていた。人間だと周囲にバレたら何をされるかわからない、最悪獲って食われると恐怖した入間は、素性をひた隠しできるだけ穏便な日常生活を送ろうとするが、入学首席のアスモデウス・アリスにライバル視され決闘を申し込まれた際に躓いた勢いでバックドロップをかまして勝利する、使い魔を召喚する授業では自身が人間であったことから悪魔=教師をイレギュラーに召喚してしまうなど、勘違いと偶然の連鎖で何故か天才と持ち上げられ、前途多難なスクールライフが幕を開ける。

『魔入りました!入間くん』のあらすじ・ストーリー

始まった魔界生活

主人公・鈴木入間(すずき いるま)は14歳の中学生。両親に金儲けの道具と見なされ、幼い頃から出稼ぎに行かされてきた。そんな彼は、人に頼まれると断れない極度のお人好しに育ってしまった。ある日、両親によって魔界の大悪魔・サリバンに売り飛ばされる。獲って食われると、怯える入間に対し、サリバンは「ずっと孫が欲しかったのだ」と彼をベタベタに甘やかす。断ろうとする入間だが生来のお人好しが災いし、サリバンの泣き落としを拒みきれず、彼の孫として魔界で生活を始める。
美味しいご馳走、ふかふかの寝床という夢のような生活に、すっかり骨抜きにされた入間。翌日、入間はサリバンが理事長を務める悪魔学校・バビルスに特待生として入学させられる。魔界において人間は、伝説上の存在であり、その実在は疑問視されていた。入間の近くの生徒が「おいしそうな匂いがする」と、鼻をヒクヒクさせる。魔界における自分が、超レアな餌だと認識した入間は、これからの学校生活をできるだけ空気としてやり過ごす決意をする。しかし、そのそばから孫バカ全開のサリバンが、新入生代表挨拶に入間を指名。無理矢理檀上に上げられた入間は、訳もわからずサリバンが用意したメモを読まされる。入間が唱えたのはなんと、一字でも間違えば身体が爆発四散する禁忌呪文だったのだ。
入学早々、新入生代表挨拶で禁忌呪文を読み上げた入間は話題になる。目立たず生きたい入間にとって、これは最大の誤算だった。しかも、新入生首席のアスモデウス・アリスが、自分の晴れ舞台を奪った入間を一方的に敵視して決闘を挑んでくる。アリスは名門アスモデウス家の嫡男であり、エリート中のエリートだった。全校生徒が見守る中、入間とアリスの決闘が始まる。アリスの炎魔法に逃げ回る入間だが、躓いた拍子にアリスに見事なバックドロップをかまして勝利を掴む。アリスは自分を打ち負かしておきながら、謙虚な入間に心服して臣下の礼をとるのだった。

使い魔召喚

本格的に授業が始まる前、新入生は使い魔召喚の儀を受ける。これはバビルスの伝統行事で、使い魔の質で位階が決まり今後の成績に影響する。召喚の儀式の監督官ナベリウス=カルエゴは、初日から乱闘騒ぎを起こした入間を敵視していた。優等生のアリスは、上位の使い魔であるゴルゴンスネークを呼び出し、周囲の称賛を浴びる。入間への期待が高まる中、使い魔なんて召喚できるはずないと卑下する入間。だが、儀式に失敗して退学になれば正体がバレずに済むと思い直す。しかし、召喚とは悪魔が使い魔を呼び出す儀式であると同時に、人間が悪魔を呼び出す儀式である。それ故に、督官としてその場にいたカルエゴが呼び出されてしまった。入間は慌てて送り返そうとするが、カルエゴが使い魔の力を制限する魔法陣を踏み、コウモリ羽の生えたひよこのような愛くるしい姿に変えられる。契約の期限は1年であり、入間は本人の思惑に反し「悪魔を使い魔にした、恐怖の悪魔」として学校中に悪名を轟かせる。

悪魔のお友達

授業の教材をアリスと一緒に受け取りにきた入間。その時、突然物陰から女生徒が転がり出る。それは変人を通り越し、校内で珍獣扱いされているクララ・ウァラクだった。入間はクララに引っ張られ、中庭でままごとに付き合わされる。遊びが一段落したあと、クララは懐を叩いてお菓子と飲み物を取り出す。それはクララの家系の特技であり、彼女は一度見たものならなんでも好きな時に呼び出せるのだった。得意げなクララの頭を、たまたま通りかかった男子生徒が「また飼い主が増えたのか」となでる。ジュースをもらって去っていく男子生徒を見送り、どういうことかと入間が尋ねると「ああやってジュースをあげると、たまーに一緒に遊んでくれるの」とクララが嬉々として答える。クララがパシリにされているのではと心配する入間。
毎日一緒に遊んでくれる相手ができて有頂天のクララだが、例の男子生徒が不良仲間と喋っている現場にでくわす。彼にパシリとしか思われていないことを、本当は知っていたクララ。入間にまで見捨てられるのを恐れたクララは、ジュースやお菓子、本やおもちゃをどっさり出し「全部あげるからまた遊んで」と乞うが、入間はきっぱり断る。入間は「そんな物なくったって君と一緒に遊びたいよ」とクララの手を握る。そこへクララをパシリ扱いしていた男子生徒が現れてジュースをねだるが、クララは出した自販機ごと彼の顔面にぶん投げて「お金を入れたら沢山飲めるよ。バイバイ」と宣言する。それからというもの、入間・アリス・クララはトリオで行動するようになった。

問題児(アブノーマル)クラス

目前に迫ったクラス発表に、期待を膨らませるクララとアリス。自分と同じクラスを熱望する彼らの姿に、2人と一緒ならこの先も楽しく過ごせるかもしれないと前向きに考える入間。
クラス発表の日、3人は無事同じクラスになれた。3人が配属されたのはアブノーマルクラスといい、バビルスの問題児が集められたクラスだった。初授業は、谷の奥の旗に辿り着いた順位を競争する飛行レース。これはバビルスにおいて重要な課題であり、使い魔召喚の儀式とこのレースで、最初の位階(いかい)が決定するのだ。位階とは魔界における悪魔の序列で全部で9つある。入間も参加するのだが、人間である彼には翼がなくスタートを切ることさえできなかった。
問題児クラスの1人、サブノック・サブロは魔王になる野望に燃えていた。次代の魔王を志すサブロにとって、自分を差し置いて目立ちまくる入間は目障りだった。翼がなくては飛べないと尻込みしていた入間だが、カルエゴに蹴落とされ魔界に住む巨大なカラスにさらわれた。その途中で、谷の長である鳥の巣に落ちる。巣にいた雛が、怪我しているのを見た入間は手当てをする。その時うっかり手を傷付けてしまい、入間の血が雛の傷口に滴り落ちる。次の瞬間、雛の傷は綺麗に塞がっており、どうやら入間の血には不思議な力があるらしい。
一方その頃、サブロは危険だと禁止された、ゴールへの近道となるコースを爆走していた。しかし、サブロが飛ぶコースは谷の長の縄張りであり、執拗に付け狙われる羽目になる。入間は、わざわざ正規コースを逸れて助けにきた。谷の長は我が子の恩人に免じてサブロを許す。暴力など用いらずとも、谷の長を説き伏せた入間を見直す。入間は谷の長にゴールまで運ばれる。
ゴール地点では位階の発表が行われていた。ふくろうの胸に手を入れると、位階の番号が入ったバッジが貰えるのだが、入間が手を入れようとするとふくろうが飛び去ってしまった。数百年間なかった事態に唖然とするカルエゴ。入間は問題クラスで唯一バッジを獲得できなかったが、ふくろうの胸元に突っこんだ手には、代わりに指輪が嵌まっていた。その指輪は悪食の指輪(あくじきのゆびわ)といい、手にした者に次代の魔王の座を約束する曰く付きの代物だった。ランクの測定ができなかった入間は一番下の位階となり、ただの人間の自分に相応な評価がもらえたと安堵するのだった。

アメリと漫画コレクション

バビルスの生徒会長アザゼル・アメリは、その高潔な人柄と凛々しい美貌で全校生徒の憧れの的。ある日、彼女は生徒会室の窓から入間が咲かせた桜を見て、彼が人間じゃないかと疑問を抱く。入間は魔生物の授業で魔力をこめた花を咲かせるように言い渡されたが、人間の彼には魔力がない。しかしサリバンは入間にいずれ必要になると、悪食の指輪に自分の魔力を注入していた。入間は植木鉢を持ち「こんな花が咲いたらいいなあ」と戯れに想像を膨らませる。それが指輪を介して植木鉢に流れ込み、温室の天井を突き破る程の巨大な桜を咲かせたのだ。
アメリは父の仕事柄、人間界で作られた漫画をコレクションしていた。王道の少女漫画で、読むたび胸のときめきを隠せないアメリだが、残念ながら人間界の文字が読めない。主人公の少女と少年が、衝突した直後に恋に落ちるシーンを目にしたアメリは「接触だけで惚れさせるなんてすごい」と慄く。そんなある日、廊下を歩いていたアメリは入間と衝突する。その時、アメリが隠し持っていた漫画『初恋メモリー』が落ちる。それは、入間が人間界でアシスタントをしていた漫画家の作品だった。彼自身も漫画の大ファンであり、作品の魅力を語る。入間が人間界の字を読めると知ったアメリは、彼を生徒会室に引っ張っていき、全巻がずらりと並んだ本棚を示す。アメリは入間に朗読をお願いし、入間はこれを快諾する。展開やキャラクターの心情を話し合ううち、入間とアメリは打ち解けていく。楽しい日々を送る入間は、サリバンの屋敷の執事・オペラに人間界に帰りたいか尋ねられる。悩む入間に、オペラは「バビルスを高い位階で卒業すれば、人間界へ帰る事も可能だ」と助言する。
アメリと入間の秘密の朗読会は続いていた。『初恋メモリー』では主人公が夢を語っていた。それを見た入間はアメリの夢は何かと訊く。アメリは「みんなに悪魔として生まれたことを誇ってほしい」と夢を語る。反対に問い返された入間は、自分が確固たる夢を持たないのに気付く。意気消沈する入間に対し、アメリは「なら作ればいい。まずはランクを上げるのを目標にすればどうだ」とアドバイスする。だが目立ちたくない入間にとって、位階が上がるのは諸刃の剣だった。

激闘 処刑玉砲

アメリと互いに高みを目指す約束をした入間は、位階を上げる為に処刑玉砲(しょけいぎょくほう)の特訓を始める。これは魔界のドッジボールだが、ただの人間の入間は体力が劣り、自分の役立たなさを痛感する。だが、1週間後に行われる処刑玉砲の試験に合格すれば、位階が上がるかもしれない。アリスやクララとドッジボールをしていると、問題児クラスの面々もやってきた。彼らが投げたボールで、危うく大怪我をしかける入間。処刑玉砲では魔力の使用が禁止されておらず、一歩間違えば命を落とす危険な競技だった。
帰宅した入間は、どうすれば勝てるかサリバンに相談する。サリバンは自分が悪食の指輪に込めた魔力を使えばいいと仄めかすが、入間はズルを拒む。ならばとサリバンは入間の手に魔力をこめ、悪魔が投げるボールを受け止められる程度に強化した。学校と家で、練習漬けの毎日を送る入間。そんな彼の頑張りに対し、悪魔らしくないと感動するアリスとクララ。悪魔とは本質的に飽きっぽく気まぐれな生き物で、1つの事に打ち込めるのは非常に稀有な資質だった。
いよいよ試合当日。ルールはドッジボールと一緒だが、外野が内野を当てても内野に入れず、魔術はボールのみにかけると制限されていた。昇級の評価はチームの勝敗や、あてた悪魔の位階の高さで決まる。Aチームはサブロやアリス、クララ。Bチームは入間をはじめ位階の低い生徒ばかりだった。試合は進み、遂にアリスと入間の1対1の対決となる。手抜きをして入間を勝たす事を考えるアリスだが、正々堂々挑む入間の真剣さを受け、自らの浅はかさを恥じる。アリスの殺気に圧倒される入間だが、アリスが放った火球を体当たりでキャッチして投げ返す。そのボールは見事アリスへ命中し、入間のBチームが勝利し、入間は晴れて位階2に昇級した。

師団(バドラ)

バビルスには師団(バトラ)が存在する。これは人間界の部活にあたり、バビルスには個々人の趣味や野望の数だけの師団があった。優秀な人材を獲得したい師団は、ルーキーハントに力を入れる。上級生が勧誘のチラシを配る中、アリスは入間に群がる先輩たちを撃退していく。その時急に指輪が光り、入間が引っ張って行かれる。指輪に導かれたのは、魔具研究師団(まぐけんきゅうバドラ)だった。物置のようなボロい師団室を覗くと、緑髪の先輩が吐血して倒れている。彼の名前はアミィ・キリヲ。不思議な器具や装置を発明・収集する1人きりの団員だった。入間はキリヲの看病をし、回復したキリヲは入間に魔具の説明をする。魔具とは魔力をエネルギーとして動かす道具であり、魔力が少ない悪魔の補助装置なのだそうだ。彼は魔力増強魔具「ガブコちゃん」を開発したが、試運転中の爆発に巻き込まれて倒れていたのだ。入間は周囲に散らばった部品集めを手伝い、あっという間に修復する。人間界にいた頃、家電の修理で実践を積んでいたのだ。
生まれ持った魔力が弱いキリヲは、魔具を介する事で高位階の悪魔との差を埋め、上下関係がなくなればいいと考えていた。自身に魔力がないことを引け目に感じていた入間は、平等を尊ぶキリヲの精神に共感し、魔具研究師団への入部を決める。アリスとクララも便乗して入部する。バビルスでは、新入生を歓迎するバトラパーティーというイベントがある。これは人間界の文化祭に似たもので、魔具研究師団も勿論これに参加する。

13冠の集い(サーティーン・ディナー)

一方サリバンは魔界塔(バベル)の665階で行われる、十三冠(じゅうさんかん)の集いに出る。これは魔界を統治する13人の高名な悪魔が集まる会議(サーティーン・ディナー)なのだが、魔王の座が空位なので、実質12人での会議となる。十三冠の集いでは次代の魔王決めが議題になる。魔王は十三冠の中でもトップ3の三傑(さんけつ)から選出されるが、最有力候補のサリバンはのらりくらりと逃げまくる。三傑の他2人は孫を溺愛しており、会うたび孫自慢をくり広げる。サリバンは仲間外れにされるのが嫌で、入間を孫に迎えたのだった。三傑は「面倒くさい」とぼやいて誰も魔王になりたがらず、会議はお開きとなる。
そこへアメリの父親であるアザゼル・アンリが登場。サリバンに人間界への不正渡航の容疑をかけて引っ立てていく。サリバンは魔界の警察署にあたる魔官署に拘留された。

バトラパーティー

翌日、バビルスでは新入生がそわそわしていた。バトラパーティーには、父兄が見学に来るのだ。バトラパーティーとは、師団に入会した1年生のお披露が主旨で、前夜祭・本祭・後夜祭の3日に渡って行われる。参加は全学年可だが、主役は勿論1年生で、場所は前庭と中央庭に決まっている。人間界にいた頃は両親が授業参観に来ず、そもそも学校にすらまともに行けてすらいなかった入間は、サリバンが来ると思って緊張する。
魔具研究師団でも催し物の準備が進んでいた。魔具研究師団は弱小師団なので、是非とも目立って存続を叶えたいと抱負を語るキリヲ。キリヲは親に見放され、前回のバトラパーティーには親代わりが来てくれたらしい。
バトラパーティー数日前、魔具研究師団に与えられたスペースを見にきた入間たちは唖然とする。そこは他師団と比べ1/5ほどの面積しかない。実績がなく部員も少ないので、露骨に扱いが悪いのだ。どんな催しをするか相談していると、入間は打ち上げ花火を提案。狭いスペースを有効活用でき、魔界には存在しないから目立つというのが理由だ。
学校に泊まり込んで、花火を作る入間たち。途中でキリヲが抜けて電話に出る。その相手はキリヲの親代わりの人物だが、なんとキリヲと共謀し、バビルスを潰す計画を立てていた。しかも電話の人物は魔官署に手を回し、理事長のサリバンを足止めする徹底ぶりだ。
遂に開催日が近づいてきた。素晴らしいパフォーマンスをした師団には、豪華特典が進呈されるため、盛り上がりぶりは尋常ではない。魔具研究師団では花火作りが大詰めに入っていたが、キリヲは隠し部屋にこもり、バビルスを吹き飛ばす準備をしていた。そこへひょっこりと入間が迷い込む。またしても悪食の指輪に導かれたらしい。キリヲは人だかりのできた校庭を見下ろし「上から見てたら誰がランクが高くて低いかなんてちっとも分からない。みんな同じ。差なんてない。そんな綺麗な世界を無性に見たい」と呟く。それを聞いた入間はキリヲの手を掴み「特賞を狙いませんか」と持ちかける。弱小師団である魔具研究師団が特賞をとれば、位階など関係なく努力は実を結ぶのだと、周囲に認めさせることができる。

バビルス破壊計画

前夜祭当日、入間・アリス・クララは作戦会議をする。本祭へのカウントダウンの鐘が鳴り終わると同時に、花火を打ち上げるのが彼らの計画だった。最終チェックをしていた入間は、花火の核となる玉が抜かれているのに気付く。3人は常に一緒に行動していたので、消去法で犯人はキリヲとなる。
魔官署ではサリバンの取り調べが行われていた。人間を魔界に連れて来て、手元においている疑いをかけられるサリバン。それをタレこんだのは十三冠の1人、バールだった。キリヲの共犯はバールであり、バビルスを破壊する為に裏で暗躍していた。
日が暮れたのを合図に大規模な爆発が起き、透明な壁で廊下が分断される。生徒たちは不可視の壁の内側に閉じ込められる。消えたキリヲの怪しい行動と校内の異状をすぐさま結び付けた入間は、この透明な壁こそ彼の能力だと見破る。 教師陣も当然この異状に気付き、カルエゴは自身の使い魔「番犬の鉤爪(ケルベロビュート)」で壁を破壊するが、即座に修復される。生徒たちの混乱を避ける為、カルエゴはこの異常事態をサプライズゲームとアナウンスする。

キリヲは隠し部屋から校庭を見下ろし、ガブ子さん改め学校ぶっ壊すさんのスイッチを入れようとする。そこへ入間が乗り込み立ち竦む。キリヲは入間を歓迎し、嬉々として身の上話を始める。キリヲは魔界有数の名門の生まれだが、魔力が少ない落ちこぼれだったせいで、母親にすら忌み嫌われていた。キリヲはスパルタで知られる小学校「悪童の園」に放りこまれたが、そこでもいじめられた。しかしキリヲは1人の女の子と親しくなる。ある日いじめっ子が、女の子が大事にしているイヤリングを奪い、断崖から投げ捨てて谷底に落下していった。ショックと絶望で凍り付く女の子。キリヲはその表情にたまらなく興奮し、他の悪魔が嘆き悲しむ表情をもっと見たいと望むようになった。
やがてバビルスに入学したキリヲは魔具研究師団に足を運び、当時在籍していたバールと出会う。キリヲの異常性癖を知ったバールは「それのどこが異常なんだ?元祖返りだ」と嘯く。元祖返りとは悪魔本来の残忍で冷酷、人の血や涙を好む性質をさし、稀にこの傾向を持った悪魔が生まれる。「今の魔界は生温くて吐き気がする。もう一度魔界をカオスにしたい」と豪語するバールに共感し、高位階の悪魔を輩出するバビルスを潰そうと決めたのだ。

バトラパーティーで蹂躙された生徒たち、さらには彼らを見に来た保護者たちの絶望の表情を妄想し、うっとりと涎をたらすキリヲ。中庭では本祭へのカウントダウンが始まっている。爆弾は日付変更と同時に爆発する。
入間は「パンドルーラ」と禁断の呪文を唱え、校舎を覆う透明なバリアを打ち破る。それは悪食の指輪の力を最大限に引き出す言葉だった。爆弾は不発に終わり、代わりに魔道具研究師団の花火が打ち上がる。カルエゴと共に行動していた新人教師のバルスは、魔術「一射集中」の使い手であり、狙ったものに必ず命中させる弓の達人だった。バルスはサリバンが拘留されてる魔官署に矢文を送る。手紙を読んだサリバンは魔官署から脱走し、バビルスへ到着。生徒の避難誘導を終えた教師陣に召集をかける。
キリヲの計画は失敗に終わったが、彼は全く反省の素振りなく、自分自身の絶望した顔もなかなかよかったと悦に入る。キリヲは「自分みたいな元祖帰りは、まだまだいるから気を付けろ」と入間に警告し、魔官署へ連行された。入れ代わりに隠し部屋に訪れたサリバンは「実害が出てないから減刑もありえる」とキリヲを心配する入間を慰め、窓辺へと連れて行く。
中庭は、花火のサプライズに大盛り上がりだった。入間が花火の仕掛け人だと知った生徒たちは、盛大な歓呼で彼を迎える。入間は中庭に向かい、ここぞと師団のアピールをするが、彼が紹介したメンバーの中にはキリヲもしっかり含まれていた。彼が帰ってきた時の為に、魔具研究師団を守り続けようと入間は誓うのだった。

戦いの後

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