ID: INVADED(イド:インヴェイデッド)のネタバレ解説まとめ

『ID: INVADED』とはあおきえい監督による日本のSF・ミステリーアニメ作品。2020年1月から3月までTOKYO MX他で放送された。脚本はミステリー作家の舞城王太郎。舞台は凶悪犯罪が増加した現代日本。連続殺人犯の迅速な特定を目的とする組織・蔵は、ミヅハノメと呼ばれる特殊な発明を用い犯人の深層心理が生み出す仮想世界・イドを構築した。元刑事で現囚人の鳴瓢秋人は、名探偵・酒井戸となって、様々な殺人鬼の精神世界に潜るうちに彼らの裏で糸を引く黒幕、ジョン・ウォーカーの存在へ近付いていく。

墓掘り・井波七星を拳銃で牽制する小春。

刹那井波の表情が豹変、腰を浮かせかけた彼女に小春は拳銃を突き付ける。
実は井波こそが墓掘りの主犯で、数田は彼女の指示通りに動く実行犯にすぎなかった。数田にとっての被害者は人の血や怪我、死にゆくところを見るのが好きな井波への貢ぎ物だった。小春は両手に構えた銃で井波を牽制し、リビングは緊迫する。一触即発の光景を、包丁を握り締めた数田が物陰から見詰めていた。

FILE:06『CIRCLED 円環の世界』

二階に潜伏した数田が小春に包丁さしを投擲、続いて包丁を投げ付ける。松岡は咄嗟に小春を庇って負傷、床に転がりざま数田めがけ発砲する。背中に包丁が刺さったまま井波のこめかみに銃口を突き付け、動くなと命じる松岡。小春は墓掘りの主犯を確保したと蔵に連絡を入れる。
数田のイドでは外の景色を眺めながら酒井戸と井波が対話していた。酒井戸は井波が面白い顔をしていると指摘する。数田がいうお化けとは小春たち警察の事で、主犯である井波を警察から隠す為、彼女の顔を変えていたのだった。ジョン・ウォーカーにばらばらにされた数田だが、その上半身が浮島の突端に掴まってゆらゆら揺れている。酒井戸と並んだ井波は数田の物問いたげな視線を無表情に受け止める。
井波宅のリビングは数田が一向に動かず膠着していた。小春は「井波なんか撃ってしまえ、この女の命に価値などない」と松岡をけしかける。松岡が拒めば代わって前に出て、険しい顔で黙り込む井波に銃口を突き付ける。すかさず数田がリビングに飛び下りて小春に向かってくる。小春は一抹の躊躇なく発砲するが、なんと弾丸は数田の額の穴を通り抜けてしまった。包丁を振り上げた数田に押し倒され絶体絶命の小春だが、そばに転がっていた別の包丁を掴み、数田の胸を深々刺し貫く。小春への殺意に駆られた数田は余力を振り絞って彼女にキスし、それを目撃した井波の顔が嫉妬に醜く歪む。

死に際の数田は井波に手をさしのべるが、彼女はその場を動かなかった。

イドの世界の井波もまた、今にも風に飛ばされそうな数田の上半身に駆け寄りはしなかった。窓ガラス越しにただ黙って見詰め合うのみの関係を秋人は訝しむが、数田はこれでいいのだと達観する。
墓掘り事件の終結後、醸造所の爆発で犠牲になった警官の合同葬儀が行われた。犠牲者には西村も含まれており、葬儀に参列した井戸端スタッフは意気消沈する。
井戸端スタッフはジョン・ウォーカーの正体とイドへの潜入方法を巡って議論を交わす。人心操作の巧みさから精神科医説を持ち出す者、複数のイドに跨って出現する事からミヅハノメに似た装置を持っているんじゃないかと推理する者と様々だ。ミヅハノメには謎が多く、公けにされてない試作機が存在してもおかしくないと若鹿は述べる。井戸端スタッフにすらミヅハノメの詳細は開示されておらず、その推測には説得力があった。しかもミヅハノメの開発者である白駒二四男は消息不明なのだ。仮に試作機が存在しなくても、井戸端スタッフの誰かが現行のミヅハノメを内緒で使っている可能性もある。
ジョン・ウォーカーがどうやって標的にする殺人犯を選んでいるのかも謎だ。数田は富久田の被害者という接点があったが、これを偶然で片付けるのはめでたすぎる。もしジョン・ウォーカーが富久田の被害者の生き残りから数田を選んだのだとしたら、その情報を事前に掴み得た誰かということになる。
富久田の自宅からは監視カメラと盗聴器が押収された。井戸端スタッフの読み通り、ジョン・ウォーカーは富久田を監視していたのだ。数田にも同様に監視が就いていたのなら、井波との繋がりを掴むのは容易い。

井波のイドは閉ざされた円環を永遠に回り続ける電車の世界だった。

酒井戸が新しく投入されたのは井波のイドだった。窓の外は夜の帳が落ち、カエルは電車の座席で刺し殺されている。床の血痕から推測すると犯人は返り血を浴びて歩き去ったらしい。シートには点々と人影があるが、どれも白骨化した死体だった。
井戸端スタッフはその電車が、井波と数田が高校時代に通学で使っていた車両だと突き止める。

踏切の向こうには墓掘りの被害者たちがたたずんでいた。

永遠に上がらない踏切の向こうにたたずんでいるのはいずれも墓掘りの被害者たちだ。
井波の母親は彼女が14歳の時走行中の電車に飛び込んで自殺したのだが、それは井波が通学で使っているまさにこの電車だった。母親は娘が乗った電車に轢き殺されたのだった。電車の中を歩いた酒井戸は、先頭と最後尾が繋がった終わりのない電車である事実を知る。
途中の座席に高校時代の井波が座っていた。酒井戸は「カエルちゃんを殺したのか」と問うが、制服に返り血が付着しておらず、血の付いた靴とハンカチを処分すらしてない無防備さからすぐに違うと否定する。井波の座席の反対側には、同じく高校生の数田が掛けていた。井波は彼を無視し、車窓越しでしか目を合わせようとしない。
井波は車内を一周したカエルに、足を拭いてほしいと頼まれただけだった。カエルは床に足跡を付け、酒井戸を井波のもとへ誘導したのだった。井波は次の駅への到着予定時刻を尋ね、次の駅で母親が待っているはずと話す。しかし母親が飛び込んだのは、墓掘りの被害者たちがたたずんでいた、さっき通過した踏切だった。彼女は母親を轢いた電車に永遠に乗り続けているのだ。
井戸端スタッフは車窓に映りこんだジョン・ウォーカーの影を発見する。井波もジョン・ウォーカーに唆されてしたくもない殺人をしてたのではと疑われるが、「衝動だけで行動は決まらない」と百貫は否定する。
酒井戸と相席した井波は「人を死ぬところを見るのは嫌い」と呟くが、そんな正常な感性を母親の自殺が歪めてしまった。
現実の井波は、被害者を閉じ込めた樽を埋めた場所をあっさりと白状する。もうカメラで観れないなら隠しても仕方ないというのが動機だ。

電車に揺られ続ける3人の微妙な距離感。

酒井戸は数田もこっちに来ないかと誘うが井波は激しく拒み、ずっとこのままでいいと独り言つ。まともに目も合わせず互いに干渉しない微妙な距離感こそが彼と彼女の歪な関係性だった。
現実の井波は最後まで数田の手を掴めず、結果彼を失ってしまったてのひらを見下ろして目を瞑る。小春と数田、額に穴が開いた者同士通じ合うものがあったのかどうか、聞きそびれたことだけが彼女の心残りだった。
松岡は小春を名探偵に推薦し早瀬浦と引き合わせる。卓越した推理力を認められ、憧れの名探偵に抜擢された事を素直に喜ぶ小春だが、隣の松岡は複雑な表情だ。

娘と面影の重なるカエルの手を握り締めて泣き崩れる秋人。

カエルの正面に席を移動した酒井戸は、冷たくなった彼女の手を包んでうなだれる。この電車はただぐるぐる回っているだけでどこにも辿り着かない、カエルはただその事を伝える為だけに死んだのだ。酒井戸は娘と面影の重なるカエルを救いたい一心でイドに来るが、いずれの場合も手遅れで、惨たらしい死体となった彼女にしか対面できなかった。酒井戸は「ただ君を助けたいだけだ、死んでほしくない」と悲痛な本音を吐露する。最愛の娘を救えなかった悔恨は、今なお彼の心を苛んでいたのだった。
小春は松岡に深々と頭を下げて推薦してくれた礼を伝える。しかし松岡はお前に名探偵の素質なんてなければよかったと言い放ち、名探偵の素質とは連続殺人者であることだと明かす。
小春は大野の家に着いた時、松岡と別行動をとり一人で地下室へ行った。地下では大野が無防備に笑い転げており、殺そうと思えば簡単に殺せた。井波が主犯である事にも早い段階で気付いていたがあえて伏せ、西村を醸造所に行かせた。数田を刺し殺した時は、泣くでも怯えるでもなく「私ならできる」と言わんばかりに目を見開いていた。

松岡に絶縁されうなだれる小春。

松岡は小春の危険性を見抜き、自分と同僚の身を守っただけだと告げて去っていく。信頼していた上司との決別に、小春は返す言葉もなくうなだれる。
一方、東郷は富久田の自宅に仕掛けられたカメラと盗聴器が過去の対マン事件で押収されたものと型が一致したと告げる。対マンの本名は勝山伝心といい、秋人の娘を殴り殺した因縁の相手だった。

FILE:07『THUNDERBOLTED 雷の世界』

松岡は連続殺人鬼・対マンこと勝山伝心の邸宅に訪れていた。対マンは名前のとおり1対1の対決にこだわっており、被害者には格闘家も含まれた。だが完全にフェアという訳ではなく、まだ中学生だった秋人の娘・椋は一方的に暴行されていた。
勝山の自宅は、秋人が勝山を射殺後に封鎖されていた。秋人は単独で対マンの正体を突き止めて踏み込み、応対に出た勝山を即座に撃ち殺したのだ。勝山の自宅からは秋人の殺意が検出された。歳月を経ても風化せずかなりの量が残留していた事から、娘を嬲り殺された挙句妻にまで自殺された、彼の激しい憎悪が読み取れた。

勝山の自宅からは、彼へ復讐を果たした秋人の殺意が採取される。

カーテンの奥には隠し部屋があり、そこが殺害現場となった地下室へ繋がっている。対マンが特別に設えた闘技場には乾いた血痕が残り、凄惨な暴行の痕跡を物語る。闘技場では対マンの殺意も採取できた。秋人のイドには小春を潜らせる事になり、これが彼女の名探偵デビュー戦だった。小春は普通とは違う特別な奴だから、穴井戸のようなヘマはしないと松岡は語る。

ジョン・ウォーカーは全ての事件の裏でを糸を引く黒幕だった。

現状ジョン・ウォーカーは全ての事件の裏で実行犯を教唆した黒幕であり、対マンも彼の監視下におかれ、連続殺人鬼に仕立てられたのだ。
井戸端はジョン・ウォーカーが対マンの被害者である椋を通して父親の秋人に目を付けていた可能性を検討する。即ち秋人もジョン・ウォーカーの洗脳によって連続自殺教唆犯となったかもしれないのだ。
真実を確かめる為秋人のイドに投入された小春は記憶喪失の状態で目を覚ます。そこは昼夜の別ない暗い空に雷雲轟く世界だった。足元はコンクリートの升目で区切られており、それぞれ数字が振ってあるが、これが何を意味するかはわからない。

イドの世界における小春のアバター、名探偵・聖井戸御代。

落雷から逃げ回る人々とひび割れた升目の上の焦げた死体。小春も逃げようとするが、自身の手が雷の直撃で焼け焦げたカエルと手錠で繋がれているのを悟る。小春はイドの世界における自分が名探偵・聖井戸御代であること、この少女はカエルさんであることを思い出す。
イドをモニターしていた百貫は、雷を避けて逃げ回る群衆の中に秋人の妻子、綾子と椋が紛れているのに気付く。
一方、井波は富久田の対面の独房に移送された。井波は富久田の額の穴に言及し、自分も穴が開いた人を知っている、1人は自分の大切な人でもう1人はその人を殺した人だと明かす。
秋人は2人の会話に我関せずベッドで仰向けていたが、ベテランの自分をさしおいて新人の小春が指名された消去法から、彼女が今潜っているのが自身のイドだと悟る。もし秋人のイドにジョン・ウォーカーがいれば、対マンに娘を殺された上その復讐に身を捧げた秋人は、ジョン・ウォーカーに人生を破壊し尽くされたも同然だ。なんとしてもジョン・ウォーカーの正体を暴きたい執念に駆られた秋人は、発作的に壁に頭を打ち付ける。
秋人のイドで確認された人々は、彼の家族や学生時代の友人など、いずれも彼に近しい者ばかりだった。
聖井戸は何故カエルと手錠で繋がれているのか訝しむ。もし最初から手錠で繋がれていたのなら、聖井戸も一蓮托生で落雷で死んでいたはずだ。聖井戸が生きているということは、何者かが死後のカエルと彼女を繋いのだ。

masami
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