ID: INVADED(イド:インヴェイデッド)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ID: INVADED』とはあおきえい監督による日本のSF・ミステリーアニメ作品。2020年1月から3月までTOKYO MX他で放送された。脚本はミステリー作家の舞城王太郎。舞台は凶悪犯罪が増加した現代日本。連続殺人犯の迅速な特定を目的とする組織・蔵は、ミヅハノメと呼ばれる特殊な発明を用い犯人の深層心理が生み出す仮想世界・イドを構築した。元刑事で現囚人の鳴瓢秋人は、名探偵・酒井戸となって、様々な殺人鬼の精神世界に潜るうちに彼らの裏で糸を引く黒幕、ジョン・ウォーカーの存在へ近付いていく。

CV:津田健次郎
名探偵。イドの世界において自分がカエルちゃんと呼ぶ少女の死の謎を解き明かす役割を与えられている。
鳴瓢秋人がイドにダイブした時のアバターであり、現在の秋人より若い青年の姿をとる。容姿は秋人の刑事時代により近い。長くたなびくマフラーと黒いコート、ツンツンしたピンクの髪がトレードマーク。
冷静沈着で合理的、飄々とした性格。秋人自身が妻子持ちだったせいか、イドの世界においても窮地に陥った女子供を放っておけず何度死亡を繰り返しても助けようとする。
イドの世界で目覚めた初期は毎回記憶喪失になっており、身に覚えのない状況に困惑するが、カエルの死体がトリガーとなって酒井戸という名前を思い出し、名探偵の役割に覚醒する。
カエルちゃんの死の謎を解明する為に現場を事細かに分析、様々な手がかりを集めて推理を構築し、そのイドの造物主たる殺人鬼の内面に迫っていく。記憶は投入の都度白紙に戻るが、無意識下で影響を受ける為か、前回から引き継がれた直感をもとにピンチを打開するなど生存時間が延びる傾向がある。

鳴瓢 秋人(なりひさご あきひと)

CV:津田健次郎
酒井戸の正体で、名探偵として蔵に協力するイドのパイロット。
元は殺人課の優秀な刑事で既婚者。無精ひげを生やした細身で筋肉質の男性で、常にローテンションでダウナーな雰囲気を纏い、世界に絶望した濁った眼をしている。
イドの被験時以外は白い独房に監禁されて自由のない身の上。2年前、被害者を殴り殺すのが趣味の連続殺人犯・対マンに、中学生の娘・椋を惨殺される。娘の事件にショックを受けた妻・彩子も浴槽で手首を切って自殺し、独断で捜査を行って対マンを追い詰めた上に射殺。妻子の復讐を果たした代償に全てを失い収監される。
独房の壁一面に妻子の写真を貼り付けるなど、失ってしまった家族への愛情は深く、イドで出会うカエルに娘の面影を重ねている。
他者のイドに潜入する事で対象の精神構造を理解し、巧みな話術で心理を操作し自殺に追い込んできた危険人物。4話の時点で5人の犠牲者を出しているが、いずれも他者の命を顧みない殺人鬼であり、秋人の妻子を馬鹿にするなど彼の不興を買った下地があり、一般人には手を出していない。
自殺教唆は本人の意志というよりもジョン・ウォーカーに殺人衝動を促された側面が強く、ジョン・ウォーカーはその行為をさし、秋人を自分が作り出した8人目の殺人者・追い込みと名付けた。
妻子が存命の頃は子煩悩な愛妻家で家族との関係は良好、刑事としての正義感や使命感も強く併せ持っていた。現在は妻子の非業の死が影を落としているが故に寡黙な性格だが、元同僚でバディを組んでいた百貫には軽口も叩く。人柄をよく知る彼の事は信頼しており、百貫がジョン・ウォーカーではないかと疑われた時は真っ先に異を唱えた。

聖井戸 御代(ひじりいど みよ)

CV:M・A・O
酒井戸に続いて登場した名探偵。自分がカエルさんと呼ぶ少女の死の謎に挑む。
イドにダイブした際の本堂町小春のアバタ―で容姿は殆ど変わらないが、シャーロック・ホームズのようにオーソドックスな探偵コスチュームに身を包んでいる。酒井戸と穴井戸は姓のみだが何故か彼女だけフルネームが与えられている。
一見大らかで真っ直ぐな少女だが人命に対して冷徹な決断も下す。わざと犯人を挑発して自分を襲わせ思念粒子を採取するなど、大胆が過ぎてやや無謀なきらいもある。明晰な推理力と類まれな行動力を併せ持ち、終盤で酒井戸・穴井戸と組んだ際は良きアドバイザーとしても活躍した。基本的に誰にでも敬語で接する礼儀正しい性格。
自分の頭部にドリルで穿孔した穴井戸こと富久田 保津とイドの世界で一緒に行動するうちに淡い連帯感を抱き、彼が死んだ時には1粒涙を流した。

本堂町 小春(ほんどうまち こはる)

CV:M・A・O
イドから得た情報をもとに捜査を行う女外務分析官。23歳。華奢で小柄、童顔な女性で研修を終えて間もない新人。黒髪ショートのサイドに花飾り、赤い目と黒スーツが特徴。
正義感が強く犯人を追い詰めるガッツは人一倍。高い洞察力や観察力、行動力にも恵まれている。聖井戸と同じく基本的に誰にでも敬語で接し、元気ではきはきとしている為、後輩としては覚えがめでたいタイプ。
穴空き事件の捜査時に富久田に拉致されてドリルで穿頭されるが、自分からドリルに穿たれる事で彼の殺意を発生させ、自分の居場所を後援に知らせた。この事からわかる通り、自分の命を切り札として扱う無鉄砲な性格である。他にも同僚の命を顧みずに捜査を強行して殉職させたり、正当防衛とはいえ数田遥の殺害後も落ち着き払っていたり、自分含む捜査陣や犯人の命に関して折々軽視しがち。コンビを組んでいた上司の松岡は、そんな彼女の言動が名探偵の条件・連続殺人鬼にかなうとし、イドのパイロットに推薦する。
聖井戸の時に穴井戸と共に行動していたせいか、富久田が自身の人生に決定的な転機をもたらした為か、彼の死に際しては1粒の弔いの涙を流した。一連の事件後も名探偵として蔵に所属し、イドの世界で活躍している。
殺意と好意を混同した数田にキスされた時は顔真っ赤で動揺していた事から、恋愛経験が少なく純情な素顔が垣間見える。
小春曰く母親にあまり関心を持たれていないらしく、穴空き事件で入院中も見舞いにこなかった。親子関係は淡白。

穴井戸(あないど)

CV:竹内良太
名探偵。自分がカエルくんと呼ぶ少女の死の謎に迫る。青髪で細身の長身、耳にピアスをし襟を立てたトレンチコートを着用する青年。容姿は現在の富久田を若返らせたものに近く傷痕はない。死んだ魚のような目をしている。
早瀬浦の判断でイドのパイロットになった富久田のアバター。イドの世界において他者の死を推理する事や、世界観の法則性を考察する事に関心が薄く、初期は生存率がとても低かった。しかし搭乗を続けるうちに次第にイドでの活動時間が延びて、イド内のイドに落ちた聖井戸の救出の為、酒井戸と砂の世界を探索する。
脳の損傷の作用でイドに滞在時でも記憶を引き継げる特性を持ち、それを蔵に秘密にしていた。
酒井戸や聖井戸に比べて愉快犯的で掴み所がない性格。独特の間延びした喋り方やアンニュイな物腰で、やる気がなさそうにも見える。酷暑の砂漠を歩きながらも笑みを絶やさずジョークを飛ばすなど振る舞いは軽薄だが、味方である酒井戸にカエルの死の謎を解く重大なヒントを伏せていたり腹の底を見せない。

富久田 保津(ふくだ たもつ)

CV:竹内良太
被害者の頭部にドリルで穴を開ける殺害方法から穴空きと呼ばれている連続殺人犯。33歳。
自身も右頭部に穿頭しており、その周辺の皮膚が爛れた猟奇的な外見。
第1話に登場したイドの持ち主であり、家も道路も全てがバラバラで欠損のあるバラバラの世界に秋人を迎え入れた。イド内において被害者達を家族として家に住まわせている。
数唱障害というあらゆる物の数を数えたくなる障害を抱えており、ノイローゼ気味になって自身の頭にドリルで穴を開けた。知能指数は150と非常に高く一種の天才。
彼の犯行は被害者をいたぶるのが目的ではなく、頭にドリルで穴を開ける事で自分と同じ解放感を与えるのが最大の目的である故、夢で引き合わされた木記に穴を開けないかというジョン・ウォーカーの誘いを拒絶している。小春に同胞意識に近い好意を持っていたのも、彼女が額の穴を嫌悪せず、自分の一部として受け入れたのが原因と思われる。
最期は井波の弾丸から小春を庇って死亡した。
エキセントリックでよく冗談を飛ばす性格。

カエル

CV:宮本侑芽
名探偵がイドで対面する長い黒髪と白いワンピース姿の少女。常に死体として現れる。名探偵は彼女の死体と出会うことがトリガーとなって、自分の名前と役割を思い出す。
彼女の死因はそのイドの殺人鬼の犯行動機や心情と密接にリンクし、その謎を解き明かす事が名探偵に求められる。登場次点で既に死んでいるため会話は不可能だが、遺書やダイイングメッセージでヒントを残してくれる。
酒井戸=秋人からはカエルちゃん、聖井戸=小春にはカエルさん、穴井戸=富久田にはカエルくん、裏井戸=早瀬浦=ジョン・ウォーカーにはカエルと呼び捨てにされている。
原則として探偵の味方であり、彼女の死体のそばを離れなければ安全。井戸端スタッフがイドの座標を特定する目印にもなる。
名前の由来は井の中の蛙大海を知らずの諺から。

飛鳥井 木記(あすかい きき)

CV:宮本侑芽
カエルと瓜二つの女性。24歳。秋人が砂漠の世界のミヅハノメに搭乗した先のイドの中のイドで遭遇する。
秋人の勝山伝心殺害と同時に百貴に保護された、対マンの最後の被害者。しかし病院から失踪し、以降は消息不明だった。
小学生の頃から不登校で高校は退学、以後は施設で暮らし画家になるが情緒不安定で自殺未遂を繰り返す。同級生は非常に聡明で優しく気遣いができる子と証言していた。
自分の記憶や体験、さらには想像までもが他人に届く特殊体質を早瀬浦や白駒に利用されミヅハノメの実験体にされた。
ジョン・ウォーカーによって夢に次々と殺人鬼を引きこまれ、毎晩のように惨たらしい殺され方をしたせいで衰弱し、自身の死だけを望むようになっていった薄幸の女性。
ミヅハノメの中には昏睡状態の木記が封印されており、他者の意識を浸蝕して対象に追体験させる彼女の能力こそが、イドの構築に不可欠と考えられる。

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