ID: INVADED(イド:インヴェイデッド)のネタバレ解説まとめ

『ID: INVADED』とはあおきえい監督による日本のSF・ミステリーアニメ作品。2020年1月から3月までTOKYO MX他で放送された。脚本はミステリー作家の舞城王太郎。舞台は凶悪犯罪が増加した現代日本。連続殺人犯の迅速な特定を目的とする組織・蔵は、ミヅハノメと呼ばれる特殊な発明を用い犯人の深層心理が生み出す仮想世界・イドを構築した。元刑事で現囚人の鳴瓢秋人は、名探偵・酒井戸となって、様々な殺人鬼の精神世界に潜るうちに彼らの裏で糸を引く黒幕、ジョン・ウォーカーの存在へ近付いていく。

松岡ら捜査陣は早速花火師の自宅に急行し、彼を逮捕する。花火師の自宅から押収した写真には、スマホを掲げて凄惨な事件現場を我先に映す野次馬がおさめられており、この写真こそがリアルだと花火師は語る。
秋人の対面の独房に収監された花火師は、壁にお気に入りの写真を飾ってうっとりする。「美しいも恐ろしいもない、ただ本物なだけだ、俺はこの薄っぺらく空っぽな人間たちの本質を暴いてやったんだ」と粋がる花火師の言葉を秋人は無感動に受け流す。秋人の斜に構えた態度が気に障った花火師は、「自分もお前もお前の可愛い娘の命も平等に価値がない」と暴言を吐いて秋人の地雷を踏む。

家族の写真を背に話術と心理操作で花火師を自殺に追い込む秋人。

秋人は淡々とした口調で花火師を追い詰めていく。大衆の愚かさや薄っぺらさを嘲る花火師自身も空っぽな人間で、彼が生み出す死が常に大量死なのは、虐殺でなければ死の実感を得られないからだ。4年前のテロを戦場カメラマンとして撮った花火師は、爆発で根こそぎにされた地獄に快感を覚えた。
生きてても死んでても変わらない、本当は他人の死体を並べて自分だけ生き延びたい欺瞞を暴かれた花火師は発狂し、秋人が見守る前で首を吊る。
その夜。秋人は夢でカエルの最期に間に合うが、腕に抱いた彼女はセーラー服の椋へと変わり、妻子より仕事を優先した父親を責めたのだった。

FILE:04『EXTENDED 燃えさかるビルの世界』

富久田は酒井戸に続く二人目の名探偵・穴井戸となる。

秋人が花火師を自殺に追い込む一部始終を見ていた富久田は彼に関心を持ち、自分もイドの世界に飛び込みたいと要請する。富久田はIQ150という高い知能指数を誇り、名探偵の適性もあった為、蔵は彼を二人目の名探偵・穴井戸としてイドに送りこむ。秋人が冬川を自殺に追い込んだ一件で懲罰房入りしているせいで、イドに投入する人材が不足して捜査が滞っていたのだ。
イドに降り立った穴井戸だが、すぐ殺害されてしまい活動時間が短すぎて話にならない。井戸端のスタッフは愉快犯的な殺人鬼の富久田と共同作業を余儀なくされる嫌悪感から、自分達のパフォーマンスも落ちているかもしれないと語る。秋人は殺人鬼を殺しているだけで、しかも直接手を下してないので富久田たちとは区別されていた。穴井戸は「自分の頭に穴を開けるような自殺行為を平気でする人間はサバイバル能力も欠如している」と独白する。
同時刻、墓掘りと名乗る殺人鬼によって女子高生が閉所に監禁されていた。女子高生はその場にあったサイリウムを折って光源を確保し、天井のカメラに向かって自己紹介をする。被害者をさらってどこかに監禁しては、酸素不足による窒息、または餓死する過程を生配信するのが墓掘りの手口らしい。今回の被害者の女子高生は墓掘りになど負けないと明るく振る舞い、コメントを書き込む視聴者に応援を頼む。「私の死に顔見に来た皆様残念でした!私は死にません!絶対に!絶対に!誰かが私を助けに来てくれるまで頑張ります!」と叫ぶ女子高生の動画を、スマホで視聴する電車内の人々。
墓掘りの事件はテレビニュースでも取り上げられ、未だに犯人の手がかりを掴めない警察の無能ぶりが叩かれていた。
外務分析官の西村は女子高生の拉致現場に行き、墓掘りの殺意をワクムスビで採取する。これで墓掘りのイドを構築することができる。
穴井戸が使い物にならないので秋人が懲罰房から出され、墓掘りのイドに投入される。墓掘りのイドで目覚めた酒井戸は、黒焦げの焼死体となったカエルと対面し名探偵の役割を思い出す。酒井戸はカエルの死体を検めるが、消し炭になりすぎて犯行の痕跡が残ってない。とりあえず死因は焼死と仮定し、ふと窓から外を見ると酒井戸がいるビルの下層階が燃えていた。しかも向かいのマンションが徐徐に迫り出してくる。

下からじわじわと炎に炙られるマンション。

よく見れば向かいのマンションにも黒焦げの死体が累々と転がっているが、まだ火の手が届いてないのに妙だと酒井戸は気付く。火の気がない部屋で焼死しているカエルも不自然だ。向かいのマンションを観察していた酒井戸は、窓からこちらを見下ろす幼い少女と目が合うが、彼女は墓掘りの最新の被害者だった。同時にバックドラフトが起こり、炎に巻き込まれた酒井戸は一度目の死亡を遂げる。

生き埋めにされゆっくり衰弱していく様子を動画サイトで配信される墓掘りの被害者。

事件から7時間が経過し、女子高生は確実に衰弱していた。すかさずイドに再投入される酒井戸。バックドラフトで生じた爆炎から辛うじて逃げ切りジャンプ、向かいのマンションの配管を掴む。
井戸端スタッフは酒井戸が目撃した向かいのマンションの少女が、最新の被害者・菊池桂子の10歳時の容姿と一致すると断じる。墓掘りの被害者は全員生き埋めにされており、焼き殺された前例はいない。なのに何故墓掘りのイドでカエルは焼き殺されていたのか、井戸端スタッフは困惑する。
酒井戸は6時間ぶっ通しでイドに投入されては死に続けていた。記憶はリセットされるが名探偵の直感が閃き、前回巻き込まれた爆炎を回避するなど、徐徐に生存時間は延びている。酒井戸は今助けに行くと桂子に呼びかけ、我が身の危険も顧みず奔走する。マンションの壁の一部が迫り出し、その上を駆けて桂子のもとへ急ぐが、予想外の方向から爆風に吹き飛ばされたり急に足場が消失したり翻弄される。
井戸端スタッフの白岳は、何故これまでの墓掘り被害者の拉致現場で思念粒子が検出されなかったのか疑問を呈す。思念粒子は風で吹き散らされる事もあるが、合計で6人も殺し、死にゆく過程をライブ中継するような異常者の殺意がその程度の微量なものとは考えにくい。しかも被害者の手元には酸素スプレーがおかれ、すぐには死なないように工夫されていた。桂子のケースだけ例外だらけなのだ。

漸く向かいのマンションに辿り着いた酒井戸は桂子の救出に赴く。

幾度となくチャレンジを繰り返した酒井戸は、爆風の妨害にも負けず遂に向かいのマンションに渡りきる。廊下には黒焦げの焼死体が累々と転がり、正面から爆炎が襲ってくる。酒井戸=秋人の消耗も激しいが、不眠不休で解析に携わる井戸端スタッフの疲労も限界に達していた。そこへ早瀬浦が訪れ、スタッフに休憩を促す。
百貫は被害者の生死がかかっているのに手は抜けないと言い、酒井戸と同様に死力を尽くすと返すが、殺人犯にまで落ちた秋人に誰かを救いたいという動機なんてないのかもしれないと早瀬浦は懐疑的であった。
酒井戸は爆風を利用して宙を飛び、桂子がいる窓の枠を掴む。

酒井戸の成功を喜ぶ井戸端スタッフ・若鹿。

桂子救出までもう一歩の所まで粘る酒井戸を、食い入るように応援する井戸端スタッフ。桂子がさしのべた手を掴み損ねて落下するかに見えた酒井戸だが、雨樋にしがみ付いて這い上がり、彼の執念が実を結んだ瞬間に井戸端スタッフは歓声を上げる。
ひとりぼっちで心細い思いをしていた桂子は秋人に抱き付く。秋人はそんな彼女を優しく宥める。このビルは死んでる人ばかりだと桂子は言い、酒井戸もその事実を認め推理を再開する。カエルが火の気のない所で死んでいたのは、彼女を焼死体の群れに隠そうとした犯人の思惑だ。即ちカエルは別の場所で殺されて運ばれたのだ。
桂子を拉致したのは墓掘り本人ではなく、その模倣犯だった。故に証拠隠滅を疎かにして、拉致現場に残留思念が残ったのだ。秋人は君のおかげで謎が解けたと礼を述べ、ここから脱出すべく桂子を抱き上げる。その時、桂子がカエルの死体があるマンションの窓を指さす。そこには彼女の家の隣に住んでいた大野という中年男性がいたが、桂子の話によると大野は全てやり直す為に、家族が寝ている家に火を放ったのだそうだ。
当時10歳の桂子は大野が火事に見せかけ家族を殺すのを目撃していた。大野は真相の発覚を恐れ、墓掘りの犯行を装い口封じを行ったのだ。小春と松岡は大野宅に急行、家中をくまなく捜索する。大野が取り押さえられた居間には大量生産のカーペットがあったが、それはカエルの焼死体の下に敷かれていたのと同じだった。カーペットをはねのけると隠し扉が出現、皆で地下室へ下りる。地下室には巨大な樽があり、この中に被害者が隠されていると思った一同はまだ間に合うと喜ぶが、中には腐乱死体があるのみ。動画は生配信ではなく録画であり、日付が偽装されていた。死後数日が経過した桂子の変わり果てた姿をモニター越しに見て、百貫は忸怩たる顔をする。警察を騙しきった大野は大の字に寝転んで哄笑する。
イドでは燃え盛るマンションの窓辺に酒井戸と桂子がたたずんでいた。桂子は見てないと何度も言ったのだが、大野は信じてくれなかった。酒井戸は桂子をしっかり抱え、炎上するマンションから脱出する。向かいのビルでは炎に包まれた大野が身投げしたが、酒井戸は「もうこれ以上怖いものは見なくていい」と優しく桂子の目を塞ぐ。そんな酒井戸に桂子は無邪気に礼を述べ、酒井戸も「真実に辿り着かせてくれてありがとう」と感謝する。
現実に戻った秋人は百貫と対面、犯人の逮捕の成否と被害者の無事を確認する。百貫は動画は録画で、発見時には全て手遅れだったことを告げる。イドで出会った桂子のあどけない笑顔を反芻、こみ上げる殺意を必死に抑える秋人。百貫に「大野を殺したいか」と問われた秋人は、「今まで5人自殺に追い込んできたが、どれも自分の意志で、自分の殺意で殺してきた」と告白する。
それは私怨にあらず、心の奥底から突如として湧き上がった衝動に駆り立てられた行為だが、自分がまだ人であるなら衝動だけで行動を決定したりはしないと反駁する秋人に対し、「お前は人間だ、ただ人として弱いのだ」と百貫は諦観する。
大野は逮捕されパトカーへ押し込まれた。被害者を救えず、本物の墓掘りの手がかりも得られなかった小春は後味の悪さを噛み締める。

数田に突然キスされ驚愕する小春。

その時、野次馬でごった返す現場から逃げる妙な男に気付く。男の顔に漠然と見覚えがあった小春は反射的に後を追い、人けのない路地で声をかける。振り返った顔は穴空きのイドの一室にいた男と同じ、名前は数田だった。穴空きに殺害されたと思われていた数田との再会に小春は喜ぶが、彼は突然キスしてきたのだった。

FILE:05『FALLEN 落ちる世界』

数田に脈絡なくキスされ動揺する小春。しかし何故か数田自身も驚いているようで、大きく目を見開く。数田は小春を突き飛ばしさっさと去っていき、出遅れた小春はわけがわからず松岡がハンドルを握る車へ戻る。数田は穴空きの被害者の1人と目されるものの行方不明中だった。

数田にキスされて赤面する小春。

助手席に乗り込んだ小春は数田を見かけた事を松岡に報告し、緊急配備が敷かれるが、顔が真っ赤になっていたことを怪しまれる。
百貫は個室で富久田を尋問していた。数田もドリルで穿頭されたが、怪我を克服して生き延びていた。しかし数田の穴と自分の穴は別物だと富久田は主張する。富久田の証言によると、穴を通り抜ける風が涼しくないとまずいのだそうだ。
車中で小春と松岡は会話する。小春は数田が大野の逮捕現場に来ていた理由を考えるが、松岡は大きな事件だから別段不自然でもないと乗ってこない。小春は数田があの場にいたのは単なる野次馬じゃなく、本物の墓掘りが模倣犯を確認しに来たからではないかと推理を述べる。実際野次馬にしては数田の行動はおかしかった。小春は松岡にもし自分が墓掘りで現場で警官に呼び止められたらどうするか聞く。松岡は口封じをすると答え、小春もそれに同意し、数田は排除と間違えてキスをしたのだと述べる。墓掘りの拉致現場で殺意が検出されなかったのは、そもそも彼が殺意と好意を取り違えているからだとしたら辻褄が合うと。富久田に穴を開けられ前頭葉が傷付いた数田の中では、殺意と愛情表現がすりかわっているのだ。数田と最後に会った現場に舞い戻った小春は、ワクムスビで殺意を検出する。予想はあたり、数田はあの時小春を殺そうとしていたのだ。衝動は行動のきっかけに過ぎない故に、普通に頭を使いながら殺人を行おうとすればちゃんとできるのだが、小春と鉢合わせした時のように咄嗟に人を殺そうとすると間違った衝動のまま行動してしまうのが数田の弱点だった。

数田のイドにダイブする酒井戸。そこは一面の青空と雲海に、ポツンと孤島が浮かぶ世界だった。

酒井戸は数田のイドに投入される。そこは一面の青空と雲海にポツンと孤島が浮かぶ世界だった。孤島には和風建築の屋敷があり、その一部屋の和室でカエルが殺されていた。カエルは胸をひと突きにされているが凶器は見当たらず、犯人が持ち去ったと推測できる。カエルは胸から大量に出血し、畳は血の海と化していたが、この無重力状態なら血は四方八方に飛び散るはずだ。カエルは空中で殺害され、その血は周囲に飛び散らないように、犯人によって慎重に床に広げられた。
酒井戸は這い蹲って、薄く平らに伸ばされた血糊の下を覗き込む。絨毯状になった血糊の下には隙間があり、若い女性が隠れていた。

カエルの血糊の下に隠れていた謎の女性と挨拶を交わす酒井戸。

女性の顔を解析した井戸端は、彼女が一人の女性ではなく墓掘りの被害者の顔パーツを組み合わせた架空の人物と見抜く。さらに孤島の屋敷は数田が高校生の頃に住んでいた一軒家であり、敷地内には被害者を隔離するのに都合がいい醤油の醸造所などがあった。被害者が閉じ込められているのは醤油樽ではと若鹿は睨む。
小春と松岡、それに別の車に乗った西村はどちらが数田の実家へ向かうか相談し、距離的に近い西村が調べることになる。
酒井戸は謎の女性に何故ここでこうしているのか、犯人はどこかと聞くが、女性はわからないと無気力に繰り返すばかり。数田は彼女を怖いお化けから隠しているのだそうだ。数田がそのお化けと戦っているのかと考えた酒井戸は宙に浮かぶ花瓶を武器として確保するが、同時にばらばらになった写真の断片を発見。そこには中学時代の数田と同じ制服の友人たちが写っていた。
写真の断片を合成した井戸端は、数田が中学3年生の時の写真に間違いないと結論を下し、本人の実際の所有物だと断定する。恋愛感情が数田を殺人に駆り立てているなら、この写真の中に引鉄となった人物がいるかもしれない。数田は恋愛感情で人を殺し、彼らが死ぬまでの様子を撮った動画を好意から相手に送り届けているのだ。
小春と松岡は数田の写真に写っていた中学の級友をあたることにする。
酒井戸は無重力状態を利用し、浮島の裏側へと回る。そこでジョン・ウォーカーの仕込み杖で串刺しにされた数田を見る。ジョン・ウォーカーは数田を仕込み杖でばらばらに切り裂き、酒井戸は花瓶を振り上げて向かっていくが難なく躱されて退散を許す。
醸造所に到着した西村は警官隊を率いて中を調べていた。醸造所には蓋が密閉された巨大な樽があり、内側にコードが繋がっている。被害者がいるなら樽の中の可能性が高い。
小春と松岡が真っ先に訪ねたのは井波七星という女性の家だった。
一方醸造所に乗り込んだ西村は、樽の蓋を開くべく悪戦苦闘していたが固くてどうにもできず、被害者の人命を優先するなら一刻の猶予もないと、蓋をロックしているかもしれない電源ケーブルを切断しようという話になる。その時、樽の底から大量のガソリンが漏れ出してケーブル切断時の火花が引火する。醸造所は瞬く間に火の海となり、西村も炎に巻き込まれる。
小春と松岡はリビングで女性に聞きこみをしていた。女性は井波といい、数田の家には13歳の時と14歳の時の2回遊びに行ったそうだ。松岡が電話で席を外した時、井波が小春に声をかけてくる。小春の額の穴に気付いた井波が指を触れると途端に傷が開き、赤い血が流れだす。それをティッシュで拭く井波の目は異常な欲望に輝く。
小春に数田の交際関係を聞かれた井波は誰とも付き合ってないと即答する。続いて数田との個人的な関係を詮索されると友人よりも疎遠だと述べるが、その割には数田が誰とも付き合ってない情報をまめに仕入れているなど、言動が矛盾する。
小春の追及をのらりくらりとはぐらかす井波。そこへ松岡が戻り、西村と警官隊が醸造所の爆発に巻き込まれたと報せる。すぐ駆け付けたい松岡を引き止め、もう少しだけと粘り、人の死ぬところや怪我をするところを見るのが好きなんですねと踏み込む小春。続けざまに立ち上がり、実は数田遥とキスしてしまったのだとあっけらかんと暴露する。

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