ID: INVADED(イド:インヴェイデッド)のネタバレ解説まとめ

『ID: INVADED』とはあおきえい監督による日本のSF・ミステリーアニメ作品。2020年1月から3月までTOKYO MX他で放送された。脚本はミステリー作家の舞城王太郎。舞台は凶悪犯罪が増加した現代日本。連続殺人犯の迅速な特定を目的とする組織・蔵は、ミヅハノメと呼ばれる特殊な発明を用い犯人の深層心理が生み出す仮想世界・イドを構築した。元刑事で現囚人の鳴瓢秋人は、名探偵・酒井戸となって、様々な殺人鬼の精神世界に潜るうちに彼らの裏で糸を引く黒幕、ジョン・ウォーカーの存在へ近付いていく。

『ID: INVADED』の概要

『ID:INVADED』は『Fate/Zero』『アルドノア・ゼロ』等で有名なあおきえい監督による日本のテレビアニメ作品で2020年1月から3月までTOKYO MX他で全13回放送された。ジャンルはSFミステリー。脚本はミステリー作家としても有名な舞城王太郎が執筆した。
最初は他の脚本家にオファーする予定だったが話が上手くまとまらず、氏の大ファンだったプロデューサーの須田泰雄が、2015年12月に舞城王太郎へオファーした所企画が実現した。当初は『ALIEN THURSDAYYY』というタイトルで、木曜日の探偵が木星Zというシステムを使って犯人の殺意の世界にダイブする内容だった。キャラクターデザイン及びコミカライズは『ブラッドラッド』『ハマトラ』も担当した漫画家・小玉有起が手がける。
殺人鬼の内的世界であるイドと現実、両面同時進行で捜査を進め犯人を突き止める展開が毎回踏襲される。
イドは殺人鬼の歪な精神構造を反映した独特な世界観を持ち、バラバラにされて断面をさらした人体や家が白い空間に浮遊していたり、明けない夜の中、永遠に終わりがない円環の線路を先頭と最後尾が繋がった電車が走り続けていたりする。イドの世界に降り立った酒井戸は最初は記憶喪失の状態であるが、自身がカエルちゃんと呼ぶ少女の死体と出会うことがトリガーとなり、一見破綻したイドに法則性を見出し、合理的な推理を構築して殺人鬼の正体や居場所を割り出す名探偵の役割に覚醒する。
イドをサポートする井戸端や新人外務分析官の本堂町小春らと連携し、イドの謎を解明して異常な殺人鬼を追い詰めていく酒井戸。彼の正体は娘を殺した殺人鬼・対マンに復讐した事で刑事を罷免された独房の囚人、鳴瓢秋人だった。秋人は娘の仇である対マン含む数々の殺人鬼を教唆した疑いがかかる黒幕ジョン・ウォーカーを追うなかで、イドへのダイブに不可欠な装置・ミヅハノメの発足経緯と密接に関わるカエルの正体にも迫っていく。

『ID: INVADED』のあらすじ・ストーリー

FILE:01『JIGSAWED バラバラの世界』

冒頭、長いマフラーを巻いたピンク髪の青年が奇妙な空間で目覚める。
そこはバラバラになり、断面をさらした家や家具、道路などが全方位に浮かぶ異様な世界。目覚めた時点の彼は記憶喪失であり、ここにいる理由はおろか自分の名前さえ覚えてない。

突如として輪切りにされる青年の腕。

突如として四肢が輪切りにされ青年は絶叫する。にも関わらず彼は生きており、バラバラにされた身体の部品もジグソーパズルのように繋ぎ合わせることができた。さらに奇妙な事に断面は青い光の集合体で、切断されても痛覚への刺激は一切なく、当然あるはずの血や骨が見当たらない。冷静さを取り戻した青年は、バラバラだけど繋がっている、一旦切り離された手足も意志によって操作して戻せるこの世界の法則性を理解する。
周囲を見回した青年は、少し離れた所を浮遊する部屋で、長い黒髪に患者着のような白いワンピースの少女が倒れているのに気付く。青年はロケットパンチの要領で片腕を飛ばしてその部屋の床を掴み、引き寄せるのに成功する。少女の死体と対面した事がトリガーとなり、青年は自分の名前が酒井戸であり、彼女・カエルちゃんの死の謎を解明する役割を課された名探偵であることを思い出す。

秋人が目覚めたイドの世界では全てが空中分解されていた。

同時刻、井戸端のメンバーらはイドをモニターして情報を解析していた。酒井戸が現在いる世界はイドと呼ばれる殺人者の内的世界で、彼らの歪んだ精神構造が反映された場所だ。
蔵は犯行現場から犯人の殺意を抽出し、それをミヅハノメという特殊な装置にかけることで彼らの心象を映したイドへパイロットを送りこみ、現実の捜査の手がかりを得るのを目的とする組織。井戸端はイドの監視を任された現場スタッフであり、今もまた酒井戸が得た情報の解析を急ピッチで進めていた。そしてイドのパイロットは便宜上名探偵と呼ばれていた。
現在井戸端は穴空きと呼ばれる殺人鬼、ならびに事件を追っていた。穴空きは被害者を拉致監禁し、その頭にドリルを開けて殺す異常な性癖の持ち主だった。酒井戸がダイブしたのは穴空きのイドであり、カエルの死体をとっかかりとして犯人=穴空きの核心へ迫るのが酒井戸に課された任務だった。
個人の殺意から出来上がるイドには、犯人の記憶も色濃く反映されており、酒井戸が探索した部屋には犯人の愛読書もあった。井戸端の現場リーダーである東郷は、書斎にかかっていたカレンダーを拡大し、「藤田商店」という商店からの贈答品だと突き止める。井戸端の仕事を見学していた新米外務分析官・小春と上司の松岡は、早速藤田商店へと赴く。イドから汲み上げた情報解析は井戸端が、現地捜査は外務分析官が担当するのが蔵の慣例だった。
さらに先へ進んだ酒井戸は一部屋に集う男女を発見する。彼らも酒井戸と同じく身体をバラバラにされていたが、その事を不審がるでもなく寛いでいる。彼らは自分たちを家族と称すが、その7人中5人の顔と名前が穴空きの被害者と一致した。残り2人は捜索願が出ており、穴空きの未発見の被害者と考えられた。スタッフの1人羽二重が顔が歪んだ謎の人物をモニターに捉え、井戸端の面々はどよめく。羽二重が確認した黒ずくめの人物はジョン・ウォーカーといい、シリアルキラーのイドを渡り歩く殺人教唆犯だった。

バラバラになった男女が集う部屋で、酒井戸はカエルの死因を推理する。

酒井戸は室内の男女にカエルの死体を見せるが誰もこんな子は知らないと証言する。だがカエルの死体には彼らとの明確な相違点があった。
酒井戸は家を飛び出し、先のロケットパンチの要領で次々と家や道路の断片を掴んで繋げていく。そうして繋ぎ合わせるとひとつの街が出現し、パーツの欠けた空白が「たこや」の字を表す。「たこや」は「藤田商店」の近くにあるたこ焼き屋だった。このイドではバラバラであることが正しいなら、何故カエルの死体だけ綺麗なままだったのか酒井戸は考える。
一方小春と松岡は「藤田商店」と「たこや」の中間の家に急行していた。それは穴空きこと富久田保津の住まいだった。松岡は応援が来るまで待機を命じるが囚われた被害者の安否が気がかりな小春は突入を主張する。
カエルの死体に欠損がないのを不審がった酒井戸は、カエルの死体に犯人が潜んでいると見破る。酒井戸がそれを指摘するやカエルの死体が分解され、彼女の身体を構成していたパーツが集まって穴空きの姿を形作る。とうとうイドの世界で犯人と対峙した酒井戸だが、気付けば部屋の住人が8人に増えていた。8人目は逃亡した富久田によって拉致された小春だった。

FILE:02『JIGSAWED II バラバラの世界』

富久田の家は警察車両に包囲されていた。中へ突入した捜査陣は頭に穴が穿たれた被害者を確保する。とりあえず被害者を救急車に回収し、小春も付き添うことに。松岡は地下へ進み、穴空きと目される人物を拘束するが、フードを剥いだその人物の頭にもドリル穴があった。実は救急車に収容された人物こそ富久田本人で、被害者を身代わりに仕立て入れ替わっていたのだ。
イドでは8人目の家族になった小春が酒井戸に出ていけと促す。しかし酒井戸は事件が解決したらと保留し、逃走を企てる穴空きを追いかける。間一髪で穴空きを逃がしてしまった酒井戸が振り返ると、小春含む被害者の男女が慄然と立ち竦み、一方向を凝視する。そこにいたのは帽子を被り杖を突いた老紳士、ジョン・ウォーカーだった。
井戸端は総力を挙げてジョン・ウォーカーの解析を進める。松岡は小春の捜索と救出にもリソースを振り分けろと怒る。富久田に拉致された小春が依然行方不明で安否が確認できないのも、松岡の焦燥を煽る一因だった。

富久田に囚われてドリルをつきつけられる小春。

小春は手術台に手足を拘束された状態で目を覚ます。そこは富久田の隠れ家だった。富久田は電動ドリルで小春の頭部に穴を開けようとする。彼の話によるとドリルで頭を貫通してもすぐには死なず、暫くは生きているそうだ。富久田は頭部の穴を風が通り抜けると世界が綺麗に見えると恍惚と語る。しかし小春は彼の欺瞞を暴き、富久田はただの殺人者で、彼が捕まればその分世界が綺麗になると糾弾する。
酒井戸は何故穴空きがカエルの死体に隠れていたのか推理する。そして穴空きにとって、この世界はバラバラではない、完璧な世界だと答えを出す。富久田は自分の内面がバラバラに壊れているのを自覚せず、それ故自分と同じ完璧な世界を共有させようと、他人の頭にもドリルで穴を開けていたのだった。
小春はドリルを翳す富久田に臆さず突っ込んでいく。小春はドリルで頭を貫かれるが、その瞬間イドの世界の小春が「ここは私の家じゃない」と正気を取り戻して叫ぶ。瞬間、酒井戸はイドから強制排出される。小春が携帯していた殺意を検出する端末・ワクムスビが、彼女が富久田に向けた殺意に反応し、新たに小春のイドが生まれてしまったのだ。酒井戸は今度は小春のイドに投入される。そこは巨大なドリルが無数に地面に突き刺さった、荒廃した景観を呈す場所だった。
小春のイドに降り立った酒井戸は再びカエルの死体と遭遇するが、カエルは木の枝で首吊り自殺をしており、ご丁寧に遺書まで残されていた。犯人が存在しない以上解くべき謎もない。困惑する酒井戸の上に巨大なドリルが降りてきて、カエルの死体ごと粉砕する。
しかし酒井戸が小春のイドに滞在した事で、井戸端はワクムスビの逆探知に成功し、彼女が監禁された富久田の隠れ家を特定する。
ドリルに穿頭された小春はまだ息があった。富久田は彼女を見て、自分は他人の頭に穴を開けたかったんじゃない、他人が頭に穴を開けるところが見たかったんだと漸く理解する。富久田は頭に穴を開ける事で現実の雑音が消えて救われており、その素晴らしさを他人と分かち合おうとしていたのだった。隠れ家に警察が突入して富久田は逮捕、小春は救出される。自らドリルに突っこんだ小春を唯一の同類と見なした富久田は、また会いに来てほしいと笑ってせがむ。
事件が解決し、酒井戸はイドから排出される。酒井戸の正体は鳴瓢秋人という元刑事で井戸端室長の百貫は彼の現役時代の相棒だった。小春のイドでカエルが自殺していたのは、小春が臆さずドリルに突っこむ自殺行為で自分の居場所を報せた事に起因していた。
百貫はイドに潜る度に記憶がリセットされて辛くないかと問うも、秋人はカエルと会うのは娘との面会みたいなもので、むしろ楽しみにしていると告げる。秋人は三年前にある事件で娘・椋と妻・綾子を亡くしており、毎回イドで非業の死を遂げるカエルと、同じ年頃の娘を重ねて見ているのだ。百貫は穴空きがカエルの死体を利用した事に怒っているのではないかと指摘し、妻子の死とイドの事象を混同するなと警告する。しかも秋人はイドにダイブを繰り返す事で犯罪者の心理に知悉し、それをもとに相手を洗脳し、自殺へ導く常習犯だった。間接的に人を殺しておきながら何ら痛痒のない秋人の危うさを百貫は痛感するが、名探偵の適性がある人材はそうそういない為、今後も彼を使うしかない。

殺人教唆犯ジョン・ウォーカー。数々の事件の裏で糸を引く黒幕。

その頃、局長の早瀬浦と東郷が執務室で話していた。ミヅハノメには未知の領域が多く、カエルやジョン・ウォーカーの正体は、上層部も把握していなかった。殺人鬼に共通する何らかの要素の具現化と考えられるが、詳しい事はわからない。ジョン・ウォーカーが実在するなら野放しにできないと判断し、蔵は本腰を入れて捜査を始める。

FILE:03『SNIPED 滝の世界』

格闘ゲームに興じる秋人と椋。

秋人は夢を見ていた。夢の中ではまだ妻子が存命で、綾子は寝起きの秋人を優しく迎え、椋は父親とゲームで遊ぶ。椋に警察官に向いてると思うか聞かれた秋人は、愛娘を危険な仕事に関わらせたくなくて言葉を濁す。それを見ているもう1人の秋人は、これは嘘だと否定する。殺人課の刑事になってから秋人はずっと多忙で、娘に構ってやる時間がなかった。そんな父親に憧れて、思春期の娘が警察官を目指すなどありえないと断じる。これは秋人の罪悪感と未練が作り出した都合良い妄想だった。次の瞬間、秋人たち一家が住んでいたマンションのリビングが血の海となる。椋は対マンと呼ばれる殺人鬼に1対1の殴り合いを強制され、殴り殺されたのだった。死体は損傷が激しく原形を留めていなかったが、夢の中で検屍を受ける椋の身体は綺麗だった。それを見た秋人は、やっぱり夢なのだと悟る。
うなされて飛び起きた秋人は、暗い独房のベッドで頭を抱え込む。
一方、街では花火師という爆弾魔がビルを爆破する事件が立て続けに起きていた。入院中の小春は、花火師の参事の報道をタブレットで見詰めて険しい顔をする。そこへ松岡が見舞いにきて経過を尋ね、小春はリハビリも順調なこと、もうすぐ現場に復帰できそうだと報告する。酒井戸が自身のイドに入った事を聞いた小春は、自分も入ってみたいと羨むが、松岡は強く止める。イドとは無意識の集合体であり、自分のイドに入ることは無意識を意識する事だ。そのタブーを犯せば精神崩壊を招き、名探偵は自分のイドの中で永遠に彷徨い続ける事になるのだが、これをドグマ落ちと称す。名探偵がイドで記憶喪失になるのは、自分の無意識を守ろうとする防衛機構なのだと松岡は話す。
小春は自分のイドが他人に出たり入ったり覗かれているのが楽しいと言い、そんな彼女に対し松岡はあきれる。富久田にも恐怖ではなく、怒りとスリルが入り混じった感情を抱く彼女を見て、現役時代の秋人に近い感性だと称す。秋人もまた連続殺人犯という存在を追いかけることに異様な執念を燃やしていたらしい。ならば自分にも名探偵の素質があるかと期待する小春を、そんなものはないに越した事がないとばっさり切り捨てる松岡。
花火師の現場からは殺意の思念粒子が検出された。秋人は早速イドにダイブする。

花火師のイドは滝に囲まれた高い塔の姿をしていた。

花火師のイドは四面を滝に包囲された高い塔の姿をしていた。塔の上には秋人の他にも大勢の男女がおり、どこからかの狙撃に逃げ回っていた。カエルは胸を撃ち抜かれて死んでいる。
塔のヘリの出っ張りに隠れ、どうにか狙撃を避ける男女。弾丸は滝の内側から飛んでくるようだが、滝の飛沫のせいで犯人の姿はおろか弾道すら特定できない。
井戸端はモニターを介し解析を進めていた。この塔は実在せず、男女の数は総勢75名。しかしその顔は現実の誰とも一致せず、羽二重は架空の存在に過ぎないと見破る。酒井戸は撃たれて排出されるが、即座にまた投入される。不可視の狙撃の恐怖に耐えかねた男が塔から投身、あっけなく墜落死する。今度は隣の女が半狂乱になって飛び下りようとするが、咄嗟に腕を掴んで助ける。
「謎が解けた」
先程墜落死した男の位置が変わっている事から、酒井戸は塔が回転している事実に気付く。最初の狙撃は連射だったが狙いは正確で、移動しながらできる芸当ではないのも裏付けとなる。
その時秋人のそばに伏せた男が顔を上げ、「まだ死んでいなかったのか」と呟く。皆に逃げろと呼び回り這い進む彼こそが花火師だった。滝の向こう側からロボットにオート射撃をさせ、花火師本人は群衆に紛れ、標的となる人間を射線に誘導していたのだ。
トリックを見破った酒井戸が頭を撃ち抜かれ死亡すると同時に、井戸端は犠牲者の顔のパーツをモンタージュし、最初の犠牲者の75名中74名が4年前に中東で起きた爆破テロに巻き込まれた軍人だと割り出す。残る1名こそ、酒井戸が発見した男だった。イドの虐殺現場に花火師が紛れ込んでいた事から、犯行現場にも花火師が立ち会っている可能性が高いと見た井戸端は、現場にいても不自然じゃない職種を挙げていく。候補にはフリーのカメラマンが含まれており、これが的中した。

花火師が撮った写真には、多くの犠牲者を出した事件現場をこぞって写す群衆の姿があった。

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