零~月蝕の仮面~(Fatal Frame IV)のネタバレ解説・考察まとめ

『零~月蝕の仮面~』は和風ホラーゲーム・『零』シリーズの第4作目である。「恐怖を体験する。」がキャッチコピー。時代背景は1980年代の日本。全12章の構成で水無月流歌、麻生海咲、月森円香、霧島長四郎の4名の視点で進行する。舞台は朧月島という離島。朽ちた廃墟と化した病院や和風建築の屋敷での探索及び怨霊との戦闘がメインとなる。

三ノ蝕 忘日(わすれび)

三ノ蝕 忘日(わすれび)の冒頭スチル

私立探偵・霧島長四郎は流歌の母親である小夜歌に、臘月島に渡った娘の保護を依頼される。
十年前、刑事だった長四郎は灰原耀という人物を追っていた。灰原耀は灰原病院の院長・灰原重人の長男で、東京で灰原医院を経営する優秀な医師だったが、人体実験で複数の入院患者を死亡に追い込んだ事実が明るみに出て指名手配。父親の重人が臘月島の権力者であり、息子の病院に多額の援助をしていた事実を掴んだ霧島は、島で行われる臘月神楽に灰原も姿を現すと踏んで容疑者の故郷を訪れる。
その際に神隠し事件が起き、捜索に協力した長四郎は病院の地下で流歌達を発見。以降、この事件がきっかけで知り合った小夜歌の病身を案じて親交を結ぶ。
回想が途切れると長四郎は灰原病院の廊下に倒れていた。前後の記憶が混濁していることに戸惑うも、長年捜し求めた灰原を見かけた長四郎は、薄い笑みを浮かべ挑発するような彼の姿を追って進んでいく。長四郎は流歌の保護を念頭におきながら、元刑事の執念として宿敵を追う決断をする。
院内を徘徊する霊と時折戦闘しながら探索を進める中で、長四郎は手記や紙片を入手し、いくつかの新しい事実を知る。月幽病の患者の最終的な症状として「空身」があり、この状態に陥ると一切の記憶を喪失し、死に極めて近い放心状態が続く。また、月幽病には「芽吹く」「空身」「咲く」の段階がある。芽吹いた患者が死ぬと「咲いて」しまうが、この状態になると他人にもその顔が歪曲して見える。咲くことは島に終焉をもたらす厄災と同一視される為、月幽病の患者が死ねば面を刈るのが常だった。
長四郎は十年前に流達を発見した地下道に行くが彼女の姿は見当たらない。そこで記憶が甦り、発見時の流歌が能面のような表情で「きらいごう」と謎の言葉を呟いた事を思い出す。

四ノ蝕 空身(うつせみ)

四ノ蝕 空身(うつせみ)の冒頭スチル

円香を撃退した後、鏡を見てしまった流歌は自分の顔が歪んでいるのに愕然とする。
ショックを受ける彼女だが、同時にスピーカーからひび割れた音楽が流れだし流歌の失われた記憶を喚起。新たに流歌が思い出したのは父親の事だった。
流歌の実父・四方月宗也(よもつき そうや)は臘月島の面打師で、代々島の特別な儀式に用いられる仮面を打ってきた。月幽病の症状の一つに自他ともに顔が認識できなくなることが挙げられるが、宗也は最高傑作を完成させる為、咲いてしまったらどうしようと嫌がる娘に様々な面を被せて実験台にしていた。
回想から立ち戻った流歌は、円香のいた場所でメモの切れ端を入手。そこには「わたしたち えらばれた」の文字が。
流歌の父親が関係していた儀式は「帰来迎」(きらいごう)といい、観光向けに俗化した臘月神楽の本来の姿であった。この帰来迎には舞い踊る器役と楽器を奏でる奏(かなで)役が必要とされ、十年前の流歌達が奏役に選ばれていたのだ。
円香は全て思い出したのだが、真実の負荷に耐えかね心を病んでしまったようだ。
「へやへ かえります」とメモが結ばれているのを見た流歌は、今度こそ彼女に会えると部屋へ向かうがもぬけの殻でベッドに一冊の手帳が残されているのみ。文面には遺書ともとれる内容が綴られ、まだ自我が残っているうちに「とじます」とあった。
探索を続ける流歌はある特殊な音楽に月幽病を癒す力があること、神隠し事件の後に発生した臘月島における住民の大量失踪で唯一生存していた亞夜子が本島の病院に移送されたことを知る。亞夜子はその半年後に衰弱死したが、最期の言葉は「おかあさん……」だった。
実際に音楽を聴いた瞬間に父の事を思い出した流歌は、さらなる手がかりを求め放送曲の楽譜の入手を決意。楽譜が亞夜子の隣の部屋にあるところまで掴み、亞夜子の隣室で盗癖が問題視されていた少年の部屋を訪ねるが何もない。実は隣の部屋はミスリードであり、亞夜子の病室に存在する隠し部屋を示唆していたのだ。
楽譜を手に入れた流歌は食堂のグランドピアノで演奏を試みるも突然電話が鳴り響く。かけてきたのは円香で「来ちゃだめ」自分は「もういい」と告げて切れる。

食堂のグランドピアノで楽譜を再現する流歌。

ピアノで楽譜の旋律を再現した流歌は、院内のエレベーターでどこかへ移動した記憶を思い出す。早速エレベーターに向かった流歌は車椅子に乗った患者とそれを押す女性の霊を目撃、どうやらこの二人は姉妹らしい。
二人を追って中庭のプールへ来た流歌はプールサイドに倒れた車椅子と、首がねじ曲がった人影を発見。反射的に手を伸ばすも車椅子を押していた女性の霊に手首を掴まれ、「私に触るな」と拒まれる。いかなる事情からか、この姉妹は互いを混同しているらしい。
プールサイドでの戦闘を終えた流歌は、その場に落ちていた配電室の鍵を入手して地下へ移動。物置を抜けた先の配電室でエレベーターを稼働させるも、さらに奥にある扉を開けると「祓ヒノ道」と呼ばれる異空間に繋がっており、待ち構えていた帰来迎の巫女にして灰原重人の娘・朔夜と戦闘に突入。どうにか逃げきった流歌は面を刈った死者を弔う忌ノ宮の資料を手に入れ、エレベーターに乗って自分が元々入院していた病室へ。

五ノ蝕 双面(ふたおもて)

黒い少女との邂逅で過去の一部を取り戻した海咲。
続けて亞夜子の部屋を探索していると、黒い少女に隠し部屋を指し示される。隠し部屋に入った海咲は亞夜子のメモを入手、誰かと出会ってから彼女の月幽病が進行したのを知る。また隠し部屋には男物のスーツと黒い手帳があり、亞夜子が成人男性を匿っていた痕跡が窺えた。
海咲には入院中、心の支えとなった「たいせつなひと」がいた。しかしそのたいせつなひとの詳細をどうしても思い出せない。円香の捜索と並行してたいせつなひとの手がかりを追い求める海咲はフィルムリールを入手、映像を見れば記憶が甦るのではないかと食堂の映写機にかけてみる。スクリーンに映し出された臘月神楽の映像に既視感を覚える海咲。十年前、面を付けて臘月神楽を見物していた海咲は後ろから伸びてきた手に連れ去られたのだ。
映像の終盤近く、スクリーンの前にたたずむ円香に気付く。映写機の光で不明瞭だったが、接近してきた円香の顔は不吉に歪んでいた。射影機で円香を倒した海咲は、彼女が消えた後に落ちていた最期の手紙を読む。
そこで円香は自分を「あの子」のかわりにおもちゃにしていると糾弾、それでもあの子を忘れてくれるならそれでよかったのにと嘆いていた。

「いっしょに死んだら?」

手紙の最後は絶縁宣言とも読める、突き放すような言葉で結ばれていた。あの子とは黒い少女をさし、円香は彼女に海咲をとられてしまうとずっと危惧していたのだ。
意気消沈した円香が自分の病室に戻ると例の黒い服の少女が待っていた。海咲はこの少女こそが自分の「たいせつなひと」だと思い出す。少女に導かれて看護日誌や資料を読み解いていった海咲は、模糊とした過去を次第に甦らせていく。
海咲は元々霊媒体質で月幽病の進行が非常に早く、黒い少女の存在はそんな彼女の心を安定させるのに不可欠だった。また4階にもう一人霊媒体質の患者が入院していた。月幽病は不確定要素が多く、そこに霊媒体質が加わるとさらにどうなるか予測できない。症状が進むと患者が凶暴化する事例もある。月幽病の患者同士の接触が症状の進行をいたずらに速めるかもしれないと懸念した病院側の意向で、原則二人は引き離されていた。
4階に収容された霊媒体質の患者は重人の娘・朔夜であり、他の月幽病患者は彼女を治す為の実験台に過ぎなかったことが判明する。しかし朔夜の症状は悪化する一方で、医師や看護婦はどうしても彼女の顔を覚えられず「かおのない人」と呼んでいた。
資料を拾い集めて過去を再構成した海咲は、在りし日の朔夜の顔を思い出す。

六ノ蝕 月守歌(つきもりうた)

六ノ蝕 月守歌(つきもりうた)の冒頭スチル

自分の病室に戻った流歌は、そこにあったオルゴールの旋律によって再び過去を思い出す。
流歌の旧姓は父方の四方月。水無月は父と別れた母親の苗字だった。優れた面打師だった宗也は月蝕の仮面なる究極の面を求め、日夜製作に没頭していた。月蝕の仮面は被った者の記憶を無、即ち零に帰し、魂が還る零域の光景を呼び起こす特別な霊力が宿る面だった。試作品の仮面を次々と娘に被せていたのが災いし、流歌は月幽病を発症。そんな不幸な経緯のせいか、流歌はどう頑張っても父親の顔を思い出せなかった。宗也に面作りを依頼したのは灰原病院の院長・重人であり、月蝕の仮面は帰来迎の儀式に欠くことができない重要な物だったが、実の娘に対する夫の仕打ちが許せない小夜歌は離婚して島を去る。
流歌の病室にあった小夜歌の日記には夫の暴挙を止められなかった後悔の念と共に、記憶を取り戻す事で娘が咲いてしまうかもしれない懸念が記されていた。
娘に無関心な父の態度と母の悲痛な叫びを噛み締めた流歌は、母親に促されくりかえし練習したピアノ曲を想起する。小夜歌が娘に弾かせた月守歌は月幽病の治療に効果がある曲だった。小夜歌の日記には帰来迎の儀式場への地図も書かれており、流歌はそれに従ってエレベーターで地下へ行く。
地下道には多数の浮遊霊が屯して不気味な雰囲気が漂っていたが、流歌はまるで母の胎内に回帰したような安堵の表情を浮かべ目的地へ赴く。

七ノ蝕 無苦(むく)

病院の中庭に立ち尽くす長四郎は屋上の灰原を発見。

地下道に立ち尽くしていた長四郎は先を歩く灰原を追いかけたが先は行き止まりであり、仕方なくエレベーターに乗って地下1階に引き返す。
地下1階の探索中、長四郎は臘月神楽で踊り手を務めた遠野という看護婦が神楽の最中に死亡したのを知る。帰来迎と臘月神楽は表裏一体の関係であり、裏の祭りの異変が表に影響したのだ。ホールを抜けて裏口の焼却炉に向かった長四郎は、灰原病院に医師として勤務していた友人の燃え残った手紙を発見。長四郎が捜査に熱を上げたのには、この友人の存在もあったのだ。
友人を追憶する長四郎の前に看護婦・遠野の霊が出現、彼を墓地へと導く。墓地に辿り着いた長四郎は遠野の日記を手に入れ、彼女が島外出身だったこと、臘月島の住民の温かい人柄に好感を持っていたことを知る。努力家の彼女は早く島に馴染もうとして臘月神楽の大役を引き受けたのだが、それは臘月神楽と帰来迎の相関性を追求する院長の陰謀だった。
灰原重人と耀の父子は朔夜を救いたい一心で帰来迎の器に抜擢、当時入院していた五人の少女を奏役に仕立て地下の祭壇で儀式を執り行うも、朔夜の面が割れて失敗し彼女は生きながら死んだ状態と化す。
墓地から病院へ帰った長四郎は、途中入手したフィルムリールを食堂の映写機にかけるもその瞬間島民の霊が殺到。なんとか撃退してスクリーンの裏を調べ、過去に自分が調査記録を吹き込んだカセットテープを発見する。
カセットテープを再生した長四郎は4階に入院している画家・曲木が事件の手がかりを持っていると知り、彼の病室へ赴く。曲木もまた月幽病を患っていたが他の患者のように悲観せず、自分の病状すらも絵画の題材になると精力的に創作活動に取り組んでいた。曲木の霊を倒した長四郎は生前の彼が床に描き残した絵を調べ、神隠し事件の後に灰原の捜査が打ち切られた事、それでも諦めきれず警察を辞めて島を再訪した事、その時に島民の大失踪に居合わせた事を連鎖的に思い出す。
事件当時、長四郎は中庭から忌ノ宮へ行く階段から何者かが上ってくるのを目撃していた。それはとうとう咲いてしまった朔夜だった。騒然とする周囲を見回した長四郎は病院の屋上に灰原を発見、今度こそ捕まえようとする。

八ノ蝕 朔夜(さくや)

八ノ蝕 朔夜(さくや)の冒頭スチル

探索を続ける海咲は朔夜のことを徐徐に思い出していく。
直接会うのは禁じられていたが海咲はこっそり病室を抜け出し朔夜に会いに行った。朔夜は優しく美しい女性で、海咲のことを妹のように可愛がってくれていた。黒い服の少女に導かれて病院の地下道におりた海咲は、灰原耀に付き添われ、月の井戸と呼ばれる場所で月光浴を行った事実を思い出す。院長と耀の企みで奏に仕立てられた海咲含む5人は、月幽病と親和性のある月の光を慢性的に浴びせられる事で奏足り得る資格を得たのだ。

帰来迎で月の光を浴び神々しく舞い踊る朔夜。

さらにその先には帰来迎が行われた祭壇があり、神隠し事件の当日、海咲は灰原に仮面を付けられ楽器を演奏した事と症状の悪化を理由に会えなくなった朔夜が器として踊っていた事を追憶する。
海咲が奏を務めた儀式は途中で朔夜が悶絶し、月蝕の仮面ごと爆ぜて咲いてしまった結果失敗に終わった。
追憶から回帰した海咲に朔夜の怨霊が襲いかかる。射影機で撃退した海咲は朔夜が消えたあとに転がる一体の人形を拾うが、その風貌は黒服の少女に酷似していた。

海夜の正体は人形だった。

霊媒体質の人間は月幽病の進行が非常に早く、その抑止力として自己を繋ぎ止める何かが必要だった。在りし日の朔夜は人形に自己投影し会話を行う事で日々崩壊してゆく精神を保っていたが、とうとう最終段階まで進んだ時、自分と海咲の名前を足し「海夜」と名付けた人形を彼女に託したのだ。朔夜の忘れ形見ともいえる海夜を海咲は大切にし、大切な人だった朔夜を真似て心を注ぎ込んだ。しかし臘月神楽の日、灰原にさらわれた海咲は地下道に海夜を落としてしまった。
漸く見つけた海夜を抱き締めて啜り泣く海咲を、かつての朔夜の幻が抱擁して消える。直後に海咲は昏倒、帰来迎の儀式場の門が彼女を封じ込めるように閉じた。

九ノ蝕 帰来迎(きらいごう)

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