零~月蝕の仮面~(Fatal Frame IV)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『零~月蝕の仮面~』は和風ホラーゲーム・『零』シリーズの第4作目である。「恐怖を体験する。」がキャッチコピー。時代背景は1980年代の日本。全12章の構成で水無月流歌、麻生海咲、月森円香、霧島長四郎の4名の視点で進行する。舞台は朧月島という離島。朽ちた廃墟と化した病院や和風建築の屋敷での探索及び怨霊との戦闘がメインとなる。

『零~月蝕の仮面~』の概要

『零~月蝕の仮面~』(ゼロ~つきはみのかめん~)とは2008年7月31日に任天堂より発売された和風ホラーゲーム『零』シリーズ4作目。対応機種はWii及びWii U。
舞台となるのは朧月島という絶海の離島。幼少期にこの島の病院に収容されていた水無月流歌、麻生海咲、月森円香、流歌の母親である小夜歌に娘の捜索を頼まれた元刑事・霧島長四郎の4名が視点人物。プレイヤーはこの4名を操作して夜の病院や和風建築の屋敷、地下道を探索する。フロントビュー(後方視点)方式が導入され、Wiiリモコンやヌンチャクを併用する独自の操作方法が話題を呼んだ。
既存作品では単なる光源の役目しか果たしていなかった懐中電灯に隠されたアイテムを照らす機能が付与され、アイテム入手時に「さわるシステム」というズームアップ&モーションを起用。プレイヤーの判断におけるボタン押しの継続・タイミングの調整が求められ、ランダムで幽霊に腕を掴まれるサプライズ演出が緊張感を高める。以上の理由から射影機を強化する手段が霊を撮影した時に蓄積されるポイント制ではなく、広大なフィールドを歩き回り強化アイテムのレンズなどを入手する前提になり、どんなに恐ろしくてもレベルアップの為に不穏な場所への侵入や怪しい物への接触が強制されるようになった。
流歌と海咲と円香は同じ病院で一時期を過ごしたいわゆる幼馴染だが、記憶の一部が抜け落ちている。病院を探索してアイテムを収集する中で次第に失われた記憶が戻り、島を滅びに導いた過去の悲劇が輪郭を濃くしていく。
イージーモード・ノーマルモード・ハードモードがあり、イージーモード及びノーマルモードとハードモードでクリア後のエンディングが二種ある。
基本戦闘方法は霊を封印する力を持った射影機で霊を撮影する事。近距離で見切れることなく正確に映すほど敵へのダメージが大きくなる。
臘月島の風土病・月幽病(げつゆうびょう)に運命を狂わされた人々や島に古くから伝わる仮面を使った儀式・帰来迎(きらいごう)のおぞましい全貌など、従来の『零』シリーズと同様に民俗学的な因習が作品の根幹に関わっており、本作のテーマの月を連想させる恐怖と幻想美が融合した幽玄な雰囲気を醸す。

「誰も憶えていないことは、存在しないことになるのだろうか…」

本州の南に位置する朧月島で十年に一度催される朧月神楽。その神楽の進行中に五人の少女が消えた。少女たちは一人の刑事の活躍で救出されたが全員が記憶を失っており、神隠し中の出来事を覚えていない。しかし唯一の例外として、少女たちの一人・水無月流歌は旋律の断片を朧げに記憶していた。仮面の人々に囲まれ楽器を奏でる少女達と、美しい月光を浴び舞い踊る仮面の女。
この世のものとは思えない光景を胸に秘めて日常生活を営んできた流歌だが、彼女が成長したある日、神隠しにあった少女達の二人が相次いで不審な死を遂げる。発見された死体はいずれも顔を覆い、慟哭するように身をよじっていた。
神隠しの生き残りである海咲と円香は、無惨な死を遂げた友人の死の真相を解き明かす為に懐かしの故郷・臘月島に赴く。そして流歌も二人を追って因縁の地、自らが生まれ育った臘月島に向かうのだった。

『零~月蝕の仮面~』のあらすじ・ストーリー

序ノ蝕 咲き触れ(さきぶれ)

序ノ蝕 咲き触れ(さきぶれ)冒頭スチル

海咲と円香は十年前、島の伝統的な祭事である臘月神楽の最中に起きた神隠し事件の被害者だった。失踪から数日後、一人の刑事の活躍により彼女達は臘月島の病院の地下道で保護されたが一切の記憶を失っていた。
事件後被害者の5人は島を出てそれぞれの生活を送っていたが、被害者のうち二人である十萌と毬絵が同日同刻に変死を遂げる。両手で顔をかきむしり苦悶に泣き叫ぶような惨たらしい死に様だった。
友人の訃報を受けた海咲は何者かが神隠しの被害者を順番に殺しているのだと推理、犯人の正体を掴む鍵が失くした記憶にあると確信し、円香を伴って故郷・臘月島を再訪する。勝気で積極的な海咲と対照的に円香は消極的な性格で、内心嫌だったが海咲の誘いを断れなかった。二人の関係は海咲を主とするなら円香が従であり、何事にも優柔不断な円香は海咲にぐいぐい引っ張られていく。
臘月島はある事件から住民が消え、全体が裏寂しい廃墟となり果てていた。

円香は流歌に引っ張られ嫌々院内を探索する。

夜、懐中電灯を持って朽ちた灰原病院を探索する海咲と円香。この病院は臘月島特有の風土病であり、記憶の混濁を伴う精神疾患を引き起こす月幽病の治療を専門としていることで有名だった。彼女達が発見されたのはこの病院の地下道である。被害者5人の共通点はこの病院と確信した海咲はどんどん先へ進んでいき、円香は遅れをとる。
海咲とはぐれた円香は病院内の麻生記念室で射影機を発見。麻生邦彦とは著名な神秘科学者で、霊界・異界の存在を科学的に実証しようとして学会で異端視されていた。彼の没後各地に散らばった遺品には除霊の力が宿り、代表作の射影機もその一つ。麻生邦彦の手記には彼が島での体験を経て、いずれ射影機がこの島に必要になると信じ寄贈した経緯が綴られていた。
射影機を入手した円香は、襲い来る怨霊をなんとかそれで退けながら懸命に海咲を捜すも、遂に恐怖に負けて「もうここにいたくない」と絶叫。ドアを開けて逃げようとした彼女の手を「帰さない」と女性の霊が掴み、男性の霊が挟み撃ちする。そして円香は気を失い、視界は暗闇に包まれるのだった。

一ノ蝕 音連れ(おとづれ)

一ノ蝕 音連れ(おとづれ)の冒頭スチル

「誰も覚えてないことは、存在しないことになるのだろうか…」

水無月流歌(みなづき るか)は十年前に臘月島で起きた神隠し事件の生き残りだった。
しかし彼女は島で過ごした記憶を一切失っており、その中には父親のことや生まれ育った家のことも含まれた。唯一覚えている謎めいた旋律を、一心不乱にピアノで弾く流歌。
病床の母・小夜歌は「あの島に近寄らないで」「知らない方が幸せな事もある」と乞うも、神隠しの被害者で友人でもあった十萌と毬絵の連続死、同じく友人の海咲と円香が真相の究明に発ったことを知り、自らの記憶を取り戻すべく流歌も島へ赴く。

海咲と円香を追い因縁の病院に足を踏み入れた流歌。

二人に遅れて島へ上陸した流歌は灰原病院へ向かうも、海咲と円香の姿はない。彼女は懐中電灯を持ち、暗闇の中探索を進める。

院内を徘徊する患者の霊。

院内には看護婦や患者の霊が多数徘徊し、芯から冷えそうな不気味な雰囲気が漂っていた。
院内には自由に出入りできる部屋と施錠されて立ち入れない部屋がある。流歌は探索中に円香の手書きメモを拾い、海咲においていかれ孤立するのを恐れる不安を汲む。
円香は海咲と違い、過去の真実が暴かれるのを恐れていた。神隠し中に起きたおぞましい出来事の詳細を思い出してしまえば二度と日常に戻れなくなる、そして当時の記憶を取り戻す事で海咲が大切な人のことまで思い出し、身代わりに過ぎない自分を捨ててしまうのではないかと怯えていたのだ。
続けて流歌は新聞の切り抜きを拾うが、そこには臘月病で起きた怪死事件が報じられていた。記事には臘月島の人間が顔を覆って悶え苦しむように死んでいたこと、残りの住民も蒸発したことが書いてある。その昔、臘月島は黄泉に近い島として外の人間に畏怖されていたらしい。臘月島の伝統工芸である仮面には現世と幽世を繋ぐ不思議な力が宿るとされ、儀式の際に巫女が被る面は彼岸と此岸の接点とされた。
新聞の切り抜きを集めるうちに流歌が当事者となった集団失踪事件以前にも島は厄災に襲われ、イメージ向上の為に臘月神楽を目玉とした観光地化を図った事実が判明する。
再び拾った円香のメモには彼女もまた流歌と同じ旋律に共鳴し、海咲が作った曲を聴くと過去を思い出しそうになると書いてあった。
その後も流歌は円香が残したメモの断片を拾い集めていくが、文面は次第にたどたどしさと支離滅裂さを増していき、最後の紙片には「かおを みないで」「かおが わからない」「あのふたりと おなじ」と記されていた。
食堂に足を踏み入れた流歌は、暗闇の中に立ち尽くす円香を発見する。思わず駆け寄って声をかけるも、振り向いた円香の顔は水鏡に波紋が広がるが如く歪んでいた。襲い掛かってくる円香を辛うじて射影機で撃退するも、ふと鏡を見れば流歌自身の顔も怪しく歪んでいた。

二ノ蝕 共鳴(ともなき)

二ノ蝕 共鳴(ともなき)の冒頭スチル

時は遡り海咲の視点に切り替わる。
探索に消極的な流歌と口論した海咲は、鏡に映った自分の顔が歪んでいるのに驚く。怪奇現象はすぐおさまったが、続いて黒い服を着た少女が出現。

鏡に映る黒い服の少女に問いかけられる海咲。

「帰って来るの」「臘月島」と薄っすら微笑んで呟く少女。また幻覚を疑ったが彼女は振り向いてもまだそこにいた。謎の少女と対峙する海咲。

「あなたは…」
「忘れたの?」

少女に導かれて階段を上るとフラッシュバックが襲い、海咲は失われた過去の一部を思い出す。
彼女は幼少期を過ごした灰原病院で、黒い服の少女と過ごした記憶が確かにあったのだ。海咲が正気に返った時、同行したはずの円香の姿は消えていた。はぐれた円香を慌てて捜す海咲は、廊下に放置された射影機を発見する。それは麻生邦彦の子孫である海咲が家から持ち出した物だったが、いつのまにか落としていたのだ。射影機を携えて単身探索を再開した海咲は、203号室からのナースコールにまざる円香の嗚咽を聞く。
同じ部屋で海咲は部屋割り表と看護日誌を見つけ、かつて自分達が灰原病院に入院していた事実を知る。新館二階は小児病棟となっており、海咲達と同時期に亞夜子という名前の少女も存在していた。当時から内向的な性格だった円香は、嗜虐的で残忍な亞夜子に執拗ないじめを受けていた。院長の縁故らしい亞夜子には特別待遇が約束され、わがまま放題の彼女には看護婦もほとほと手を焼いていたらしい。
階段に戻った海咲は再びフラッシュバックに呑まれ、階段の上に立ち尽くす美しい少女と階下に倒れ伏す幼い円香の幻を見る。

「死んじゃえ」

豪華なドレスを纏い、自ら突き落とした円香を見下して冷笑する少女こそ亞夜子だった。
円香が昔あてがわれていた病室に向かった海咲は彼女と再会するも、物言いたげな表情を浮かべた円香はすぐさま姿を消す。

207号室で亞夜子の怨霊に襲われる海咲。

亞夜子の部屋に向かった海咲は、黄金の壁紙を貼られ、解体された人形の四肢が夥しく吊り下げられた異様な光景に絶句。悪意を剥き出しにした亞夜子の怨霊と戦闘に突入、射影機を使って彼女を撃退すると入れ代わりに黒い服の少女が現れ、愛おしげに海咲の頬をなでる。

「忘れたの?」

刹那、海咲はこの少女と「ずっと…ずっと一緒にいようね」と約束したことを思い出す。

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