装甲騎兵ボトムズ(VOTOMS)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

装甲騎兵ボトムズ(Armored Trooper VOTOMS)とは、日本サンライズ(現・サンライズ)制作のロボットアニメである。テレビシリーズが1983年4月1日から、1984年3月23日までテレビ東京系で放送された。テレビシリーズは全52話である。
テレビシリーズの後日談や、サブエピソードを描いた小説、漫画、OVA作品が制作、発表され続けている。
アーマードトルーパー(通称AT)と呼ばれる、大量生産の安価なロボット兵器が、主役機、敵機、関係なく次々と撃破されていく姿は、圧巻である。

「あれ、私に付けてくれた名前ね。ね、そうでしょ…?」とフィアナはキリコに言う。

ウド篇第十二話
はじめて言葉を交わすキリコに、フィアナは「いつもあなたを見ていました。」と伝えた。
「あなたとは、戦いたくなかった。」とも。
フィアナは静かにそれでいて、激しい愛の告白をする。
治安警察、バトリング選手の一斉攻撃が二人を襲う中、キリコは「フィアナァー!!」と叫んだ。
彼女は自分に付けられた名前と思い、喜びを隠しきれない。
瞳を潤ませながら喜びを隠せない彼女の表情と、どこかぎこちなく戸惑うキリコの対比は微笑ましく、ウド篇屈指の名シーンだ。

炎の中、一人さまようキリコ

炎の中、崩壊していくウドの街で、一人佇むキリコ機。

“ウドの街が消えていく。バニラ、ゴウト、ココナ、フィアナ、俺を一人にしないでくれ!”
ウド篇第十三話、ラストにて、キリコが仲間達の名前を叫びながら締めくくるシーンは、感動を禁じ得ない。
本作は、キリコ・キュービィーという無口で、無表情な男の、人間性回復の物語…と捉えるなら、そのテーマはウド篇にて完結している。キリコが血の通った、暖かさのある人間だという事の証明である。
その証拠にクメン篇では、三人組との再会、彼らとの交流が自然に描かれている。
キリコはファンタムクラブ(バニラの店)で食事をとり、ココナに世辞の一つも言ってみせる。

モニカの死

ポタリアは、幼なじみの死に慟哭する。

クメン編第二十五話、ビーラーゲリラに身を置くモニカは、失意のまま死んでいく。彼女は神聖クメンのカンジェルマンの思想こそが絶対だと、頑なまでに信じていた。しかしカンジェルマンは自らと、クメン王国の古き悪しきものを巻き込み、戦で滅びる事こそが、クメンの近代化に繋がると信じていた。“クメンの内乱はその為の実験場である”と、ボローに話す彼の姿を目の当たりしたモニカは、戦いを辞め武器を捨てる選択肢もあった。だが彼女は、その道を選ぶ事は無かった。銃撃を受けたモニカは幼なじみのポタリアの胸で、命を落とす。

獅子奮迅するイプシロン

イプシロンは、シャッコのベルゼルガも手玉にとる。

第二十六話で新型ATストライク・ドッグを操り、カン・ユーのAT部隊に猛攻を加えるイプシロン。機体がカンジェルマン宮殿に到着する前に、イプシロンはマニュアルに目を通していたと思われるが、固有武器のソリッドシューター(専用バズーカ)も未装備のまま、圧倒的な戦闘力で傭兵部隊を次々と撃破する姿は圧巻そのものである。

カンジェルマンとポタリア

上官と部下の間柄ながら、かけがえのない友人同士であった二人。いつしか互いに歩む道は違え、カンジェルマンは近代化に反対し神聖クメン王国を築く。一方ポタリアはクメン正規軍将校の座を捨て、アッセンブルEX-10の傭兵部隊に志願する。第二十六話でポタリアは王の寝所に侵入し、クメンを内乱に導いた相手(カンジェルマン)の命を狙い、バランシングで勝負を挑む。カンジェルマンもこの戦いに応じるが、彼はあえてポタリアの槍を受ける。彼はポタリアを“ポター”の愛称で呼び、「お前を愛していた。」と最後の言葉を残して、永眠につく。
カンジェルマンが築いた神聖クメン王国の真の目的が、王族である自らを含む古き悪しきものが滅び去る事であった。自分を倒す者が現れる事を待ち望んでいたカンジェルマンが、この相手が他の誰でもなくポタリアであった事を喜んでいたのだろうか。

むせるキリコ

サンサ篇第二十九話、クメン篇ラストの激しい戦闘シーンから一転、キリコはフィアナと共に巨大な戦艦内に。人影のない静まり返った戦艦内だが、キリコとフィアナはワインで乾杯し、平穏で満ちたりた時を過ごす。意外な事に、キリコは酒を飲んだことがない事が判明する。グラスに注いだ酒を口にした途端、思わずむせるキリコ。そんな彼を見て思わず微笑むフィアナ。クメン篇で二人が共に過ごした時間以来の、至福の一時であった。

『装甲騎兵ボトムズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

むせる

『装甲騎兵ボトムズ』のOPは、それまでのロボットアニメの慣例からすると異色尽くめで、特に「主役ロボットの名前が一度も呼ばれない」ことが当時から話題となっていた。
歌詞は全体的に厭世的な雰囲気と、果てしない戦争によって打ちひしがれた男の心情を歌っており、それらを一言で表すフレーズとして注目されたのが「むせる」である。

「戦場を埋め尽くす爆炎と硝煙の臭いが喉を焼く」という状況を表現したこの言葉は、『装甲騎兵ボトムズ』の世界観をこの上なく端的に説明しているものとしてファンの間で受け入れられ、“ボトムズらしいストーリーや展開”のことを指して「むせる」と呼ぶようにもなった。

幻のバララントAT

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