デビルマン(DEVILMAN)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『デビルマン』とは、70年代にアニメの企画と並行して誕生した漫画作品で、原作者である永井豪の会心作の一つである。
悪魔を主人公にした斬新な設定と、ハードなアクション、そして後半のヨハネ黙示録を元にした終末観溢れるストーリーが話題を呼び、いくつもの派生作品が生まれた。
人、悪魔、そして神とは一体何か、本作の登場人物の言葉にその秘密が隠されている。

『デビルマン』の概要

『デビルマン』とは、それまでギャグマンガを中心に描いてきた永井豪を、ストーリー漫画家として大躍進を遂げさせた、永井の傑作品の一つである。

永井は、石ノ森章太郎の下でアシスタント経験を詰みながら、『目明しポリ吉』というギャグマンガでデビューを果たした。以来、『オモライくん』や『あばしり一家』、『ハレンチ学園』など、エロ、グロを取り入れた過激なギャグで一世を風靡する。

この当時の漫画家の大半は、手塚治虫の影響から、ストーリー漫画への志向が強く、永井も以前から、手塚治虫や師である石ノ森章太郎のような、SF系統のストーリー漫画を描きたいと思っており、『魔王ダンテ』という悪魔を主人公とした作品を描いたことがあった。これはキリスト教文芸の傑作品とされる、ダンテの「神曲」という作品を元に描かれた作品で、これがデビルマンの原型となった。(ダンテの神曲はデビルマンでも引用されている)

魔王ダンテは連載していた雑誌の休刊によって、ストーリー半ばで終了することになってしまったが、東映動画から、『魔王ダンテ』のような悪魔をヒーローとする作品を企画して欲しいと依頼され、永井は『デビルマン』を思いついた。この企画が東映に通ったために、テレビアニメと並行して、少年マガジンで漫画版を連載することになった。

デビルマンを描くにあたり、永井は当時連載していた作品を四つ終わらせて、本作に集中したので、いかに永井がこの作品に熱を入れていたかがよくわかる。(終わらせた作品は、『オモライくん』、『ハレンチ学園』、『あにまるケダマン』、『あばしり一家』である)

デビルマンは、主人公・不動明がデーモン族と呼ばれる怪物の内の一体と合体したことで誕生したヒーローである。デーモン族とは、有史以前に存在していた知的生命体であり、彼らは他の生物もしくは無生物と合体する超能力を持っていた。その力を使い、ありとあらゆる種の生物と合体を繰り返したことによって、異形の姿になり果てたのだ。氷河期に入って彼らは絶滅したと思われていたが、氷漬けとなった状態で彼らは冬眠して生きながらえた。そして、氷の解ける地域にいた者はいち早く目覚め、後世の言う「悪魔」や神話や民話の怪物と伝えられ、過半数の者は、ヒマラヤなどの高山や、南極や北極などの氷雪地帯で冬眠して地球を奪い返すチャンスを待ちわびていたのだ。

デーモンは合体能力によって、異形の怪物になってしまったが、その正体は、現存する人類とは別の進化をたどった旧世代人類である。つまりデビルマンの物語とは、単にデーモン対デビルマンという図式のバトルアクションではなく、自身の肉体や超能力を発展させた旧世代人類であるデーモンと、道具や武器を発展させた現代人との戦争を描いた作品という見方ができ、デビルマン自身は、その両陣営の中間的な存在として、様々な苦悩と葛藤をしていくキャラクターとして描かれていると見ることが出来る。
実際、永井の創作逸話を語った漫画『激マン!』によると、デビルマンとは、「戦争」を意識した作品であるとのことで、デビルマンとはヒーローではなくて、突然徴兵されて、戦いにかり出されてしまう日本の若者を象徴していると語っている(また作品内においてデビルマンはヒーローではなく、悪魔の力と人間の力を手に入れた新人類であるという意味もある)。

デビルマンが誕生したのは1972年は、2月に連合赤軍による浅間山荘事件が発生し、5月には日本赤軍がイスラエルで自動小銃を乱射事件が発生した。公害による環境破壊が問題視され、どこか世間に不穏な空気がただよっていた時代であった。
50年代から60年代初頭の頃、漫画は手塚治虫のような丸っこくて可愛らしいキャラクターを出すのが主流であったが、60年代後半になると、手塚の力も次第に衰えを見せ、73年には虫プロが倒産し、手塚は漫画家を廃業する決意さえ見せていた(但し、手塚は73年にブラックジャックで再起する)。すると、60年代後半から70年代において劇画がブームになり、それまで貸本漫画で描いていた水木しげるや、さいとう・たかをなどが一般紙に出てくるようになった。そして、漫画の絵柄も描線の濃いリアルなタッチの絵柄が好まれるようになった。
さらに、ユリ・ゲラーの来日や「ノストラダムスの大予言」の流行により、終末思想や超能力がブームとなって、若者たちはオカルトに夢中になっていった。
デビルマンには劇画的なハードな描写と、超能力を使うデーモンの設定、そして終盤に来る終末思想的な大河的物語など、70年代の始まりにブームになった要素が込められている。それは、まるで当時の日本のサブカルチャーがデビルマンを造り上げているかのようであった。

しかし、本作はアニメと並行して制作していたために、アニメの放映終了と共に、本作は打ち切られることが決定された。漫画では、それまで一体一体デーモンと戦うという展開であったが、4巻からストーリーが前のめりになっていった。そして、時間を置いてから描く予定でいた、デーモンの軍勢と人類の軍隊との戦争が4巻で描かれ、そのままデーモンとデビルマンの最終戦争まで一気に進行することになったのである。

物語は、主人公の不動明がまだ平凡な高校生であったところから始まる。ある日不動明は不良にからまれているところを、旧友の飛鳥了に助けられる。そして彼は明に用があると言って、自分の運転する車(了は自分の父親の免許を改造している)に明を乗せた。

了は、明に自分の父親が死んだことを話した。それだけでなく、父親はただ死んだわけではなく自分からガソリンを被って火をつけて自殺したのだと言った。さらに、奇妙なことに、黒焦げになった父の遺体は二人分の体重があったのだ。明への用というのは、了は明に父の遺産を受け取ってほしいとの事だった。

二人が了の家に着くと、部屋の中に奇妙な物があった。それはまるで悪魔の頭部のような形状をした置物だった。この置物は、考古学者をしていた了の父親がマヤ文明の遺跡を調査していた時に、遺跡近くのジャングルにあった穴の中で見つけたものである。これを頭から被ると、不思議な光景が見えるというのだ。明がそれを被って見ると、脳に直接映像が送られてきた。それは先史時代の地球の光景であり、当時の地球を支配していたのは、異形の姿をした旧世代人類・デーモンであった。とてつもない闘争本能を持つデーモンは合体能力という超能力を使って、他の生物や無生物の力を取り込み、異形の怪物へと変わっていった。デーモン族はその力であくなき闘争の日々をくり返していたのだ。

全て見終わった明は、了から更なる事実を聞かされた。了の父親が残した記録によると、この後デーモン達は突如訪れた氷河期によって、全滅したかに思われるが、デーモンの化石が発見されていないことから、デーモンは現代まで生きのびているというのだ。そして了の父は、世界中の悪魔伝承や怪物のルーツは、氷河期から生き残ったデーモンであると推測をたてた。

真相を確かめようとした了の父は、悪魔伝承を調査して、デーモンと合体する方法を見つけ出し、彼らと合体して彼らの記憶を見た。すると、多くのデーモンが地球のどこかに氷漬けになった状態で生き残り、人類を滅ぼして再び地球の支配者になろうと目論んでいることがわかった。了の父はデーモンに自分の体を乗っ取られる前に、自ら命を絶ったのだ。

そして了の言う父の遺産とはデーモンと合体する方法であったのだ。デーモンと戦うにはデーモンと合体するしかないのである。

デーモンはあらゆる生物と合体することができるが、理性と言うものがある人間は別であった。デーモンが人間と合体すると、人間の持つ理性によって不具合が生じて、死んでしまうことから、デーモンと合体するには理性を無くすしかなかった。
そこで了と明は離れの家に向かい、そこの地下室に入った。そこには了が集めたヒッピーたちが、サバト(中世ヨーロッパで行われていた魔女の宴、麻薬を使ってトランス状態(放心状態)になったと言われている)を開いていた。了と明は彼らと共に、麻薬入りの酒を飲み、踊りを踊ってにトランス状態になることで、理性を無くそうとしたのだ。

そんな時、ヒッピーたちの中で体に変調を来す者が現れはじめ、やがて彼らの体が異形の姿に変わってしまった。デーモンがヒッピーたちと合体したのだ。しかし明と了は理性を捨てきれなかったので合体をすることができなかった。
すると明に、ヒッピーの体を乗っ取ったデーモンが襲いかかってきた。明は恐怖を抱いたことで理性のタガが外れ、本能のみで行動したために、アモンと呼ばれるデーモンと合体することができた。そして、この瞬間に明はデビルマンになったのだ。

第1巻の名言・名セリフ

不動明 「そのときわたくしがぐうぜん口にしたことば「地獄」がまっていようとは……わたくし……不動明のあかるい未来を夢をすべての運命をかえる門はいま不吉な音をひびかせながらひらいていった……」

不動明

本編の主人公。元々は普通の高校生だったがデーモンと合体してデビルマンとなる。気が弱く大人しい性格だが、デビルマンとなってから好戦的な性格となる。その一方、デーモンと合体しても、生来の優しさや誠実さを持ち続け、デーモンの魔の手から人々を守るための過酷な戦いを続けていくことになる。

合体したアモンというデーモンは、デーモン達から勇者とまで言われるほどの実力者である。アモンは古代イスラエルの王・ソロモンが使役したという72体の悪魔の1体で、狼のような姿や、鳥のような頭部を持った姿で現れる悪魔とされている。

物語序盤。主人公・不動明は、高校生で、両親は仕事で海外へ出張中。学校に通わなければならない明は、父の親友である牧村氏の家に居候中の身で、牧村氏の娘で同じ歳の少女、牧村美樹とは恋人未満の間柄であった。

ある日、明は不良にからまれているところを、旧友である飛鳥了に助けられる。了は明に用があると言って、彼を自分の車に乗せた。
明は了が変わり果てていることに驚きを隠せないでいた。了は改造した猟銃を持ち歩き、威嚇射撃をして明にからんでいた不良を追い払い、自分の父親の運転免許を改造して車を乗り回していた。

了の操縦する車の中で、明は了の父親が亡くなったことを聞かされた。しかし不可思議なことに、了の父親の遺体は体重が生きていた時の倍もあったというのだ。さらに了の父親は恐ろしい遺産を残していたというのだ。
了の家に着くと、了は家の門に入る前に明に、「自分は無二の親友である明を不幸に導こうとしている、それでも信用できるのは明だけでなので、父の遺産を明に見てもらおう」と言った。
明は、「正直怖いが、了、君の信頼を裏切りたくない、例え地獄の底に落ちようとも」と言った後、モノローグで、「そのときわたくしがぐうぜん口にしたことば「地獄」がまっていようとは……わたくし……不動明のあかるい未来を夢をすべての運命をかえる門はいま不吉な音をひびかせながらひらいていった……」と語った。

この不動明のモノローグが、本作が不穏な空気に満ちた漫画であることを強く印象付けており、本作が何か形容しがたい恐ろしい物語へと発展していくような演出になっている。明るいヒーローアクションというスタイルで描かれたアニメ版とは裏腹に、漫画はハードでダークなホラーアクションという方向性で描かれているが、まだデビルマンにもなっていない明の不吉なモノローグはその前兆のように読める。

デビルマンは概要でも記した通り、アニメの企画と並行して作られた作品であるが、アニメと漫画はそれぞれ独自の方向で制作され、完全に別物となっている。アニメ版は1話完結のヒーローもののスタイルをとり、敵キャラクターもデーモンではなく妖獣と呼ばれていた。しかし、漫画版はホラータッチで描かれ、1話完結の読み切り形式ではなく、連載形式をとっている。これは、永井が以前よりSF系のストーリー漫画家を志そうとしていたためと思われる。

そのため、ホラーアクションに分類されるデビルマンは、ヨハネ黙示録やダンテの神曲の引用を用いているにもかかわらず、デーモンの正体が怪物でも妖怪でもなく、先史時代に現れた超能力を持つ、旧世代人類というSF的な設定となっているため、本作はホラーだけでなく、SFとして読むこともできる漫画である。

また、この本作序盤から登場するキャラクター飛鳥了は、漫画のみにしか登場しないキャラクターである。これは本作がアニメ版デビルマンとは独立した作品であることから、永井がアニメの制作陣と相談せずに、生み出したキャラクターであった。了のキャラクターを気に入ったアニメの制作陣達は、このキャラクターを惜しみ、氷村というそっくりなキャラクターを作ったという逸話がある。

さらに、永井の創作逸話を語った漫画『激マン!』によると了は元々、明をデビルマンへと導いた後、序盤で死なす予定であったキャラクターであるが、明を導くキャラクターが居たほうが、ストーリーが進行しやすくなると考えたために、レギュラーメンバーとなったとの事。

不動明 「すると、うまくいけば化け物となり死ぬまで悪魔と戦い殺しあわねばならぬ阿修羅地獄!まずくなったら化け物になったわが身をやきころさねばならんのか!」

明は了の家に入ると、そこに暗い部屋の中に光る不気味な物体があることに気付いた。了によれば、それは先史時代、すなわち人類が誕生する前に造られたもので、角をある不気味な悪魔のような形をしていた。この悪魔の形をした置物はがらんどうになっていて、被ることが出来る。了に言わせると、この置物はただの置物ではなく、現存の人類が発生するより以前からいた、先住人類が作ったものであるとのこと。

了に促されて、明が被ると、頭の中に不思議な光景が流れ込んできた。それはデーモンと呼ばれる先住人類の恐ろしい姿であった。デーモンは合体能力という、超能力を持ち、他の生物と合体して、その生物(無生物も取り込める)の力を手にいれる力を持っていた。また、デーモンの殆どが凶暴で好戦的な性質であったために、彼らは互いに殺し合い、闘争の日々を過ごしていた。

しかし、そんなデーモンの時代も終わりを迎えることになる。氷河期が来て、デーモン達は絶滅してしまうのであった。しかし、了の父親は、デーモンの化石がないことから、デーモンが絶滅していないのではと思い、世界中の悪魔や怪物の伝承を調べ、何体かのデーモンが氷河期を生き延び、悪魔のルーツとなったと仮説を立てた。さらにダンテの神曲という詩文に、地獄の最下層で氷漬けになっている悪魔ルシフェルの姿が描写されていることから、デーモンは南極か北極などの寒冷地帯に冬眠して、今尚生きている可能性があったというのだ。

了の父親は、真相を確かめるためにデーモンと合体して彼らの思考を読み取り、地球上に生き残っている数多くのデーモンが、地球を人類から奪い返そうとしているのだと確信したが、同時にデーモンに体を乗っ取られそうになり自分の体にガソリンをかけて焼身自殺を図った。了は父の残した日記と遺書からデーモンのことが分かったのだ。

そして、デーモンと戦うただ一つの手段、それこそ了の父の残した遺産であるのだ。その遺産とは、デーモンと合体する方法であった。だが、明と了がデーモンの意思を押さえつけられなかったら、その時は了の父のように死ななければならないのだ。

それを聞いた明は「すると、うまくいけば化け物となり死ぬまで悪魔と戦い殺しあわねばならぬ阿修羅地獄!まずくなったら化け物になったわが身をやきころさねばならんのか!」と言った。

化け物と戦うために、自ら化け物となり、駄目だったら死なねばならない。ダークヒーローとしての側面を持つ、デビルマンの面目躍如と言うべき、明の名セリフである。ダークヒーローの定義は明確にされていないが、基本的に社会に受け入れがたい存在でありながら、人々の救済者となるものである。デビルマンは、悪魔の力や姿を手に入れて、その力で人を助けるという、まさに日本におけるダークヒーローの見本とも言うべきキャラクターである。

悪によって力をもたらされたヒーローといえば、石ノ森章太郎の『仮面ライダー』や『サイボーグ009』がなどが代表的である。双方とも悪の組織によって体を改造され、心まで洗脳される前に脱走し、人々を守るために戦うヒーローとなる作品である。
双方とも自分と同じように悪の組織に改造された改造人間と戦わねばならないという暗い影を持つヒーローであり、同じ悪魔の力を手に入れて、悪魔と戦うデビルマンと少し似たような一面を持った作品でもある。

デビルマンの原作者の永井は、石ノ森の元でアシスタントをしていたが、デビルマンの原点は石ノ森作品にあるのかもしれない。

その他に悪魔をモチーフにした漫画作品では、水木しげるの『悪魔くん』が挙げられるが、こちらはゲーテの「ファウスト」を意識した作品である。

不動明 「おれは!おれは!悪魔人間(デビルマン)だ!」

アモンというデーモンと合体し、デーモンの力を手に入れた明

了の父親の恐怖の遺産、それはデーモンと合体する方法であった。かつて地球を支配していたデーモン達は、再び地球をわが手に取り戻すために、人間たちに戦いを挑むつもりであったのだ。そんなデーモンと戦うには、デーモンの超能力・合体能力を利用して、悪魔の力を手に入れた悪魔人間(デビルマン)とならなければならなかった。

了と明が、デーモンと合体するためには、デーモン達の嫌う理性を無くさなければならなかった。そこで、中世ヨ-ロッパで行われたとされる魔女の宴・サバトを元に、理性を無くし、トランス状態(放心状態)なる為の儀式のようなものを行わなければならない。そこで了は地下室をパーティ会場にして、ヒッピー達を集めてサバトを再現した。そして了と明は彼らとともに、理性を無くすべくトランス状態になろうとした。
すると、急にヒッピー達の様子がおかしくなり、化け物の姿となった。デーモン達がヒッピー達の巻き起こす騒ぎに誘われて、テレポートしてヒッピーたちと合体したのだ。快楽だけを貪り、明のような善良な心を持たない彼らは、デーモンに心を乗っ取られてしまった。

一方、理性を無くしきれなかった明は、ヒッピーが変身したデーモンに襲われてしまう。明はデーモンに襲われかかった時に、恐怖心によって理性のタガが外れてた。理性を無くした明は、アモンというデーモンと合体した。明はデーモンと合体しつつも、自分の意識を保つことに成功し、デーモンの力を手に入れることが出来たのである。

「おれは!おれは!悪魔人間(デビルマン)だ!」そう言って、明はデーモンの体に変身して、他のデーモン達と戦い始めた。

そして明の言った「悪魔人間(デビルマン)」でわかるとおり、漫画版のデビルマンはヒーロー名ではなく、悪魔の力と人間の心を持った新たなる人類と意味している。一方アニメ版(72年代版)はなんと不動明の体を乗っ取ったデーモンが、ヒロインである人間の牧村美樹を愛したために、ヒーローとなる道を選ぶという設定である。

漫画では、明が「おれは!デビルマンだ!」と名乗って、変身する場面が出てくるまでに数週間かかっていた。そのため、この場面を見ていた読者達は、ようやくアニメのデビルマンと同じ形になったと思ったようであるが、永井は漫画のデビルマンをアニメとはまったく違う方向性の物語にしていくつもりであった。

第2巻の名言・名セリフ

妖鳥シレーヌ 「うつくしき月よ そなたはこれからおこることを見ないほうがよい みにくい血で染まりたくないのならば」

シレーヌ
デーモンの女戦士。気位の高い性格で、奇襲攻撃を得意とする。シレーヌの名前はギリシャ神話の怪物セイレーンから取られている。

アモンと呼ばれる悪魔と合体して、デビルマンとなった明はさっそくデーモンの刺客に狙われる事になった。その刺客の最初の1人が鳥のような翼と爪を持つ女性型デーモン「シレーヌ」であった。
戦いの前にシレーヌは、「うつくしき月よ そなたはこれからおこることを見ないほうがよい みにくい血で染まりたくないのならば。」と言って突風を巻き起こして雲を呼び寄せ、月を雲で隠した。

そして、彼女は不定形型のデーモン・アグウェルと、水と一体化できる能力を持つゲルマ―というデーモンを明が居候している牧村邸へと潜入させた。

恐ろしい姿に残忍な心を持つデーモンが、詩的なセリフを吐く名場面である。元々月は魔物や女性を暗示させる(特に西洋)ものであるため、デビルマンにふさわしい幻想的な光景である。

シレーヌというキャラクターは、永井が思いついたのではなく、アニメ版デビルマンの脚本を担当した辻真先が考えたキャラクターで、鳥の特徴を持つ女デーモンを辻が思いつき、永井がキャラクターをデザインして生まれたのである。

永井はシレーヌを大変気に入り、漫画の方でも登場させることになったのだ。

カイム「シレーヌ血まみれでもきみはうつくしい」

カイム。シレーヌの友であるデーモン。シレーヌが明に片翼をもぎ取られ、致命傷を負ったときに助けに現れた。
カイムと言う名前はソロモン王が使役する72体の悪魔の中の1体で、伝承ではツグミのような姿であるが、漫画のカイムはサイのような姿である。

シレーヌは、まずアグウェルとゲルマ―の二人の配下を呼び寄せて明と戦わせた。そして明が二人に勝利して油断した所に奇襲をかけた。

明は、シレーヌの爪に捕まってしまい、身動きが取れなくなってしまう。おまけにシレーヌの爪は捕まえた者の体内組織を狂わせデーモンの超能力を封じる力があった。その為、明はデビルマンに変身することや、身動きを取ることもできず、シレーヌによって何処へ連れ去られるはめになった。しかし、シレーヌの進行方向に先回りしてた了がショットガンでシレーヌを撃ったために、明は爪から逃れ、デビルマンに変身することができた。(なぜか了は、この時予知のような力を使って、先回りすることが出来た。)

シレーヌは片腕を飛ばし(マジンガーZのロケットパンチと同じ)了を捕まえて身動きを取れなくした。そして、デビルマンと空中で対決したが、空中戦でも高い戦闘力を誇るデビルマンを相手に形勢不利となってしまった。そこで、シレーヌは近くにあった森へ降下し、デビルマンも追った。

戦いの舞台を森に移し、両者は死闘を繰り広げたが、シレーヌは片腕を離してしまったので、デビルマンの方がわずかに優勢であった。しかし、シレーヌは離した片腕を超能力で遠隔操作し、デビルマンの不意をついて片腕をもぎ、脇腹をえぐった。しかし、デビルマンはシレーヌが触覚から出る精神波で、腕を遠隔操作しているのだとき気付き、自分の触覚を伸ばして、シレーヌの触覚をからめとり、自分の精神波をだして、シレーヌの触覚の精神波を狂わせた。それにより腕の動きはおかしくなり、シレーヌの腹部に当たってしまう。
それでもシレーヌはデビルマンに向かって行ったが、デビルマンに片翼をもがれてしまう。
致命傷を負ったシレーヌは、デビルマンの強さに恐れをなし、デーモンの首領である悪魔王ゼノンに助力を求めた。その時にゼノンから派遣され、テレポートして現れたのがシレーヌの友・カイムというデーモンだった。

カイムはシレーヌを勝たすために自分と合体させようとした。しかしシレーヌは致命傷を負ってしまったことから、二人が合体して自分の意識が支配してしまったら、自分と共にカイムも死んでしまうと言って拒んだ。

しかし、カイムは「自分は生き残るつもりはない、きみに勝利の感激を味わわせたいだけだ、そのために自分の体と能力をやろう」と言った。

シレーヌは「なぜ」と言って、カイムと見つめ合った後、カイムは「シレーヌ血まみれでもきみはうつくしい」と言い、合体した際、自分の体をシレーヌの意識に支配させるために、自らの首を切り落とした。

残忍で闘争心しかないと思われたデーモン達。しかし、シレーヌは月を美しいと感じる心を持ち、カイムは仲間のために命を投げ打つ自己犠牲的な精神を持っていた。このことでもわかるようにデーモンは人間と同じ心を持っているのである。
本作で語られているのは、人間対悪魔ではなく、人間対人間、もしくは悪魔対悪魔であり、人間とデーモンが種としての存続をかけた戦争をしているということである。

そして、カイムがシレーヌと見つめ合った後、シレーヌに「きみはうつくしい」と言って自らの命を絶ち、彼女に自分の体を与える様は、デーモンの悲壮的な愛を表しているようでもある。

また、後のストーリーでデビルマンがサイコジェニーというデーモンの精神攻撃で倒れた時、カイムの仇をとるためにとどめを刺そうとしたデーモンがいたことから、カイムは他のデーモンからも慕われているほど愛情深いデーモンであったようである。

シレーヌ 「デビルマン!シレーヌの執念が カイムの命が!きさまを殺す!」

シレーヌを慕うカイムは、傷つき今にも命果てようとしている彼女に自分の肉体と能力を与えるため、自らの命を絶ち、彼女に自分の肉体と合体させた。
自分のために命を投げ打ったカイムに報いるために、シレーヌは、「デビルマン!シレーヌの執念が カイムの命が!きさまを殺す!」と己の決意を口にして叫び、最後の力を振り絞って明に再戦を挑んだ。

片翼をもぎ取られ、痛々しい姿となったシレーヌだが、そんな彼女を「うつくしい」と言って、自分の体を差し出したカイムの愛情に答えるべく、シレーヌは再び明に再戦を仕掛けた。カイムからの愛、デビルマンに向ける闘志が入り混じり、激情を露にするシレーヌの印象的な場面となっている。

カイムの力で更なるパワーアップを遂げたシレーヌに、流石のデビルマンも苦戦を強いられた。すでに片腕を失うほどのダメージを負っていたうえに、角で体を串刺しにされてしまう。(角はカイムの体にあったもの)デビルマンはとうとう、死を覚悟したが、シレーヌはなぜか攻撃を仕掛けてこなかった。

やがて明は気絶してしまい、目が覚めると了の手当てを受けていたことが分かる。片腕は了が持ってきて、切断面にあわせると、そのままくっついたそうである。了の治療とデーモンの治癒能力によって回復した明は、シレーヌがなぜ襲い掛かってこなかったのかがわかった。

彼女は勝利を確信したまま絶命し、立往生していた。恐ろしいデーモンでありながら、その死に様は明も驚くほどに美しかった。

それまで敵役であったシレーヌであるが、見出しのセリフを言う場面では、読者が彼女に感情移入できるような演出となっており、デビルマンが単なる勧善懲悪ものの作品ではないことが分かる。

第3巻の名言・名セリフ

ジンメン「だからおれは殺さずに食ったのさ!」

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