蒼の彼方のフォーリズム(あおかな)のネタバレ解説まとめ

『蒼の彼方のフォーリズム』とは、2014年11月にspriteによって発売された美少女ゲーム、およびそれを原作としたアニメ・漫画などのメディアミックス作品。長崎県五島列島をモデルとした自然溢れる島々を背景に、大空を舞台としたフライングサーカス(FC)と呼ばれる架空のスポーツに熱中する少年、少女達の恋愛模様を描いていく。かつてFCの有望選手でありながら挫折した日向昌也(主人公)が、ヒロインがFCの練習や試合を頑張る姿をコーチとして見ることで自らも成長し立ち直っていく物語である。

昌也とみさきは、互いに相手を劣等感から目を背けなくても良いステージに連れていくと約束し手を取り合う。

最終話:届けたい気持ち

FCに復帰することを決意したみさきは久菜浜FC部のメンバーとは離れて、昌也からの猛特訓を受けていた。練習後、体を休めながらも二人は真藤対乾の試合の研究をする。乾の相手選手の上空を完全に支配するという、今までのFCの常識を覆す戦術にみさきは戦慄していた。白瀬店長や夏の大会に出ていた謎の覆面選手(白瀬の妹のみなもが変装した姿)、引退した紫苑も交え対乾の練習をみさきは続けていく。
練習の合間に昌也とみさきは互いの気持ちを伝え、恋人として付き合っていくこととなる。

みさき、昌也、白瀬、謎の覆面選手で対乾の練習を続けていくが、乾の戦術への鍵となる下のポジションからの対応案は出ないままだった。そんな中、真藤が現れ、乾と明日香の練習試合があったことを伝える。
練習試合では乾と明日香がお互いに、上のポジションを取られたときは、下から攻めることはせず上のポジションにいる相手に点を譲って自分はショートカットする。そしてショートカットすることで上のポジションを確保し点を取る。その状況の繰り返しだった。このような試合展開になったのは、乾と明日香が下のポジションからの対応案を大会本番まで隠すためだと昌也やみさきは推測する。
乾と明日香は対応案を思いついてるのにみさきは思いついていない。その状況にみさきは不安になる。一方昌也は渦中の三人と試合した経験を持つ真藤からみさきの印象を聞く。真藤はみさきの強さは狭い枠の中に相手をはめた時に発揮されるものだと言う。そしてその時の強さは乾、明日香の実力にも引けを取らないものだと。それを聞いた昌也は、みさきは他の二人にも負けないと確信を持ち安心する。

対乾の練習メンバーで対応を考えていると、偶然だが背面飛行のアイデアが出る。相手が上のポジションにいても背中をさらさず、互角の条件に持ち込めるものだった。
大会までの期間を考えると背面飛行をモノにすること自体が難しかったが、みさきが挑戦への意欲を見せ昌也も応える。
みさきの飛行方法に背面飛行を取り入れた練習を続けていくが上達は難しかった。そんな中、みさきが夜の空で飛びたいと言い、昌也はその様子を見守る。見守りながら昌也はみさきが以前吐露した、負けることに抱いている恐怖について思い出していた。
挫折前は負けても心のどこかで言い訳して自分を保っていたが、復帰した今はそれはできないと。周囲や昌也の力も借りてこれだけ努力した上で負けたら言い訳ができない。その時に失ってしまうものが、自分がどうなってしまうのかわからないのが怖いと。
その恐怖を振り払うように、そして昌也との約束のために必死にみさきは飛び続け、ついに背面飛行をモノにする。その様子を喜びながらも、昌也は嫉妬に似た感情を覚えていた。
背面飛行のコツを掴み、みさきは飛行中に背面飛行を取り入れ自分が得意とする狭い戦術の中に相手をまきこむ戦略:スモー(スモール・パッケージ・ホールド)を体得する。
始業式を迎え、昌也とみさきは離れていた久菜浜FC部のメンバーと再会する。

いよいよ大会を迎え、みさきと乾は一回戦で当たることになる。試合前に恐怖を感じるみさきだったが、昌也や他のメンバーからも激励されふと空を見上げた時に、昌也と約束した自分の届きたかった場所に届いていると実感する。恐怖や劣等感を抱いた上で、かつて夏の大会で諦めた場所に立てていると。みさきの言葉を聞いた昌也は嬉しく思うが同時に以前から抱いている嫉妬のような感情が出てくるのも自覚していた。
昌也は試合前に乾のセコンドであるイリーナと話し、イリーナからみさきは大したことの無い選手と言われる。それは対戦相手のセコンドである昌也に対しての、イリーナの心理的な揺さぶりだった。イリーナの言葉に反論しながら動揺する昌也だったが、自分が選手だった時の経験を思い出して冷静さを取り戻し、みさき対乾の試合に臨む。
試合は乾対明日香の練習試合と同じ、互いに上のポジションを確保しながらできなければショートカットして、得点を交互に取り続けるという展開になる。周囲が見守る中、みさきは精神をすり減らしてその状況を維持し続ける。そして試合の終わる間際で遂にスモーを展開し、一点のリードを得てそれを守り続け勝利する。
試合後、乾からは後半のポジションの奪い合いをもっと長く続けたかったと言われる。しかしみさきはどうしても試合に勝ちたいため、スモーを制限時間ギリギリで出して対応される前にリードを守り逃げ切ることを選択した。その気持ちをみさきが乾に言うと、乾は納得したようにその場を去っていった。

明日香、他の久菜浜FC部はみさきを祝おうと向かうが佐藤院に「決勝で全力でぶつかるためには会わないほうが良い」と止められる。明日香は昌也、みさきと同じように劣等感にまみれた感情を吐露する。自分よりも強いと認識している相手がさらに格上の相手に無様に負けるのを期待するという気持ち。明日香はその気持ちを嫌なものと思っていたが、佐藤院はそれは誰でも持っているものであり、その気持ちも含めて決勝ですべてをぶつけて来いと明日香を激励する。
大会は続き、みさき、明日香以外のメンバーが次々と脱落していく。謎の覆面選手もみさきとの試合に敗れ、みなもとしてメンバーの前に顔を出し、泣きながらもみさきを応援してみさきはそれに応える。
決勝がみさき対明日香に決まり試合の準備をする中、昌也はみさきに勝利の意味について聞く。みさきは結果ではなく、勝利を求める気持ちを大事にしたいと答えた。勝利を目指すことを諦めない姿勢でいるこのステージに居続けたいと。

ついに決勝が始まる。明日香は葵の指導で格段に実力を付けていて、みさきや昌也はその強さに恐怖するが同時に楽しく思っていた。
明日香はメンブレンの技を次々と使いみさきを翻弄する。しかしみさきはスモーを使って必死に食らいつく。一点同士での超接近戦による膠着状態が続き、一瞬の明日香の隙を突いてみさきがリードし決勝が終わった。みさきと明日香が互いを称えあう様子を見て周囲は様々な気持ちを抱えていた。みなもは自分もあのようなFCの仲間を作りたいと考え、高藤のメンバー達は決勝戦の試合に圧倒されながらも、みさきや明日香に勝つために努力し続けたいと決意していた。

みさきと明日香の決勝戦は、接近戦での膠着状態が続き、明日香のたった一度のミスを突いてみさきが勝利する。

試合の直後に昌也は真藤に、みさきに対して昌也が抱えていた嫉妬の正体を語る。それは昌也は才能による劣等感を抱えて挫折したままなのに、みさきや他の選手は劣等感を抱えたままFCがなぜできているという、途方もない嫉妬だった。昌也はみさきをFCに復帰させ優勝させることができた。しかしそれは昌也が立ち直るために、みさきの本心を無理やり引きずり出したという側面もあった。優勝までしたみさきに恩返しをするには自分も復活しなければならないと責任を感じる。真藤に意見を求めるが、真藤は昌也自身でどうにかしろと昌也を優しく突き放すのだった。
再び飛び始めようと決意した昌也はみさきを呼び出し、昌也が挫折した時の状況を役割を入れ替えてなぞろうとする。かつて昌也は一人で練習しているときにみさきがFCをしたいと望んで、結果その後の試合で昌也はみさきに敗北してしまい挫折することになった。その挫折から立ち直るために昌也はあえて、その時とは逆の状況でみさきに勝負を挑むことで立ち直ろうとし、みさきもそれに応える。
みさきは昌也に負けることへの恐怖の扱い方について話す。昌也が真藤に話した「嫉妬心」も否定せずに、武器に変えて飛んでも良いのだと。それを聞いた昌也はみさきと共に飛び立ち、清々しい気持ちで空を駆けていくのだった。

昌也が復活し再び夏の大会が迫る中、昌也はみさきとのデートに向かう。道中、大会で当たるかもしれない人達と会い、昌也やみさきはデートを楽しみつつも大会への意気込みを話す。最後にみさきは昌也に、「自分は届いたが昌也はどうか?」と問いかけ昌也は心から肯定する。

有坂 真白ルート

第7話:小さくても勇気

夏の大会を終えた後日、昌也は部室に来ていた真白と会う。試合で勝たせる約束を破ったと真白にからかわれ、昌也は勝てるまで挑戦したいという。しかし昌也の意気込みにはあくまでコーチとしての気持ちしか感じられず、それを見た真白は気持ちが足りないと少しがっかりしていた。
その夜、昌也は夏の大会の夢を見る。久菜浜FC部の選手が次々と敗北する様子に昌也はコーチとして勝たせられなかったことを後悔する。真白の敗北する光景も映り、昌也は他の選手とは違い声を張り上げて精いっぱいの応援をする。しかし同時に自分がFCで挫折した時のトラウマも蘇っていた。
大会の後にお疲れ会を開き、全員がそれぞれのメンバーにお礼を言い合う。特に波乱なくお礼の言い合いは進んでいくが、真白が大会の後日に昌也と二人きりでした約束の話について、口を滑らせてしまい周囲のメンバーにからかわれる。お疲れ会の最後にみさきが引退を宣言し、昌也はそれを受け入れてお疲れ会は終わる。

昌也は新部長として活動を続けていく。昌也は次の大会への焦りから部員に厳しい練習を強いてしまっていた。真白はみさきが辞めたこと、昌也の厳しいだけの練習もあり部活を辞めようか迷う。昌也に退部の相談をしようと真白が昌也を探していると、真白は昌也が落ち込んでいるところに出くわす。昌也は夏の大会で選手を勝たせられなかったことを後悔していた。みさきは部活を辞めたが、それも大会前からもっとみさきと向き合えなかった昌也自身が原因だと思い込み、引き留めるのを諦めていた。それでも新部長として頑張れているのは、昌也の目の前にいる真白が大会後も頑張る意思を見せてくれたからだと自覚する。
昌也はみさきを引き留めるのは諦めたが、楽しい部活にすればみさきが自分から戻ってくると考えていた。みさきを戻そうとする昌也に、真白はみさきのことが好きだから頑張るのかと問いかける。
昌也はあっさりと否定し、真白は部活全体のことを考えて昌也が純粋に頑張っていると気づく。そして真白はみさきをFC部に連れ戻すため、昌也と真白の二人で頑張っていこうと改めて約束する。
真白との約束で夏の大会で勝たせられなかった後悔を清算できた昌也は、張りつめていた気分が抜ける。昌也と明日香、真白から懇願され度々見学に来るみさきと真白のマンツーマン体制で練習が続いていく。練習中、昌也と真白がお互いを気にする様子を見せており周囲は二人の仲を疑うが、当の本人たちは真白は自分が昌也のことを本当に好きなのか迷い、昌也はあくまでコーチとして真白のことをしっかり育てようと考えていた。

昌也と明日香がマンツーマンの練習で見せる仲の良さに、真白はやきもちのような感情を表す。それを見たみさきは真白に「昌也を意識していないか?」と問いかけ、真白は自分が昌也のことを恋愛的に好きなのかと考える。
悩んだ真白は同級生の保坂実里に真白自身と昌也をモデルにした恋愛相談をする。「みさき先輩のことを以前から敬愛しているのに、昌也先輩のことを好きになっていいのか?」と保坂に相談した結果、「もっとみさきのことを好きになれば昌也のことを意識しなくて済むのでは?」と思いつく。
みさきに甘えようと部室で猫耳を付けてみさきを待っていると、みさきに騙された昌也が来てしまった。昌也が来たことに真白は混乱してしまい、昌也に対して甘えた行動をする。真白の行動を昌也は「可愛い」と言い、女性としての魅力を褒められた真白は少しずつ昌也への好意を自覚していく。高藤との試合が決まり、練習も少しずつ激しくなる。真白は、明日香とマンツーマンで練習する昌也を見て周りに悟られるほどの嫉妬をする位、昌也に好意を抱いていた。さらに真白が海で遊んでいるとき、ナンパが迫ってきたところを昌也が助けたことで完全に真白は昌也への好意を自覚する。

昌也への恋心を自覚した真白は、自分の気持ちとどう向き合うか、そして昌也に気持ちをどう伝えれば良いのか自分の部屋で悩む。

気持ちを自覚した真白はどう昌也に告白するか、そして昌也をどう自分に振り向かせるかを悩んでいた。FCが上手くなれば昌也も自分のことを見てくれると考え、自主練もするようになる。
真白の頑張る様子に母親が話しかける。真白は母親から、父親に告白するために自分に試練与えてそれができたら父親に告白したという馴れ初め話を聞く。
高藤との練習試合が迫る中、昌也は自分がメンバーを勝たせられないのではないか、自分が挫折した時のようになってしまうのではないかと不安になる。それを悪夢として見てしまい目覚めた朝に、昌也は窓の外にいた真白に夜明けの海上に連れ出される。
そこで真白は昌也から以前聞いた「オールブルー」の風景を昌也に見せる。昌也にとっての「オールブルー」とは挫折してしまったときから夢に見るいわば挫折の象徴で、視界全てが青一色に染まった吐き気を覚える風景だった。しかし真白が見せている今の「オールブルー」は夜明けの日差しが照らす海の風景だった。昌也は真白がこの「オールブルー」を見せたいと思った気持ちに、試合に勝たせることで応えたいと思った。真白も試合に勝ってそして昌也に想いを伝えるために、以前の母親の話を参考に試合で勝ったら告白しようと決意する。

いよいよ高藤との試合当日となり、試合前に合同練習を行うこととなる。そこで真白は高藤のメンバーと比較しても自分の実力が上がっていることを実感し、昌也もそこまでの努力をした真白を勝たせてあげたいと思う。
練習を終えていよいよ高藤と試合が始まるが、真白の試合前に昌也はその場を離れざるを得なくなる。久菜浜の関係者が高藤に来ていると言われ、久菜浜FC部の責任者として昌也は関係者が待っている場所に向かわなければならなくなった。真白の試合直前だったが、真白は昌也の責任感を尊重し送り出す。昌也に代わり明日香のセコンドで真白は梨佳と互角の接戦を繰り広げるが、昌也が急いで戻った時には真白が負けてしまっていた。
試合を全て終えて高藤から帰ってきた久菜浜FC部は試合の総括をしていた。真白はなんでもないように振舞っていたが、他のメンバーと別れた後、真白は木陰で昌也との約束を果たせなかったと悔し涙を流す。そこに現れた昌也は真白を慰める役を他の誰にも譲りたくないという独占欲に似た気持ちから、真白への好意を自覚し真白に告白する。真白は同情心を好意と勘違いしていると言う。しかし昌也は真白の頑張り屋なところ、自分がなぜ真白が好きになったのかを続けて言い真白の言葉を否定する。真白も昌也の言葉に感極まったように自分の想いを口に出し、二人は恋人同士となる。
FC部にも報告し、周囲に祝福されるなか二人は付き合っていくこととなった。

試合に敗北して落ち込んでいた真白の後ろに昌也が現れ真白に告白する。

最終話:ありがと、先輩

夏休みの開始前に、昌也と真白が付き合い始め、周囲にからかわれたりしながらもFC部の活動は続いていく。昌也と真白は相手の家に向かって会おうとするが、行動がすれ違い昌也は真白の家に来た流れから真白の母親に誘われバイトをすることになる。真白は昌也の家に来たところを隣に住んでいる梨佳に見つかり、お互いスピーダーであるという関係からスピーダー同盟を結成し、定期的に梨佳の家に通って練習を行うようになる。
梨佳の家に寄った後に、昌也の家にも通うことで結果的に接する機会は増え昌也と真白は仲を深めていく。梨佳との練習で真白も少しずつ実力を付け始め、ついにみさきの予想を超えた動きを見せるようになる。

昌也と真白が恋人となり、さらに昌也が真白の家でバイトをしているという状況は周囲も気にするようで様々な人間にからかわれる。夏休みも終わりに近づき、昌也は真白と恋人としての時間があまり過ごせていないことに焦りを覚える。
夏休みの最終日に、昌也と真白は焦りもあったが無事に体を重ね恋人としての階段を上る。夏休みを終えた後、秋の大会が迫る中みさきは部活に顔を出さなくなった。真白はみさきになぜ来ないのかと問う。みさきは「自分にはFCの才能があるから逆につまらなくなった」と言う。みさきの答えを聞いた真白は「ならみさき先輩を試合で倒します」と宣言する。
そのいきさつを昌也は真白から聞き、さらに真白はかつてみさきに救ってもらった恩から必ずみさきを連れ戻したいと昌也に言う。しかし昌也はFCで挫折した経験からみさきを無理やりには連れ戻したくないと考えていた。
真白の願いをできるなら叶えたいと昌也は悩んでいた。そんな中、真白の家でアルバイトをしていた昌也の元にみさきが現れる。みさきはFCを辞めた理由について話す。
夏の大会で自分以上の才能を乾や明日香に感じてしまいみさきはFC部から離れることを選択した。しかし夏の大会以降、みさきに才能で劣る真白がみさきに努力で追いつきつつあった。仮にみさきと真白がFCで勝負することになった場合、みさきが勝てば才能だけが勝負を決める要素だと燻り続けることとなる。逆に真白が勝てば努力で才能は覆せるということになってしまう。みさきはそのどちらにもなってしまうのが怖くてFCや真白からも離れていた。

さらにみさきは昌也に、真白と自分が関わることになったきっかけについて話す。かつてあからさまに独りぼっちという空気を纏っていた真白に対して、みさきはお弁当を奪おうとちょっかいをかけただけで、そこから先は真白が感謝として出してくる差し入れのうどんが目当てで今までの関係が続いていたと。それを聞いた昌也はそれ以上みさきを問い詰めずにみさきと別れる。しかし昌也は真白の母親から、みさきが真白の好意に応えるために初めは苦手だったうどんを頑張って好きになったという話を聞く。
話を聞いた昌也はどんな結果になろうと真白とみさきにもう一度向かい合って欲しいと願い、みさきと真白に勝負してもらうために昌也本人がみさきにFCの勝負を挑む。
試合内容は短距離でのスピード勝負という小細工のできないもので、一月前まで現役のFC選手だったみさきは自分の勝利を疑わなかった。しかし昌也はかつて世界大会のために身に着けた加速のテクニックを用いて勝利する。勝負が終わった後、10秒程の飛行で昌也は吐き気を催すほどに疲労困憊していた。
満身創痍の状態になりながらも、昌也はみさきと真白の勝負をみさきに約束させる。

その裏で真白は他校も含めたメンバーと練習試合をしていたが、勝つことができないでいた。悔しく思う真白に昌也はみさきとの試合が決まったことを告げる。かつてみさきが真白を、そして真白が昌也を救ってくれた。昌也は今度は真白がみさきを救う番で、そのために全力で協力すると真白に言う。
真白はみさきと戦うために、恋人として励まして欲しいと昌也に頼む。昌也もそれに応え二人は恋人として過ごす。
いよいよ真白対みさきの試合が始まる。序盤、得点を犠牲にしながらもみさきは真白の動きを観察し、中盤は徐々にみさきの有利な展開になっていく。真白が勝てないかもしれないと昌也の心が折れかけるが、真白はみさき、昌也の予想を超えた動きを見せ、取られたポイントを取り返していく。懸命な真白に、みさきは自分や昌也がコンプレックスとして抱える努力の虚しさを訴えかけるが、真白は努力そのものにも価値があると言う。試合が終盤となり、お互いに同点で一点を取ったほうが勝ちという局面で、真白は練習でもめったに成功させなかったエアキックターンを成功させポイントを取り勝利する。

みさきは努力を積み重ねて自分に勝利した真白を抱きしめ、真白を褒める。真白も憧れていたみさきから褒めてもらえたことに笑みを浮かべる。

自分のコンプレックスを真正面から否定されたみさきは感情を露わにして悔しがる。しかし悔しがれるということは、まだみさき自身が勝負に負けたくないという気持ちを持てていることの表れだった。自分の気持ちに気づいたみさきは真白の希望を汲んで部活に戻ることになる。昌也も選手としてFC部に戻り、みさき、真白を交えて楽しく活動を続けていく。
真白、昌也は二人でデートに来て、真白は約束を守ってくれたことを感謝しつつ幸せな日々が続いていくのだった。

市ノ瀬 梨佳ルート

第7話:強がる優等生

大会後、久菜浜FC部で練習をしていると、真藤と梨佳がやってきた。梨佳が昌也にコーチをお願いしたいといい、昌也は快諾する。顧問である葵や真藤から理由を聞かれ、昌也はかつての自分のように選手としてカベにぶつかっている梨佳を助けたいと思ったからと話す。
練習を続ける中で梨佳の生真面目すぎる部分が、FCの試合で相手がラフプレイや意表を突かれた時の弱さに繋がっていると昌也は気づく。そのため梨佳の生真面目すぎる部分を直そうと、昌也は部活でも楽しんでいけるように練習を工夫する。
一度、梨佳が高藤FC部に戻ることになり、寂しく思った久菜浜FC部のメンバーは高藤の練習場へと向かう。そこで見たものは佐藤院を含めた高藤の選手数人が脳震盪で横たわり、それを見下ろしている堂ヶ浦工業学園FC部の黒渕 霞の姿だった。彼女は夏の大会で反則を繰り返し、最後の試合では反則負けになったのを昌也は思い出していた。黒渕は久菜浜FC部の面々を見て不気味に笑うとその場を飛び去って行った。
佐藤院から状況を聞くと、最初は黒渕は丁寧に練習試合を申し込んできたが二人連続で脳震盪に追い込まれ、警戒した佐藤院も挑発される形で試合に挑み同じようになったという。
その帰りに昌也は梨佳から、佐藤院が試合をすることになった経緯について聞く。黒渕は初めは梨佳を試合相手にしようと挑発しており、佐藤院が梨佳を庇う形で試合をした。その場で何もできなかったと嘆く梨佳を、昌也は自分がついていると励ます。

倒れている高藤の選手を嘲笑いながら見下ろす黒渕霞。

事件の影響から高藤FC部の練習が中止になっており、昌也は久菜浜との合同練習を提案し佐藤院も了解した。ある日、合同練習で昌也、梨佳、明日香、佐藤院の四人が居残っていたところに黒渕が現れ挑発してきた。梨佳と佐藤院は試合しないと拒絶するが、明日香は黒渕のスタイルに対する純粋な興味から試合を望み、昌也も明日香ならと承諾する。昌也はラフプレイや、反則への対応を明日香にアドバイスし、遂に試合が始まる。明日香は序盤ラフプレイをものともせず得点を重ねていくが、その直後黒渕が試合を捨てる形で反則をしかけてきて明日香はケガを負ってしまう。

旧知である昌也、葵、白瀬は黒渕を含めた堂ヶ浦工業への対応を考える。梨佳が以前から黒渕には試合で決着を付けたいと意思を示しており、二人からは反対されるが昌也は黒渕の相手に梨佳を薦める。
対黒渕を想定した練習が始まるがその内容はラフプレイを想定しつつも楽しむ内容だった。それに梨佳は納得のいかない様子を見せるが、佐藤院から「形だけの練習には意味がない、事件で暗くなった部活の雰囲気も考えてくれている」と諭される。
部活の帰り、梨佳と昌也は並んで歩いていた。梨佳が悩んでいる様子を見て、昌也は自分がFCで挫折したときのことを思い出していた。もしその時に周囲に悩みを相談していたらという後悔があり、梨佳には同じ気持ちをさせたくないと思う。その気持ちを梨佳に伝えると張りつめていたものが切れたかのように梨佳は泣き出す。
梨佳自身は真面目な優等生であろうとしていたが、黒渕のラフプレイや態度に怒りにまかせて未熟な態度を取ったことや、昌也が楽しむ練習を考えてくれたのにその意味を理解できなかったことを情けなく思っていた。気持ちを吐き出しながら涙を流す梨佳を、昌也はゆっくりと抱きしめていた。暗くなるまで昌也は梨佳を慰めており、昌也は梨佳と夜の上空で大声で叫ぶことを提案する。梨佳も了承し、二人は声を出し続け気持ちが軽くなったところで地上に戻る。昌也に梨佳は「飛ぶことが大好き。しかし部活では勝利と言う目標のために楽しむことを抑えていた」と告白する。その上で梨佳はこれからの練習では楽しんでいきたいと話し、昌也と別れた。

昌也に自分の弱い部分も見せ、吹っ切れた梨佳は練習を純粋に楽しむようになり、他の高藤や久菜浜の練習部員にも良い影響を与える。そんな中、高藤との合同練習が終わり久菜浜に帰ったFC部は梨佳がいないことを寂しく思うが、そこに梨佳が現れ前と同じように久菜浜FC部で練習を続けていくことになった。
梨佳の真面目な性格は、みさきなどの練習をさぼり勝ちな選手を奮い立たせるなど良い意味で部活に影響を与えていた。梨佳の真面目な部分を理解している昌也は、前以上に明るく振舞う梨佳の様子を見て、梨佳がケガで休んでいる明日香の代わりをしようとしているのではと思う。それを梨佳に伝えると、梨佳はその通りだと言う。ただ無理はしておらず、黒渕に対して気取らず正面からぶつかった明日香のようになりたくて、そのように振舞って見たと言う。そしてもう一つの理由もあり彼女は久菜浜FC部に来たと言った。それは昌也に会うためであった。その告白に昌也は答え二人は恋人同士となる。

「無理をしていないか」と昌也に問われた梨佳はその言葉を否定し、昌也に自分の想いを伝える。

二人が恋人同士になった後、練習では梨佳はより自然体に近い形で明るく振舞えるようになる。昌也はそこに自分の影響もあることを嬉しく感じていた。
対黒渕を想定した練習中に真藤が見学に来る。昌也と違い、梨佳の内心を知らない真藤も梨佳の様子が良い方向に変わったと言う。
練習を終えて二人きりになると梨佳が恋人として昌也に接してくる。恋人となってから梨佳は子犬のように昌也に甘えており、その度に昌也は劣情を耐えるのに必死になっていた。そんな昌也の心情を察した梨佳は昌也にも求めて欲しいという気持ちを伝え、二人は恋人としての時間を過ごす。

最終話:変わらないもの

明日香がFC部に復帰する。対黒渕を想定した練習を初めて見た明日香は、思いついたようにその場を離れる。戻ってくるとその手には果たし状があり、梨佳に突きつけると試合を挑む。その試合で明日香が取った戦法は反則に近いラフプレイや言葉で相手を挑発し、自分のペースに引き込んでいく黒渕の戦法の同じものだった。対黒渕の練習は重ねていたが恐怖で練習通りの動きができない梨佳に昌也は、相手が反則をしてきても梨佳なら楽しむことができるはずだ、それができれば実力も発揮できると言う。昌也が梨佳にアドバイスをした所で試合は中断され、明日香の復帰、そして梨佳の目指すべきスタイルが定まる。
久菜浜、高藤の合同で大会の目標をベスト4と定め練習にも熱が入る。その一方で、梨佳と昌也はお互いの仲をFC部に報告し、デートしたりして恋人としての時間を過ごしていく。

対ラフプレイの練習も効果が出始め、後は試合本番でメンタルをどれだけ保てるかという段階まで進む。梨佳が練習をしていた所に突如黒渕が現れる。
黒渕は挑発してくるが、梨佳も屈せず真正面から試合をすると答える。その時、梨佳が黒渕に近づき顔をじっと見ると、幼少の頃にFCを教えてもらった彼女の幼馴染「さっちゃん」であると気づく。なぜラフプレイをするのかと問う梨佳に黒渕は、自分が教えたFCであっという間に上手くなった梨佳に嫉妬していた、さらに親の離婚という不幸があり、ラフプレイを強要する学校に入学したためプレイスタイルも変わっていったと黒い感情を吐き出す。黒渕は梨佳のことをもはや幼馴染でもない、むしろラフプレイで叩き潰す対象と言った。しかし梨佳は黒渕のことを幼馴染の時のままの可愛く思う友達だと言う。その言葉を聞いた黒渕は何も言わずに去っていった。駆け寄った昌也に、梨佳は大切な幼馴染が忘れているFCの楽しさを伝えるため黒渕の試合に臨むと決意を露わにした。

いよいよ秋の大会が始まり、梨佳は順調に勝ち進んで黒渕と当たることになる。試合前に恐怖している様子を梨佳が見せるが、佐藤院や昌也から励まされ笑顔で試合に臨む。
試合序盤、黒渕のラフプレイに対して梨佳は見事な対応を見せる。それは黒渕のラフプレイすらも試合を盛り上げる内容になるほどだった。ラフプレイが通じない梨佳に黒渕は徐々に憔悴し点差も開き始める。その時、梨佳が黒渕に向けて言った。「試合をしている今が楽しいから、さっちゃんにも楽しんで試合をして欲しい」と。それに挑発されたのか黒渕はラフプレイだけではない見事な飛行を見せ始める。飛び続ける間に黒渕も梨佳に答えるように楽しく試合をしたいと叫ぶ。制限時間まで二人は飛び続け試合は結果として梨佳の大勝で終わる。試合後、黒渕は梨佳のことを幼馴染の時の呼び方である「りっちゃん」と言い降りて行った。

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