天使なんかじゃない(天ない)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『天使なんかじゃない』は、矢沢あいによる漫画作品。少女漫画雑誌『りぼん』1991年9月号から1994年11号まで連載された。全8巻の単行本に加え、完全版コミックス全4巻、文庫本全6巻、さらに全8巻の小説が刊行されている。1994年にはOVA化された。
創立されたばかりの私立聖(ひじり)学園の生徒会を舞台に、主人公冴島翠を中心とした生徒会の面々が繰り広げる、高校生の恋と友情を描いた青春群像劇である。ベテラン漫画家として知られる矢沢あいの出世作であり、その完成度から芸能人のファンも多い。

美大の夏期講習

高3になった冴島翠は、夏休みを活用して美術系女子大の夏期講習に通っている。

夏期講習は面白い授業ばかりで楽しく、おしゃれな女子ばかりなようだ。
売れない画家をしている坂本将志も、翠のデッサンの上達を評価している。

しかし、いつもは友達も簡単に作ってしまう翠だが、夏期講習の見知らぬ女の子たちとはまだ馴染めずにいた。
大好きな友達たちと会えず寂しい思いをし、友達を作るパワーを失っていたのだった。

将志のラブリーエプロン

「新婚だから」ということで、坂本将志が着用していたラブリーエプロン。
嫁の牧博子は料理ができないので、もっぱら将志が主夫としてキッチンに立っている。

変な格好としなを作った話し方で冴島翠を爆笑させた。

高3の夏休み

牧博子曰く、この時期の3年生は多かれ少なかれ将来への不安と戦っている。
時には「頑張らなきゃ」と自分を追い詰め、無理をすることもある。
しかし、誰にも頼らずに自分自身で壁を乗り越えなければならず、孤独との戦いでもある。

その言葉通り、冴島翠もまた孤独と戦っている一人だった。
彼女は一人で夏期講習に通う内に、次第に情緒不安定に陥っていった。

高3の翠の誕生日

将来のため、夏休み中美大の夏期講習に通う冴島翠。
しかし、周りの友達に会えずに次第に翠は消耗していった。

自宅で思わず涙を落とす翠だったが、そこに訪問してきたのが中川ケンだった。
ケンは今年も翠の誕生日を覚えており、さらに「会いに行きゃいいじゃん」と、他のみんなへ祝ってもらいに行けと後押ししてくれた。

その言葉に、彼氏の須藤晃が居候している瀧川秀一の家に突撃した翠。
何と、そこではこっそり翠の誕生日を祝おうと一同が集まっていたのだった。

「誕生日おめでとー!!」と翠を祝う一同。
翠は大粒の嬉し涙を流したのだった。

その後、二人きりになった晃と翠は、いつも待ち合わせをしている電話ボックスの前でキスを交わしていた。
そして晃の帰り際、彼は小さな箱を翠に託す。
箱を開けると指輪が入っており、それもまた翠を泣かせたのだった。

第2回聖祭

9月23日の日曜日に開催された第二回聖学園文化祭。
実は3年生には内緒で、1、2年生だけで夏休みの間に密かに準備していた。

この文化祭の主役は3年生。
出し物は主に模擬店で、すべて1、2年生が担当している。
3年生はメインゲストで一般客の参加もある。

須藤晃は聖祭に妹の柴田広子を誘っていたが、広子は晃のために母も連れてきていた。
ここで晃は、久しぶりに実母と再会する。

さらに晃は、晃父の会社を将来的に引き継ぐこと、冴島翠と結婚することを母と広子に報告する。
翠自身も聞かされておらず、嬉し涙を流すことになった。

第一回聖祭に則って、18時からはダンパ(ダンスパーティー)も控えている。
ダンパはカップルで参加するのが原則で、河野文太はここで谷口マコを誘って無事二人は両想いとなった。

この日、自由参加だったにも関わらず、3年生は一人の欠席者も出さなかった。
生徒会長の原田志乃は感動で泣いたという。

「原田さん」

瀧川秀一が、元カノである原田志乃をそう呼んだ。

二人はかつて、ラグビー部の試合の日に破局。
瀧川はその後麻宮裕子に正式に告白し、志乃は未練があったが諦めざるを得なかった。

それから二人は、お互い気まずいので面と向かって話をしたりはしなかった。

しかし、第二回聖祭というサプライズイベントの告知が始まった後、企画発案者の志乃に、瀧川は思わず声をかけた。
「原田さん」と他人行儀なのは、瀧川だと分かっていたら無視されてしまうので。
周りの男たちに「原田さん」と言われ、条件反射で対応する志乃を油断させるため。

案の定、瀧川と気づかず愛想笑いで振り向いた志乃は、笑いをこらえる瀧川を見て、顔を真っ赤にした。

その後、瀧川は生徒会長として立派に働く志乃を称賛し、「がんばれよ。期待してる」と言って去っていった。
つんとして素っ気ない返事をする志乃だったが、まるでやっと満たされたのだというように笑みを湛えた。

チークタイム

第二回聖祭のチークタイム。
ダンスパーティーなどでスローテンポの曲がかかり、男女がチークダンスを踊る時間のこと。

この時冴島翠と須藤晃は、第一回聖祭の時と同じく生徒会室にいた。
はしゃぎすぎてくたくたになった二人は、今回も講堂でのダンスに参加していなかった。

すると、軽音部の曲がガラリと変わり、晃の好きな曲である「スタンドバイミー」がかかった。
晃がこの曲を聴くために、軽音部のメンバーに事前にリクエストしていたのだった。

1年の頃の聖祭で、二人は「スタンドバイミー」をバックにこの場でダンスを踊った。
翠はこれまでの思い出を振り返りつつ、晃に差し出された手を取ったのだった。

送辞

送辞は生徒会長の原田志乃が担当した。
彼女が送辞を読んだシーンは割愛されている。

(原文)

自分を信じること
周りを愛すること
明日を夢見ること

先輩達が教えてくれた幸せの3原則を

私達は決して忘れません

答辞

答辞は冴島翠が担当した。
答辞の文章も翠が考えてこなければならなかったが、何と答辞の原稿は白紙。
当日、檀上に立った時の気持ちをそのまま言葉にしたいがため、翠は足立にお願いしたのだった。

しかし、あふれ出てくる想いに言葉が出てこず、翠は涙があふれてくる。
それを奮い立たせたのが須藤晃や第二期生徒会メンバー他、全校生徒たちだった。

勇気をもらった翠は、「みんなに会えてよかった!3年間本当にありがとう!!」と締めくくり、晃の胸に駆け込んでいく。
会場中から嗚咽と、翠を称える声が上がり続けたのだった。

「アキラ」

聖学園第一期生の卒業式の時点で、牧博子のお腹の中には4か月になる赤ちゃんがいた。
坂本将志は早くも赤ちゃんにつける名前を決めてしまっていた。

その名も「坂本アキラ」。
冴島翠はえも言われない悔しさでブーイングするが、実はアキラは「晃」でなく、冴島翠の名前をとって「翠」。
実は「翠」は「みどり」「スイ」だけでなく、アキラとも読めたのだった。
そのことから、坂本将志と牧博子は第一子に「須藤翠(アキラ)」と名付けることを決めた。

翠はそれに対して「超ミラクルいい名前!」と評した。

卒業

聖学園第一期生の卒業式は、2月25日に開かれた。
この日は冴島翠達の卒業を祝してかドカ雪が降った。

答辞は冴島翠が卒業生代表を務め、会場を涙の渦にした。

第八回入学式

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