少女ファイト(日本橋ヨヲコ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『少女ファイト』とは、日本橋ヨヲコにより講談社イブニングで連載されている、高校女子バレーボールを題材にした漫画作品である。女子バレー界で20年に一人の逸材と謳われた姉の事故をきっかけとし、心を病んでしまった主人公大石練。そんな彼女が高校進学を転機に、仲間達を通して大きな成長を遂げ、春高優勝に向けて力を合わせていく青春物語である。ブロスコミックアワード2008大賞受賞作品。2009年10月にはOVA化もされている。

『少女ファイト』の概要

『少女ファイト』とは、2005年12月から連載中の、日本橋ヨヲコによる日本の漫画作品である。
発刊元は講談社イブニング。単行本第4巻から特装版が発売され、特装版オリジナルのカバー表紙と特典が付いてくる。
なお、2009年10月発売の特装版第6巻にはOADが付属された。さらに単行本第8巻から「木内亨」が作画監修を行っている。

私立白雲山学園中等部3年の大石練は、バレー部に所属していたものの、要領の悪さから中学の3年間を万年補欠として過ごしていた。
しかし、些細な喧嘩から蜂谷千代に怪我を負わせてしまい、罰として練習試合に代理で出場するはめになる。
試合に不安を抱く練だったが、それは調子に乗って本気を出さないかという不安だった。

試合中に練は懸命に自我を抑えるが、久々の試合に隠していた闘争本能が蘇り、チームメイトの京極小雪と接触事故を起こしてしまう。
その時ちょうど試合を観戦していた、幼馴染で整骨院の息子である式島滋に、トイレで背中の処置を受けることに。

しかし、それを女子バレー部の監督が不純異性交遊と誤解してしまい、練は退部同然の謹慎処分を受けてしまう。
元々バレー部の足切り候補だった練の進学は、その時点で絶望的になる。

謹慎中、練は小雪に檄を飛ばしたことを激しく後悔し、引きこもりになってしまう。
そして、部屋に閉じこもって取り憑かれたように、過去に事故で死んだ姉のことを思い出していたのだった。

5年前、練が旭谷小学校の4年生だった頃。
高校バレーの強豪校、黒曜谷の有力選手だった姉の大石真理が交通事故により亡くなった。

バレーが元々嫌いだった練だが「バレーをやってるときはお姉ちゃんのことが忘れられるから」と狂ったようにバレーに没頭するように。
そしていつしか、その横暴ぶりから狂犬と呼ばれるようになる。

練はその後、旭谷小バレーチームのキャプテンを務め、全国大会決勝戦にまで登りつめる実力を有するように。
そして、旭谷小バレーチームは白雲山学園にスカウトされることに。
転校のため渡米した唯隆子以外のレギュラーは、共に推薦入学することを約束する。

しかし、実際に白雲山学園を受験したのは練だけで、他全員が入学辞退で面接会場に現れなかった。
これにショックを受けた練は、この仕打ちは今までの自分の身勝手のせいだと思うようになり、人を極端に怖がるようになった。
そのため、白雲山でも自分の実力をひた隠し、旭谷小のチームメイト達と会わないよう、ずっと補欠でいたのだった。

暗い部屋の中で、練は真理が死ぬ直前の黒曜谷の春高大会のビデオを見ていた。
練は真理の死後、何食わぬ顔で春高を優勝した黒曜谷に嫌悪感を抱いていた。
そして、姉の事故の原因は、陣内笛子という選手のせいであると決めつけ、真理の墓前で泣き崩れてしまう。

そしてその時、謎の女性との出会いを果たす。
彼女は「姉が最後に見た景色を見たくないか」と名刺を差し出し、その場を去る。
彼女こそが陣内笛子その人だった。

その後、練は滋から一枚のDVDを見せられる。
どうしても今まで見る気が起きなかった黒曜谷の春高決勝戦のDVDだった。

そこには、まるで能面のような顔で表彰を受けるかつての真理のチームメイトたちが映っていた。
それを共に観ていた滋は「まるで真理の弔い合戦だな」とポツリとこぼした。

そのシーンを見たことをきっかけに、練の中で何かが吹っ切れ、黒曜谷進学を決意することになる。
そして、かつて練に救われた小田切学との再会や黒曜谷高校でのかけがえのない仲間との出会いが、練の深い闇に光をもたらすことになる。

躍動感のある絵柄、作り込まれたストーリー。
一人ひとりのキャラクターが濃く、見る者を惹きつけて離さない『日本橋ヨヲコワールド』が展開されていく。
15巻帯には『読む処方箋』というキャッチコピーがつけられ、悩める若者達の最強の青春コミックとなっている。

ちなみに少女ファイトのタイトルの由来は、日本橋ヨヲコの過去作品である『G戦場ヘヴンズドア』に登場した漫画雑誌『週刊少年ファイト』をもじったもの。
さらに、『G戦場ヘヴンズドア』と世界観がつながっており、大人になった『G戦場ヘヴンズドア』のキャラクター達も多数登場している。

ブロスコミックアワード2008大賞受賞作品。
第13回文化庁メディア芸術祭漫画部門、審査委員会推薦作品。

『少女ファイト』のあらすじ・ストーリー

練習試合での騒動

バレーの名門校、私立白雲山(はくうんざん)学園中等のバレー部に所属する主人公「大石練(おおいしねり)」。部内でも要領が悪いとされていた練は、京極小雪(きょうごくこゆき)から高等部進学の足切りが今年も行われることを告げられる。

一方、旭谷中学3年の小田切学(おだぎりまなぶ)と練の幼馴染である式島整骨院の滋(しげる)は、それぞれの弟から白雲山の練習試合についての話を聞かされていた。
練習試合数日前。白雲山のキャプテンを務める小雪は、夜中の自主練習に励んでいた。彼女は人気と実力が伴わないのを自覚し、焦りを抱いていたのである。そこで練からアドバイスをうけ、調子を取り戻す小雪。一夜明けた日、練はアクシデントでチームメイトの手を怪我させてしまう。その罰として明日の練習試合にレギュラーとして出場することを米田監督に言い渡される。その時練の脳裏に浮かんだのは、「調子に乗らないか」という恐れだった。

練習試合当日、小雪はその前日に練の自主練を見たことで彼女に嫉妬心を抱いていた。そして練が取るべきボールを無理に打とうとし、二人は接触事故を起こしてしまう。そして練に皮肉をぶつけてしまう小雪。その反応にショックを受けた練は、怪我の痛みもありトイレで嘔吐する。
そこへ、怪我の治療のためにかけつけた滋が練を男子トイレに連れ込むが、その場面を運悪く米田監督に見つかってしまう。不純異性交遊と騒ぐ監督に対し、滋は吐き捨てると練を連れ帰るのだった。

停学処分扱いになってしまった練は、小雪に怪我をさせてしまったことを後悔し、だんだんと部屋に引きこもりがちになる。心配して様子を見に来た滋に、練の母は練が受けた過去の傷について伝える。

過去の傷と新しい決意

それは5年前のこと。元々練はバレーが嫌いだったが、姉の真理(まり)の死をきっかけにバレーにのめりこむようになる。練習での横暴ぶりから周りの生徒は辞めて行ってしまうが、練はめきめきと頭角を現し、チームは全国大会で準優勝する。

バレー部のレギュラー達は白雲山中学からスカウトを受けることとなり、渡米した唯隆子(ゆいたかこ)以外のレギュラーは面接を受ける約束をするが、当日白雲山に現れたのは練だけだった。その件以来、練は元チームメイト達と会うのを恐れるようになる。そして白雲山に入って、3年間を補欠として過ごしたのだった。

小雪を傷つけてしまったことで過去を思い出し、後悔する練。姉の真理が事故で死ぬ直前の春高(春の高校バレー)準決勝のビデオテープを繰り返し眺め、とうとう部屋から出ないようになるのだった。姉の在籍していた黒曜谷女子バレー部は、姉の死後に春高を優勝し、それを練は薄情だと忌み嫌っていた。

何度もビデオテープを眺める過程で、練は陣内笛子(じんないふえこ)というセッターが足を痛めていた真理に球を集中的に集めていたことを発見する。そして真理の死の原因は陣内笛子にあったと邪推してしまう。
滋が「お前がそういうんならそうなんだろう。お前ん中ではな」と静かに言うと、練は逆上し、家を飛び出してしまう。姉の墓前で泣き崩れていた練は、喪服姿の女性、陣内笛子に声をかけられる。

そして真理が死んだ交差点で練は学と遭遇する。学に着替えを貸してもらって帰宅した練は、滋に笛子に出会ったことを伝える。それを聞いた滋は春高決勝戦のDVDを嫌がる練にそれを見せる。そこには、能面を貼り付けたような表情で表彰を受ける真理の元チームメイト達が映っていた。

滋はポツリと「まるで真理の弔い合戦だな」と発言。そして、笛子はこの時靭帯を負傷しており、試合で無茶な戦いをして選手生命を絶たれていたことを知る。それを受け、練は黒曜谷(こくようだに)を受験し、白雲山を正式に中退することを決意するのだった。

チームメイト

私立黒曜谷高等学校入学式。ここに入学したのは練だけでなく、偶然近くのスポーツ学科として受験した学や、練と同じ特別推薦枠で受験できた滋の弟・未散(みちる)も一緒だった。入学式が終わると、男子・女子バレー部の新入生歓迎エキシビションが始まり、練や学含めた6人のバレー経験者が集まってくる。

練が中等部の頃対戦した飴屋中のキャプテン、長谷川留弥子(はせがわるみこ)。練に密かにライバル心を抱く延友厚子(のぶともあつこ)、厚子の親友のギャル、早坂奈緒(はやさかなお)。そして関西出身でプライドの高い実力者、伊丹志乃(いたみしの)だった。

練は黒曜谷最強布陣である犬神鏡子(いぬがみきょうこ)キャプテンと沙羅(さら)のコンビが放つボールを受け、生まれて初めての高揚感を得る。そして当初マネージャー志願だった学を選手として迎え、黒曜谷高校女子バレー部の活動が始まる。

部活動初日、現れた笛子が新しいマネージャーだと紹介したのは、なんと滋だった。練は自分のせいで滋が黒曜谷の男子バレー部を辞めさせられたと思い悩む。そのために付き添いの学や、別件で何やらもめていた奈緒と共に部活に遅刻してしまう。そしてそれを迎えた笛子に遅刻組3人と残り3人の1年生で試合をすることを命じられる。素人のいる練、奈緒、学のいるチームが不利であったが、試合では健闘をし3人は絆を深めることになる。

本心

奈緒が違法賭けバレーに関わっているという噂を入手する練。それをやめさせようとし、奈緒のチームを解散させるため、ギャラリー参加型のミニゲームに出場することにする。相手チームであるベットバレーには黒曜谷の2年生である鏡子達が助っ人として加わっていた。彼女達は奈緒のベットバレー参加を辞めさせるために、その条件として、用心棒として雇ってもらっていたのだった。

試合中、嘗てのチームメイトであった赤坂南(あかさかみなみ)との遭遇に、練はトラウマを発症してしまう。しかし学の説得により復活し、勝利する。奈緒はそこで、賭けバレーはバレーの機会を奪われた女子達の居場所であったことを暴露する。奈緒自身は怪我したメンバーの代わりを少しの間、任されていただけだった。

そして、練は南から白雲山入学時の真相を明かされる。実は南は未散のことが好きで、未散と練が付き合っていると誤解し、意地悪目的で白雲山受験を取り下げたことを白状する。そして、そのきっかけになった二人のキス写真に話が及ぶと、心当たりのあった未散の前にかつての未散の彼女であり、トラウマの相手である隆子が現れる。
小学生の頃、未散は練が居眠りしている隙にキスをし、それを盗撮した隆子に画像を消去する代わりに付き合うようにと強要されていたのだった。未散は日本に帰ってきた隆子との付き合いが続くことを恐れ、そこにたまたま居た学に「付き合ってくれ」と頼むことにする。事情を理解した学は、付き合うということを大切な何かを互いに守ることだと解釈し、未散の申し出を受けることにしたのだった。

その後、奈緒の起こした事件は不問にされることになるが、他校では噂は既に広まっており、黒曜谷の夏のインターハイは辞退を余儀なくされる。そして時を同じくして新しくコーチが配属されることになった。それは真理の元チームメイトであり、Vリーグ選手であるも怪我のため一時退団し、リハビリの間母校に帰ってきた由良来政子(ゆらぎまさこ)だった。

1ヶ月間の停学中、みっちりバレーの練習を課せられた女子バレー部は、近隣の学校である桃園女学園との合同試合が設けられることになる。しかし桃園には黒曜谷の眉唾な噂が流れており、交流しないようきつく言いつけられていた。更に問題はもう一つあった。練には桃園との試合中、足を引きずっていた子に遠慮し、わざと手を抜く場面があったのだ。政子はそれを厳しく叱りつけ、自分なりの答えをだすよう指示するのだった。
白雲山との試合前、練は真理の死や白雲山推薦での辛い過去を語り、真理が死んでからのバレーは合法的に飛べる薬だとした。鏡子はそれに「本当にそうか?」と問う。そして翌日の試合の中で、練は、自分がバレーを純粋に好きなんだという答えに行き当たるのだった。

第24回かろやか杯試合当日、場内は志乃へのブーイングで満たされていた。実は、志乃の祖父はヤクザ・菱巻組の組長であり、中学時代、八百長の噂で肩身の狭い思いをしていたのだった。しかし志乃に向けられる悪口に留弥子がキレたお陰で志乃にだけに向けられていた悪意は黒曜谷全体に向けられ、逆に練達はやる気を出し勝利する。

次の浅葱高校との試合を前にしていた時、菱巻組の幹部が志乃の元に駆けつける。なんと、志乃の祖父が危篤状態であり、急ぎ病院へ来てほしいとのことだった。病院へ行くのを拒否し試合に出る志乃。意地を張る彼女に練がアタックを叩きつける。
練は真理が事故死した時、喧嘩中のまま最後まで仲直り出来ずに逝かせてしまった過去を持っていた。自分と志乃を重ね合わせたのだ。帰る決意をする志乃。黒曜谷はその後、飛び込み参加ながらもストレートで優勝を果たす。そして志乃の祖父は、志乃が駆けつけるとすぐに意識を回復させたのだった。

それから時間は流れ夏休み。学と未散は学の父の勤める菅原病院にやって来ていた。そこで二人は滋が網膜色素変性症という難病に侵されていること、既にほとんど目が見えていない状態にあることを聞いてしまう。その盗み聞きは滋本人にバレてしまい、滋は練のメンタルも考えて当分黙っていようと伝え、二人はそれを承知するのだった。

バレー部の練習で同じセンターポジションを任された学に、練はブロックを教えようと声を掛けるが、学はそれを断る。それは滋の病気のことを聞いてから、練の役に立てるようにと裏で努力を重ねるようになったからだったが、それが原因で二人は一時、すれ違うようになってしまう。しかし最終的には何とか和解し、より強い絆を結ぶのだった。

新人戦

文化祭も終わったある日、練と滋は外の水道脇で話をしていた。合宿中に学園を一時飛び出した時、練は滋にキスをされて以降、お互いに想い合う仲に発展していたのだった。見つめ合っていい雰囲気になっていたところに、学園理事長であり鏡子の母親である犬神了子(いぬがみりょうこ)が水を差す。
理事長室に呼ばれた練は秋の新人戦で優勝しなければ白雲山移籍を決定するという話を聞かされることになる。隆子のおじにあたる人物が白雲山のスポンサーをしており、練を高く評価していたからだった。

さらに、同時期に鏡子の想い人であり黒曜谷男子バレー部キャプテンの千石雲海(せんごくうんかい)の留学がたち消えになっており、隆子のおじは練の移籍と交換で雲海の留学斡旋を提示してきたのだった。了子は鏡子の想いに気づいていながら、三國家の出である智之(ともゆき)と鏡子の婚約を推していた。さらに全日本に入れる実力を持つ雲海の足手まといになるからと、鏡子には雲海を諦めるように言い、留学斡旋の旨を了承したのだった。

雲海はもちろん、練のことも手放す気のない鏡子。雲海と既成事実を作ることで三國家との婚姻を壊す算段を立てるが、大事な試合の当日に事を起こしたことに雲海は激怒する。計画は失敗しそうになるが、練が雲海にメールで事情を知らせる。そのおかげで二人は和解してキスをし合うのだった。

練に謝罪し、過去に大会をボイコットされたことを話しだそうとする鏡子。その時、向こうから次の試合の相手、藤黃学園の選手達が歩いてくる。彼女達は鏡子への不満から大会をボイコットし、黒曜谷を辞めた元チームメイト達だった。鏡子達2年の弱点を知り尽くした彼女たちに苦戦を強いられるも、練は強烈なアタックで相手校を吹き飛ばし、新人戦は圧勝で終わるのだった。

冬季選抜試合

冬季選抜直前となり、鏡子と雲海は白雲山対朱雀高校の練習試合を観戦していた。鏡子はずっと朱雀(すざく)の監督・槌家(つちや)を目で追っており、試合に集中できていなかった。槌家は沙羅の実の父親であり、沙羅を過去に傷つけた因縁の相手であった。そして、槌家率いる朱雀に勝つことを、長年の目標にしていたのだった。しかし、当人である沙羅は父を苦手だと思いつつも、打倒朱雀を掲げる事に対し悩んでいた。そんな彼女に勇気を与える雲海。

冬季選抜当日。第四回戦の朱雀との試合では、槌家の的確な指示と黒曜谷のミスが連発し、1セット目を落としてしまう。鏡子を2セット目から出すことで巻き返しをはかるが、すぐにスタミナ切れ。しかし、鏡子はベンチに下がることを拒否。鏡子が明後日の方向にあげたトスを、練はなんと槌家に向けてアタックし、鏡子の集中力を切らせる。それにより正気を取り戻した鏡子は医務室に運ばれる。その後、朱雀との試合は敗退するが、3回戦までで春高行きは決定しており、鏡子と沙羅は練のお陰でギクシャクしていた関係を修復することが出来たのだった。

試合後、黒曜谷の女子バレー部宛に朱雀高校1年生主催の、女子バレー部選手たちを対象とした情報交換会、通称「お茶会」のお知らせメールが届く。他校に嫌われていることもあって黒曜谷はこれを無視することを決める。しかし白雲山の隆子などは勝手なファンクラブ結成や知られたくないプライベートを公開され、扱いに大いに困らされていた。

一方、桃園との合同練習中、呼び出された志乃はリベロ転向を言い渡されていた。志乃は練並にキャッチ率も良く、かつ身長も練と同じく小柄であることから、リベロ抜擢も妥当かと思われた。しかし、今までセッターを熱望してきた思いが壊されたようで、志乃は部活をボイコットしてしまう。代わりに正セッターという重大なポジションを任されることになった学は、自分が仲間の運命を変えてしまったことを重く受け止め、セッターになる覚悟を決めてより一層の練習に励む。

一日の練習に疲れ、ヘトヘトになって帰ってきた学の元に、隆子が顔色を悪くして現れ「青磁学園には気をつけて」と忠告する。未散も加わり、事情を聞くと、かつて練のトラウマの原因となった人物、雨宮摩耶(あまみやまや)が青磁学園でレギュラーになっていることを打ち明けられる。
彼女は学がかつてイジメを受けていた時に元凶となった人物でもあり、なんと奈緒の賭けバレー騒動や朱雀のお茶会を企画した人物でもあった。隆子と学は密かにその件について調査することを決意する。

その後の桃園との合同練習試合。元チームメイトと遭遇し、動揺する練をリベロの特訓をしてきた志乃が駆け付け、救うのだった。

試合当日

冬季大会になり、東京ブロック会場では黒曜谷には悪口が浴びせられる。しかしそれに負けず快進撃を見せる黒曜谷。
ところが連日のオーバーワークにより学がダウンしてしまい、断食で調子を整えていた鏡子が正セッターを任されることになる。前回は練の活躍で勝利を掴んだ藤黃学園に、今度は自分たちの手で、と意気込む2年生メンバー。激戦の末、勝利をもぎとるのであった。
試合後、敗れた藤黃の元チームメイトたちに沙羅と由佳は謝罪を促す。鏡子はそれを制して手を差し伸べ、和解が成立する。そして、この一連の騒動に裏で糸を引いていた雨宮摩耶が密かにほくそ笑むのだった。

選抜準決勝直前、笛子が昔の恋人からプロポーズをされる。その話を偶然立ち聞きしていた留弥子は、笛子が辞めてしまうかもしれないと泣き出してしまう。それを心配したのは練も同じで、解任の話は本当なのかと了子を訪れる。練に決まったことではないと答える了子。
そこで了子は笛子が靭帯を損傷した経緯について練に話す。実は笛子は、真理の事故に居合わせ、真理を助けようとして足に怪我を負っていた。しかも医師が止めるのを振り切り、決勝戦に出場したのだ。そして練は、真理が過去に受けた父親の暴力により左耳が難聴気味になっていたこと、事故の際に笛子の制止の声を聞き逃したという事実を突きつけられる。練は高校進学前、笛子のせいで真理が死んだと誤解していたことをひどく後悔し、懺悔の意味も込めて彼女に勝利を誓う。

黒曜谷は千歳緑高校との試合で勝利したことで春高出場は確定し、残すところ東京の王者・紫苑高校との決勝戦だけになった。相手にとって不足なしと意気込む黒曜谷だったが、笛子は戦力温存のためにリベロの志乃、エースの練を下げることを決める。
志乃と練のいない黒曜谷は序盤からまったく点を入れられず、紫苑高校の独擅場となる。学はセッターとして実力が伴わず、仲間の力を十分に発揮できないことを痛感する。
学の悲痛な姿に絶叫する練。黒曜谷は鏡子をセッターに置いて何とか粘ったものの、大敗を喫するのだった。

大会が終わった帰り道、練は学に「そんなにバレーが辛かったら辞めてもいいんだよ」と発言する。学は自宅で布団に引きこもり、言われた言葉の意図を考えるが一人では答えはでない。そこで彼女は隆子の家を訪ねる。
事情を聴いた隆子は、練の言葉は自己防衛のためだと言い、義理でやってるなら練に関わらないでと学を突き放す。冷たくも心に刺さる隆子の言葉を学は否定し、やる気を無事取り戻す。
翌日、体調が戻った彼女は、練と話をしようとする。しかし練は急な招集で、全日本合宿へ発った後だった。

合宿の裏で

全日本合宿で練たち高校生4人は、そこで全日本スタメン5人から熱烈な歓待を受ける。そして練は、その一人で真理の元チームメイトだった田上繭(たがみまゆ)と対面する。プロたちの手で徹底的に管理されたバレーをするための最高の環境下で、練の合宿生活が始まる。そして、日本バレー界最強のスタメン組によって自分との実力の違いをまざまざと見せつけられる。ここに来て初めての挫折感を味わった練は、同時に紫苑高校戦で学が抱いた絶望感を理解するのだった。

合宿終盤、スタメン組対高校生での対決が決まる。スコアは20対0から始まり、高校生側は5点獲れば勝利という試合方式。練はスタメン組の弱点を見つけるために奔走する。
対決前夜、体育館を訪れた練は、そこで繭と会う。彼女はもしメダルを獲ることが出来たらその時点で死ぬのだと言い、それまでは生きると真理と約束していたことを話した。
練はそれを聞いて死んでもなお周りから慕われる姉と、友達に嫌われていないかとビクビク怯える自分を比べて絶望する。しかし、そんな練を繭は優しく勇気づけるのだった。
それに元気を取り戻した練は、春高で真理を越え、繭を必ず救うと約束するのだった。

対決当日、スタメン組の弱点を上手くつく高校生組だったが、圧倒的実力差に僅差まで追い込まれる。残すところ後一点という時に、練は繭が指を痛めていることに気づき、最後の賭けに出るがボールが顔面を直撃。混沌状態に陥る。それが理由で練の途中離脱を決定する。
荷物をまとめた練は最後に繭に顔を見せ、繭から「春高 今年が最後になると思ってやりなさい」と言われ、送り出される。その言葉を受け止めた練は彼女のいない間に実力をつけた仲間たちの元へと戻るのだった。

春高数日前、笛子は次期キャプテンを練に任命する旨を部員に言い渡す。さらに副キャプテンには学が大抜擢される。それを聞いた滋は、春高前に了子に言われていた病気のカミングアウトを断念し、春高終了後に黒曜谷を去ることを決める。

同じ時期に朱雀高校でも一つの事件が起きていた。お茶会の件で朱雀キャプテン・寺沼理香(てらぬまりか)の怒りを食らい、逆ギレした1年生が部活をボイコットしたのだ。
そして、麻耶の策略により理香の悪い噂が出回ることになる。
朱雀で幽霊部員をしている理香の理解者・有栖川幾重(ありすがわいくえ)の働きで事態は沈静化したが、責任感の強い理香は春高のレギュラーを辞退。さらに内定済みのVリーグにも断りの連絡を入れたのだ。これには槌家も含め、朱雀は大混乱になる。

幾重から情報を教わった黒曜谷もこの事態を重く受け止め、練は今こそ勇気を出す時と決意する。取材で「寺沼さんのいない朱雀なら楽勝ですね」と言ってのけることで批判の矛先を朱雀から黒曜谷へと変えたのだ。そして仲間達もそんな練について行くことを決めたのである。

試合開始

春高当日、場内の嬉々とした視線にさらされる黒曜谷。開会式が始まると、観客席や他校の選手からのブーイングが本格化する。琥珀学園の鬼瓦桃子が厚子に殴りかかってくるが、朱雀の理香がそれを制する。
開会式終了後、厚子は理香に感謝の言葉を述べ、理香のレギュラー辞退をもう一度考え直して欲しいと訴える。
その後、自分の発言のせいですまないと謝る練に「桃子の件はお前のせいじゃない。それに桃子は怪我をしている手で殴ろうとしていた。計算高い奴じゃねーよ」と言葉をかけたのだった。

開会早々に暗雲が立ち込める中、黒曜谷の第1回戦が始まろうとしていた。
初戦は本作内で人気のある漫画『エドガワ杯球団(エド球)』好きのメンバーが集まり、高校から本格的にバレーを始めたという異色のチーム、山吹矢高校だった。
「たまたま才能があったヲタクが春高まで遊びに来た」という中傷が出回る彼女達だったが、その実力は本物だった。また、試合の中で悪役である黒曜谷に虐められる被害者と見られ、手のひら返しが起こると言う苦笑してしまう展開も起こる。試合は激戦の末、最後には黒曜谷が勝利するのだった。

第1回戦から数日経て、黒曜谷の次なる相手は、何故か黒曜谷メンバーと容姿が似ている墨日野高校だった。
容姿は似ているが性格は全く逆で、練に似ているわがままなエースの小岩素。鏡子に似ているが体力があり、素と喧嘩が絶えないキャプテンの銀子などが在籍していた。

さらにこの日は、なんと全日本メンバーも観戦にきており、場内は大混乱に陥っていた。試合前の練習時間が始まると、素は全日本チームへの露骨なアピールを開始する。
実は、素はもし優勝できなかったらバレー部を辞めて受験勉強に切り替えることを両親に誓っていた。しかし自分の豪快なアタックが全日本女子の目に留まれば、声がかかるのではと企んでいたのである。

試合開始後、スカウトを期待する気持ちから自分勝手をする素。そのことで、チームは瓦解しかけるが、自分達とそっくりなだけに余計に見ていられないと言う気持ちになった黒曜谷のメンバーの言葉で立ち直る墨日野。
更に観客席で野次を飛ばしていた素の両親も、練の父の言葉で改心し、彼女を応援するようになる。

また、成長したのは相手側だけではなかった。試合の中で素が才能ある姉と比較されて来たことを知る練。素は姉が生きていた場合のもうひとりの自分自身だと思うようになり、彼女を倒すの躊躇するが、彼女はその気持ちを彼女は乗り越える。そしてアタックを叩き込み、黒曜谷は勝利するのだった。

3回戦当日。この日の黒曜谷は少し遅めのスタートだったので、青磁と琥珀の試合を見学するようにコーチの政子から言い渡される。
一方、厚子と奈緒は知花(ちか)の姿を見かけていないことを不思議に思っていた。知花とは厚子の継母であり、今日は妊婦の身でありながら春高の応援に来てくれることになっていたのだ。

青磁と琥珀の試合が開始されると、場内は異様な雰囲気に満たされる。琥珀は紫苑と争うほどの強豪校として名高いはずであるが、琥珀の動きは明らかにおかしかった。八百長をしているメンバーが居たのだ。
それに怒りを示し、退場となった桃子。帰り支度を始めるのを、見ていられないと彼女を引き止める厚子。しかしそこで現れた知花がその場に倒れてしまう。渋滞で救急車を待っていたら時間がかかりすぎる状況にサイドカー付きバイクで近くの産婦人科まで送ってくれるという桃子。

厚子は奈緒に事情の説明を頼むと、桃子に同行して産婦人科に急行する。奈緒から説明を受けた鏡子たちは、緊急事態だと受け入れて厚子がいない分も戦うことを決めていた。だがそこで厚子が戻ってくる。桃子に後は任せて試合に出るというのだ。しかし実母を亡くした経験のある厚子は内心では気が気ではなかった。震える彼女を練が励ます。

それを横目にしながら、学は鏡子を呼び止めて、八百長疑惑が摩耶の仕業ではないかと二人で話し合う。この件を公表するのがいいかと悩む学に、目的が分からない以上、下手に動くのは危険であると言う鏡子。厚子も加わり、金糸雀(かなりあ)高校との試合が終わったら、この件を調査することを決める。

事件の真相

学達の推測は当たっていた。琥珀の武田蘭子は、琥珀の2年生が悪ふざけでタバコ型のお菓子を咥えている写真と、この写真を公表されたくなければ3回戦以内に負けるようにという旨の脅迫状を受け取っていたのだ。そしてその犯人である青磁の摩耶は自分達も同じように脅迫を受けている被害者であることを装い、言葉巧みに八百長試合へと誘導したのである。

談合を結んだ後、スポーツジムで婦人に声をかけられる摩耶。摩耶はその人物に、こんな相談を持ちかけられたと今しがたの出来事を語る。婦人は微笑を浮かべて「角度を変えればあなたが脅迫してると思われそうな案件ね」と一枚上手の返答をし、去っていく。その婦人は三國財閥の会長、三國芽衣子だった。

場面は変わって、琥珀学園との試合前。摩耶は一人会場の外れまでやってきて、持参したスポーツバッグを植え込みに隠していた。そのバッグの中身はお菓子で、彼女はそのバッグを金糸雀の1年、堂夏モカに渡そうとしていた。金糸雀は「菓子類禁止・携帯の使用制限あり」など規則正しい生活の徹底、極めつけには監督・コーチによる寮の監視まで行われている指導の大変厳しい高校だったのだ。

金糸雀は中・高等部次期総部長を決める総選挙が行われており、体制維持の菱井澄子(ひしいすみこ)派と、禁則事項緩和を求める歯朶新子(しだにいこ)派に分かれて争っていた。そして、その裏で選挙を有利に運びたいとする人間達によって、禁則事項であるお菓子の密輸が行われていたのだった。

摩耶はそんな状況の金糸雀に堂夏モカが禁則事項のお菓子の密輸をしている写真を送りつけることでチームのかき乱しを行ったのだった。 モカがお菓子の密輸をしたのは恩のある澄子を総部長にしたいと言う願いを摩耶に突かれたからであったが、密輸の写真を見た澄子はモカへの不信感に陥ってしまう。一方モカも密輸行為が澄子にバレてしまったことに気づき動揺する。
摩耶の更なる策略もあり、不協和音に陥る金糸雀だったがもう一人の部長候補だった新子がそれを立て直す。彼女を中心にまとまり、巻き返しをする金糸雀。
それに対し追い上げられた黒曜谷は切り札「風神雷神」を使用する。「風神雷神」とは、沙羅と由佳がセンターを務める黒曜谷最強技の通称であった。それにより試合は一瞬で決着が着いたのだった。

試合後、式島整骨院では犬神了子が滋の盲学校への推薦状を持って訪れていた。了子は滋に最終確認をし、滋は肯定を返す。滋はとうとう練と一度も話し合うこと無く、黒曜谷を去る準備を進めていた。

そして摩耶はその頃、再びジムで三國会長と対面していた。会長は次の青磁の相手である紫苑にも原因不明のトラブルがあったことを話し、「あと2戦がんばって」と摩耶に声をかける。優勝まではあと3戦あり、なんとも皮肉の込められた言葉であった。

春高準々決勝当日が訪れる。1回戦敗退となった山吹矢も、黒曜谷の応援をするために喜び勇んでやって来ていた。彼女らの引率できていた新人監督・幹(みき)という男、実は三國会長の実の息子であり、山吹矢バレー部発足を聞きつけて赴任した三國家の工作員だった。彼の調査で金糸雀の一件で浮かんできた人物が会長のジム仲間である摩耶だということが明るみになる。三國会長は摩耶をある計画の為に容認していた。
三國会長の計画、それは「オリンピックで金メダルを獲る」ことだった。

練たち黒曜谷も含め、今回春高に集められた何校かは三國会長の野望のための投資先として、選手たちの育成の場になっていた。そのために三國会長は、優秀な人材を小学生の段階から目をつけ、進路先を誘導して選手に合った監督をつけ、相性のいい仲間と会わせるなどといったシステムを作りだしたのである。練が黒曜谷に呼び寄せられたのも、この計画の一部だった。

この計画では摩耶のような不穏分子も適度な災いとして見られており、選手の育成には必要と下されていた。しかし摩耶が本当に「適度な」災いなのか、不安を抱くものもいた。
そこで会長の指示に反しない範囲で摩耶の調査を開始したのだった。

所変わって黒曜谷では、4回戦の相手である朱雀との試合に入ろうとしていた。理香から「あなたの対戦相手は槌家監督じゃない。この私よ」と言われた鏡子は目を見開く。
理香の戻ってきた朱雀、これに負けまいと、沙羅との念入りなコンビ練習に励む鏡子だった。

『少女ファイト』の主な登場人物・キャラクター

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