やがて君になる(やが君)のネタバレ解説まとめ

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『やがて君なる』とは、仲谷鳰によるマンガ作品。同作を元にアニメ化、舞台化、小説化がされている。人に恋する気持ちがわからない小糸侑と、誰に告白されても心動かされることがなかった七海燈子を中心に少女同士の恋愛が描かれている百合作品。
2018年10月から12月まで全13話でアニメ化、2019年5月に舞台化されている。外伝ノベライズとして『やがて君になる 佐伯沙弥香について』も発売されている。

『やがて君になる』の概要

『やがて君なる』とは、仲谷鳰によるマンガ作品、及び2018年10月から12月まで放送されたテレビアニメ作品。略称は『やが君』。
人に恋する気持ちがわからない小糸侑と、誰に告白されても心動かされることがなかった七海燈子を中心に少女同士の恋愛が描かれている百合作品。侑と出会った事により「特別」を得た燈子と、燈子に思いを寄せられることで徐々に「特別」を芽吹かせていく侑の高校生活が瑞々しく表現されている。
「光と闇の百合」というキーワードから発展した物語で、闇を抱える燈子と、燈子を助ける光のキャラクターである主人公の侑を中心に展開される丁寧な心理描写が特徴の作品だ。少女同士の恋愛の他、様々な形の「特別」が描かれる。
原作マンガは2015年4月に連載開始、同年10月に第1巻が刊行されている。アニメ版では原作マンガの1巻から5巻までの内容が放送され、原作者の仲谷と編集者の楠に「これは完全版『やがて君になる』だなって言い合っています」と言わしめるほどの完成度となっている。
書籍版コミックスについている帯の文言は原作者の仲谷と担当編集のクスノキがお互いに出し合ってつけているもの。1巻、2巻はクスノキが、3巻、4巻、6巻は仲谷の案が採用されており、5巻は二人で考えた4巻巻末の次回予告コピー。どれもその巻の内容を示唆する印象的な文言になっている。

『やがて君になる』のあらすじ・ストーリー

1巻『わたしを好きな、わたしの先輩』

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侑の相談と燈子の告白から、二人の関係が大きく変化する。

遠見東高校の新入生である小糸侑には、誰かを特別に思う気持ちが理解できないという悩みがあった。仲の良い友人たちにも相談できずに一人で煩悶としていた侑は、ある日、男子生徒が女生徒に告白する現場を目撃する。
誰に告白されても付き合う気がないのだと答えた女生徒は、校内でも有名な生徒会役員の七海燈子だった。今まで誰に告白されても心動かされたことがないという燈子に、侑は自分が抱えていた悩みを打ち明ける。燈子もまた自分と同じように誰かを特別に思えない心を持っているのだと考えていた侑だが、相談の後に燈子から向けられた言葉は驚くべきものだった。
燈子『だって私、君のこと好きになりそう』
突然の言葉に侑は困惑する。同時に、自分と同じだと思っていた燈子が「特別」を知ってしまったことに、侑はひどく落胆した。燈子を好きにはなれないと告げようとする侑だったが、それでも良いから好きでいさせて欲しいと求める燈子を拒むことが出来なかった。
侑は燈子に押し切られる形で生徒会会長選挙の推薦責任者を引き受けることになる。それは燈子と親しい間柄であり、生徒会副会長候補である佐伯沙弥香の意に沿わないものであった。入学以来ずっと燈子の隣でサポートに徹していた沙耶香は、選挙活動でも自分が燈子の推薦責任者を務めるつもりでいたのだ。燈子が自分よりも小糸を選んだことに不満を抱いた沙耶香だが、燈子の意思は固く、沙弥香が折れる形で生徒会選挙活動が開始する。

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侑は応援演説で宣言する。

優等生の燈子は選挙活動の間も、誰の手伝いも必要ではないほど何でも完璧に遂行した。しかし二人で過ごす時間が経つにつれ、侑は燈子が抱える悩みや弱さを垣間見る。完璧に見えていた燈子がプレッシャーに押しつぶされそうになっていたこと。幼い頃は臆病だった燈子が必死の努力で現在の自分を手に入れ、完璧な七海燈子を演じていること。誰にとっても特別な七海燈子という存在を失うことを、燈子自身が恐れていること。他人から失望されることが耐えられない燈子が、誰に頼ることもなく一人で気を張っているのだと知った侑は、特別を持たない自分の前では特別な七海燈子でいる必要もなく、それが燈子にとっての特別になり得るのだということに気がつく。燈子が助けを求められるのが自分だけなのだとしたらそれを叶えたいと感じた侑は、生徒会役員として燈子を傍で支えようと心に決める。

2巻『わたしに好きは、訪れない。』

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槙は人の恋愛模様を舞台を見るように楽しむ癖がある。

晴れて生徒会長に就任した燈子には悲願があった。それは文化祭での生徒会劇の復活だ。遠見東高校では生徒会と文化部が協力して劇を出し物にすることが伝統となっていたが、七年前を境にすっかり途絶えていたのだ。燈子は自分の代で生徒会劇を再び行いたいのだと生徒会役員メンバーに持ちかける。ただの提案だと口にする燈子だが、劇に並々ならぬこだわりを抱いている様子である。
燈子は、侑が自分の恋心を許容してくれる姿勢に、より一層思いを募らせていた。ただ思うだけでは物足りなくなった燈子は、生徒会室で二人きりになった時分に、侑へキスをさせて欲しいと乞う。特別を知らなかったはずの燈子が見せる変化への羨望と、キスへの好奇心から、侑はその申し出を受け入れる。侑と燈子は人知れず生徒会室で唇を重ねた。しかしその最中の侑と燈子の姿を、同じ生徒会役員である槙聖司に目撃されてしまう。燈子の評判が悪くなることを恐れた侑だが、槙は言いふらさないと約束すると同時に「自分より先輩の心配ばっかりして、それって七海先輩のこと特別なんだなぁって」と侑と燈子の仲を表現し、侑を動揺させる。

誰かに選んでもらえる嬉しさは侑にとっては心地の良いものであったが、燈子からの一方的な好意を受け止めることにはまだ戸惑いがあった。燈子にとっては侑が唯一の特別だが、侑にとっては燈子が相手でなければならない理由がない。燈子にどれだけ思われても自分ひとりが特別を感じられないままであることに、侑は苦い感情を覚えるようになる。

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侑の言葉を、燈子は受け入れなかった。

一方、生徒会劇はオリジナルの脚本を用意できないことが問題になっていた。侑には新人賞に応募するために小説を書き上げた友人・叶こよみならばオリジナルの作品を書き上げられるだろうという心当たりがあったが、言い出せずにいた。それは生徒会選挙の際にプレッシャーに押しつぶされそうになっていた燈子の姿が脳裏をよぎったからだ。侑は生徒会劇を実行することが燈子の負担になるのではないかと考え、協力することを躊躇っていた。侑が何かを隠している様子に気付いた沙弥香は、自分もまた燈子の強がりに気付いているのだと告白した上で、透子が生徒会劇にこだわる理由は七年前の生徒会長にあると侑に教える。
七年前の生徒会長は燈子の姉である、七海澪という女生徒だった。彼女は生徒会劇を目前に控えた時期に交通事故で不慮の死を遂げていた。姉を慕っていた燈子は他界した姉の代わりになるべく努力をし、澪がやれなかった生徒会劇を自分が実現するために必死になっていたのだ。
それを知った侑は、澪のようになるために無理をしている燈子を案じ、生徒会劇をやめることを提案する。優秀だった姉とは違う、素の燈子を好きになってくれる人もきっといる。侑の訴えは本当の燈子を好きになりたいという気持ちを孕んだものであったが、燈子はそれを頑なに拒む。

大好きだった姉が死んでしまったことが信じられない燈子は、自分が姉のように振る舞うようになった。そうすれば姉を知る大勢が喜び、燈子のことを特別だと言った。侑の前でただの燈子に戻る心地良さを認めながらも、燈子は自分の特別を捨てることは出来ないと侑に語る。燈子の話を聞いた侑は、姉を演じる自分も本当の自分も人から肯定されたくないという燈子の気持ちを思い知る。そして、誰のことも特別に思わない自分だからこそ、燈子は侑を特別に思うようになったのだと理解する。燈子の傍にいることを心に決めていた侑は、姉を演じる燈子も、本当の燈子も、どちらの燈子のことも好きにならないことを約束する。それは誰かを特別に思う自分に変わりたいという思いに背く選択だった。
劇を手伝うことも燈子と約束した侑は、こよみに脚本の制作を依頼する。オリジナルの脚本を用意する段取りも付き、生徒会劇の計画は大きく前進する。

3巻『このままでいたい。ほんとだよ。』

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友人としての沙弥香を、燈子は必要としている。

徐々に距離が近づいていく燈子と侑に、沙弥香は心中穏やかではなかった。沙弥香は燈子のことを友人以上に慕い、恋していたのだ。一人思い悩む沙耶香は、学校からほど近い場所にある喫茶店で生徒会劇の相談をしていた際、そこの女性店店主である児玉都と、生徒会の副顧問である箱崎理子が深い仲であると直感したことを思い出す。沙耶香は、同性のパートナーを持つ都に燈子への思いを打ち明け、自身の気持ちを整理する。人の好意を受け止める余裕のない燈子に思いを伝えても却ってプレッシャーにしかならないことを理解している沙弥香は、自分の気持ちを伝えるよりも燈子にとって良い友達で居続ける選択をした。

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燈子には敵わない侑と沙弥香だった。

燈子が望む形で傍にいることを決めた侑と沙弥香だが、ふたりの間はぎくしゃくとした雰囲気があった。生徒会が参加する体育祭の部活対抗リレーの練習中、侑と沙弥香のバトンパスがどうしてもうまくいかない。生徒会役員の一人である堂島卓に仲の悪さをからかわれた侑は、放課後に沙弥香を誘い会話をする機会を作る。その甲斐あって少しは打ち解けることの出来た侑と沙弥香だが、話題は自然と燈子のことに集まりがちだった。
生徒会劇が成功し、他界した姉のやり残したことを叶えられた後ならば、燈子は優等生を演じる必要もなくなるのだろうか。その時が来れば、自分たちの関係に変化は表れるのだろうか。侑と沙弥香は立場こそ違えど、似た気持ちを抱えていたのだ。

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侑は、受け入れるだけのキスとは違うものを求められる。

体育祭が近づくにつれ生徒会の仕事は増え、侑と燈子がふたりきりで過ごせる時間も少なくなっていた。侑に甘え足りない燈子は、体育祭が終わったらご褒美として侑からキスをして欲しいと約束をせがむ。
懸念事項であった部活対抗リレーでの侑と沙弥香のバトンパスも成功し、体育祭は無事に閉幕する。その直後、燈子は約束のご褒美をもらうために侑を体育倉庫へ連れ込み、キスをねだった。
しかし、侑は燈子にキスすることができなかった。この一線を踏み越えてはならないという漠然とした予感があったからだ。約束を破るのかと燈子は抗議するが、侑はそれを聞き入れることが出来ない。結果、いつもと同じように押し切られる形で燈子の好きなようにさせるのだった。
燈子と触れ合うことは心地よい。しかしそれは思いを伴わない体の感覚だけのことで、決して特別なことではないのだと、侑は自分に言い聞かせていた。

4巻『わがままだ。あなたもわたしも。』

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侑の変化を、菜月は指摘する。

こよみが仕上げてきた生徒会劇の脚本草案を見た燈子は、夏休みに学校の合宿棟を使い劇の練習を行うことを提案する。
夏休みに入り、侑は別の高校へ進学していた中学時代の友人・園村菜月と合宿のための買い物へ出かける。お互いの近況を語り合う中で、菜月は中学時代には見る事の出来なかった侑の姿を新鮮に眺めていた。共に部活動に勤しむ中で、菜月は侑が一度も涙した姿を見たことがなかった。いつでも余裕を失うことがなかった侑が、今は生徒会活動で燈子に振り回されることを愚痴るようになっており、それが少し嬉しいのだと菜月は口にする。ひたむきな姿勢の割にどこか淡白だった侑に訪れた変化は、菜月がソフトボールで侑に与えたかったものだったからだ。

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姉になることを目指していた燈子には思いもよらない言葉だった。

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