未来のミライ(Mirai)のネタバレ解説まとめ

『未来のミライ』とは、スタジオ地図製作により2018年7月に公開された長編アニメーション映画である。監督は「時をかける少女」や「サマーウォーズ」を制作した細田守。
横浜の片隅で両親と暮らす「くんちゃん」は、「お兄ちゃん」になったばかり。妹が生まれてから両親は自分の要求を叶えてくれなくなり、ついにくんちゃんは「赤ちゃん返り」をしてしまう。「赤ちゃん好きくない!」を連発して駄々をこねるくんちゃんは、家の中庭から不思議な時間旅行をすることになる。そこで出会ったのは未来の妹だった。

『未来のミライ』の概要

『未来のミライ』とは、前作「バケモノの子」に続く細田守の長編オリジナルアニメーション第5作目の映画である。キャッチコピーは「ボクは未来に出会った。」。4歳の男児「くんちゃん」と、0歳児の妹である「ミライちゃん」をめぐる家族の日常がテーマとなっており、くんちゃんの「赤ちゃんが来たせいで自分の思い通りにならない」というモヤモヤした気持ちと、それからくる子供ならではの行動が如実に表現されている。

ある日突然「お兄ちゃん」になったくんちゃんは、両親の関心を自分から奪った「妹」のミライちゃんが好きではない。両親の愛情を自分に取り戻そうとして、わざと妹に意地悪してみたり、駄々をこねて両親を困らせてみたりするが、手のかかる妹にはどうしても勝つことが出来ない。癇癪を起して「家出する!」と中庭に飛び出したくんちゃんは、不思議な世界に迷い込み、そこで迷子になってしまう。

『未来のミライ』は日本興行で賛否両論を巻き起こした作品で、一部の細田作品ファンからは「つまらない」という声も上がった。なぜなら本作は「4歳の男の子の日常」をリアルに、かつ断片的に描いた作品であり、手に汗握る冒険活劇のようなスリルがないためだ。「時間を旅する」という非現実的な要素も盛り込まれているのだが、時間を超えた先で出会うのはあくまでも「家族」だけのため、どうしても飽きを感じてしまうようだ。
どうしてここまでリアルに「子ども」を描けているかというと、主人公である「くんちゃん」のモデルが細田監督の息子であるからだ。前作「バケモノの子」では、監督に息子が生まれたことにより「子どもはどうやってこの世界で成長していくのか」と考えたことが物語の基盤となった。しかし今回の『未来のミライ』では、第二子である女の子が生まれたことにより、兄となった監督の息子が「妹に嫉妬を覚えた」ことが着想のきっかけとなった。また「くんちゃんが未来のミライちゃんに出会う」というストーリー上で重要となる出来事は、監督の息子が「未来の妹に会う夢をみた」と言ったことから構成されたのだという。このようにリアルな子どもの声を聞きながら作られた本作は、実際に子どもがいる親たちから見ると共感できるシーンがいくつもあり、「子育てあるある」を感じられる作品となっている。

『未来のミライ』のあらすじ・ストーリー

とある寒い日、くんちゃんは「お母さん、まだかなぁ」と、子供部屋の窓から道路を行き交う車を見ていた。赤ちゃんを産むためにしばらく入院していたお母さんが、今日やっと帰ってくるのだ。だが、大好きなお母さんを乗せたお父さんの車はなかなか現れない。遠方から来ていた祖母が、おもちゃで散らかった子供部屋を片付けている間、くんちゃんは飼い犬のゆっこと樫の木がある中庭でボール遊びをしていた。そうしているうちに、女の赤ちゃんを抱きかかえたお母さんがお父さんにエスコートされて帰ってきた。赤ちゃんを見たくんちゃんは、「不思議」と目を輝かせていつまでも小さな妹を見ていた。
祖母が帰った次の朝から、大好きなお母さんは小さな妹のお世話にかかりっきりになる。朝ごはんを食べながら「お母さん」を連呼してお母さんの関心が自分に向くようにアピールするくんちゃんだが、夜の授乳でほとんど眠れていないお母さんは、とても疲れて居眠りをしている。その間お父さんが慣れない家事をしながら、くんちゃんのアピールに「はいはい」と必死に応えてくれているが、くんちゃんはどうしてもお母さんがいいのだ。そんなお母さんに少し不満を覚えるくんちゃんだったが、初めて妹が来た日にお母さんと「妹と仲良くする」と約束していた。だからくんちゃんなりに、絵本を見せてあげたり、大好きな電車のおもちゃで遊んであげたりした。だが、お母さんから見るとそれは「赤ちゃんを疲れさせるだけの行為」でしかなかったのだ。そしてくんちゃんは、お母さんが自分を見てくれないのは、赤ちゃんがいるからだ、と拗ねてしまい、お昼寝中の赤ちゃんの顔を引っ張ってみたり、つついてみたりして泣かせてしまった。赤ちゃんの泣き声に飛んできたお母さんは、「仲良くするって約束したじゃない!」とくんちゃんを叱りつける。くんちゃんは「仲良くできないの!」と新幹線のおもちゃで赤ちゃんを叩く真似をした。それに驚いた赤ちゃんは大泣きし、お母さんはくんちゃんを押しのけて赤ちゃんを抱きあげる。自分より赤ちゃんを優先したお母さんにショックを受けたくんちゃんは、その場に転がって大泣きする。家族の大騒ぎにゆっこは遠吠えをし、お父さんはその場で固まってしまった。呆然としている夫にお母さんは赤ちゃんを抱かせ、くんちゃんに「お兄ちゃんでしょ!」と諭すが、くんちゃんは「お兄ちゃんじゃない!」と泣くのを止めない。それどころか「お母さんもお母さんじゃない!おにばば!」と中庭に飛び出していった。

お母さんとお父さんに相手にされず、拗ねてしまったくんちゃん。

くんちゃんが泣きながら中庭に飛び出すと、笑い声と共に「無様ですなぁ」と聞きなれない声がした。そこはいつもの中庭ではなく、石造りの廃墟のような場所で、一人の大人の男がいた。男は自分をこの家の王子だといい、くんちゃんが来る前はお父さんとお母さんにとても大事にされていたのだという。ところがくんちゃんが来てから自分は愛情を失い、どんどん隅に追いやられ、食事も好きな味から特売のものに変わったと憤っている。男の話をほとんど理解できないくんちゃんは、ぼんやりと彼の話を聞いていたが、足元にゆっこのボールが転がっていることに気づく。いつものようにくんちゃんがボールを拾って投げると、男はそれを追いかけてくんちゃんへ持ってくる。男の正体に気づいたくんちゃんは、にんまりと笑って男のコートの中に潜り込み、彼のお尻から生えていたしっぽを引き抜く。そして、そのしっぽを自分のお尻につけたくんちゃんは「犬」になった。男の正体は「ゆっこ」だったのだ。犬になって楽しくなって走り出したくんちゃんは、中庭を飛び出して家中を走り回る。お父さんもお母さんもそれがくんちゃんが変身した姿だとは気づかずに「ゆっこはどうしたんだ?」と呆れ顔だ。ただ、赤ちゃんだけは、それがくんちゃんだと分かったかのように声を上げた。中庭の樫の木がほんのりと青く光り、くんちゃんとゆっこはもとの姿に戻った。しっぽを痛そうに舐めるゆっこのそばで、くんちゃんはお父さんに「ゆっこがもっとおいしいご飯が食べたい」と言っていたよと伝える。するとお父さんは、くんちゃんの要望通りにおいしいご飯をゆっこに買ってきてくれたのだった。

不思議な中庭で出会った人間の姿をした飼い犬のゆっこと、くんちゃん。ミライちゃんに嫉妬するくんちゃんを、ゆっこはいい気味だと笑っている。

次の朝、くんちゃんが起きると壁に「未来」の文字が貼りだされていた。赤ちゃんの名前が決まったのだ。お父さんとお母さんは、ミライちゃんのためにお雛様を飾り、じいじとばあばが桃の節句をお祝いしにやってきた。夜の食事の際、大人たちはお雛様の言い伝えについて話していた。「お雛様をしまうのが遅れると、婚期が遅れる」というものだ。ただの言い伝えだと笑う大人たちのそばで、ミライちゃんは黙ってその話を聞いていた。翌日から、お母さんは仕事に復帰した。家事はフリー建築家で家にいるお父さんが行う。お父さんはお母さんが出発した後、くんちゃんを保育園に送っていく。産休の間お母さんから特訓されていたお父さんだが、初めての一人での家事にあっと言う間に時間が過ぎてしまい、もうくんちゃんを迎えに行く時間になってしまった。ミライちゃんを抱っこして、「お父さん嫌!」というくんちゃんを引っ張りながら帰宅したお父さんは、なんとかミライちゃんを寝かしつける。そしてやっと、自分の仕事に取り掛かることができた。だが、次はくんちゃんの「遊んで」攻撃だ。しかし、仕事をはじめたお父さんは、くんちゃんの相手をしてくれない。腹いせにミライちゃんの顔にくじらクッキーを張り付けたくんちゃんは、してやったり顔で中庭に出た。
中庭は、熱帯植物園のような場所につながっており、小道に先ほどくんちゃんがイタズラに使ったクッキーが点々と落ちていた。クッキーを拾いながら進んでいくと、セーラー服を着たお姉さんが仁王立ちしており、「お兄ちゃん、わたしの顔で遊ばないでよ!」と声をかけてきた。少女の手のひらにはミライちゃんと同じ痣があり、くんちゃんはそのお姉さんが「未来のミライちゃん」なのだと分かった。未来のミライちゃんは婚期が遅れることを懸念して、「お雛様をしまって欲しい」とお父さんに伝えてもらうためにくんちゃんの前に現れたのだ。未来のミライちゃんの指令により、くんちゃんはお父さんにお雛様の片づけをお願いしに行くが、お父さんは生返事をするだけでやっぱり相手にしてくれない。その様子にしびれを切らした未来のミライちゃんは、自分で片づけることを決心し、人間化したゆっこも駆り出してお雛様を片づけ始めた。だがお父さんはちょっとしたことですぐ顔を上げるため、未来のミライちゃんもゆっこも隠れながら作業をしなければならない。作業中、お父さんの気を引く係だったくんちゃんは、2人がお父さんに見つかりそうになったら気を引き、3人は何とかお雛様をしまうことに成功した。未来のミライちゃんは、くんちゃんにお礼を言い、植物園の奥に帰っていった。

「“お雛様をしまって”とお父さんに伝えて」とくんちゃんに指令を出す、未来のミライちゃん。

そんな事があった後の日、くんちゃんはお母さんとばあばが来るのを、アルバムを見ながら待っていた。アルバムには、ひいばあばから誕生日プレゼントに貰ったという猫のぬいぐるみを抱えた子どもの頃のお母さんの写真が貼られていて、それを見たくんちゃんは自分もプレゼントが欲しくなってしまう。電車と同じ色の自転車が欲しいとお願いするくんちゃんに、お母さんは誕生日でもないのに駄目だとその場を離れ、おもちゃで散らかった部屋を片付けるように言う。だがくんちゃんはどうしても自転車が欲しいと駄々をこね始める。聞き分けのないくんちゃんをお母さんは、片付けないならおもちゃを捨てる、もう何も買ってあげないからと叱りつける。その言葉に泣き出したくんちゃんは、またミライちゃんを電車のおもちゃで叩こうとし、もっとお母さんに叱られてしまった。「お母さん好きくない!」と大泣きしながら庭に飛び出したくんちゃんは、また不思議な世界に導かれる。
そこは雨が降る、知らない町だった。あたりを見渡すと、電信柱の裏でうずくまって泣いている女の子がいた。くんちゃんは女の子に「何が悲しいの?よしよし、泣かないで。」と声をかけ、やさしく頭をなでてあげる。その言葉に顔を上げた女の子は、ついさっきアルバムで見た「子どもの頃のお母さん」だった。小さなお母さんは、どうしても猫を飼いたいが、おばあちゃんがアレルギーのため飼わせてもらえないのだという。だから何度も手紙を書いてお願いするのだと説明した。小さなお母さんは、小さな紙にお願いを書き、診療所に行っているおばあちゃんの靴の中に手紙をそっと入れた。そのあと誰もいない自宅へくんちゃんを招いた小さなお母さんは、弟のおもちゃ箱をひっくり返してくんちゃんと遊び始める。2人は大笑いしながら家じゅうを走り回り、物をひっくり返し、跳ね回る。その時小さなお母さんのお母さんが帰ってきてしまった。しまったという顔をした小さなお母さんは、くんちゃんを勝手口からこっそり出して「もう帰って」と扉を閉める。ほどなくして、先ほどの自分と同じように「おもちゃを全部捨てる」とお母さんに叱られて泣いている小さなお母さんの声が聞こえてきた。くんちゃんは耳をふさぎ、雨の中をどこへともなく走り出した。
いつの間にか不思議な世界から帰ってきていたくんちゃんは、晩御飯も食べずに眠ってしまっていた。眠っているくんちゃんにお母さんは優しくキスをして、ばあばと自分の子どもの頃の思い出を話していた。ばあばは、お母さんがとても手のかかる子どもで、いつも叱ってばかりだったと語る。お母さんも今日くんちゃんをまた叱ってしまったと後悔していて、こんなお母さんでいいのかと不安になると悩んでいた。ただお母さんがくんちゃんを叱るのは、くんちゃんが「少しでも幸せになってほしいから」だった。夜中に目を覚ましたくんちゃんは、眠っているお母さんの目に涙が浮かんでいるのを見た。くんちゃんはそんなお母さんの頭を「よしよし」と撫でてあげたのだった。

過去で出会った子どもの頃のお母さんと、いたずらをしながら遊ぶくんちゃん。

それから数日後、くんちゃんは補助輪付きの白い自転車に乗って、お父さんとミライちゃんと一緒に公園に遊びに来ていた。お父さんは、お母さんの靴の中に手紙を入れて自転車をおねだりするなんてうまい方法を思いつたものだ、と感心の声を上げている。到着した公園の広場では、くんちゃんより少し大きい男の子たちが補助輪を外した自転車に乗って遊んでいた。その姿を見たくんちゃんは、急に補助輪を外すと言い出す。自分だけ補助輪をつけた自転車に乗っているのが恥ずかしくなったのだ。しかし補助輪を外した自転車に上手く乗ることが出来なかった。お父さんに支えられていても何度も転んでしまうくんちゃんは、すり傷だらけになり、ついには自転車に乗るのが怖くなってしまった。そんな様子を遠くで見ていた男の子たちが、くんちゃんに乗り方を教えてあげると近寄ってきたが、その時ベンチのそばで眠っていたミライちゃんが目を覚まして泣き出してしまった。お父さんは男の子たちに教えてもらうようにくんちゃんに言い、くんちゃんを置いてミライちゃんのほうへ走り出してしまった。その場に取り残されたくんちゃんは、お父さんが自分よりミライちゃんを優先したことにまた癇癪をおこして泣き出してしまった。家に帰ってくんちゃんに叩かれながら責められていたお父さんは「何事にも最初はあるから、また乗りに行こう」となだめるが、くんちゃんはもう自転車に乗らないと泣き叫び、中庭に飛び出していった。くんちゃんがかぶったままだったヘルメットを地面に叩きつけるとそれは宙に浮かび、戦闘機パイロットがかぶるヘルメットに形を変えた。さらにそこから巨大なエンジンへと姿を変え、くんちゃんが目を開けていられないほどの強風が吹きだした。くんちゃんが悲鳴を上げて強風に耐えていると、唐突に風が止んで、目を開けたくんちゃんはまた知らない場所にいた。
そこはどこかの倉庫で、中にはバイクの整備をしている青年がいた。青年は突然現れたくんちゃんに驚く様子もなく、バイクに乗ってみるかと声をかける。だがくんちゃんは怖いという理由から全力で断った。そんなくんちゃんに青年は「何事にも最初はあるのになぁ」と背中を向けて倉庫から出て行ってしまった。知らない場所でひとりになるのも怖かったくんちゃんが青年の後ろをついていくと、彼は戦争で傷ついたという片足を引きずりながら馬の厩舎へ案内してくれた。初めて本物の馬を見て目を輝かせているくんちゃんを見た青年は、くんちゃんを馬に乗せてくれた。はじめは馬を怖がっていたくんちゃんだが、しばらく乗っているとだんだんと慣れていき、楽しそうにし始める。青年は「下ばかり向かず、遠くを見ろ」と言い、馬を走らせる速度を速めていく。馬に乗ることによってスピードに慣れたくんちゃんを、今度はバイクに乗せ、青年は「どんな乗り物だって、コツは同じだ。ひとつ乗れたらなんでも乗れるようになる。」と言ってくんちゃんを支える。くんちゃんはそんな青年を見上げて、「かっこいい」と尊敬のまなざしを向けたのだった。
そんな不思議な体験をした後、くんちゃんはもう一度自転車に乗ると決心してお父さんに公園まで付き添ってもらった。お父さんの支えを断って、くんちゃんは自転車にまたがる。何度も転びながら、遠くだけを見つめてくんちゃんは何度も立ち上がって練習した。そしてついに自転車に乗ることが出来たのだ。以前くんちゃんに自転車の乗り方を教えてくれようとしたお兄ちゃんたちに遊びに誘われ、ついに一緒に遊べたくんちゃんは、自信に満ちた目をして家に帰ってきた。両親に褒められ、鼻歌交じりにアルバムを開いたくんちゃんは、そこに乗り物の乗り方を教えてくれた青年の写真があるのを見つけた。それはくんちゃんの「ひいじいじ」の写真だった。

青年と一緒にバイクに乗るくんちゃん。

別の日、くんちゃんたちはキャンプに行くために準備をしていた。くんちゃんは、お気に入りの黄色いズボンをはいて出かけたいと駄々をこねるが、黄色いズボンは洗濯中で、青いズボンしかなかった。着替えさせてくれていたお父さんをはねのけ、黄色いズボンがいいとお母さんに駄々をこね始めるが、お母さんはミライちゃんの準備に追われており、くんちゃんの声が届かない。立ち去ったお母さんに対し、くんちゃんは「やっぱりくんちゃんより、ミライちゃんが大好きなの?」と肩を落とし、クローゼットに引きこもってしまった。くんちゃんが自分たちの気を引きたいだけだと分かっている両親は、くんちゃんを家の外で待っていた。だが、置いて行かれたと思ったくんちゃんは「家出する!」と言って、リュックの中にジュースやバナナを突っ込んで中庭に飛び出す。するとそこは知らない小さな駅だった。
駅の待合室には男子高校生が一人で座っていて、くんちゃんに「ズボンといい思い出、どっちが大事なんだよ。」と声をかけてくる。本当はズボンより家族とのお出かけが大事だと分かっているのに、自分の思い通りにならないことに意地を張ってしまっているくんちゃんは、ズボンのほうが大事だ言ってまた癇癪をおこす。するとそこに一本の電車が入って来た。男子高校生の静止を振り切ってくんちゃんは電車に飛び乗る。そこは現実世界とは少し違う東京駅だった。はじめはたくさんの電車や新幹線を見てはしゃいでいたくんちゃんだったが、大勢の人々が歩いている中で自分はひとりぼっちなのだと気付いてしまい、急に寂しくなってしまった。その時、迷子のアナウンスが流れてきて、くんちゃんは自分を呼ぶアナウンスが聞こえないかと待っていた。だがそれのどれもがくんちゃんを呼ぶアナウンスではなく、呼ばれた他の子どもたちはどんどん親と合流していった。待っても待っても両親が見つからず、くんちゃんは遺失物管理センターに自分から迷子だと名乗り出ることにした。そこにいたのは車掌の制服を着た不思議なロボットで、くんちゃんにお母さんやお父さんの名前を聞く。だがくんちゃんは、いつも「お父さん」「お母さん」としか両親を呼ばないため、2人の名前がわからない。「ほかの家族の名前をどうぞ」という問いにも答えられないでいると、ロボットはくんちゃんの迷子受付を止めた。そして、誰も迎えに来ない行き先のない子どもが行かなければならないという「ひとりぼっちの国」行きの新幹線に、くんちゃんを無理やり乗せようとする。その新幹線は怪物のような見た目で、座席は髑髏で出来ており、おどろおどろしい光を放っていた。恐怖したくんちゃんは新幹線に乗りたくないともがくが、強い力で車内に吸い込まれそうになる。力いっぱい抗って何とかホームに転がり出たくんちゃんは、遺失物管理センターのロボットに自分を証明できない子は乗らなければならないと言われ、必死に「くんちゃんはお母さんの子ども。お父さんの子ども。ゆっこにおやつをあげる係…」と自分を証明しようとする。だが、ミライちゃんのことだけは決して言おうとしない。両親の愛情を自分から奪ったミライちゃんが「好きくない」からだ。くんちゃんがぐずぐずと言いよどんていると、ミライちゃんの声がした。今度はミライちゃんがひとりぼっちの国行の新幹線に引きずり込まれそうになっていたのだ。くんちゃんは思わずミライちゃんのほうへ走り出し「乗っちゃダメーーー!」と手を伸ばす。引きずり込まれる寸前で助け出したミライちゃんを抱きしめて、くんちゃんは「ある言葉」を言う決心をする。それまでミライちゃんに嫉妬をし、彼女を家族の一員だと認めることを避けていたくんちゃんだったが、ひとりぼっちでいることがどんなに怖いことか身をもって理解したのだ。そんな怖い思いをミライちゃんにさせたくないと思ったくんちゃんは、ついに「くんちゃんはミライちゃんのお兄ちゃん!」と叫んだ。すると腕の中にいたはずのミライちゃんの姿が消え、代わりに「見つけた!」という声と共に痣のある白い手が伸びて来た。それは未来のミライちゃんの手だった。彼女は不思議な世界で迷子になったくんちゃんをずっと探してくれていたのだ。未来のミライちゃんはくんちゃんの手をしっかり握り、空へ引き上げた。

未来のミライちゃんが、不思議な東京駅で迷子になったくんちゃんを見つけた瞬間。

空中へ舞い上がった2人は、勢いよく東京駅の天井を破って夜の空を登っていく。ずっと上の空には中庭の樫の木が逆さまに生えており、くんちゃんが「両親のもとへ帰る道」はその木の中にしかないのだと未来のミライちゃんが教えてくれた。樫の木は家族の記憶の目録で、過去・現在・未来が木の葉のカードになって保管されているらしい。ミライちゃんに手を引かれて飛び込んだ木の中で、くんちゃんは「家族の記憶」を見ることになる。子どものころのお父さんが自転車の練習をしている様子、子どものころのお母さんが猫にイタズラされた燕の雛の死骸を悲しそうに抱えている様子、ゆっこがお母さん犬と別れてくんちゃんの家にもらわれてくる前の様子、ひいじいじとひいばあばが出会ったときの様子などが次々と再生された。くんちゃんと一緒にそれを見ていた未来のミライちゃんは、これらがすべて繋がって今のくんちゃんや自分があるのだと語る。そしてくんちゃんが最後に見たものは、未来の自分の家の様子だった。そこには、くんちゃんが不思議な東京駅に行く前に出会った男子高校生がいて中庭の樫の木を眺めており、未来のミライちゃんが「お兄ちゃん」と声をかけていた。男子高校生は「未来のくんちゃん」だったのだ。未来のくんちゃんが立ち去った後、くんちゃんは未来のミライちゃんに「もう、お別れなの?」と寂しそうに声をかける。未来のミライちゃんは「何言ってんの、これから、うんざりするほど一緒にいるじゃん。」と微笑み、くんちゃんを現実世界へと送り出した。

現実に戻ったくんちゃんは、洗濯機の前に着地した。するとそこには乾燥までが終わり、ふかふかに乾いたお気に入りの黄色いズボンがあった。くんちゃんはそれに着替えようとして今履いている青いズボンを下ろすが、やっぱり青いズボンのままで出かけることに決めた。中庭を抜けた先にある子ども部屋には赤ちゃんのミライちゃんがいて、くんちゃんは自分が持っていたおやつのバナナを差し出した。ミライちゃんはバナナを受け取り、少しだけ「お兄ちゃん」になったくんちゃんを見上げてにっこり笑ったのだった。

自分のおやつであるバナナを、妹へあげるお兄ちゃん。

『未来のミライ』の登場人物・キャラクター

くんちゃん

『未来のミライ』における主人公で、甘えたい盛りの4歳の男の子。本名は「太田 訓(おおた くん)」。
中庭のある一軒家でお父さん、お母さん、飼い犬のゆっこと一緒に暮らしていた。ある冬の日、妹の「ミライちゃん」が生まれた。それまでくんちゃんは両親の愛情を一心に受けていたが、突然現れた妹に両親がつきっきりになってしまう。愛情を奪われたと思ったくんちゃんは「赤ちゃん返り」をしてしまう。ミライちゃんと仲良くすることが出来ず「好きくない」を連発し、両親を困らせる。
お父さんに「妹の名前はどんなのがいいか」と聞かれたくんちゃんは、「のぞみ」や「つばめ」など新幹線の名前を答えるほど電車が大好きで、おもちゃ箱はプラレールなどでいっぱいである。

【声のキャスト】
上白石 萌歌

未来のミライちゃん

くんちゃんが不思議な中庭で出会った「未来から来たミライちゃん」。赤ちゃんのミライちゃん同様、手のひらに痣がある。くんちゃんに何かあるごとにやってきて、喧嘩をしたり、助けてくれたりする。いつもセーラー服姿で現れることから、未来のミライちゃんは中学生であると考えられる。そんな思春期真っ只中の未来のミライちゃんは「お雛様をしまうのが遅れると婚期が遅れる」という言い伝えを信じており、好きな人がいるようだ。

【声のキャスト】
黒木 華

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