ビーストウォーズ(Beast Wars)のネタバレ解説・考察まとめ

『ビーストウォーズ』は、カナダ制作のテレビアニメ。北米では1996年から1997年まで、日本では1997年から1998年まで放送された。
惑星エネルゴアを舞台にサイバトロンとデストロンによる抗争を描かれているが、終始シリアスな英語版と違い日本語版は出演した声優によるアドリブによってギャグアニメという性格が強くなっている。
ストーリーは勿論、変身フィギュアなどグッズの人気も高く、放送から20年以上経った今でも多くのファンに愛されている。

千葉繁「悪者は意味もなく笑いながら登場する」

数々のアドリブで有名となった『ビーストウォーズ』だが、千葉繁はメガトロンの初登場シーンで「悪者は意味もなく笑いながら登場する」というアドリブを披露している。

英語版の当該シーンではデビッド・ケイが至って真面目に演じており、当然ながら意味もなく笑いながら登場もしない。

開始僅か3分で本来のシリアスかつハードボイルドな雰囲気を完璧に壊してしまった、記念すべき『ビーストウォーズ』初のアドリブであり、第1期放送から20年経ってもファンから愛される事になる『ビーストウォーズ』の方向性を決定付けたある意味重要なセリフである。

千葉繁のアドリブによって生まれたセリフなのでメガトロンというより千葉繁のセリフという方が適切だが、ここから始まったキャスト達のアドリブ祭りによって岩浪美和が監督を担当するトランスフォーマーシリーズは声優達のアドリブがお約束となり、20年経った今でも作品に大きな影響を与え続けている。

また、千葉繁は現在ネット配信されている『トランスフォーマー サイバーバース』でメガトロン(当作品のメガトロンとは別人)を演じており、更にキレを増したアドリブで視聴者を笑わせてくてれいる。

ラットル「オイラの仲間」

『ビーストウォーズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

伝説となったアドリブ解禁の理由

『ビーストウォーズ』を語る上で欠かせない、キャストによるアドリブだが、元の『ビーストウォーズ』のストーリーは日本語版のような笑いなど一切ないシリアスなものであり、英語版を見たスタッフは「このストーリーのまま放送しては日本の子供達に人気が出ない」と危機感を抱く。
そして、監督を務めた岩浪美和は「脚色」という範疇を超えた脚本の大胆すぎる「改変」と、声優達の「自由すぎる」アドリブの許可を決断する事になった。

また、キャストも『ビーストウォーズ』で声優デビューした柚木涼香(当時「永椎あゆ美」)や加藤賢崇など一部の例外を除いてベテランの実力派で固めており、アドリブに関してもリハーサル中に声優同士でアドリブの打ち合わせをして作られる(この場合は声優が自分達で勝手に脚本を変えていると表現する方が正しい)など、かなり綿密に練られたものである。

当時の最先端技術のCGを使ったアニメである事に加え、演者としての力量が問われるアドリブ満載の内容である事から子供達は勿論、声優業界でも大きな話題となり、キャストが別の作品の現場に入ると「『ビーストウォーズ』見ました」と声を掛けられる事が多々あったという。

但し、子安武人だけは「コンボイは主役だから」とアドリブに制限を掛けられていたようで、他のキャストがアドリブで遊んでいる中、一人アドリブが言えず辛い思いをしていたようである。

実はバイトでキャスティングされた柚木涼香

グラビアモデル、女優という異色の経歴を経て声優となった柚木涼香だが、彼女の声優デビュー作は『ビーストウォーズ』である。(『星方天使エンジェルリンクス』は「柚木涼香」に改名して初の主演作品なのでデビュー作というのは間違い)

当時、永椎あゆ美という芸名で女優やグラビアを行っていた柚木涼香だが、当時の彼女は声優経験皆無であり、本人曰く『ビーストウォーズ』は急遽入った「バイトの仕事だった」との事である。

『ビーストウォーズ』の現場は子安武人に千葉繁という、当時から超ビッグネームのベテラン揃いで、しかも収録はアドリブばかりで、監督からアドリブに制限を掛けられていた子安武人を除いて誰も台本をまともに読まないという、普通では考えられない異様すぎる環境だった。

新人どころか当時は声優ですらなかった柚木涼香には色々な意味で過酷な現場であったが、ベテランの実力派声優に負けない見事な演技とアドリブを披露している。
あまりに過酷な現場であったためプレッシャーとストレスで円形脱毛症になるなど色々あったが、結果的に『ビーストウォーズ』の好演と彼女のアニメ向きの声が買われて声優としてブレイクする事になり、文字通り『ビーストウォーズ』は柚木涼香の人生を変えた作品である。

キャストが語るアフレコの舞台裏

伝説となっている『ビーストウォーズ』のアフレコ風景はDVD特典のメイキング映像として映像化されており、ブースで繰り広げられるキャストのアドリブ合戦をスタッフが大爆笑しながら見ているシーンが収録されている。
これだけ見ると楽しそうな現場に思えるが事実はその逆で、キャストは「何か面白い事を言わないと帰れない」「面白い事を考えるのも大変」といったプレッシャーを抱えながら収録していたとの事である。
また、当作品で声優デビューした柚木涼香に至っては、ベテラン揃いのプレッシャーに加えて面白いアドリブを考えなければならないストレスが重なって円形脱毛症になってしまった事を告白している。

また、キャストがほぼ全員売れっ子声優であるが故にスケジュールが合わず、誰かが後日別録りになった場合はアドリブにアドリブを重ねて演じなければならない、言ってしまえば先に収録出来た方が好きな事を言って遊べる「やったもん勝ち」という状況だった。
数々のアドリブで視聴者とスタッフを笑わせてくれた『ビーストウォーズ』だが、キャストからは「アドリブに関してはビーストは戦場」と言われるほど過酷な現場だったようである。

何故15話にエアラザーがいないのか

女性戦士であるはずが、大人の事情によって日本では男性に「性転換」させられてしまう事で有名なエアラザーは日本語版では12話が初登場だが、サイバトロンが自分達の船を修理して母星に帰ろうとする15話に彼女は登場しない。

仲間になったばかりのエアラザーを置き去りにして帰ろうとするのは酷いと感じるが、事実は至極単純で、日本で15話として放送された『メーク・ドラマだデストロン』は、英語版では12話であり、エアラザーが初登場した12話は英語版では15話とエピソードが入れ替えられていたため起きた矛盾である。

何故話数の入れ替えを行ったかという事だが、本来は16話~17話の2話構成だった『浮島のデスマッチ』を日本では1997年12月31日に年末スペシャルとして放送するため13話~14話に繰り上げられていた。
当然ながら、15話で初登場するエアラザーがこれまで出てもいないのにいきなり13話で登場するのはおかしいため、必然的に『ハヤブサ戦士エアラザー』を12話までに繰り上げる必要が出て来る。
そのため、日本の放送では12話から17話まで話が大きく入れ替わっており、当初の狙い通り『浮島のデスマッチ』は大晦日に1時間枠で放送出来たが、その代わり仲間になった(と日本の視聴者は思い込んでいる)はずのエアラザーを置き去りにして母星に帰ろうとするなどの矛盾が生じる事になった。(また、13話の次回予告ではダイノボットが大晦日スペシャルのみの特別な予告を行っており、VHS、DVDでは新規収録された予告に差し替えられている)

ちなみに、9話と11話も話が入れ替わっているが、この2話を入れ替えた理由は不明である。

伝説の最終回を紐解く

『ビーストウォーズ』はシリーズの第1期であり、この後も『メタルス』に『リターンズ』とシリーズが続いているが、日本で第1期の最終話が放送されたのはアメリカで『メタルス』が放送されている1998年3月だった。

第1期はコンボイがエイリアンに突撃して大破するところで終わるが、サイバトロンとデストロンの争いに決着が着く前にコンボイが「退場」するという結末は多くの視聴者を驚かせるとともに、子供達のトラウマになりかねない結末(要するにバッドエンド)に、番組に対して抗議の電話が殺到する事態となった。
もっとも、内容的にこれで最終回とは到底思えず26話のEDで各キャラクターが続きがある事を仄めかす発言をしていたため、第2期がいつ放送されるのか楽しみにする視聴者も少なからず存在していたが『ビーストウォーズ』の第2期が現在アメリカで放送しているといった情報は当時の日本には一切なかった。
第1期終了から9ヶ月後経った1998年12月に映画版として現地の『メタルス』8話をアレンジする形で上映され、ようやく『ビーストウォーズ』の続編がある事が日本でも判明した。

但し、日本で『メタルス』がテレビ放送されるのは1999年10月からであるため、日本のファンは映画の上映から10ヶ月、第1期終了から第2期放送まで1年半も待たされる事になる。

当時(1997年~1998年)はまだインターネットが普及しておらず、視聴者のほとんどがアメリカでは第2期の『メタルス』が放送中である事を知らなかった故に起きた「事件」であり、現在では海外のアニメで続編があるなどの情報は簡単に手に入るので『ビーストウォーズ』のように第1期最終話直後に結末に納得出来ない視聴者から抗議の電話が殺到するような事はまず起きない。

インターネットが身近なものではなく、海外アニメの情報も簡単には手に入らなかった20年も前の話なのでインターネットが世界中に普及した現在では起きない話ではあるが、インターネットという言葉が一般的ではなかった当時を振り返ると、時代の変化を感じさせるエピソードである。

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