BioShock Infinite(バイオショック インフィニット)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『BioShock Infinite』とは、アメリカのゲーム開発会社、Irrational Gamesが開発したPC、PlayStation3、Xbox 360専用ソフトで、「BioShock」シリーズの第3弾である。ジャンルはFPS形式のアクションRPGとなっている。基本的なゲームシステムは前作から引き継ぎながらも、舞台は一新されている。多額の借金を抱えた主人公ブッカー・デュイットは、「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という依頼を受け、空中都市「コロンビア」を訪れる。

『BioShock Infinite』の概要

『BioShock Infinite』とは、前々作「BiShock 」そして前作「BioShock 2」に続くBioShockシリーズの第3弾。アメリカ・日本で2013年にPlayStation3版とXbox 360版が発売された。PC用ゲームダウンロード販売プラットフォームSteamでもダウンロード販売が行われている。さらに、「BiShock 」HD版、「BioShock 2」HD版、「BioShock Infinite」をひとつにまとめた「BioShock Collection」がPlayStation4で発売されている。「BioShock 2」にあったマルチプレイモードは削除されているが、戦闘に特化した「クラッシュインクラウド」、前作の舞台となった海底都市「ラプチャー」とのつながりを示す「ベリアル・アット・シーEpisode1・2」という3本のDLCがあり、本編と合わせると全体のボリュームは非常に大きい。

本作のゲームシステムは、前作の持つ「RPG要素を持つFPS」という基本的なゲームシステムを引き継ぎながらも、世界観とキャラクターを一新した、まったく印象の異なるゲームとなっている。そのもっとも大きな違いが、前作の舞台が海底に造られた巨大都市「ラプチャー」であったのに対し、本作の舞台は超技術で空中に建造された空中都市「コロンビア」となっている点だ。重苦しい閉鎖空間がずっと続いていた前作とはまったく逆の、開放感あふれるコロンビアの情景は、多くのプレイヤーを驚かせた。さらに、ラプチャーはゲーム開始時点では崩壊しており、狂人と化したかつての住人たちが襲ってくるという場所だったが、コロンビアにはゲーム開始時点でもたくさんの人々が(少なくとも表面上は)平和に暮らしており、敵の多くも人間である。一見平和で栄華を極めているかに見えるこのコロンビアに潜む闇の部分こそが、本作の持つ恐ろしさであり魅力ともなっている。

プレイヤーキャラクターに関しても大きな違いがある。「BioShock」の主人公ジャック、「BioShock 2」の主人公実験体デルタは、ともにうめき声や叫び声以外の言葉をゲーム中には一切喋らなかったが、本作の主人公である私立探偵ブッカー・デュイットは随所で喋る。前作までにはいなかったヒロインポジションのキャラクターであるエリザベスとの掛け合いも、本作の大きな魅力だ。エリザベスはヒロインであるというだけでなく、優れたパートナーとして、戦闘中にアイテムを見つけるなどのサポートをしてくれる。

本作には、資本家と労働者の対立、人種差別などをはじめとするアメリカの抱えている社会問題が大きく反映されており、表面上は理想社会のように見えるコロンビアも、ストーリーが進行するに従ってその暗部が見えてくる。本作のストーリーやエンディングはかなり複雑で、たくさんのプレイヤーが考察を重ねている。本作は随所に伏線が張られており、プレイヤーからは「伏線でゲームができている」とまで言われた巧妙なミスリードやトリックが大きな魅力となっている。事実、ゲーム本編を周回したり音声記録を集めたりすることであちこちの伏線や謎の答えが見つかる仕組みになっており、1週目が終わったらすぐに2週目をプレイしたくなるような優れたストーリー構成となっている。

1912年、多額の借金を抱えた私立探偵ブッカー・デュイットのもとに、ある依頼が舞い込んできた。「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」というその依頼を受けたブッカーは、海の上にぽつんと建っている灯台から、驚くべき超技術で空中に浮かぶ都市「コロンビア」を訪れる。一見平和だが、どこか不穏な空気を見せるコロンビアを探索していたブッカーに、コロンビアの支配者であるカムストックが妨害を仕掛けてきた。ブッカーを「偽りの羊飼い」と呼ぶカムストックの差し向ける警察組織の追手と戦いつつ、ブッカーは依頼にある娘・エリザベスが幽閉されているという塔の場所を突き止める。

『BioShock Infinite』のあらすじ・ストーリー

今作の舞台、空中都市コロンビアへつながる灯台へ向かうブッカー。

1912年、メーン州沿岸。激しい雨の降る海の上を、3人の人物が乗った小さなボートが進んでいた。どこかおかしな会話を交わす黄色い雨合羽を来た二人の男女、そしてもうひとりは私立探偵ブッカー・デュイット。多額の借金を抱えていたブッカーは、「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という依頼を受け、指定された場所である灯台へと向かっていた。しかし、ブッカーはなぜか依頼主については一切言及しない。去っていく男女を見送りながら、ブッカーは灯台の最上部を目指す。灯台の最上部にある鐘を、二人組から受け取っていたメモの手順で鳴らすと、最上部のドアが開いた。中にある椅子に座ると、まばゆい光とともに秒読みが開始される。慌てるブッカーだが、手足は椅子に拘束されて身動きが取れない。下を見ると、ロケットのような激しい炎が吹き出している。

アナウンスともに、ブッカーの座った灯台の最上部が上昇を始めた。激しい振動とともに、機械的なアナウンスが続く。「5000フィート……1万フィート……15000フィート……」高度がどんどん上がっていく。窓の外を見れば、すでに高度は雲の上を過ぎ去っている。そして「ハレルヤ」のアナウンスと同時に、上昇が止まった。

ブッカーがたどり着いたのは、はるか上空の存在した空中都市「コロンビア」だった。

本作のヒロイン・エリザベス。

コロンビアにたどり着いたブッカーは、冒頭の二人組から渡された写真によって、依頼の対象である少女「エリザベス」が、コロンビアの指導者であるザッカリー・カムストックによって天使の形をした塔「モニュメント・タワー」に幽閉されていることを確認する。タワーのある区画「モニュメント・アイランド」へ向かう途中、ブッカーは怪しげな二人組の男女・ルーテス兄妹と出会う。コイントスで「表か?裏か?」と迫るルーテス兄妹。ブッカーは裏を宣言するが、コインを投げると、出たのは表。その結果を確認した兄妹は、さっさとその場を立ち去ってしまう。彼らが持っていたチェックボードには、122回表が出たという記録があった。さらに、ブッカーは立ち寄った抽選会場で、そこの司会を行っていたコロンビアの産業を担う大会社「フィンク・インダストリー」の社長にしてカムストックとも通じているジェレミア・フィンクに、手の甲にある「AD」の焼き印を見られ、侵入者であることを見抜かれてしまう。コロンビアを支配しているカムストックは、なぜかブッカーの特徴である、かつて彼が娘を借金のカタに売ってしまったことへの贖罪のために施した娘のイニシャルである「AD」の焼印のことを知っていた。そして、フィンクに命じて警戒網を張っていたのだ。エリザベス救出を妨害するべく、カムストックが追手として差し向けられたコロンビアの警察組織「ファウンダーズ」を退けつつ、ブッカーはモニュメント・アイランドへ向かう。

モニュメント・アイランドに到達したブッカーは、その中心部に建つ塔、「モニュメント・タワー」にて、幽閉されていた少女・エリザベスを発見する。エリザベスは幼少期からモニュメント・アイランドに幽閉されており、一度も外の世界を見たことがなかった。さらに、彼女には平行世界への入り口である次元の裂け目「ティア」を開くという能力があった。突然現れたブッカーに困惑しながらも、エリザベスは彼に付いていく。モニュメント・タワーを脱出しようとする二人だが、そこで巨大な影が襲来する。エリザベスの監視役である、巨大な怪鳥型のサイボーグ「ソングバード」だ。ソングバードの攻撃を躱しながら、上へ上へと逃げていく二人だったが、空中に張り巡らされた移動用のレールであるスカイラインに掴まりモニュメント・タワーからの脱出を図る。しかし、二人はソングバードの攻撃を受け、ブッカーは海中に落下。それを追うソングバードだったが、水圧に耐えきれずに引き上げていった。

バトルシップ・ベイ。たくさんの人々が日光浴を楽しんでいるが、その会話の端々には不穏な雰囲気がある。

ソングバードの襲撃を受けた二人が落下したのは、人工の砂浜である「バトルシップ・ベイ」だった。はじめて見る外の世界にはしゃぐエリザベス。そんなエリザベスにブッカーは「君をパリに連れて行ってやろう」と嘘をつき、コロンビア脱出のため、飛行船「ファーストレディ号」のところにまで同行させる。二人はファーストレディ号のところに続くゴンドラの駅にて、ファウンダーズによる待ち伏せを受けるものの、かろうじて切り抜ける。そして、途中にあった施設「ソルジャーズ・フィールド」で、かつてブッカーと共に第7騎兵連隊で行ったインディアンの民族浄化「ウーンデッド・ニーの虐殺」に参加した過去を持つ古参兵スレートとの戦いをくぐり抜ける。ブッカーがかつてインディアンの虐殺を行っていたことに動揺するエリザベスだったが、二人はなんとかファーストレディ号にたどり着く。しかし、ブッカーが設定した航路がパリではなく、ニューヨークだったことでブッカーの嘘に気づいたエリザベスは、レンチでブッカーを昏倒させてどこかへ去ってしまう。

意識を取り戻したブッカーを救助したのは、カムストックの反抗勢力である「ヴォックス・ポピュライ」のリーダー、ディジー・フィッツロイだった。フィッツロイはブッカーに、脱出のための飛行船を用意する代わりに、組織のために武器を用意するという取引を持ちかけ、ブッカーを工場地帯「フィンクトン・ドック」へ放り出す。なんとかエリザベスと合流したブッカーは、「ジール・プラザ」にいるというガンスミス、チェン・リンを訪ねる。しかしチェン・リンはおらず、二人は彼の妻から、チェン・リンはフィッツロイとの内通が露見し、ファウンダーズによって捕らえられたことを知る。

チェン・リンはすでに殺されていた。しかし、そこには「チェン・リンが捕らえられていない世界」へとつながるティアがあった。

捕らえられたチェン・リンを救出すべく、彼がいるというクラブ「グッドタイム・クラブ」へ向かうブッカーとエリザベス。しかし、チェン・リンはすでに激しい拷問によって息絶えていた。そこに突然ルーテス兄妹が現れる。兄妹の「ひとつのコインを、表と裏から……」という助言を受けたエリザベスは、そこにあった平行世界への入り口である次元の裂け目「ティア」を開けた。ティアの向こうにあったのは、チェン・リンが死んでいない「別世界のコロンビア」だった。ティアの向こうはグッドタイム・クラブだったが、二人は元の世界で倒してきた兵士たちが、自分が生きている記憶と死んだ記憶が同時に存在していることでもがいているのを目撃する。さらに、二人はもとの世界で見たチェン・リンの拷問の映像が、兵士たちがチェン・リンを釈放するよう指示を受けたという記録に変わっていることを知る。彼は、こちらの世界では一度は捕まり武器を作れないように工具を没収されたものの、妻のコネのおかげで釈放されていた。

二人は生きているチェン・リンとその妻に出会う。この世界では、彼らは逆にカムストックを崇拝していた。チェン・リンもまたもとの世界の記憶が混在しているらしく、混乱していた。ブッカーたちはチェン・リンの妻から、彼は工具を警察に押収されており、その工具は警察の押収品倉庫にあることを教えてもらう。チェン・リンの工具を取り戻し、彼に正気を取り戻して武器を作ってもらうために、二人は「シャンティ・タウン」の押収品倉庫へと向かった。押収品倉庫で大量の武器とともにチェン・リンの工具を見つける二人だが、工具は巨大すぎてとても運び出せそうにない。しかし、そこにあったティアを開いてみると、その向こうは「チェン・リンの工具がない押収品倉庫」=「チェンリンの工具が奪われていないコロンビア」につながっていた。前と同じようにティアの中に入る二人。その先にあったコロンビアは、ヴォックス・ポピュライの反抗作戦が成功している世界だった。さらにそこでは、ブッカーはヴォックス・ポピュライに協力して戦死しており、英雄として祭り上げられていた。これまで見てきた兵士たちやチェン・リンと同じように、ブッカーにもふたつの記憶が混在している。混乱しながらも、二人はガンスミスの店に急ぐ。

そこかしこに見られる、英雄として戦死したブッカーを称えるポスター。今のブッカーには、自分が戦死したという記憶が混在していた。

反乱成功に沸き立つ群衆をかき分けて、ガンスミスの店に戻る二人。しかし、チェン・リンとその妻は、ファウンダーズとヴォックス・ポピュライの抗争に巻き込まれて殺されていた。武器を作ってもらうことができなくなり、さらにこの世界では死んでいることになっているため、フィッツロイとの契約を履行することができなくなったブッカーは、やむなくファーストレディ号に強引に乗り込むことにする。ファーストレディ号のある工場に到着した二人は、フィッツロイがフィンクを追い詰めているのを目撃する。フィッツロイは革命の名のもとにフィンクを射殺。さらにそこにいた富裕層の少年をも敵として射殺しようとする。それを止めようと、エリザベスは通気口からフィッツロイの背後に向かい、彼女を刺殺してしまう。

周囲の敵を排除し、ファーストレディ号に乗り込む二人。しかし、同乗していたカムストックの信者のシスターが、発進を阻止するべく自分ごと火を放ち、ファーストレディ号は炎上してしまう。浮力を失ったファーストレディ号は、「エンポリア・アーケード」に不時着する。そこは、カムストックの居城である「カムストック・ハウス」につながるエリアだった。飛行船の墜落現場から脱出しようとする二人のもとに、再びルーテス兄妹が現れる。兄妹はブッカーに1枚のカードを渡す。そのカードは、ソングバードをコントロールための音声コードを示すものだった。

カムストック・ハウスに向かう二人。エレベーターに乗ったところで再びソングバードが現れるが、なんとかやり過ごす。二人はカムストック・ハウスへの門を開けようとするが、門を開けるにはカムストック婦人の指紋が必要となる。そこで、エリザベスはカムストック婦人の墓を暴いて婦人の指紋を手に入れるべく、彼女の遺体が安置されている「メモリアル・ガーデン」に向かう。都合3回のカムストック婦人の亡霊との戦いを経て、カムストックハウスに向かう。

カムストック・ハウスに続く橋を渡ろうとした途端、周囲は雪景色に。何が起こったのだろうか。

カムストック・ハウスに続く橋をかけようとした途端、ソングバードが突入してくる。絶体絶命の危機に陥るブッカー。そこでエリザベスは、とうとうブッカーの命と引き換えに自らカムストックのもとに行くことを決断する。すぐさまエリザベスの後を追うブッカー。カムストック・ハウスに続く橋を走るうち、周囲には7月なのに雪が降り始めていた。訝りながらもカムストック・ハウス内を探索するブッカー。各所に残された音声記録から、ブッカーはエリザベスが連れ去られてから6ヶ月もの時間が飛んでいることを知る。ブッカーはカムストック・ハウスの中で、老女となったエリザベスの幻影と遭遇する。老女エリザベスは、ブッカーにカムストックによって火の海となっているニューヨークの幻像を見せる。これが、「カムストックを止められなかった場合の世界」なのだ。やがて拷問を受けていたエリザベスを救出したブッカーは、カムストックと対決するべく、彼の乗る飛行船「預言者の手」へ向かう。

「預言者の手」の中で、ついにふたりはカムストックと対峙する。カムストックはエリザベスを「私の娘」と呼び、優しげにその労をねぎらう言葉をかける。しかし、カムストックへの怒りを抑えられないブッカーが、その場で彼を殺害してしまう。「預言者の手」のコントロールを奪うべく、指揮デッキに向かう二人だが、そこへヴォックス・ポピュライの飛行船の群れが猛攻を仕掛けてくる。音声コードによってソングバードを操りながら、二人は指揮デッキで最後の戦いに臨む。

ヴォックス・ポピュライの飛行船団を退けた二人は船首で合流。エリザベスは音声コードでソングバードを操り、自身が幽閉されていた建物であり、自身の本来の力である平行世界や時空を自由に行き来する能力を制限するための装置「サイフォン」でもあったモニュメント・タワーを破壊させる。モニュメント・タワーが崩落していく中で、エリザベスはすべての制限を解かれ、本来の力を取り戻す。

星の扉。これらの星々一つひとつが、無数の可能性の扉なのだ。

ブッカーとエリザベスは、満点の星が輝く空の下にいた。そこは海の上で、目の前には巨大な灯台がある。灯台の扉を開き、中に進んでいくブッカー。その目の前に広がっていたのは、海底に建造された巨大都市「ラプチャー」だった。そこにあった潜水球に乗り込み、灯台の扉を開きながら、ブッカーはエリザベスに導かれて進んでいく。その中で、ブッカーは自分と同じように歩いているブッカーとエリザベスを目撃する。エリザベスが言うには、これらの灯台や星々は、すべて並行世界への扉だという。そして、最終的にブッカーが導かれたのは、自分がかつて行った虐殺の罪を洗い流すために、全身を水に浸ける洗礼である「浸礼」を受けた湖だった。

ここでブッカーの取る道はふたつに分かれていた。実は、カムストックの正体はここで洗礼を受けたブッカーだったのだ。洗礼を受けたブッカーは、ザッカリー・カムストックと名前を変えた。カムストックは、ルーテスらと出会い、彼らが造ったティアを人工的に発生させる装置「ルーテス装置」によって未来を覗き見ることで、数々の超技術を手にする。そして、最終的に空中都市「コロンビア」を建造するに至ったのだ。しかし、カムストックは装置の影響で急激に老化していたことから自分の思想を継ぐ後継者を求めていたが、同じく装置の影響で無精子症に陥り、自分の子供が作れなくなっていた。そこで、ティアを開くことで洗礼を受けなかった自分自身、つまりブッカー・デュイットからその娘であるアンナ・デュイットを買い取り、エリザベスとして育てたのだ。つまり、エリザベスはブッカーの実の娘だったのだ。

ふたたび自分の人生の大きな分岐点に立たされるブッカー。ブッカーは洗礼を拒否し、そばにあった小屋の扉を開ける。そこは、かつての自分の部屋につながっていた。そこにはロバート・ルーテスがおり、「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」と言う。娘=アンナ・デュイット=エリザベスをルーテスに渡したブッカーが部屋の扉を開けると、そこは洋上で、あの灯台へと向かうボートの上だった。一緒に乗っているエリザベスとともに灯台の扉を開けると、そこは今まさにカムストックがティアの向こうにアンナを連れ去ろうとしている場面だった。一度はアンナを手放したものの、思わずカムストックに掴みかかるブッカー。しかし、アンナは閉じていくティアの向こうに連れ去られてしまった。その際、右手の小指が閉じるティアに切断されてしまう。これによってふたつの世界にまたがって存在することになったエリザベスは、ティアを開く能力を身に着けたのだ。

カムストックが自分自身であることを知ったブッカーは、平行世界に存在するエリザベス「たち」の手によって湖に沈められる。

そして、ブッカーはルーテス兄妹によって「ブッカーが洗礼を受けなかったため、カムストックにならなかった世界」から連れてこられたのだ。ルーテス兄妹もまた並行世界の同一人物であり、彼らが造った「ルーテス装置」をカムストックが悪用することを恐れ、その行動を妨害しようとしたが、カムストックの命を受けたフィンクによって装置ごと爆破され殺害されていた。しかし、二人はこのことによってあらゆる平行世界に同時に存在するようになったのだ。ゲーム冒頭でブッカーを灯台に連れてきた黄色い雨合羽の二人組はこのルーテス兄妹で、二人はカムストックを止めるために平行世界からブッカーを連れてきたのだった。ゲーム冒頭のブッカーが受けた「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という依頼についてブッカーが言及しなかったのは、実際にはその依頼は平行世界から連れてこられたブッカーが作り出した記憶であり、依頼主は最初から存在しなかったのだ。

しかし、ブッカーに協力してカムストックを止めようというルーテス兄妹の試みはすでに122回失敗していた。冒頭の抽選会場での、122回表が出たというコイントスの記録はそれを示していた。つまり、彼らの試みはどんなルートをたどっても結局失敗していたのだ。そして最終的にブッカーは、自身がカムストックとなる可能性自体をなくすために、自身の分岐点となる洗礼を行った湖で、そこに現れた平行世界に存在するエリザベス「たち」によって溺死させられることを選ぶ。

「あなたは、ブッカー・デュイット」「あなたは、ザッカリー・カムストック」エリザベスたちはそう言い、ブッカーを抑え込む。「俺は……その両方だ」と答えたブッカーは、エリザベスたちによって水中に沈められた。

スタッフロールの後、画面はブッカーの探偵事務所となる。扉の向こうからは赤ん坊の鳴き声が聞こえる。「アンナ……?」ブッカーは扉を開けるが、部屋の中のベビーベッドの中を確認する前に、画面は暗転する。

『BioShock Infinite』の登場人物・キャラクター

ブッカー・デュイット(Booker DeWitt)

英語版声優:トロイ・ベイカー / 日本語版声優:藤原啓治

本作の主人公。1874年4月29日生まれで、ゲーム本編の1912年時点で38歳。右手の甲に「AD」の焼印がある。妻を出産時に亡くしたことで酒とギャンブルに溺れており、多額の借金を抱えている。そして「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という依頼を受け、空中都市コロンビアへと赴く。 過去にアメリカ陸軍第7騎兵連隊に所属しており、退役後はピンカートン探偵社に在籍していた。エリザベスを助けるために奮闘するも、その心の中にはかつて第7騎兵連隊で行ったインディアンの民族浄化「ウーンデッド・ニーの虐殺」にて多数のインディアンの頭皮を剥がしてきた残虐性が潜んでいる。

自身が行ってきた虐殺の罪を洗い流そうと洗礼を受けようとするがそれを拒否、酒とギャンブルに耽溺する日々を送る。そして1892年、18歳のときに「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という申し出を受け、借金と引き換えに娘であるアンナ・デュイットを手放してしまう。その贖罪のために、右手の甲に娘のイニシャルである「AD」の焼印を捺している。そして、ゲーム開始時点である1912年まで失意の日々を過ごしていた。

その正体は、コロンビアの指導者であるザッカリー・カムストックと同一人物であり、「洗礼を受けず、カムストックとならなかった」のがブッカー・デュイットである。ゲーム本編の世界は「ブッカーが洗礼を受けてカムストックとなり、コロンビアを作り出した世界」であり、主人公のブッカーは「ブッカーが洗礼を受けず、カムストックとならなかった」世界から、ルーテス兄妹によって連れてこられた。そのため、ふたりのブッカーがひとつの世界に存在する状態となっている。冒頭の「娘を連れてくれば借金は帳消しだ」という依頼は、実はこの「ふたりのブッカーがひとつの世界に存在する状態」によって意識が混濁したブッカーが新しく作り上げた記憶であり、実際には「コロンビアからエリザベスを救い出す」というのが本当の目的だった。

エリザベス(Elizabeth)

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@a2uny4n

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