サスペリア(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『サスペリア』とは、1977年に制作されたイタリア映画。イタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェント監督の代表作。日本公開当時、音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)の導入と、 「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズが話題となり大ヒットを記録した。ドイツのバレエ名門校に入学したアメリカ人の娘スージー。だが彼女の周りに奇怪な現象や殺人が次々と起こる。やがて彼女は学校に魔女が棲んでいる事実を突き止めていく。

『サスペリア』の概要

『サスペリア』とは、1977年に制作されたイタリア映画。『歓びの毒牙(1970年)』で監督デビュー以来、一貫してイタリアン・ホラーを作り続ける巨匠ダリオ・アルジェントの監督6作目で、原色に近い派手な色彩を駆使した映像で彼の代表作となった。ドイツのバレエ名門校に入学したアメリカ人の娘・スージーの周りに奇怪な現象や殺人が次々と起こり、彼女はやがて学校に魔女が棲んでいる事実を突き止めていくというストーリー。日本公開当時、音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)の導入と、 「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズが話題となり、日本で配収10億円を超える大ヒットを記録した。イタリア公開は1977年2月1日、日本公開は東宝東和の配給で同年6月25日。
監督はダリオ・アルジェント。脚本はダリオ・アルジェントとダリオの妻で女優でもあるダリア・ニコロディがトマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』をモチーフに共同執筆している。製作はダリオの弟であるクラウディオ・アルジェント。撮影は前年にミケランジェロ・アントニオーニ監督の『さすらいの二人』を撮ったルチアーノ・トヴォリが担当。そしてイタリアの新鋭プログレッシブ・ロック・バンド、ゴブリンの奏でる音楽が恐怖感を盛り上げている。

本作の日本での大ヒットを受け、翌1978年に東宝東和が『サスペリアPART2』を公開。これはアルジェント監督の1975年の前作『Profondo Rosso』を日本公開用に改題したものであり、本作とのストーリーに関連性は無い。また2000年には『サスペリア2000』という邦題のサスペンス映画があるが、これは全くの別物である。そして本作から40年後の2017年、本国イタリアでは製作40周年を記念して35mmオリジナルネガからの4Kデジタルレストア版が制作された。さらに2018年には、ルカ・グァダニーノ監督、ダコタ・ジョンソン主演で、本作のリメイク版が公開。本作の主演女優であるジェシカ・ハーパーも出演している。

『サスペリア』のあらすじ・ストーリー

ニューヨークに住むバレリーナ志望の若い娘、スージー・バニヨンは、バレエの名門校「フライブルクバレエ学校」に入学するためドイツの空港へとやって来た。空港の外は激しい雨が降っており、ようやく拾ったタクシーに乗ってスージーは学校へと向かう。学校の前に到着すると、玄関の前で女生徒パット・ヒングルが怯えるように、「秘密のドア、アイリスが3つ、青を回して…」と呟き、豪雨の中をずぶ濡れになって走り去った。スージーはパットとすれ違うように玄関に走り寄り、インターホンにドアを開けるように頼んだが、なぜか冷たく拒絶されてしまう。途方に暮れたスージーは仕方なく乗ってきたタクシーで引き返した。パットはその後、友人の女性が住むアパートにずぶ濡れのまま転がり込んでいた。彼女は部屋の窓外の闇から異様な雰囲気を感じているとその直後、突然窓外から現われた毛むくじゃらの腕に締めつけられ、胸や腹を何度もナイフで刺されてしまう。さらにガラス張りの天窓を突き破って首吊りにされる。悲鳴を聞きつけて駆けつけた友人も、落ちてきたガラスの破片が刺さり不運にも惨死の道連れとなってしまった。

翌日、スージーが改めて学校を訪れると主任教師のミス・タナー女史が「昨夜待っていたのよ」と笑顔で出迎えた。タナー女史はすぐに副校長のブランク夫人にスージーを紹介する。校長は海外旅行中で、ブランク夫人は警察から生徒であるパットが殺された事件の聴取を受けていた。学校の中には他に、盲導犬に引かれる盲目のピアニストのダニエル、ブランク夫人の甥で9歳のアルバート少年、ルーマニア人の下男パブロ、住み込みの男子生徒のマークなどがいた。

早速タナー女史のバレエレッスンが始まった。だがスージーはレッスン室に向かう途中に気分が悪くなり、レッスン中に鼻血を出して倒れてしまう。校医の診察を受けたスージーは、少しの間安静にするように言われて寄宿舎に入ることになり、増血のためとしてグラス1杯の赤ワインを必ず食事に加えられた。スージーは寄宿舎の隣の部屋の女生徒・サラと仲良しになり、学院の様子をいろいろと聞かされた。その夜、スージーが鏡台の前で髪を梳いていると天井から小さな白い物が落ちて来た。それは沢山のウジ虫だった。各部屋も同じ状況で、女生徒たちが一斉に悲鳴を上げて飛び出し校内はパニック状態になる。すぐにタナー女史とマークが屋根裏の倉庫を調べてみると、大量に保存してあったソーセージなどの食料が腐敗しており、それが原因だった。

その日の夜、寄宿舎の生徒たちは広い大ホールに全員のベッドを移して一夜だけ寝起きをすることになった。町に住んでいるブランク夫人やタナー女史も今夜だけ泊まるという。夜中になり、なかなか眠れないスージーとサラは、大きな仕切り用のカーテンの向こう側から漏れてくる不気味な呻き声を耳にする。サラはあの呻き声の主が、以前に聴いた事のある校長のいびきにソックリだとスージーに告げたが、海外旅行中の校長であるはずは無く不思議に思う2人だった。

翌日になり、レッスン室でいつものように盲目のダニエルが弾くピアノに合わせて生徒がレッスンをしていると、ものすごい形相でタナー女史がやって来た。タナー女史はダニエルに「アルバートがダニエルの盲導犬に腕を噛みつかれた」と彼に食って掛かった。ダニエルは玄関の外に繋いである大人しい盲導犬が「そんなことをする筈が無い。アルバートが悪戯をしたのだろう」と取り合わない。タナー女史は烈火のごとく怒り、即刻ダニエルをクビにしてしまった。ダニエルは「こんな呪われた所、出て行ってやる」と捨て台詞を吐き、その場を立ち去った。その夜、ダニエルは立ち寄ったビアホールからの帰りに人気の無い道を歩いていると、連れている盲導犬が激しく吠えた。「誰かいるのか」と叫び、耳を研ぎ澄ますダニエル。すると突然狂ったように盲導犬がダニエルの首に噛みついた。大量に血が流れダニエルは絶命する。

ある夜、サラはスージーの部屋で一緒にタナー女史の帰宅時間に聞こえる靴音を聴いていると、スージーが靴音の方向が玄関とは反対方向の校内に向かっていることに気付いた。校長のいびきの件で、もしかすると校長が校内にいるのではと疑問を持っていたサラは、行き先が分かるかもしれないとタナー女史の靴音の歩数を書き留めた。次の日、校内のプールで泳ぎながらサラはスージーに、殺されたパットは友人で、彼女から死の直前に謎めいたメモを預けられたことをこっそりと告げる。また嵐の夜にパットが飛び出して行ったことに動揺し、学校へ着いたスージーをインターホンで拒否したのは自分だったと明かす。その日の夜、部屋に置いてあったパットのメモが消えていた事に気付いたサラは、寝ているスージーを起こそうとするが彼女は睡魔が激しく起きようとしない。恐怖に襲われたサラは廊下に逃げ出すが、何者かが追いかけてくる気配を感じ、屋根裏へ逃げ込んだ。すると突然何者かにナイフで斬り付けられ、サラは高い窓から工具室に転倒する。そこは無数の細い針金の海であり、針金が体に纏わり着き思うように身動きが取れなくなったサラ。すると何者かが止めを刺すかのようにナイフでサラの喉を切り斬り裂き、彼女は悲惨な死を遂げる。

翌朝、スージーはタナー女史からサラが荷物をまとめて退学していったことを聞かされた。そんな筈は無いと思ったスージーは、サラが信頼していたと言っていた友人の精神科医、フランク・マンデルに連絡を取り、サラのことや学校の奇妙な出来事を相談しに行った。マンデルによると、サラは3年前に母の死で神経症に掛かり、自分の患者だったという。さらに彼女は学校の創立者であるエレナ・マルコスが”黒の女王”と呼ばれた魔女だったという事実を掴んでいたという。魔女の話に興味を持ったスージーはマンデルからより詳しいミリウス教授を紹介され、学校の歴史や魔女についての話をその場で聞くことができた。

スージーが寄宿舎に戻ってみると教師や生徒たちは皆ボリショイバレエの公演を観に行っていた。魔女の話を知り、学校の秘密を探ろうと考えたスージーは、サラが以前にタナー女史の靴音の歩数や方向を書き留めたメモを想い出し、そのメモを素に遂に校内の探索に乗り出した。長い廊下を歩数を確かめながらゆっくりと歩いて行くと、足音が消えた場所は広い校長室だった。その部屋にはドアが一つしか無く、その後足音がしなかったことから何処かに出口があるのではと疑問を持ったスージーは、壁に描かれたアイリスの花の画に気が付いた。そこで思い出したのは殺されたパッドが呟いた「秘密のドア、アイリスが3つ、青を回して…」という言葉だった。

青いアイリスを回すと秘密のドアが開き、そこから延々と続く廊下を恐る恐る歩いて行くスージー。すると突き当たりの部屋から光と人影が見えて来た。そこにはブランク夫人やタナー女史、下男のパブロやアルバート少年がおり、何やら儀式をしていた。するとブランク夫人の口から「あのアメリカ娘を殺せ!」と恐ろしい言葉が発せられた。恐怖に後ずさりしたスージーは、無残に切り刻まれたサラの死体を発見する。スージーは咄嗟に近くの別の部屋に逃げ込むが、その部屋の奥のカーテン越しのベッドから聞こえるのは、以前に聴いた校長らしきいびきだった。その正体は学校の創設者”黒の女王”エレナ・マルコスであり、物音で目が覚めたエレナ・マルコスは「お前を待っていた」とスージーを嘲笑する。スージーは恐る恐るカーテンを開けてみるとそこには誰もいなかった。その直後、サラの死体が動きだしスージーに向かって襲い掛かってきた。その時だった。雷の光がエレナ・マルコスの身体の輪郭をベッドの上に浮かび上がらせた。それを見たスージーは孔雀の置物を手に取るとその羽根の先でエレナ・マルコスの輪郭を突き刺した。エレナ・マルコスは苦しみながら姿を現し、その容姿はミイラのような皺だらけの老人だった。そして彼女の死と共にサラの姿は消え、同時に部屋が崩れ始めた。

スージーは廊下へ飛び出すと、エレナ・マルコスの呪いが掛かっていたためか、ブランク夫人やタナー女史たちが体中から血を流し苦しんでおり阿鼻叫喚の様子だった。学校全体がどんどん崩れていく中を玄関に向かって必死に逃げるスージー。やっとのことで館の外に逃げ出し豪雨でびしょ濡れになるスージー。その表情には安堵の笑みがこぼれた。そしてあっという間に学校は火に包まれて行く。

『サスペリア』の主な登場人物・キャラクター

スージー・バニヨン(演:ジェシカ・ハーパー)

ニューヨーク在住のアメリカ人女性。
バレエの名門フライブルクバレエ学校へ入学するため単身ドイツにやって来る。
ドイツの空港から直行したバレエ学校の玄関の前で女生徒のパットとすれ違い、彼女が呟いた謎の言葉を聞く。
入学した最初のバレエレッスンに向かう途中気分が悪くなり、レッスン中に鼻血を出して倒れてしまう。校医の診察を受けると医師から少しの間安静にするように言われ、増血のためとしてグラス1杯の赤ワインを必ず食事に加えられた。寄宿舎の隣の部屋の女生徒・サラと仲良くなり、学校の様子をいろいろと聞かされる。サラがある朝行方不明になり、彼女が信頼していたという友人の精神科医・マンデルに会い、彼の話から学校の創立者であるエレナ・マルコスが”黒の女王”と呼ばれた魔女だったという事実を知る。その後、学校の秘密を探ろうと考え、サラが以前にタナー女史の靴音の歩数や方向を書き留めたメモを素に校内の探索に乗り出す。

サラ(演:ステファニア・カッシーニ)

フライブルクバレエ学校の女生徒。
学校の寄宿舎に入ることになったスージーと隣同士の部屋になったことで彼女と仲良くなる。
殺されたパットとは親しい友人で、パットが学校の信じられないことを全てまとめたメモを彼女から受け取っていたことをスージーに話す。その晩、パットのメモが自分の部屋から盗まれたことで恐怖に襲われ、何者かが追いかけてくる気配を感じて1人で校内を逃げ惑う。挙句に何者かによって刃物で喉を引き裂かれた。
後にスージーに、嵐の夜に学校へ着いたスージーをインターホンで拒否したのは自分だったと明かす。さらに3年前に母の死で神経症に掛かった事実が主治医であった精神科医のフランクから明かされた。

ブランク夫人(演:ジョーン・ベネット)

フライブルクバレエ学校の女副校長。
初めて学校へ来たスージーをタナー女史から紹介された際、パットが殺された件で改札から聴取を受けており、校長が旅行中なのでその代理を務めていると話す。また、ニューヨークでスージーの叔母であるキャロル・バニヨンと会ったことがあり、「彼女は素晴らしい芸術家だった」と入学したスージーを歓迎した。
終盤では、校長室の隠し扉から延々と続く廊下の突き当たりの部屋でタナー女史や下男のパブロ、甥のアルバートらと何やら儀式をしているところを忍び込んだスージーに見られ、「あのアメリカ娘を殺せ!」と恐ろしい言葉を繰り返し叫んだ。

ミス・タナー(演:アリダ・ヴァリ)

フライブルクバレエ学校の女主任教師。
バレエのレッスンだけでなく学校でのあらゆる仕事をテキパキと取り仕切る厳格な教師。初めて学校へ来たスージーへの対応では笑顔を見せるが、ダニエルの盲導犬が子供に噛み付いた件では、烈火のごとくダニエルを責めてクビにした。
学校近くの街に住んでいて毎日決まった時間に帰宅すると言うが、その足音が校内を出ていないことに気付いたサラに疑われる。

ダニエル(演:フラヴィオ・ブッチ)

盲目のピアニスト。
フライブルクバレエ学校の専属ピアニストとしてバレエレッスンの伴奏を務めている。
常に盲導犬を学校の外へ繋いで仕事をしているが、副校長の甥のアルバートがその盲導犬に腕を噛みつかれた件では、タナー女史から学校をクビにされ「こんな呪われた所、出て行ってやる」と捨て台詞を吐いてその場を立ち去った。その夜、立ち寄ったビアホールからの帰りに人気の無い道に差し掛かると、いつもは大人しく忠実な盲導犬が突然狂ったように激しく吠え出し、首に噛みつかれて大量出血により絶命する。

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