お姉ちゃんが来た(アニメ・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『お姉ちゃんが来た』とは安西理晃による漫画作品。2014年にはアニメ化もされている。父親の再婚によって新しく出来た姉の過剰な愛情に振り回される主人公、水原朋也の日常を描いた作品である。日本ではまだ理解の浅いステップファミリー(子連れ再婚家庭)が題材となっており、新しい家族と壁を作っていた朋也が徐々に心を許し打ち解けていく反面、これまで見ず知らずの他人だった人間と「家族」になる難しさも描いており、テーマの深さも垣間見える作品となっている。

朋也の意中の相手である藤咲美奈だが、クラスに於ける自分の人気を奪った一香を彼女は敵視しており、一香から朋也を奪って敗北感を与えようと(別に好きな訳ではない)朋也に近付くようになり、藤咲から朋也を守るべく妨害する一香とは顔を合わせては喧嘩をするようになっていた。

夏になり、男子を引き連れてプールにやって来た藤咲は、ここでも一香に遭遇して男子の人気を奪われてしまう。

顔を合わせては喧嘩を始める二人なので、当然ながら一香と藤咲はプールでも喧嘩を始めてしまうが、一緒にいたマリナ達によって何とか一香を引き離した後、朋也は一香が迷惑を掛けた事を謝る。

人前では笑顔の藤咲もとうとう怒りを爆発させ朋也に食って掛かるが、朋也は「こっちこそ ごめんね 毎回迷惑かけちゃって」と言って、藤咲らしくない怒り心頭の態度を見ても全く幻滅していなかった。

藤咲は自分の外見と人気にしか興味がなく、他の男子のように自分をチヤホヤしてくれない朋也はむしろ嫌悪の対象だったが、怒鳴っても嫌な顔をしない朋也を見て藤咲は彼に対する認識を改め「水原にはもっと優しくしてあげようかな」と、彼女の中で「友達」として位置付けが大きく上がっていた。

水原朋也「でも美鶴は俺の「親友」なんだよ」

ある日、美鶴が熱を出して寝込んでしまった。

朋也は美鶴を看病するため、花園家にある食材を使っておにぎりを作るなど慣れた手付きで行動していた。
「食材 勝手に使っていいの?」と驚く一香だが、朋也も美鶴もお互い日中は家に親がいない家庭環境だったため、どちらかが熱を出した時にもう片方が看病するのは当たり前の事であり、美鶴の看病のため朋也が料理を作るのも「いつもの事」だった。

水原家と花園家は昔からの付き合いである事は知っていたが、昔から朋也と一緒にいた美鶴に対して一香は対抗意識を燃やしていた。

朋也に対して自分と美鶴のどちらが好きかと聞く一香だが、それに対する朋也の「美鶴は俺の「親友」なんだよ」という言葉の通り、誰が一番とか決める事の出来ない、特別な存在だった。

それを見た夕子が「一香の大好きな朋也くんがいい子なのは 回りにいた優しい人達のおかげかも もちろん美鶴くんもね」と、話を綺麗に締めたかに思われたが、勿論、この作品らしいオチも用意されている。

翌日、風邪が良くなった美鶴がお礼のため早速朋也の家にやって来た。

昔から朋也を支えてくれた美鶴のため、自分も美鶴と仲良くしようと一香は美鶴に挨拶をするが、美鶴は「いや まだ少し体調が悪くて お姉さんのパンツがあったら治るんですけど」と、とんでもない事を言い出す(前日、朋也が帰る前に一香のパンツを持って来て欲しいとお願いしていたのが伏線である)。

それを聞いた一香は「朋くん!!親友やめたほうがいいよ」といい、朋也も「そうだね」と返すなど『お姉ちゃんが来た』らしいオチで締めてくれた。

水原夕子「一香にとっては正也さんがお父さんなの 本心は何も言ってくれないけど それは分かるわ」

花見の買い出しに行った一香と朋也は正也のつまみを買い忘れた事に気付く。

買いに戻ると一香は朋也を置いて走り出し、一人になった朋也は先に帰宅すると、テーブルの上に野山家のアルバムが置いてある事に気付く(夕子が片付けるのを忘れていた)。
中を見ると子供の頃の一香の写真があるが、たまたまアルバムから落ちた写真を拾うと、それは男の人の写真だった。

夕子が部屋に入ると素早い動きで朋也から写真を奪うが、何かを聞きたがっている朋也の視線に負けて、写真の人物が一香の父親である事を明かす(上半分は隠されていたが、口元だけは描かれており、一香のトレードマークである△の口元が瓜二つだった)。

夕子によると今も生きている事しか知らないとの事で、一香が生まれた時には既に別れていたという過去を明かす。

その一香は当時から弟か妹にしか興味がない、今とほぼ変わらない性格だったが、一度だけ「私のパパなんでいないの?」と夕子に聞いた事があり、夕子の「そうね…何で…かしらね」と悲しそうな表情を浮かべながら上手く答えられなかったのを見て、以降は二度と父親の話題を出さなくなった。

デリケートな話題を出した事に気まずい顔をする朋也だが、夕子は「一香にとっては正也さんがお父さんなの 本心は何も言ってくれないけど それは分かるわ」と、一香が新しい父親と幸せそうにしている事を強調し、当の一香も近くで会った正也と笑顔で帰宅するなど、本当に幸せそうだった。

確かに、一香は自分の実父に対して何かを考えているかは分からない(一香曰く「ママにパパのこと聞くと悲しそうにするから聞くのやめた」との事で、父親に対して何らかの感情は持っていると思われる)が、大事なのは生まれた時から父親がいなかった一香が「パパ」と呼べる人間に出会えた事であり、片親同士の再婚によって生まれたステップファミリーは、本当の家族のように幸せな笑顔を見せ合えるようになっていた。

『お姉ちゃんが来た』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

一香に出来るのは妹であるはずだった

親の再婚で新しく出来た家族(ステップファミリー)がテーマの当作品だが、コミックに書かれた作者の後書きによると、当初は親の再婚で新しく出来た「姉妹」となる予定で、その妹ポジションとして考えられていたのは藤咲美奈だった事が語られている。

作者曰く「彼女を軸に新しく出来た妹を溺愛する姉の百合っぽい作品」として構想が練られていたが、担当から「女の子同士だと話が広がらないので男の子にしましょう」という意見が入り、新しく出来た弟として水原朋也が生まれた。

そして、姉妹になる予定だった一香と藤咲は喧嘩仲間として顔を合わせては仲良く喧嘩する関係になっている。

作者のキャラ作り

作者である安西理晃のキャラの作り方は、まず初めにキャラの設定を書いた「キャラ表」を作る事から始まる。

初期の設定がそのまま採用されたキャラも勿論いるが、設定が大きく変わったキャラもおり、二次元に生きるオタクのイケメン大学生として強烈な個性を放つ藤総一郎は、当初はオタクではなくお笑い芸人を目指す大学生(オタクに設定が変わったためボツになったが、当初は「なんでやねーん!!」という口癖まで用意されていた)という設定だった。

どのような経緯で総一郎の設定が変わったかまでは書かれていないが、読者からの人気を得て長く連載されたお陰で連載前から書いていたキャラを全員登場させる事が出来、他ならぬ作者も自分のキャラに対して「まるで我が子のよう」と強い愛情と思い入れを持っている。

早坂家の家庭内ヒエラルキー

個性の強い姉弟を持つ早坂家だが、彼女達の父親は警察官で、ルリと孝喜の正義感の強い性格は父親の教育によって形成されたものである。

見た目も性格も厳格な父親だが、そんな父親も母親には逆らえない(いわゆる恐妻家である)ようで、ルリも孝喜も父親同様早坂家の家庭内ヒエラルキーの頂点に君臨している母親には素直に従っている。

「サザエさん時空」と複数雑誌連載による強み

作者が別の作品を連載していた関係で不定期連載ではあるが、当作品は『まんがライフ』と『まんがライフMOMO』という二つの雑誌に掲載されている。

また、この作品は登場人物が記憶を引き継いで季節をループする「サザエさん時空」を採用しているため、ネタも掲載時期に合わせた季節ネタが多い。

後書きで作者が書いていた話だが、作者が同時進行で別の作品を描いていた時、肝心の『お姉ちゃんが来た』では毎年恒例のクリスマスネタを描けず(スケジュールの都合と思われるが詳しい内容は語られていない)次の号だと正月になってしまうという問題に直面していた。

だが、幸いな事に同時進行で別の雑誌にも連載していたためクリスマス回はもう片方の雑誌に回して何とかクリスマス回消滅の危機を乗り越えたと語っている。

複数の雑誌で連載されている作品は少なくないが、季節ネタを大事にしている作品から見ると、ネタと掲載時期が合わずボツになる寸前だったネタを救う救世主のような役割を果たす「強み」にもなっている。

『お姉ちゃんが来た』の主題歌・挿入歌

主題歌: 富樫美鈴 『Piece』

作曲・編曲 - 羽鳥風画 / 作詞・歌 - 富樫美鈴 / ピアノアレンジ&演奏 - 水月陵

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