お姉ちゃんが来た(アニメ・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『お姉ちゃんが来た』とは安西理晃による漫画作品。2014年にはアニメ化もされている。父親の再婚によって新しく出来た姉の過剰な愛情に振り回される主人公、水原朋也の日常を描いた作品である。日本ではまだ理解の浅いステップファミリー(子連れ再婚家庭)が題材となっており、新しい家族と壁を作っていた朋也が徐々に心を許し打ち解けていく反面、これまで見ず知らずの他人だった人間と「家族」になる難しさも描いており、テーマの深さも垣間見える作品となっている。

『お姉ちゃんが来た』の概要

『お姉ちゃんが来た』は安西理晃による漫画作品。

2010年より竹書房の『まんがライフ』に連載開始され、2011年より同社にて刊行されている『まんがライフMOMO』にも並行連載されるようになった。
2014年1月にはアニメ化されており、同時にWebラジオが配信されるなど幅広い分野でメディアミックス展開された。

それぞれの親の再婚によって姉弟となった水原朋也と水原一香を中心にストーリーが展開され、新しく出来た姉の奇行に悩まされながらも、新しい家族に対して徐々に心を開く朋也の人間的な成長が見どころである。

また、作品の時系列に関して一年経つごとに時間が巻き戻る、いわゆる「サザエさん時空」を採用しており、初登場した時は冬~春(3月以前)だった登場人物が翌年のプール回では(季節的には夏なので時系列的に朋也達と出会っているはずがないにも関わらず)当たり前のように朋也達と一緒にいたり、登場人物の携帯電話もガラケーからスマートフォンに変わっていたりするなど、初期の話から読み返すと細かいところで矛盾が生じている。
だが、この手の作品に「中学一年生(高校二年生)のクリスマスを何回過ごしてるの?」という疑問を持つ事自体がナンセンスであるため、作品の時系列に突っ込んではならない。

『お姉ちゃんが来た』のあらすじ・ストーリー

『キター!キター!』 - 個性的すぎるステップファミリー誕生

父親が再婚したため新しい母親と姉が出来た水原朋也は、表面上は父親の正也に対して笑顔だったものの、中学生という難しい年頃のため突然出来た新しい母親と姉に馴染めずにいた。

朋也の新しい姉・一香も緊張しているように見えたが、それは朋也に対して「かわいい」と見惚れていただけで、一香はいきなり朋也を写真で撮り始めたり、昼休みに高校を抜け出して朋也の中学に現れたりするといった奇行を行い、朋也を困惑させていた。

朋也のクラスメイトに対して「私…弟にしか興味ないの」と発言するなど一香は朋也への過剰な愛を隠そうとせず、家でも朋也の部屋で勝手に着替えて即座に朋也から追い出されるなど、朋也への愛情表現は日に日にエスカレートしていた。

一香の奇行に悩まされる朋也だが、一向に仲良くなる気配のない姉弟に見かねた一香の母親である夕子から「朋也くんが異様に異常に好きなだけなの」とフォローを受ける。
朋也も一香の好意に理解を示したいのはやまやまだったが、本人に悪気は一切ないとはいえ、毎度毎度勝手に部屋に入り、挙げ句の果てには「朋くんの部屋に移住する」と言い出す一香のズレた愛情は朋也にとって理解出来るものではなく、ドアに「入ってきたら口きかない!!」という張り紙をするなど一香を拒否する姿勢を見せていた。

それを見た一香は「ドアから入る訳ではない」という恐ろしい理由で窓から朋也の部屋に入ろうとして朋也を驚かせる。

一香による数々の奇行は「朋くんが大好きだから!!」というブレない愛情から来ており、亡くなった母親以外の異性から好きと言われた事のない朋也は動揺する。

そして、部屋に入るくらいなら許しても構わないと態度を軟化させようとするが、部屋を漁って下着を物色する一香を見て再び部屋から追い出すのだった。

朋也に対して恐ろしいほどの愛情を持つ一香は、以後も懲りずに朋也に執着しており、朋也が友人の花園美鶴と一緒に学校に向かう道中も堂々とストーキングし、またも学校に不法侵入して教師に捕まって追い出されるなど相変わらずだった。

一香が朋也に執着している理由は、母子家庭で一人っ子だった一香が弟か妹をずっと欲しがっており、夕子の再婚によってこれから自分の弟となる朋也の写真を見た時から一目惚れをしていたことにあった。
その後は朋也をストーキングして写真を撮ったり、趣味や血液型などの個人情報を調べ上げたりするなど、新しい家族として顔合わせする前から朋也にぞっこんだった。

一方、父子家庭だった朋也も一人っ子で、正也も美容院の店長として帰りが遅いため一人で食事をするなど淋しい思いをしていた。
そのため「兄弟がいれば父さんの帰りが遅くても寂しくない」と、密かに兄弟の存在に憧れていた。
但し、自分に対してストーカー行為を行うような姉が欲しかった訳ではなく、自分の事を「一生付け回す」と公言する一香の重すぎる愛に頭を悩ませていた。

『学校にキター!』 - 朋也の好きな女子

一香からの過剰な愛に振り回されている朋也だが、彼にも気になる人がいた。
教室に入ると、朋也にとって意中の相手である藤咲美奈が笑顔で挨拶してくれる。

藤咲はクラスの男子から一番の人気を誇る女子だったが、学年一の美少女と言われる外見と違って内面はお世辞にも綺麗とは言えず、男子からチヤホヤされる事にしか興味がなかった。

今日も男子の視線を一身に浴びて優越感に浸っていた藤咲だが、突如教室に乱入して来た一香によってスポットライトを奪われてしまう。

今回はストーキングではなく、朋也が弁当を忘れたため届けに来たという立派な理由があって中学までやって来た一香だが、これまで独占していた男子の視線を見知らぬ高校生に奪われ、藤咲は面白くなかった。

藤咲は朋也に話し掛けると「あの人どこの高校?遅刻しない?」と、彼の口から早く教室から出て行く言葉を引き出すよう誘導するが、一香の目の前で朋也と女子が会話するのは最も許せない行為であり、一香は「さてはあの子!!!朋くんのことが好きなのね!!!」と藤咲を睨む。

一香と藤咲の間に険悪な空気が流れる中、美鶴は朋也は藤咲が好きであると一香にバラしてしまい、朋也は「俺 藤咲さんのこと好きじゃないし 全然可愛いなんて思ってないし!!!」と、本人の目の前で藤咲が好きである事を否定する。

第三者の目線で見れば朋也の発言は完全な照れ隠しだが、それでも藤咲とっては気分のいいものではなく「私 可愛くなくてごめんね」と拗ねてしまう。

藤咲さんに嫌われた、と落ち込んだまま帰宅した朋也は、出迎えに現れた一香に対して怒りをぶつけるが、自分の部屋に戻ってから朋也は、一香は自分のためにわざわざ弁当を届けに来てくれた事を思い出す。
一香が学校で藤咲を睨むなど余計な事をしたのも事実ではあるが、朋也は怒りに任せて一香に八つ当たりをしてしまった事を反省する。

その一香は半開きにしたドアから朋也を見ており、ごめんねと謝る。
朋也も自分の八つ当たりを一香に謝ろうとするが、中学生という難しい年頃であるため「おっ 俺のほうこそ…さっきはあの…ごめ…」と、なかなか素直になれず上手く謝れなかった。

『お姉ちゃんズがキター!』 - 一香の友達

そんな一香にも友人がおり、一香から友達が家にやって来ると聞いて「この人は友達がいるのだろうか」と、内心一香に友達がいないと思っていた朋也は驚く。
その一方で一香のような変人がやって来たらどうしようと恐れるが、朋也の不安に反してやって来た友人二人は至ってまともで、自分に対して普通に笑顔で挨拶してくれる、普通の人だった。

一香から「マリナっち」と「ルリルリ」という独特なニックネームで紹介された二人は望月マリナと早坂ルリといい、特にマリナは、一香は変わっているから苦労しているのではと気に掛けてくれたため朋也は泣くほど感激する。

結局、友達を家に招いても一香は朋也にべったりで、朋也は一香から逃れるため美鶴の家に向かい、三人の元から離れる。

朋也の家と美鶴の家は隣同士であり、マリナとルリが朋也の家に入る姿を美鶴は部屋から見ていた。
年上好きの美鶴から美人のお姉さん達と仲良く出来て羨ましいという嫉妬交じりの歓迎を受けるが、朋也も美鶴も元は一人っ子であり、それぞれ父子家庭に両親共働きとどちらも夜まで親が家にいないという家庭環境で淋しい思いをしていた。
当時の事を考えれば、一香の朋也に対する行動はやりすぎではあるが、兄弟がいて誰かに構って貰えるのは幸せな事だった。

美鶴と一緒にゲームで時間を潰してから朋也は自分の家に帰ろうとするが、マリナ達を見送るため外に出た一香と鉢合わせしてしまう。

例によって朋也は一香に追い回され、楽しそうとルリが笑顔で見守る一方でマリナは「頑張れよ朋也」と、変な姉に振り回される朋也の身を案じていた。

『コウ派な孝喜がキター!』 - 優等生はルリの弟

放課後になって美鶴と一緒に帰宅しようとする朋也の携帯に電話を掛けるなど一香の朋也への愛は相変わらずだったが、一香との通話に気を取られて朋也は男子生徒とぶつかってしまう。

学校で携帯を使うなと男子生徒から注意を受ける朋也だが、彼の名は早坂孝喜といい、常に学年トップの成績をキープする秀才で、更に顔もイケメンであるため女子からの人気も高かった。

一方の孝喜は「女はうるさくて嫌いだ」と、異性に対して興味のない様子だったが、朋也に姉がおり、その姉から溢れんばかりの愛情を受けている事を知ると「『姉』に甘やかされているヤツを見ると腹が立つ!!」と、何故か怒り出して朋也と喧嘩になってしまう。

意味もなくいきなり怒り出し喧嘩を仕掛けるなど孝喜の行動は意味不明だったが、電話中聞こえた孝喜の声を聞いて中学まで一香と一緒にやって来たルリが喧嘩をしている孝喜の姿を見ると「朋也くんをいじめてたの?」と、身体中から恐ろしいオーラを放ち、いきなり孝喜を殴り飛ばす。

喧嘩の注意をするだけならまだしも、顔が腫れ上がるほどの鉄拳制裁を受けた孝喜は、ルリの命令により嫌々ながらも朋也と友達になる事を申し出る。

何かあったらルリから拳が飛んで来るなど、自分とは違う意味で姉との関係に苦労している孝喜を見て朋也は「うちはまだいいような気がしてきた」と、ストーキングはされても暴行される事はない一香との関係にある意味安堵していた。

『水着、キター!』 - 藤咲の変化

水原一香乱入事件以降、クラスメイトからの人気を一香に奪われた藤咲だが、クラスにおける自分の人気を奪った一香を彼女は敵視しており、一香から朋也を奪って敗北感を与えようと(別に好きな訳ではない)朋也に近付く(そして朋也と藤咲の間に一香が割って入り妨害する)など、一香と藤咲の間で朋也を巡る綱引きが行われていた。

ある夏の日、男子を引き連れてプールにやって来た藤咲だが、ここでも一香に遭遇して男子の人気を奪われてしまう。

男子がいなくなり一人になった藤咲はここでも一香に男子の人気を奪われ敗北感を感じていたが、一人でいる藤咲を見て朋也が一緒に遊ぼうと誘おうとする。
しかし、朋也と藤咲が仲良くするのを許せない一香がそれを許すはずがなく、藤咲をプールに突き落とし、一香と藤咲はプールで喧嘩を始めてしまう。
一香と一緒に遊びに来ていたマリナ達によって一香は引き離され、朋也は一香が迷惑を掛けた事を藤咲に謝る。

これまで一香によって多大な被害を被って来た藤咲は怒りを爆発させるが、朋也は「こっちこそ ごめんね 毎回迷惑かけちゃって」と言って、普段の藤咲なら自分の人気が下がる事を恐れて絶対に見せない怒った顔を見ても幻滅する事はなかった。

藤咲は自分の外見と人気にしか興味がなく、外面だけを気にして笑顔以外の表情(藤咲曰く「かわいくない自分」)を見せないようにしていた。
一香がちょっかいを出して来たからであるのは事実であるにせよ、意図せず出してしまった「かわいくない自分」を見ても朋也はこれまでと同じように接してくれたため、藤咲は朋也に対する認識を改め「水原にはもっと優しくしてあげようかな」と、彼女の中で「友達」として位置付けが大きく上がっていた。

『イケメンキター!』 - 残念なはとこ

一香と朋也が街を歩いていると、金髪の男性から「Can you speak English?」と声を掛けられる。

目が覚めるようなイケメン外国人に声を掛けられ、朋也は上手く答えられず戸惑うが、一香は「I can speak just a little English」と流暢な英語で返す。

これまで一香による数々の奇行で頭の痛い思いをして来た朋也だが、外国人相手に英語で会話する彼女の姿を見て今回ばかりは頼もしく思っていた。

一方、一香から流暢な英語で返された外国人は顔色を変え、英語は苦手でまともに話せない事を日本語で白状する。自分の目立つ外見を活かして英語で話し掛けて驚かせようと思ったら、一香が英語が得意であるとは知らず逆に驚かされたとの事であった。

そこにマリナが現れ、彼の事を「兄貴」と呼ぶ。

彼がマリナと知り合いで、しかも親戚である事に驚く一香と朋也だが、彼は藤総一郎というロシア人のハーフで、マリナはクォーターというこれまた驚きの事実を明かす(マリナと総一郎は祖父母が兄弟である、いわゆる「はとこ」という血縁関係)。

ちなみに、総一郎が一香達に声を掛けた理由だが、総一郎はド級のオタクであり、最近流行っている『アイドルプリンセス』というゲームに登場するみのりというキャラクターに一香が似ているからであった。

二次元に生きる総一郎は今のところリアルな女性に興味はなく、一香に興味を持ったのもみのりのコスプレをして欲しいというだけで、彼女に対して恋愛感情はなかった。

総一郎が好きなマリナは、総一郎に対して完全拒否(朋也以外の男性に興味がない)の姿勢を見せる一香と、みのりのコスプレをして欲しいだけで一香に対して恋愛感情がない総一郎が付き合う事はないとある意味安心する。

重度のオタクである事を隠そうとしないどころか二次元に生きる事を公言する、色々な意味でキャラが濃すぎる総一郎の何処を好きになったのか一香と朋也は理解出来ず「マリナっち(さん)趣味悪」と、マリナにも総一郎にも少々失礼な印象を抱いていた。

『看病キター!』 - 変な姉とこれからも

正也と夕子が旅行に出掛け、水沢家は一香と朋也の二人きりになっていた。

一香は二人だけになった事を喜び朋也に抱き着くが、朋也は風邪を引いて具合が悪く、倒れてしまう。

まさかの事態に軽いパニックを起こしながらも、一香はルリとマリナに助けを求める。
お姉ちゃんの先輩として尊敬するルリから適切なアドバイスを貰うと、一香は朋也を付きっ切りで看病する。

深夜になって朋也が目を覚ますと、手を握りながら「治れ治れ」と念じる一香の姿があった。
一香の献身的な看病と、悪化する前にしっかり休ませた事もあって程なくして朋也の風邪はすぐに良くなるが、今度は一香が風邪を引いてしまうというオチが待っていた。

一香の風邪が治ると、朋也は一香の好物であるシフォンケーキを作る。
自分が好きなシフォンケーキを朋也が作ってくれた事を知ると、一香は朋也に抱き着いて感謝の気持ちを示すのだった。

『お姉ちゃんが来た』の登場人物・キャラクター

水原朋也(みずはらともや / CV:愛美)

13歳の男子中学生で本作の主人公。
親の再婚で出来た新しい姉の一香が調べたデータによると、双子座のA型との事である。

父の再婚によって新しい母親と姉が出来るが、亡くなった母親を今でも忘れる事が出来ず「新しい家族なんて俺は認めない」と壁を作っており、夕子に対して敬語で接し、一香の事は「お姉ちゃん」と呼ばず「あの人」と呼ぶなど上手く馴染めていない。

クラスメイトの藤咲美奈に片思いをしており、一香による妨害に双方苦労しながらも何とか友人となる。
朋也は藤咲と接する機会が増えて喜んでいるが、彼女にとって朋也は「友達」という位置付けであるため恋愛感情はない。

歌う事が好きだがかなりの音痴であり、何も知らず朋也と一緒にカラオケに行くと彼の歌声の「犠牲」になり、藤咲に至っては体調を崩して翌日の学校を休んでいる(そのため美鶴は朋也が歌う順番になると部屋から出て避難している)。

音痴は更にエスカレートしているようで、音楽の授業では別の教室で授業を受けていた孝喜が「遠くの教室まで騒音が聞こえて来た」と証言している。

水原一香(みずはらいちか / CV:長妻樹里)

母親の夕子の再婚によって朋也の新しい姉になった17歳の女子高校生。旧姓名は野山一香。

夕子が早いうちに離婚していたため母子家庭であり、弟や妹が欲しいと常々思っていた。
一人で遊んでいる子供の面倒を見るため一緒に遊ぼうとして逆に子供から泣かれるなど、好意的に解釈すれば世話焼きな性格ではあったが、その分暴走しがちで良くも悪くも「やりすぎ」な部分が治らないまま現在に至っている。

母親の再婚により弟となった朋也を一目で気に入り、趣味、血液型などの個人情報を調べ上げたり、更にはストーキングで朋也の写真を撮りまくったりというアグレッシブを通り越した異常な行動を取るようになる。

人にあだ名を付けるのが好きで、友人であるルリとマリナは勿論、藤咲と美鶴にも彼らへの第一印象から「朋くんを好きな女子略して好子ちゃん」に「ふつ男くん」と勝手にあだ名を付けている。

特技である裁縫や編み物はかなりの腕前であり、自分の部屋にある朋也のぬいぐるみや、朋也にプレゼントした自分のぬいぐるみは全て一香の手作りである。

口の形が特徴的で、開いている時は△、閉じている時はΛの2パターンである(なお、これは離婚した実父からの遺伝のようで、一香の父親の写真から一部だけ見えた口の形は△だった)。

巷で人気のゲーム『アイドルプリンセス(アイプリ)』の登場人物であるみのりに似ており、朋也の気を引くためみのりの物真似の練習をしたら熱中するあまり、人格までみのりになってしまった事がある。
その時は口の形が普通になり、朋也に対して「朋也くん」と呼ぶなど「普通の人間」になって周囲を困惑(夕子曰く「性格が変わった以外は正常なんだけど」と言わしめるレベル)させていた。

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