ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge!)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ムーラン・ルージュ』とは、2001年製作のアメリカ映画。ハリウッドを代表する2大スター、ニコール・キッドマンとユアン・マクレガーを主演に、 『ロミオ+ジュリエット』のバズ・ラーマンが製作・監督・脚本を担当したミュージカル大作。劇中の楽曲には20世紀を代表するポップ・ナンバーがふんだんに使用されている。19世紀末の夜のパリを象徴する魅惑のナイトクラブ“ムーラン・ルージュ”で繰り広げられる、若き作家と高級娼婦の悲恋物語を絢爛豪華にして幻想的に描く。

アブサンの妖精(演:カイリー・ミノーグ/笑い声:オジー・オズボーン)

緑色の酒・アブサンのボトルのラベルから飛び出した、羽根を付けて飛び回る小さく妖艶な女性。
「ムーラン・ルージュ」に乗り込もうと、クリスチャンがトゥールーズらボヘミアン仲間たちと意気投合し、景気付けに飲んだアブサンによって酩酊状態になった皆の前に突然現れた幻影である。

『ムーラン・ルージュ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「見ろ!輝くダイヤモンドだ!」"It's her! The Sparkling Diamond."

クリスチャンはトゥールーズらボヘミアン仲間と意気投合し、彼らとナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」へ潜り込んだ。多くの着飾ったカンカンダンサーがショーを盛り上げ、初めて見る絢爛豪華で幻想的な雰囲気に酔いしれるクリスチャン。オーナーのジドラーの指揮のもと、カンカンダンスはどんどんと激しさを増す。たくさんの正装した紳士たちに紛れて踊り出すクリスチャンたち。すると突然、照明が落ちて音楽が止み、スポットライトと紙吹雪と共に天井から1人の女性が降りて来た。その姿を見てトゥールーズがクリスチャンに言ったセリフ。

降りて来たのは、ショーのラストを飾る花形スターのサティーン。本作における彼女の登場シーンである。クリスチャンは彼女の見事な姿態と妖艶な色気に目を奪われていたが、見事な彼女の「輝くダイヤモンド」ぶりは、観る者すべての心を奪ってしまう程の名シーンである。

「スペクタキュラー・スペクタキュラー!」"Spectacular, Spectacular"

公爵と間違えられたクリスチャンは寝室のある超豪華なサティーンの部屋へ呼ばれた。クリスチャンは自分が考えてきた愛の詩をサティーンに聞かせると、彼女はウットリと聴き入りクリスチャンに恋心を抱き始める。良いムードになってきた2人だったが、クリスチャンはそこで自分が公爵ではなく作家であることをバラしてしまう。動揺するサティーン。するとそこへジドラーが本物のウースター公爵を連れてやって来た。サティーンは咄嗟に、クリスチャンがウースター公爵に資金を出させるための物語を書いた作家で、これから緊急リハーサルをやるのだと説明。その状況を外から覗いていたトゥールーズとボヘミアン仲間たちも集合し、クリスチャン、サティーン、資金のためならとジドラーも交え、ウースター公爵へのプレゼンテーションとして即興のリハーサルを始める。その冒頭、ジドラーが公爵に新しいショーの説明をする際に叫んだ芝居のタイトルらしき言葉。

新しいショーの内容など分かっていないジドラーが、「豪華絢爛、息もつけぬ興奮!目が眩み打ちのめされ、五感がしびれる空前絶後のショー!」と、思い付きで公爵にまくしたてた締めくくりに放った芝居のタイトルが名セリフとなった。「スペクタキュラー」とは、「壮観、華やかなさま」という意味であり、この言葉をきっかけに、クリスチャン、サティーン、ジドラー、そしてトゥールーズとボヘミアン仲間たちによる即興のリハーサルが始まるのだが、本作中最もコミカルでとっても楽しい名シーンと言えるだろう。

「愛は酸素と同じだ」 "Love is like oxygen."

「ムーラン・ルージュ」での新しいショーの物語を書くことになったクリスチャン。その胸の内はサティーンを想う気持ちでいっぱいだった。どうしても彼女の胸の内を知りたいクリスチャンは彼女にこっそり会いに行く。驚くサティーンに、クリスチャンは「僕が公爵だと思っている時に僕を愛していると言ったのは?」と問うと彼女は「芝居よ」と返す。さらに「日陰の女は男を喜ばせることを言うの。私には恋など…」と控えめに言う彼女の言葉に憤慨したクリスチャンが「愛の無い暮らしなんて…」と言った後に続けたセリフ。

日陰の女であるが故に、本当の恋など永遠に出来ない、と恋に否定的な事ばかりを言うサティーンに、「恋は素晴らしい!愛さえあれば生きられる!」と、恋の素晴らしさを延々と語るクリスチャンの積極的な姿勢がやがてサティーンの心を動かし、2人は次第に愛し合うようになっていく。酸素がなければ死んでしまうのと同じように、愛がなければ人間は生きていけないというクリスチャンの名セリフを受けて、彼とサティーンとの2人だけの会話から歌の応酬へと発展し、お互いの愛を確認し合う名シーンとなっている。

「この世で最高の幸せは、誰かを愛しその人からも愛されることだ」"The greatest thing you'll ever learn is just to love and be loved in return."

「ムーラン・ルージュ」に近付けばウースター公爵に殺されることを知らされずに、ジドラーによって「ムーラン・ルージュ」から追放されていたクリスチャンは、サティーンに会って真実を聞くため、もう一度「ムーラン・ルージュ」に行って舞台裏から潜入する。事情を知らないクリスチャンは別れる理由をサティーンに問い質そうと彼女にしつこく付き纏うが、サティーンはただただ彼を追い払おうとする。その時、誤って舞台の幕が開き、舞台に居たクリスチャンとサティーンの姿が観衆の前にさらされてしまう。クリスチャンはサティーンがもう自分を愛していないと誤解し、観客席のウースター公爵を前にして、彼女を捨てて劇場を去ろうとする。そこでクリスチャンの誤解を解きたいトゥールーズが大声で叫んだセリフ。それはかつてクリスチャンが言った言葉を思い出したものだった。

このセリフは本作の冒頭で、トゥールーズがクリスチャンと出会ったその日に語り合い、その最後に言った彼の言葉として紹介されており、その言葉が今度はトゥールーズによってクリスチャンを救う事になった名セリフである。本作においてクリスチャンとサティーンの2人の愛のキューピット役となっているトゥールーズが活躍する名シーンであり、素晴らしい感動を呼ぶ2人の愛の復活に繋がっていくクライマックスの名シーンでもある。

『ムーラン・ルージュ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実在した人物が登場

ロートレック作:「ムーラン・ルージュ」複製版画

本作には実在した人物が登場している。
その代表的な人物は、画家のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックで、彼の描いた「ムーラン・ルージュ」のポスターは現代に於いても人気を博している。また、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックのボヘミアン仲間として描かれているフランス人音楽家のエリック・サティも、西洋音楽に大きな影響を与えた人物として世界的に有名である。他に、「ムーラン・ルージュ」の支配人、ハロルド・ジドラーや唯一の黒人男性ショコラ、空中足のニニなども実在した人物とされている。
主役となるサティーンとクリスチャンは創作上の人物であるが、2人の恋物語は、『椿姫』(イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラ)や『ラ・ボエーム』(イタリアの作曲家、ジャコモ・プッチーニが1896年に発表した4幕オペラ)などを元に創作されている。また、本作に登場するショーの舞台や衣装などのほとんどは、当時の写真や絵画を元に制作されている。

ミュージカルナンバーのトリビア

『ロミオ+ジュリエット』の為に作った曲

本作の後半に登場し、サティーンとクリスチャンの愛の歌ともなる『Come What May』は劇中唯一の完全オリジナルソングである。だがこの曲、実は作曲家でフォーク歌手のデイビット・バアーワルドがバズ・ラーマン監督の前作『ロミオ+ジュリエット』の為に作った曲だった。結局、前作ではお蔵入りとなったが、本作用に書き直すことによって使用され、引き続きラーマン監督によって日の目を見ることとなった。

ニルヴァーナの曲は1300万円

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