機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人(漫画)のネタバレ解説まとめ

『機動戦士クロスボーン・ガンダム鋼鉄の七人』とは、『月刊ガンダムエース』2006年7月号~2007年9月号に連載された長谷川裕一による漫画作品。『ガンダムシリーズ』の中でも『クロスボーン・ガンダムシリーズ』と呼ばれるシリーズの第二期長編作品である。
地球滅亡を目論む木星帝国の野望を阻止した少年トビア・アロナクスは、その三年後、木星帝国がまだ健在であること、新たな地球壊滅計画が進行中であることを知る。今度こそ決着をつけるため、トビアは七人の仲間と共に木星帝国の本拠地へと乗り込んでいく。

最終決戦にてカリスト兄弟が搭乗した、総統専用MS。人型形態から“手”を模した姿への変形が可能で、すさまじい戦闘力を発揮してトビアたちの前に立ちはだかった。
正式名称は、光のカリスト搭乗の機体が「正義さす左指(ユーリスディス・シニストラ・ディキトゥス)」、影のカリストの人格をコピーしたバイオユニットが操縦する機体が「自由なる右指(リーベルダス・デクストラ・ディキトゥス)」。
手の姿の時は前面にビーム攻撃を弾くIフィールドを展開し、イカロスからアンヘル・ディオナに移設されたミノフスキー・ドライブ・ユニットの突撃を受け止めることすら可能。しかし対ビーム防御力を高めるためIフィールドを一方向に集中させており、背後からの攻撃には無防備という弱点がある。しかし、ディキトゥスの機動力を上回ることは実質ほぼ不可能であり、木星帝国の技術者の間ではこの点が弱点だとは認識されていなかった。
影のカリスト機はドレックとミノルの連携によって撃破され、光のカリスト機もトビアの戦術の前に敗れ、爆沈するコロニー・レーザーの炎の中に消えた。

『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の七人』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

イカロス攻防戦、地球圏最後の激闘

己の死を英雄譚の如く語り、脅威的な力を見せつける影のカリスト

イカロスを破壊するため迫る木星帝国。それを迎撃するため出撃するトビア、ギリ、ミノル。エース級のパイロット三人を同時に相手にしながらも、影のカリストは彼らを一方的に蹂躙する。
自らを「偉大な英雄」と称し、その死の場面にふさわしい戦いを演じてみせろと叫ぶ影のカリストの強さは、恐怖と絶望がこの世に舞い降りたかのような迫力と威圧感を放つ。
しかしその高圧的な言動の裏に、自身が罪に怯える矮小な存在であることを悟られまいとする想いがあることをトビアだけは見抜き、魔神の如き力を振るうコルニグスに敢然と立ち向かう。

ギリ特攻

死の直前にギリの脳裏をよぎったのは、エリート軍人としての木星での輝かしい日々ではなく、地球で過ごした思い出だった

カリスト兄弟の連携攻撃により、機体に大きなダメージを受けたギリ。もはや戦闘能力を失いとどめを刺されるのみとなった彼は、しかし「貴様らにほえ面をかかせてやる」と言い放って高笑いと共にコロニー・レーザーへと突貫する。
自分は今も木星帝国に忠誠を誓う兵士だと、カリスト兄弟への意趣返しのために死地へと身を投じるのだと豪語したギリが今わの際に思い起こしたのは、地球で学んだ様々な料理と、三年ぶりに再会したトビアの顔だった。
新しい人生への未練と、かつては敵対していたはずの戦友との奇妙な絆。あまりにも誇り高く、あまりにも不器用な少年は、その命と引き換えにカリスト兄弟の狂気から地球を救う。

ドレックvs影のカリスト

ディキトゥスの弱点、背後から会心の一撃を叩き込むドレックのF91

その優しさと臆病さが優れた才能の足を引っ張り、チームメイトたちから惜しまれていたドレック。ミノルの窮地を前にして、ついに眠れる大器は覚醒する。
限界まで機体を酷使して影のカリストを翻弄し、その唯一の弱点である背後へ回り込む。乾坤一擲の一撃は影のカリストの機体に決定的な大ダメージを負わせるも、自身も反撃をまともに食らい撃墜される。
しかし弟の死を感じ取った光のカリストは恐慌し、その隙を見逃さなかったトビアに痛撃を受ける。ドレックの決死の攻撃により、戦場の趨勢は一気に動き出すのだった。

狂乱する光のカリスト

自らの正当性が揺らぎ、狂乱する光のカリスト

コロニー・レーザー内部で繰り広げられる最後の戦いの中、自らの全てと言い切った作戦を失敗に追い込まれた光のカリストは狂乱、涙さえ浮かべながらトビアに問い続ける。「お前たちに我らの“正しさ”を邪魔するどんな大義があったのだ」、と。
特殊な力を持って生まれたが故に、姉を利用し、その恋人を死地に追いやり、総統への道を歩んでドゥガチの遺志を継ぐことしかできなかったカリスト兄弟。だからこそ、彼らは自らの正当性を疑わず、それを唱え続けた。「どんな非道な行いも“正しい”なら許される」と信じて。
彼らの過ちと傲慢を理解したエウロペは、弟たちがトビアには勝てないだろうことを漠然と察する。トビアは誰かに許されることも、自分を許すことも望んでいない。鋼のように強い意志で、風のように自然に、ただ進んでいく。そんな何よりも強い生き方を選んだ彼に、己の過ちを認めたくない一心で正しさを主張するカリスト兄弟では、きっと及ばない。
そしてその予感の通り、重傷を負って今わの際にあるエウロペの前で、ついにトビアは光のカリストを撃破するのだった。

作戦終了、生き残ったミノルとローズマリー

若者たちが死に、年寄りの自分は生き残った運命の残酷さに涙するミノル

コロニー・レーザーの破壊に成功し、『鋼鉄の七人』作戦でただ二人の生還者となったミノルとローズマリー。「多くの若者が散ったのに、なぜ一番年寄りの自分が生き延びているのだ」と、後悔と運命の残酷さに涙するミノルに向かって、ローズマリーは吐き捨てるように「生きたいだけ生きる者も、死にたい時に死ねる者も滅多に居やしない」と告げる。
戦場を好む享楽的なサディストという危険な女性ながら、彼女が傭兵として幾多の人々の死を見てきたことをうかがわせる台詞。この後に続く「生きていこうぜ、今までもそうしてきたように。どうせそれしかないんだ」という言葉は、ローズマリーらしからぬ虚無と諦観、そしてなお前に進もうという意志を感じさせる。
ミノルも涙を振り払うように同意し、駆け付けた木星レジスタンスに彼らが保護される形で戦闘は終結。その後この二人が夫婦となることを考えると、不思議な縁を思わせる場面である。

「大丈夫…私は私のままだから」

どれほど離れようと、彼女が何者になろうと共にあることを誓う謎の青年

『鋼鉄の七人』作戦から一年後。木星帝国に帰還し、ドゥガチの娘として政治の世界に身を投じたテテニスの前に現れる謎の青年。記憶喪失だという彼は、テテニスに「自分を雇ってほしい」と懇願し、まるですぐ側で見てきたように、テテニスが捨てたはずの地球での日々を、ベルナデット・ブリエットとしての思い出を想起させる言葉を口にする。
彼の正体に気付き、誰かの名を口にしようとするテテニス。それを優しく制し、青年は「私は私のままだから」と、彼女の側にいるためにここまで来たことを静かに、そして力強く宣言する。
本作中でこの青年の正体が明かされることはない。しかしいくつかの伏線から推測される人物だとすれば、死地も過去も道理も越えて“彼”は愛する少女の下へと再びやってきたことになる。
熾烈極まる戦いの物語は、まるでおとぎ話のような彼らの邂逅シーンで締めくくられる。

『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

幻の『クロスボーン・ガンダムシリーズ完結編』

そのクオリティの高さから、多くのファンを獲得した前作『機動戦士クロスボーン・ガンダム』。当初の予定では一作で綺麗に完結のはずが、ファンの熱意や商業的な事情から続編である本作の製作が決定した。
木星帝国との最終決戦という触れ込みで、折に触れて“クロスボーン・ガンダムシリーズ完結編”であることを強調。主人公トビア・アロナクスの最後の物語にふさわしい激闘を見事に描き切った。
しかしその後も『クロスボーン・ガンダムシリーズ』の人気はじわじわと広がり、本作のさらに十数年後を描いた続編『機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト』がスタート。今もなおさらなる続編が作られ続けており、本作が銘打った『クロスボーン・ガンダムシリーズ完結編』の看板は完全に幻となってしまったのだった。

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