Shall we ダンス?(Shall We Dance?)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Shall we ダンス?』とは、周防正行監督・脚本による1996年製作の日本映画。社交ダンス教室を舞台としたハートフルコメディ。日本アカデミー賞独占をはじめとして数々の映画賞に輝き、海外においても19ヵ国で公開され高い評価を得た。平凡な中年サラリーマンの男性が、電車のホームから見かけた社交ダンス教室の美女に魅せられダンスを習い始め、ダンスをきっかけに見失っていた自分自身や生きる情熱を取り戻していく姿を描く。

社交ダンスの愛好者は終戦後よりの中高齢者が大半だったが、本作のヒットをきっかけに一部に社交ダンスブームを巻き起こしたと言われている。また若年層の人気も上昇し、オリンピック種目採用を目指して競技会や世界選手権なども行われるようになった。 “Shall we ダンス?”は社交ダンスの代名詞ともなり、テレビ番組ではこの語句を冠した『シャル・ウィ・ダンス?〜オールスター社交ダンス選手権〜』(日本テレビ系)など、様々な社交ダンス企画・番組が作られた。
因みに、日本の社交ダンス競技人口は2014年現在で約160万人で世界一、教室数は全国で約3000以上。JBDF、JDC、JCF、JPBDAという団体がそれぞれ競技大会を行っており、団体枠組みをこえる統一全日本ダンス選手権大会やブラックプールと呼ばれる全英選手権など国際大会へも出場している。

ビリー・ワイルダーが大絶賛

ビリー・ワイルダー監督

「大好きな映画だ。あれは他の映画のまったく正反対をいっている。妻が夫に不審の念を抱く。探偵を雇い、…略…すばらしくおかしい。それに主人公が男としてしだいに美しくなっていくそのプロセスがいい」
このコメントは、トム・クルーズ主演『バニラ・スカイ』『ザ・エージェント』の監督で知られるキャメロン・クロウが、アメリカの映画監督、ビリー・ワイルダーにロングインタビューを試みた著書(キャメロン・クロウ著『ワイルダーならどうする?』宮本高晴訳、キネマ旬報社)の中で、ワイルダーが本作に対して残したものである。1997年から98年に掛けてのインタビューであり、ジャック・レモンやマリリン・モンローなどのコメディの名作をたくさん発表してきたワイルダーが、90歳を超えた高齢であるにもかかわらず、本作の公開直後に観ていた事は非常に興味深く、絶賛のコメントは周防監督にとって掛替えの無い勲章となった。

アメリカでの公開について

アメリカの映画会社・ミラマックスは海外の公開における本作の配給を担当。だが本作の上映時間は2時間16分で、「米国では上映時間が2時間を超える作品はヒットしない」との理由から、一時は独自の編集版を公開しようとしていた。難色を示した周防正行監督はミラマックスと話し合いを重ね、最終的に周防監督自らの編集により一部シーンをカットしての上映ということで落ち着いた。上映時間は1時間58分34秒に収められている。周防監督はその件について自著『Shall we ダンス?アメリカを行く』(太田出版刊)の中で「あくまでもアメリカであることを配慮した編集バージョンであるから、オリジナルを知る日本の方には観て欲しくない、というのが僕の本音である」と記している。
また本作は、アカデミー外国語映画賞のノミネートを有力視する声もあったが、日本代表の一本には選ばれなかった。因みに選出されたのは山田洋次監督『学校II』であるがノミネートには到っていない。他の部門にエントリーできる可能性もあったが、アメリカでの映画公開前に日本でTV放送したことが当時のアカデミー賞のノミネート規定に触れ、資格が得られなかった。

本作の主なロケーション地および施設

本作の撮影に使用された主なロケーション地および施設は以下のとおり。

<岸川ダンス教室とその周辺>
西武池袋線の江古田駅(東京都練馬区)を中心としたその周辺の通りやビルなど。
(撮影に使われた駅はすでに改築され当時とは雰囲気が異なっている)

<正平の自宅の最寄り駅>
西武池袋線の狭山ヶ丘駅(埼玉県所沢市)

<正平が自宅付近でダンスを練習する公園>
北総線白井駅(千葉県白井市)の南西にある白井木戸公園。

<ダンスホール>
大阪市北区梅田に実際に存在していたダンスホール「ワールド」。
(撮影時、日本に残っていた数少ないダンスホールの一つだったが、2001年1月31日に閉館)

<ブラックプールのダンスフェスティバルのホール>
イングランドのブラックプールタワーにあるボールルーム。ドレスコード(服装規定)に従ってスタッフは全員タキシード着用で撮影した。
(実際に行われているブラックプールダンスフェスティバルは、ウィンターガーデンのボールルームが会場となっている。)

『Shall we ダンス?』の主題歌・挿入歌

主題歌:大貫妙子『シャル・ウィ・ダンス?』

『シャル・ウィ・ダンス?』 (英題: Shall We Dance?)
作詞:オスカー・ハマースタイン2世
作曲:リチャード・ロジャース
歌:大貫妙子

1951年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル『王様と私』(英題: The King and I)に使用された楽曲のカバー。

挿入歌:THE DRIFTERS『ラストダンスは私に』

『ラストダンスは私に』(英題:Save the Last Dance for Me)
作詞・作曲:ドク・ポーマス/モルト・シューマン
歌:THE DRIFTERS

1960年にアメリカのコーラス・グループであるドリフターズによってリリースされた楽曲。リード・ボーカルはベン・E・キング。
日本では越路吹雪によって歌唱されたバージョンが有名。(日本語詞は岩谷時子)

『Shall we ダンス?』の関連映像

予告編映像

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