東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)」とは、日本ファルコムより発売されたPlayStation Vita専用のアクションRPGである。主人公の高校生・時坂洸が、ヒロインの同級生・柊明日香と出会い、謎の世界「異界」に挑んでいく物語を描いている。日本ファルコムを代表とする人気ファンタジーRPG「イース」「空の軌跡」とは一風変わって、現代の日本を舞台にしたストーリーと世界観が大きな特徴となっており、ファルコムの新たな時代展開を象徴する一作として注目を集めている。

一晩明けた後、ついに洸たちはパンドラに乗り込み、内部に広がる広大な迷宮と、そこに待ち受ける無数の怪異たちを攻略しながら、最奥を目指していく。その最中、洸は徐々に忘れかけていたひとつの記憶をフラッシュバックさせる。それはあの10年前の東亰冥災の最中、幼い自分と栞が手をつないで崩壊する街中を走る記憶だった。その記憶の中の幼い自分は、安全な場所を求め、栞の手を引いて懸命に走ったが、次にフラッシュバックした記憶の中にいたのは、血だらけの傷だらけになって死にかかっている栞を抱きかかえ、愕然となっている自分の姿だった。それから、幼い栞の「……コ…ウ…ちゃん……ごめ…んね……」というか細い声と、幼い自分の「ウソだ……ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだぁぁっ……!! うわああああああああっっ!!!」という絶叫が、洸の脳裏に飛び込んできた。そうして蘇った自分の過去で、10年前の東亰冥災での悲劇を思い出した洸は、全てがわかったかのように「そういう……ことかよ」と、溜め息をついた。それから、仲間たちと共についにパンドラの最奥にある広間「因果紡がれし座」に辿り着いた洸を、「来てくれたんだ、洸ちゃん……ううん、来てしまったんだ、ね」と、栞の声が出迎えた。そこにいたのは、異形の衣に身を纏った栞だった。さらにその髪は白に、瞳は赤に、体には赤い紋様が刻まれていて、洸たちは栞が人間ではなく、怪異となってしまったと理解し、言葉を失ってしまう。そんな洸たちを見て申し訳なさそうに苦笑しながらも、栞は事実を淡々と語り始める。
本物の倉敷栞は、10年前の東亰冥災で既に死亡していた。洸に手を引かれて崩壊する街を二人で逃げる中、栞は逃げ遅れて瓦礫に押し潰されてしまう。そうして洸に瓦礫から引きずり出された時は、栞は瀕死の重傷を負っていた。栞は死ぬことに後悔はなかったが、息絶え絶えに洸に一言詫びた後、目の前が暗くなった刹那、洸の絶叫が響き渡ったのを聞いて、自分の死で洸の精神が崩壊することを恐れてしまう。そんな中、栞が最後に「これが全部嘘でありますように」と願った時、夕闇ノ使徒が「イイダロウ……」と、その願いを聞き届けたのだった。夕闇ノ使徒はネメシス、ゾディアック、刻印騎士団をはじめとする異界に携わる者たちの決死の抗戦によって討伐されかかっていたが、最期の力を使って栞と融合した。そして栞は夕闇ノ使徒の力で因果を書き換え、自身の死を文字通り嘘としたのだが、これはあくまで杜宮市だけの話となっており、杜宮市の外では栞は10年前に死亡したということになっている。しかし、時が経つにつれてネットワークなどの情報技術の発達によって情報が簡単に流れるようになり、嘘による矛盾の齟齬が大きくなるにつれて杜宮市の時空間が不安定にしてしまった。その結果として異界化が多発し、これまでに洸たちが直面した異界事件もそれが切っ掛けとなったという。

栞の悲しき真実を聞いてなお、仲間たちを守るために悲愴の覚悟を持ってエクセリオンハーツを手に取る明日香。

仲間たちと杜宮を守り、そして栞を取り戻すために、洸もレイジングギアを構えた。

洸と明日香の覚悟を受け止めた栞も、ついにグリムグリードとしての本性を露わにする。

これが栞のグリムグリードとしての真の姿「冥禍ノ神獣」。脅威度はSSSS級と現存の怪異はもちろん、夕闇ノ落し子を大きく上回っており、誰も抗し難い災厄の力を振るってくる。

そして今回、自身の中にある夕闇ノ使徒の力によってついに人間を捨て、グリムグリード「冥禍の神姫」として覚醒することになった栞は、杜宮だけでなく日本全土を、やがて世界を異界に閉ざすことで「栞が生きている」という嘘による矛盾を解消しようという考えに至ったのだ。そんな余りに残酷すぎる現実に仲間たちが絶句する中、「そんなことは認められない」と明日香が毅然とした声で否定した。そして、表情は仲間たちと同じ悲しげなもので、大切な人である洸のために嘘をつき続ける栞の気持ちは痛いほど理解できると明日香は言ったが、すぐにその悲しさと迷いを振り切るかのようにエクセリオンハーツを召喚し、「でも……だからと言って、それをさせる訳にはいかない」と、その切っ先を栞に向けた。今を生きる仲間たちと、仲間たちが生きる杜宮を守るため、明日香は栞と戦う覚悟を決めたのだった。これに対し栞は、柊さんならそう言ってくれると思った、と、寂しげに笑いながらも、「それじゃあ、始めようか。言っておくけど……簡単に勝てるとは思わないでね?」と、その笑いを邪悪なものへと変えた。
その直後、栞から禍々しくも凄まじい漆黒のオーラが溢れ出す。これを見た仲間たちは、栞がグリムグリードとしての本性を露わにしようとしていると見て、それぞれのソウルデヴァイスを構える。しかしその時、「勝手に当事者を放ったまま話を進めんじゃねえよ、アホたれ」と、黙っていた洸が突然口を開き、自分の胸中をこう打ち明ける。これまでに起きた異界に関わる出来事と、今こうして杜宮だけでなく世界までもを襲おうとしている災厄が、勝手な罪悪感で幼い頃の自分が壊れかかったことにあること。そして、栞を失った喪失感を誤魔化すために、バイトや人助けに逃げ込み続けたことを洸は認め、受け入れたが、それでも今の栞と、今の栞と過ごした日々と思い出は自分やみんなにとっては嘘なんかじゃないと言い放つ。「今度こそお前の手を離さねぇ……嘘だの、齟齬だの、矛盾だの、そんなモンは何とか解決して、今目の前にいるお前を絶対に取り戻してみせる!!!」決意に満ちた叫びとともに、ついに洸もレイジングギアを召喚して、その切っ先を栞に向けた。栞は一瞬呆気にとられたが、再び邪悪なものだが、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべ出す。「だったら、『私』も全力で応えてあげるっ……! そして偽りの中で、世界を、みんなを、洸ちゃんを!! 永遠に閉じこめてあげるからっ……!!」笑顔のままで栞がそう叫んだ瞬間、彼女の瞳が赤みがかった凶々しい漆黒へと変わった。同時に栞の姿が完全にオーラに包み込まれ、姿が見えなくなった刹那、オーラの中から巨大な人馬を模した凶々しい獣を象ったグリムグリード「冥禍ノ神獣」が姿を現し、最終決戦の幕開けとなった。

戦いが終わった後、災厄を止めることはできたが、同時にそれは栞との離別を意味していた。

そして洸の悲痛の叫びも空しく、栞は彼の腕の中で永遠の眠りについた。

戦いの後、元の日常に戻ろうとしていた洸たちの前に、レムが現れる。「やり残したことがある」ということで洸たちの前に現れた彼女は、栞の家に行ってみろと教えた。

栞の家に駆けつけた洸たちの前に、白い門が現れる。この門の向こうにある試練が、洸たちにひとつの希望を与えてくれた。

そして洸はもちろん、仲間たちの全員が死力の限りを尽くし続けて戦った末、ついに栞は倒され、グリムグリードの力を失って元の人間の姿に戻った。同時に核であった栞が力を失ったことでパンドラも消滅し、杜宮市の異界化も収束していく。まるで悪夢の夜が終わり、新しい朝が訪れるかのような景色を、栞と共に眺めていた洸だったが、不意に栞の体が光に包まれ始め、光の中でその輪郭を薄れさせ始めた。「おい、栞っ……! やめろよっ!? 冗談キツすぎだろ!?」と、縋るようにして悲痛に叫ぶ洸だが、栞の輪郭の薄れは止まらない。そして仲間たちも、栞が消滅しかかっているのを見て言葉を失い、悲しみに涙を流し始める中、栞は仲間たちに今まで洸を助け、支えてくれたことに礼を言いながら、「これからも……洸ちゃんと仲良くしてあげてね……?」と、安らかな表情で託すように言った。そして最後に、さらに縋り付いてきて悲痛に叫ぶ洸の顔をそっと撫でて「ずっと、洸ちゃんを見守ってる……きっと、どこかで会えるから……」と、心からの笑顔を浮かべ、栞は言った。そしてそれが栞の最期の一言となり、栞の身体は無数の光の粒となって、空へと昇って消滅していった。
その後、栞は元の因果の通り10年前に死亡したことになり、洸と明日香たちX.R.Cと、純や吾郎も含めた異界に関わる一部の人間の記憶以外、栞がいた痕跡すらも全てが消え去ってしまったことで、洸は栞のいない日常に空虚を感じ、仲間たちとの交流も消極的になってしまった。ある日の放課後、明日香を送りに彼女の居候先であるレンガ小路の喫茶店に向かっていると、不意に洸と明日香の頭に「洸ちゃん……」という、栞の声が聞こえてきた。驚いた洸と明日香があたりを見回すと、「杜宮か……つくづく面白い地だね」と、二人の前にレムが姿を現した。レムは栞の家に洸たちが求めるものがあるから向かってみろと言い残し、姿を消してしまう。
そこで洸と明日香、さらに後から駆けつけてきた仲間たちと永遠が栞の家の前に集まると、神山温泉にも現れた白い門があった。こうして洸たちが集まったのを見計らっていたかのようにレムが再び現れ、この門はあくまで洸たちの因果が生んで、その因果が杜宮の地と結びついて一つの実を結ぼうとしている、と意味ありげな言葉を述べる。そして、そのレムの言葉を聞いて、永遠が「お祖父ちゃんが言ってた……」と、切り出してきた。永遠が宗介から聞いた話によると、この杜宮市には人知を超えた何かの存在が眠っており、その存在の影響か、「奇蹟」というに相応しい出来事がたまに起きていたということだった。その杜宮市に眠る存在である何かと、この白い門が関わりがあると洸たちが思った中、レムがさらに意味ありげな言葉をこう投げかける。「『鍵』を集めるといい。この街に眠るそれを、全て集めたとき……君たちは『試練』に挑む資格を得るだろう」そのレムの言葉の中で「試練」という単語を聞いたそのとき、洸たちは脳裏に栞の姿を思い浮かべた。それこそが、レムの言う洸たちが求めるもの、つまり栞にもう一度会い、取り戻すための試練なのかもしれない。洸たちは静かにこの門の先にある試練に挑むため、門を開けるための『鍵』探しに出る。そしてレムはと言うと、試練に挑む決意を固めた彼らの姿を面白そうに目を細めて見つめながら「遠くでキミたちの選択を見守らせてもらう」と言い残し、姿を消していった。

全ての「鍵」を集め、白い門を潜った先に現れたのは、杜宮市に眠るとされる伝説上の存在・九尾ノ白獣だった。

栞を蘇らせてくれて、自分に力を見せれば彼女を返すとも言ってくれた九尾ノ白獣に洸たちは感謝しながらも、九尾ノ白獣が出した「試練」という名の最後の戦いに挑む。

そして、見事九尾ノ白獣に力を認めてもらえたことで、洸たちは栞を取り戻すことができた。

そして、全ての鍵を集め、白い門を潜った洸たちが目にしたのは、光の球体の中で眠りについている、消滅したはずの栞だった。洸たちが目を疑うと、「参ったか」と、どこからともなく声が聞こえてきて、洸たちの眼の前に、9本の尾を持った白く美しい狐の姿をした神獣「九尾ノ白獣」が現れる。東亰冥災や、洸たちが直面してきたこれまでの異変すらを些事と言い切り、さらに夕闇ノ使徒を「小さき存在」だと断じるこの白獣は悠久の時を生きており、その長い年月の中で彼は自分と共に存在し、自分のそばにいて慰めてくれる「巫女」と呼ぶ者の魂を探し続けていたと語る。そこでついに、栞を自分の求める「巫女」としての存在に相応しいと認め、死に瀕した彼女を因果を紡ぎ直すことで蘇生させ、自分と共に永劫を過ごしてもらおうと考えたが、その前に夕闇ノ使徒が栞と接触してしまい、その考えを実現することはできなかった。その後、改めて栞を生き返らせた九尾の白獣は、門の外から伝わってくる洸たちが紡いできた因果に心地よさを覚えたと言った後、「せめてもの褒美として、この者を解放してやらぬでもない……そなたらが相応しい『力』を示すならば」と、促すように言った。それはつまり、九尾の白獣との戦いに勝てば、栞は再び自分たちの元に戻ってくるということで、それこそがレムの言っていた「試練」だった。その事実を目の当たりにした洸は、やっと諦めかけてたというのに、と自嘲気味に笑いながらも、仲間たちに今一度力を貸してもらうことを呼びかける。そうして仲間たちと共にソウルデヴァイスを召喚した洸は、戦いの前に九尾の白獣にチャンスをくれて恩に着ると言った後、宣戦布告でもするかのように言い放った。「アンタの『試練』、全力で挑ませてもらうぜ。もう一度、あいつの手をこの手で掴むために……あいつを苦しみ続けた『嘘』を『真実』に変えてやるために!!!」その洸の宣戦布告と見て取れる言葉を受け取った九尾の白獣は、「ならば始めるとしよう……悠久を生きる九尾の力、とくと味わうがよい」と言い放った後、洸たちを迎え撃った。
激しい戦いの末、ついに洸たちは九尾の白獣に勝利し、試練を乗り越える。「見事なり……さあ、受け取るがよい」九尾の白獣がそう言った時、洸はレイジングギアで光の球体を切り裂き、栞を解放した。そして、解放された栞を抱き止めた瞬間、栞はゆっくりと目を覚まし、「洸……ちゃん……」と、弱々しい声で呼んできた。同時に辺り一面に眩い光が立ち込め、洸たち、そして栞は現実世界の栞の家の前に戻ってきた。永遠と明日香たちが嬉し涙を流す中、栞も涙を流しながら洸に抱きついた。「わたし……ここにいていいの……? 洸ちゃんが……みんながいる、この杜宮に……!」泣きじゃくりながらそう言う栞に、洸は「ったりまえだろ……杜宮だけじゃねぇ。どこにだって行けるぜ」と、優しく答えた後、栞の耳元で最後にこう優しく囁いた。「おかえり、栞」と。それを聞いて、栞は洸にさらに抱きついて、大声で泣き続ける。こうして、自分の生が嘘でない真実になったことで洸や明日香たちと再会を果たした栞は、彼らと共に夏を過ごすことになったのだった。

『東亰ザナドゥ』のゲームシステム

本作は現実世界である杜宮市を舞台とするアドベンチャーパートと、怪物たちがひしめく異界を舞台とするアクションパートの二つに分かれている。

アドベンチャーパート

主にストーリー部分である学校の授業が終わった後、日課であるアルバイトに行く途中という形で、プレイヤーは主人公の洸を操作して杜宮市の中を動き回ることができる。ストーリーが進むにつれて行けるエリアが少しずつ増えていき、アルバイトに行くまでのこの時間をフリータイムと呼び、その名のとおり自由行動でクエストや交流などを行うことができる。

そして、ストーリーが進むと□ボタンを押すことで「エリアジャンプ」と呼ばれる機能が使えるようになり、杜宮市の全体図の画面に主要キャラのアイコンや交流・重要イベントといった各マーカーが表示され、このマーカーを選択すると即座にその場所に行くことができる。また、エリアジャンプ画面ではフリーダンジョン扱いとなるものも含めたクリア済みの異界を探索することができ、パーティ編成も自由で、主人公の洸をパーティから外しても問題はない。

ショップ

杜宮市の各所には2桁にも及ぶ数のショップがあり、購入の他にも換金アイテムの現金化やアイテムの交換、ミニゲームなど様々な種類がある。また、自動販売機では回復アイテム扱いとなるジュースを買うことができる。ちなみにショップの品揃えはストーリーが進んでいくにつれて増えていくが、ショップによっては品揃えが変わらないものもある。また、書籍やプレゼントアイテムは一度にしか購入することはできない。

異界サーチ

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