東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)のネタバレ解説まとめ

「東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)」とは、日本ファルコムより発売されたPlayStation Vita専用のアクションRPGである。主人公の高校生・時坂洸が、ヒロインの同級生・柊明日香と出会い、謎の世界「異界」に挑んでいく物語を描いている。日本ファルコムを代表とする人気ファンタジーRPG「イース」「空の軌跡」とは一風変わって、現代の日本を舞台にしたストーリーと世界観が大きな特徴となっており、ファルコムの新たな時代展開を象徴する一作として注目を集めている。

中にいた遼太や純をはじめとした生徒や職員たちは、グリムグリードの侵食に捕らえられ、命の危機に晒されていた。

そしてついに姿を現す最大の強敵・グリムグリード「迷霧ノ魔女(ネプラ=マギア)」。エルダーグリードも含めたこれまでの怪異を圧倒的に凌ぐ威圧感と力を持っているこの存在を前にしても、洸は怯まずに真っ向から宣戦布告する。

洸たちが大決戦の末に迷霧ノ魔女を討ち果たし、学園を取り戻したのと同じ頃、美月の婚約者で同じゾディアックの一員である御厨が、白装束の人物と不穏な密談を交わしていた。

そして、明日香が戻ってきた喜びを噛み締める間もなく、辺り一面に再び霧が濃く立ち込めはじめる。それに洸たちが異変を察すると共に、明日香と美月は、先ほど倒したカオスレイヴンは元凶ではなく、マリスクロウやアビスハウンドと同じただの「眷属」でしかないと言った。つまり、それらを操る本当の元凶であるグリムグリードは他にもいる。そう結論づいた二人を見て、洸は何かを思い出したのか、サイフォンを取り出して電話をかけた。その相手は、栞だった。どこにいると洸がまず尋ねると、栞は学校にいて、もう放課後だと言った。そこで洸は、最近童話を読んでいただろうと新たに切り出し、その童話はなんという本だったのかと尋ねた。栞はその童話の題名を英語で「霧の城の魔女」と答え、黒犬や大鴉を操る影の手を持つ魔女が出てくる物語だと簡単に説明する。しかも彼女によると、その童話の本は図書館の蔵書にはないらしく、栞が返しに行った際に司書が首を傾げていたらしい。それに洸が目を見開いた瞬間、突然、電話にノイズが走り出し、やがて切れてしまった。嫌な予感を感じた洸は、すぐさま学校に向かって走り出す。同時に明日香と美月も、元凶であるグリムグリードがどこにいるのか即座に理解したらしく、すぐさま空たちを連れて後を追った。
そして洸たちが学校に辿り着くと、学校全体が霧に包まれた禍々しい影の城へと変貌しており、さらに城の前には見たことのない形状と禍々しさを持つ「門」が現れていた。校門の前には京香をはじめとしたゾディアックの関係者たち、さらにマユをはじめとした明日香の協力者数人も集まっていた。京香によるとつい先ほどこの学校で大規模な異界化が発生したらしく、下校していなかった一部の生徒や職員などの関係者が巻き込まれてしまっているということだった。こうした事態から、美月は表情を険しくして「やはり、起きてしまったのですね……『グリムグリード』による現実世界そのものへの侵蝕が」と、言い、さらに明日香も険しい表情で、栞が図書館で借りた童話の本が「特異点」、すなわち異界化の原因だとも言った。ついに姿を現した、街ひとつを滅ぼすほどの凶悪かつ強大な敵の出現に洸たちは身震いさせられるが、自分たちの過ごした日常を取り戻すべく、グリムグリードの領域と化した学校へと乗り込んだ。そして、そこで待ち受ける数々の凶悪な仕掛けと、眷属としてさらに強力になった怪異たちの軍団との戦いを乗り越え、洸たちはついに最奥で今回の事件の元凶である、凶々しくも妖艶な魔女のような姿をしたグリムグリード「迷霧ノ魔女(ネプラ=マギア)」と対峙する。両腕を広げ、舞でも踊るかのような動きをしながら高笑ってくるその姿から放たれる圧倒的な威圧感と殺気に気圧されそうになるが、洸は仲間たちと共に武器を構え、こう叫んだ。「何モンだろうが関係ねえ……! いつまでも面白おかしく笑ってられると思ったら大間違いだっ! とっととブチ倒して俺たちの学園を取り戻してやるっ!!!」その洸の叫びを嘲るかのようにさらに高笑いながら、迷霧ノ魔女は襲いかかってきて、ついに決戦の火蓋が切って落とされた。
エルダーグリードをも大きく上回る圧倒的な迷霧ノ魔女の力に洸たちは何度も捩じ伏せられそうになるが、諦めずに何度も立ち上がり、挑みかかる。そして激しい戦いを繰り広げた末、洸たちはついに迷霧ノ魔女を撃破した。迷霧ノ魔女が断末魔をあげながら消滅していくと、学校も無事に元の姿に戻り、栞や純たち囚われた生徒や職員たちも一命を取り留め、洸たちも学校を取り戻せたことの喜びを噛み締めるのだった。その後、杜宮記念公園にて美月の婚約者に当たる人物で、彼女と同じくゾディアックの一員である御厨智明が、白装束を着込んだ謎の人物と出会っていた。「回収してきたのだろうな?」と、声をかけてくる白装束の人物に、「もちろん。大いに役立たせてもらったよ」と、不敵な笑みを浮かべ、御厨は一冊の童話の本を白装束の人物に渡す。その本の題名には「THE WITCH OF MISTY CASTLE」とあり、それこそが栞が読んだ童話で、異変の原因となった本だった。御厨はその本を見て、おかげでいい『実験結果』が得られた、とほくそ笑んだ後、「礼を言わせてもらうよ……『刻印の騎士』どの」と、白装束の人物に言って、車で去っていった。それを見届けた後、白装束の人物は静かに童話をその場で燃やしたのだった。

神山温泉の露天風呂を満喫する一行。遼太や純、永遠と栞も、この温泉の心地よさはもちろん、旅館のもてなしに大満足である。

そして旅館にて、明日香と美月から10年前に起きた大災害「東亰冥災」の真相が語られる。

明日香の回想シーン。10年前の東亰冥災の最中、明日香と同じくネメシスの人間だった両親は、娘を守るために迫り来る怪異の大軍に挑んで散っていった。

そうした自分の過去を、自分が戦う「根拠」として述べた明日香は、洸の戦う「根拠」は何かと、どこか気迫を感じさせる様子で問いかける。

霧の事件の後、洸たちは初のグリムグリード討伐の功労を労いたい明日香たちの提案で、永遠、栞、遼太、純も加えて、杜宮郊外でも人気の観光スポットとして有名な「神山温泉」への旅行しにいくことになった。日々の疲れを温泉で癒し、豪勢な料理に舌鼓を打った夜、洸たちは明日香と美月に旅館の広間に呼び出され、今後自分たちが異界の異でどうしていくかについてを考えるため、二人からこのような話を聞かされる。これまでの杜宮の事件の中で起きた異界化は70年前、世界中の至る所で起きており、ネメシスとゾディアックはこれらの異界化を調査し、それらにまつわる事件を解決してきていた。しかし2015年に入ってからはこの杜宮市で異界化の発生件数が急激に、確実に増えてきたことで、ネメシスは米国の帰国子女という名目で執行者の明日香を派遣し、ゾディアックは美月を源氏の責任者として任命してそれぞれ調査を開始することになったが、今でもその異界化の頻発の原因は未だわかっていない。その一方で頻度はエスカレートし、さらにグリムグリードまでが現れるようになるという、脅威度もここ数ヶ月で大きなものとなった。そして、このまま頻度と脅威度が大きくなれば、10年前の東亰震災の再来とも言える大災害が発生するかもしれないという。
その東亰震災もまた異界化による災害だとされており、『神話級グリムグリード』という、グリムグリードはもちろん、全ての怪異の頂点に立つというに等しい力を持つ存在が引き起こしたものだと明日香と美月は語る。そして彼女らも含めた異界関係者はその震災が起きる前、昼間なのに空が夕方みたいに赤くなったことをなぞらえて「東亰冥災」というもう一つの呼称をつけていた。また、明日香と美月によると、東亰冥災の事前にも、現在と同じように原因不明の異界化現象が頻発しているという。そして、現在の状況の深刻度については10年前よりもかなり軽微だが、原因が未だ不明である以上、決して楽観視はできないということだった。よって明日香と美月は、その第二の東亰冥災を絶対に起こさせないための備えとして、杜宮学園に「異界対策室」を設立し、自分たち二人だけでなく、洸たちにもそこに加わり、今まで以上に協力してもらいたいと要請したのだった。
ここまで話をしたところで、明日香と美月は返事は今すぐに出さなくてもよく、この旅行が終わってからでもいいから考えてみてほしいと言って、洸たちを解散させた。そして、仲間たちがそれぞれ考え事をしながらその日の夜を過ごす中、洸は旅館の中庭で明日香と会っていた。何があっても、第二の災厄だけは止めてみせると静かに決意を露わにする明日香は、もう答えは出しているのかと洸に問うと、洸は「悩むまでもねえだろ? 俺は日常が奪われるのを黙って見ているのは我慢できねぇ」と、言い切った。しかし明日香は、その洸の決意と覚悟は歓迎するが、それを裏付ける「理由」がないと指摘した。「死と隣り合わせになる危険に晒されたとしても譲れないような、覚悟の『原点』となるもの……それはどこにあるのかしら?」と、さらに見据えて指摘してくる明日香に、洸は動揺する。そこで明日香は10年前の東亰冥災で両親を失ったことを打ち明け、自分と同じネメシスの執行者だった母の武器で、研究者だった父の調整や強化も施されたことから両親の形見とも言えるエクセリオンハーツを受け継いだことを、自分の戦う理由であり覚悟の『原点』だと言った。それから明日香はもう一度洸に戦う理由で覚悟の原点はどこにあると尋ねたが、洸は答えを出せず、項垂れるだけだった。そんな洸を見て、明日香は最後に「本当の意味で根拠や理由のない者を死地には連れていけない。覚悟や決意は……裏打ちがなければただの欺瞞になりかねないから。せめて、ゆっくり考えてみて」と、言い残し、その場を後にしていった。

明日香から自分の戦う根拠を問いかけられ、答えに迷う洸を、栞が優しく励ます。

その後、突然時が止まった神山温泉の裏山の鳥居が、洸たちを導くように赤く輝き出した。

その鳥居の先で、ついに洸たちの前にはっきりと姿を現し、自らの名を名乗る「異界の子」レム。白い門を出現させた彼女は、「試し」として洸たちを自らの領域である異界へと招き入れる。

洸たちは栞たちを元に戻すため、レムからの「試し」に受けて立つのだった。

その後、洸は一人露天風呂に浸かって、ひとり自問自答していた。洸はいつ頃からか自分の中には奇妙な焦りと喪失感があるのを感じるようになり、それらのせいで誰かが危機に陥ったり、日常が失われそうになった時、自分には関係のないことだとわかっていても何もせずにはいられない性分だった。でも、その焦りと喪失感がどういうものなのかは理解できず、暇さえあればアルバイトに行っているのも結局はそれを紛らわせるためなのかもとも洸は自覚していた。そして何より、中学の途中まではアルバイトはしていなく、部活も遊びもやっていたし、宗介の稽古だって受けていたが、ある時、それらも奇妙な焦りと喪失感を紛らわすためなんじゃないかと気づいた時、続けるのがわからなくなってしまい、アルバイトに逃げてしまった。
そんな風に、洸は自分が本当は何をしたいのかわからず、さらに自問自答を繰り返して悶々としかけた時、隣の露天風呂から「洸ちゃん、いる?」という少女の声が聞こえてきた。その声の主は、栞だった。そして栞は、壁越しに洸にこう話しかけてきた。「柊さんから言われたことで悩んでるの?」意外な栞のその一言に驚く洸だが、栞は中庭での洸と明日香の会話を見て、さらにその後に、洸が浮かない表情で露天風呂に向かっていったのも見かけて、そう思ったという。名探偵か、と洸は溜め息をつきながらも、中庭での明日香との一幕と、自分の奇妙な焦りと喪失感について栞に話した。すると栞は「……私は、洸ちゃんを止めないよ?」と、優しく言った。それに洸が息を呑むと、栞はその言葉の理由をこう述べた。洸は子供の頃から、家族や仲間など自分が大切だと認めたものの為に頑張っていて、バイトに走るようになった現在でもその「根っこ」、つまり大切なもの為に頑張る気持ちは変わっていない。そんな洸の優しさに助けてもらった人はたくさんいるし、自分だって何度も助けてもらっている。そんな風に困っている人を、大切なものを守るのに苦労を惜しまない洸が、自分の知っている「時坂洸」という男の子だ、と。「『ありのまま』でいいんだよ……それが私の大好きな『洸ちゃん』なんだから」最後にそう締めくくった栞に、洸は我に返った。今の自分をどう思い、誰から何を言われようと、子供の頃からそういう大切なものの為に頑張ろうとするという洸の部分は確かに変わっていない。そしてそれらは、喪失感を埋めるためのものではなく、自分にとってはしっくりくるほど自然なものであり、それは覚悟や決意を裏付けるだけの根拠ともなりうる、自分ならではの「流儀(スタイル)」だと洸は確信できた。「……シオリ、サンキュな」こうして、自分の根拠を見つけられた洸が栞に礼を言おうとした時、「ふふ……答えは出たみたいだね」と、またあの澄んだ声が聞こえてきた。洸が耳を疑った瞬間、栞も含めた辺り一面の人や物の時が突然止まった。「キミたち以外の時間は止めさせてもらった。みんなと一緒にボクの所まで来るといい……それじゃあ、待ってるよ」澄んだ声がそれだけ言い残した後、洸は露天風呂を飛び出し、明日香たちの元へ向かった。
そこで自分と同じ、止まった時を動けられる明日香たちと共に洸が神山温泉の裏手の祠へ走っていくと、目の前に三たびあの銀髪の幼女が現れた。三度目の遭遇になる洸はもちろん、初対面となり驚く明日香たちに、銀髪の幼女は名乗りがてらこう言った。「ボクは『レム』……狭間を歩く者さ。ちゃんと、全員揃ってきてくれたね」レムと名乗ったその銀髪の幼女に、洸がこの状況はお前の仕業かと気色ばむ。だがレムは動じていなく、むしろ楽しそうに薄ら笑いながら、自分の背後に白く輝く「門」を出現させた。「さあ……見せてもらうよ……? 選択に見合う力が、キミたちにあるかどうかを……!」と、目を大きく見開き、輝かせた後、白い門の向こうへと姿を消してしまう。同時に洸たちも門の向こうへ吸い込まれ、レムが作り出したとされる異界に呼び寄せられてしまった。

異界の最奥に辿り着いた、五本の尾の狐の姿をした謎のエルダーグリード「五尾ノ霊獣」。「試し」の最後の締めとして、洸たちはこのエルダーグリードと戦いを繰り広げる。

しかし、その五尾ノ霊獣は、レムが変化した存在だった。戦いを経て洸たちの力を確かめることができたレムだったが、それでも意味ありげな問いを洸たちに投げかける。

先ほどの明日香の問いの答えも兼ねて、洸は自らの戦う理由をレムに述べる。

状況を呑み込めないでいたが、栞たちの時を取り戻すにはレムの元へ行くしかないと理解した洸たちは、異界の奥へと向かって進んでいく。そして、最奥で5つの尾の狐を象ったエルダーグリード「五尾ノ霊獣」と戦い、これを打ち破ると、「ふふ、お見事」というレムの声が聞こえた。すると、五尾ノ霊獣が消え、代わりに白い狐面を被ったレムが姿を現した。どうやらレムが洸たちの力を確かめるために、エルダーグリードに化けていたのだ。
「キミたちの力も、一応見せてもらったよ……どうやら選択に見合う資格は持っていそうだね。でも、良かったのかな? 果たしてその選択が、正しいかどうかは分からないよ……?」意味ありげな言葉を投げかけてくるレムに仲間たちが戸惑う中、それに答えたのは洸だった。確かにな、とレムの言葉に頷いた後、拳を握りしめて堂々と「それでも俺は、自分の流儀に従うことにした。少なくとも、それを貫き通せばどんな事になったとしても……後悔はしないだろうからな」と、言い切った。それに対しレムも「その選択がどんな未来を紡ぐのか……これから愉しみに見届けさせてもらうとしよう」と、楽しそうに笑いながら言い残し、姿を消した。同時に洸たちも現実世界へ戻り、止められた時間も、栞たちも元通りになった。そして洸は、明日香と美月に、今回のことで、ようやく自分のことが見えてきた気がすると言った。自分の決意と覚悟はもちろん、それらを裏付ける自分の流儀と、大切なものを守りたい気持ちも十分とは言えないかもしれないが、その流儀と気持ちを持ってこれからも異界に関わっていくと言った。その言葉を洸の覚悟の理由だと明日香と美月が受け取ると、空、祐騎、志緒もそれぞれの自分の覚悟と思いを述べ、異界対策室の参加を申し出てきたのだった。

リオン編(第6話)

アクロスタワーの新曲発表コンサートを開くSPiKA。璃音も浮かない気分でいながらも、他のメンバーと共にコンサートに臨む。

その一方、洸たちも「X.R.C(Xanadu Research Club/不思議探求部)」として、杜宮学園に異界対策室を設置し、活動を開始していた。

アルバイトの帰り、若葉と晶のふたりと思わぬ出会いを果たした洸は、彼女たちから璃音が行方不明になったという驚きの報せを聞かされる。

完璧主義者であるため、結果は良くても自分が望む形とは言えない理由で怜香に食ってかかられる璃音。しかし、璃音は煮え切らない答えしか出せず、挙句に姿を消してしまう。

杜宮市の観光衛所としても有名なランドマーク「アクロスタワー」の20階のアクロスシアターの舞台裏で、天堂陽菜、如月怜香、柚木若葉、七瀬晶、玖我山璃音の5人の女子高生で構成される新進気鋭のアイドルグループ「SPiKA(スピカ)」は、新曲発表に伴ったコンサートの開始の時を待っていた。彼女らは週末にデビュー3周年記念ライブを控えており、怜香はこの新曲発表のコンサートを週末の前哨戦と思えと檄を飛ばす。それに若葉と晶が緊張しながら頷く中、璃音はどういうわけか、浮かない表情をしていた。それを見た陽菜が「私たちもまずは楽しまなくっちゃ。璃音も少し肩の力を抜いて、思いっきりやりましょう?」と、優しく励ますように言うと、璃音はまだ浮かない表情ながらも頷いた。そして「あたしは大丈夫……今まで通り、いつも通り、自分を信じて歌うだけ……」と、璃音は胸に手を当て、自分に言い聞かせて気持ちをしっかりと入れ替える。それからマネージャーがコンサートの開始を知らせに来たのを合図に、他のメンバー4人と共にステージへと向かっていった。
それから数日後、洸たちは学校の中に新しく作られた「異界対策室」、別称「X.R.C(Xanadu Research Club)」の部屋へ集合していた。この「異界対策室」は明日香と美月によって表向きは「不思議探求部」という部活として届け出ており、実際は杜宮学園内における洸たちの異界調査の拠点として設けた場所だ。そして、その拠点で連絡や連携を取りやすくすることが狙いで、部長には明日香と美月の強い推薦によって洸が選ばれ、さらに顧問を永遠が引き受けることになり、早速活動を開始するのだった。
そして週末になったある日、アルバイトを終えて帰ろうとする洸の前に、なんと私服姿の若葉と晶が現れる。実は神山温泉で若葉と晶は洸たちと会っており、そして温泉で会った際、学校で璃音が洸に事務所のパスであるIDカードを拾ってもらった時から面識を持ったことも知ったのだ。出会い頭、いきなり晶と共に縋り付いてきて、「リ、璃音先輩を知りませんか……!?」と、悲痛な表情で訴えてくる若葉に洸は驚いたが、若葉と晶から聞かされたその話にさらに驚かされた。若葉と晶の話によると、璃音が昨日から突然行方知れずになり、しかもサイフォンの電源も切っていて連絡が取れず、マネージャーも血眼になって探しているという。そしてここ最近、璃音はどういうわけか思うように調子が出なくなり、一昨日のミニライブの後も怜香に食ってかかられたらしい。若葉と晶の話だと、ミニライブ自体はファンには概ね好評だったが、完璧主義者である怜香にとってはこれでも納得がいくものではないらしく、その原因が璃音にあると思った怜香は、「どういうつもり、璃音? 貴方ならもっと全力で歌えたはずでしょう?」と、彼女を睨みつける。しかし璃音は「やってるって、全力で……」と、浮かない表情で曖昧な返事を出すだけで、怜香をさらに気色ばませるばかりだ。それを陽菜が若葉や晶と共に宥めようとするが、結局璃音の表情は最後まで浮かないままで、しまいには「……ゴメン。しばらく一人で練習させて」と言い残し、怜香や陽菜たちが止めるのもきかずにどこかへ走り去ってしまい、それっきりだという。しかも若葉と晶の話はそれらだけでは終わらず、最近、ライブ中に音響機器からおかしな音が出たり、熱狂したファンがいきなり奇声をあげて倒れるなど、SPiKAの周りでは奇妙な出来事が起きていて、その度に璃音は、まるで心当たりがあるかのようにものすごく動揺して、ライブ中で立ち竦んでしまうことが多かったというのだ。これらの話を聞いた洸は、あとは自分が引き受けると申し出て、若葉と晶と連絡先のアドレスを交換してから璃音の捜索に出たのだった。

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