私の頭の中の消しゴム(韓国映画)のネタバレ解説まとめ

『私の頭の中の消しゴム』とは、イ・ジェハン監督・脚本の韓国の映画。日本では2005年に公開。
建築会社社長の娘キム・スジンと、スジンの父が経営する建築会社で現場監督として働くチェ・チョルス。2人は偶然に出会い恋愛を経てやがて結婚し幸せな生活を送っていた。そんな中スジンが若年性アルツハイマー病におかされていると判明する。症状が進みスジンはチョルスの事も忘れ始めるが、それでもなおチョルスはスジンを支えようとする。病という困難を抱えながらもお互いを愛し続ける男女のラブストーリーである。

チョルスは現場で一緒だった部下を引き連れて新しく建築事務所をスタートさせ、スジンとは一緒に住む新しい家を計画するなど、公私共に順風満帆に進んでいた。

スジンは、以前写真で見たチョルスの大工の師匠に挨拶がしたかったので、結婚した後にはなってしまったがチョルスと一緒に師匠の元へ挨拶に訪れることになった。チョルスが師匠との思い出としてスジンに話していたのは、小さい頃師匠のところで居候をしていて、理由もなく殴られたり、こき使われたり、九歳のころからハンマーを持って修行したりして大変な思いをしたということだった。今でも憎らしいけれどそのおかげで一人前になれた、とチョルスは師匠に感謝していることをスジンに話していた。

十年ぶりにチョルスが来たことに師匠は驚いていたが、チョルスにかけた第一声は「何しにきたんだ」という言葉だけだった。チョルスは「妻が師匠に会いたがって」と答え、その後スジンが作ってきたお重の弁当を一緒に食べることになった。
師匠は、スジンとチョルスが来てくれたことに内心喜んでいたが、口が悪いのは変わっていなかったので「結婚してから尋ねてくるとはけしからん。ケツ拭いた後にクソするのか?」と食事の席で言い、スジンやチョルスは思わず笑ってしました。そしてチョルスは、自分の今までの成果を見せるために作った、欄間のような飾り物を師匠に見せた。しかし師匠は「これじゃ彫りすぎだな。これは何だよく見てみろ。角度もあっていないじゃないか」と言った。そうやって厳しく指摘している間、師匠の手は年齢からか震えており、チョルスは指摘されたことに怒りを覚えながらも、師匠もかなり年をとったんだと痛感した。そしてチョルスは水を取りに行くと言って一人席をはずした。

自分の成長を見せようと飾り物を彫ってきたチョルスだったが師匠に酷評されてしまう

師匠と2人きりになったスジンが、作ってきた弁当を食べてもらおうとおかずを取って師匠に差し出すと「ずいぶんきれいな手だな」と師匠は言い、スジンの手を触った。手を引っ込めたスジンに「それで、チョルスの母親にはあったのかい?」と師匠は聞いた。小さい時の写真もないと言ったり、家族のことも特に話すことはなかったチョルスだったので、スジンは驚いていると、「あんたのお義母さんだよ。紹介してくれてないのか?あいつまだ怒りがおさまらないんだな。ずいぶん昔の話だ、もう許してやればいいのに」と師匠は話した。

スジンは師匠の話を聞いて、以前チョルスが開けるなと厳しく言った机の引き出しのことを思い出した。そこにチョルスの母について何か秘密があるのではと考え、夜チョルスが寝てから引き出しを開けてみようとした。スジンが針金を使い鍵がかけてあった引き出しを開けると女性の写真と共に"仮差し押さえ決定に対する異議申し立て"と書いた書類が入っており、債務者のところにオ・チョンジャという女性の名前が書いてあった。

後日スジンが、書類に書いてあったオ・チョンジャという女性の住所に行ってみると、中には誰もおらず、家の中のあらゆる物に(差し押さえ)と書かれた赤い札が貼ってあった。その状況を見たスジンは、息子であるチョルスが、債務者である母にについての(仮差し押さえ決定に対する異議申し立て)の書類を持っているにもかかわらず提出しなかったため、家のすべてが差し押さえられ母が収監されていることを知った。
母が、子どもだったチョルスを寺の大工の師匠の元へ連れて行ってそのままいなくなったため、チョルスは寺に居候して辛い大工の修行を受けてきた。そういった経緯から、自分を捨てて出て行った母のことを未だ許していなかったチョルスは、異議申し立ての書類は提出せず引き出しの中へしまって鍵まで閉めていたのだった。

チョルスの母親の家は差し押さえられていた

自分の母を許すようチョルスを説得するスジン

チョルスは自分の母を助けることをかたくなに拒んだ

家に帰ってからスジンはチョルスに書類を見せ、自分たちの家を作るための資金をチョルスの母を釈放するためのお金に充ててあげないかと説得しようとしたが、チョルスは「母親はいない」と言い捨てた。スジンは「それでもあなたのお母さんじゃない」と言ってなだめたが、チョルスは「俺が稼いだお金を、知らない飲み屋の女に渡す義理はない」と言ってもう話を終わらせようとした。

スジンが「でも家族じゃない」とさらに説得しようとすると、チョルスは「家族はここに居るお前一人だけだ」と言って怒り、異議申し立ての書類を破いてしまった。「そのお金で家を建てて、私たちだけで暮らしたら幸せになれる?」とスジンが尋ねると、チョルスはもっと怒って近くにあったグラスを叩きつけ、手から血が出てきてしまった。チョルスがそのまま2階へ行こうとしたので、スジンは「許してあげて」と言って引きとめようとした。しかしチョルスはスジンの手を振りほどいて「親が何だ!産めば親か?産んだら、親になれるのか?お前は知らない女を助けるのか?」と言った。スジンは泣き出してしまった。するとチョルスは自分が大工の師匠と写っている写真を持ってきて「泣くな。俺が何で泣かないか分かるか?あの日に涙は全部出し切ったんだ。あの女がこの老人に俺を預けてそのまま捨てていった日にな!もう俺はあの女のために泣くことはないし、一銭たりとも渡さない」とまくしたてた。

チョルスが暴れて床に散らばってしまった写真や書類を拾いながら、スジンは自分の祖父が教えてくれた「許しは、心の部屋を一つ空けること。本当の大工は心の家を建てる人だ」という言葉をチョルスに言った。この言葉を父は守って、不倫した自分を許してくれたし、チョルスとの結婚も許してくれたんだということも話した。「許すのが難しいのは分かる。でも実は心の部屋を一つ空けるだけなのよ」と言って、スジンはチョルスを抱きしめた。

チョルスはスジンの説得に応じ、母を助けるためにお金を払うことにした。新居に予定していた金額でも足らず、必要なお金は総額で9000万ウォン(日本円で約870万)にも上った。
居酒屋で飲んでいたチョルスは「もう一文無しだ」とつぶやいたが、スジンは明るく「ここは私が払うからいいわ」と言った。スジンがポケットからお金を出そうとすると一緒にトランプが出てきたので、以前チョルスがやってくれたヤバウィのゲームをやってチョルスを励まそうとした。チョルスが言っていたのと同じ調子で「さあお金を賭けよう、犬でも当てられるよ。チョルスはタバコ代、スジンはおかず代。さあ当たりは!」とスジンが言うと、チョルスはスジンを抱きしめた。

一文無しになってしまったが、スジンとチョルスは一緒にがんばっていこうとしていた

物忘れが徐々にひどくなっていたスジンの元に再びヨンミンが現れる

検査を受けるスジン

スジンは再び病院を訪れた。しかしそれはイ先生と前回約束した一週間後ではなく、半月後のことだった。イ先生は、以前の診察と同じように録音をしながらまず今日が何日か聞いたが、スジンは答えられず「一週間後の約束が、半月後とは」と驚いていた。続けて「兄弟はいるか?」とイ先生が尋ねると、スジンは「妹がいます」と答えた。そこでイ先生はスジンの妹の年齢を尋ねたが、「20歳だったかな19歳だったかな」とスジンが曖昧な返事をしたので、次は妹の生年月日を聞いたところ、スジンは全く思い出すことが出来ず黙り込んでしまった。
その後もイ先生に「道を渡れるのは信号が何色の時?」と常識的なことまで質問されたのでスジンはどうしてそんな質問をするのか聞いたが、「何も言わずただ私の質問に答えるように」とイ先生は言った。そしてスジンはすぐに答えようとしたが、信号についての質問をもう忘れてしまっていて「何の質問でしたっけ」と言った。そしてさらにイ先生は「母親の姉をなんという?」「18に19を足すと?」「西向きの風に風船を放したら、どっちに飛んでいく?」など様々な質問をした後、スジンはMRI検査とCT検査を受けて診察は終わった。

ある日スジンが会社に出勤すると、同僚が「良いか悪いか分からないけど」と言い、何かスジンに言いにくい出来事があったようだった。それは、なんとスジンの不倫相手であったヨンミンが外国から帰国し会社に復帰してスジンの上司に戻った、というものだった。
暗い表情でスジンがヨンミンの部屋に挨拶に行くと、ヨンミンはアンナ(スジンの同僚でヨンミンの元妻の友達)と楽しそうに話していた。スジンがドアのところにいるのに気づいたアンナは途端に表情が鋭くなって、何も言わずに部屋を出て行った。ヨンミンがドアを閉めるように言ったので、スジンはドアを閉め入り口の近くに固い表情のまま立っていた。ヨンミンが座るように促したが、スジンは断った。「パリの支社をたたんでこの前帰国したんだ。また同僚に戻ったけど、以前とは逆で僕は独身、君は人妻だな」などどヨンミンは言い、さらに駆け落ちしようとしていた日のことについて話そうとしだしたが、スジンは「私は何も覚えていません。失礼します」と言って部屋を出た。

その後も取引先との商談でヨンミンとスジンは同席しなければならなかったが、スジンにとっては辛い状態だった。

仕事中も再びヨンミンと顔を合わせなければならず、スジンには辛い日々だった

スジンの病名が判明する

家に帰ったスジンは、建築家として新聞や雑誌に載ったチョルスの記事を切り抜いてまとめていて、そのすぐ横でチョルスは鉛筆を削っていた。
突然スジンは何かに気づいたようにいきなり立ち上がり、キッチンの方へ行ってゴム手袋をし冷蔵庫の中を何か探し始めた。しかし何も見つからなかった様子で冷蔵庫から顔を出したスジンは、今度は寝室を覗きに歩いていった。また何かが見つからなかったような表情で寝室のドアを閉めて振り向いたスジンは、先ほどまで自分が座って切り抜きをしていた居間にチョルスがいるのを見て「どこにいたの?」と言った。チョルスはずっと同じ場所にいてスジンが動き回るのを見ていたので不思議な顔をして少し笑うと、スジンは切り抜きが散らばっているのを見て「これはあなたがやったの?」と聞いた。さすがに何か変だなと思ったチョルスが診断結果はどうだったのか聞くと、スジンは「来週また来いって」と答えた。「また行くの?」とチョルスは言い、心配そうな顔でスジンを見つめていた。

スジンは検査結果を聞くために再び病院を訪れた。イ先生は説明しにくそうな様子で黙っていたが、ゆっくりと話し出し「検査して全ての資料を分析した結果、あなたの頭の中に異常なたんぱく質が蓄積していました。」と言った。少し難しい内容だったので「イ先生、何のお話かさっぱり分かりません。簡単なご説明をしていだだけますか?」とスジンがお願いをしたので、イ先生はどう説明すればいいか手探りの様子のままゆっくりと説明し始めた。「遺伝的な要因が大きく作用した珍しいケースだろう。何と言おうか…スジンさん、あなたはアルツハイマー病です」とイ先生は言った。全く聞いたことのない病名を突然言われてスジンは驚き戸惑っていた。続けて「先月の質問は痴呆を調べるものだった」とイ先生は続けて言ったが、スジンは「私の年をご存知でしょう?まだ27歳ですよ。まさか痴呆だなんてあり得るんですか?」と聞いた。
イ先生は、まだスジンは若いがその可能性はあり得るということを説明し「肉体的な死より精神的な死が先に来る。早く準備しておく方がいい。薬で進行を遅らせることは出来るが、気休めだ。手術も出来ないし、パソコンも電話も使えなくなるから会社員なら早く辞めた方がいい。片付けも何も出来なくなってしまう。家族や友達、自分が誰かさえ分からず、少しずつ記憶が消えていくんだ」とこの先出てくるかも知れない症状と対策を一つずつ話していった。

病院の帰り道、スジンはイ先生が説明してくれたことをずっと反芻していたが、泣かずにはいられなくなって、道端で立ち止まってうずくまって一人泣いたのだった。

人ごみの中こらえきれず泣き出すスジン

家に帰ったスジンはまだ動揺していたが、いつもどおりにしていようと努め帰ってきたチョルスを笑顔で迎えた。食後にチョルスとソファーに横たわっていたスジンは、会社を辞めようかと思っていることをチョルスに伝えた。チョルスは、スジンが会社を辞めて家で掃除や洗濯などをしてくれる方が嬉しかったので承諾したが、スジンが突然言い出した理由を聞いた。「ただなんとなく」と答えたスジンが続けて「明日辞めようか?」と言い出したので、チョルスが「変だな、何かあった?」と聞くと、スジンは突然チョルスにキスをした。そしてスジンは「子どもが欲しい?」と聞いたが、突然だったのでチョルスは「わからない」と答えた。自分の病気のことや、これから先の症状を考えたスジンは、チョルスとの人生計画について真剣に考えていたのだった。

それからスジンは「あれをやってほしい」とチョルスに言った。ヤバウィをやってほしかったのだが、スジンはその言葉が思い出せなくて頭文字の「ヤ」しか言えず「ほらあれだってば、トランプを何枚も広げて…」と説明した。チョルスはその説明でヤバウィのことだと分かったが「いつもあたらないのに?疲れているから嫌だ」と断ろうとした。しかしスジンがあまりに真剣な表情なので1回だけやることになった。
いつも言うセリフも無くチョルスがヤバウィをはじめたので、スジンがセリフ付でやって欲しいというと、チョルスは仕方ないという表情をしてから「さあ、お金を賭けよう。犬でも当てられるよ。」とセリフ付でもう一度初めからやった。最初は笑顔で見ていたスジンだったが、2人の思い出が詰まったこのゲームのやりとりさえ忘れるかもしれない自分の病気のことを考え、泣き出しそうになっていた。最後の「さあ当たりはどれ?」というセリフでチョルスが自分の方を見たので、スジンは泣いているのがばれないよう「降参だわ」と言ってトイレの方へ歩いていき扉を閉めた。
突然立ち上がって歩いていってしまったスジンを、チョルスは不思議そうに見つめていた。チョルスの手元にあったトランプは、スジンがもうヤバウィで外さないようにと、チョルスが全て当たりのハートのエースに交換してあったものだった。

トイレに入っていったスジンは、隅にうずくまり声を殺して泣いたのだった。

診断を聞いて家に帰ったスジンは、努めて笑顔でチョルスに接しようとした

チョルスに泣いているのがばれないよう、トイレで一人泣くスジン

チョルスに病気のことが言い出せないスジン

結局スジンは自分で言っていた通りに会社を辞め、食べ物の買出しに行ったり仕事に行くチョルスにお弁当を作ったりして、家で過ごしていた。会社に行かず家にいてゆっくり出来るようになったものの、まだチョルスに自分の病気のことを言うか悩んでいたためスジンの表情は少し暗かった。

スジンが家で横になって休んでいると、ヨンミンから電話がかかってきた。「なぜ急に辞めた?俺のせいなら話し合おう。困らせたりしない」と矢継ぎ早に話すヨンミンに対し、スジンは弱った声で「私は、家事に専念したいんです」としか言えなかった。するとヨンミンが「2人きりで話すのが嫌なら他の社員と一緒に行く」と言い出したので、スジンは「私が会社に行くわ」と答えた。
スジンは会社に出向くため街中を歩いていたが、突然めまいを感じて体調が悪くなってしまった。誰かに電話をかけて助けてもらおうと鞄から携帯電話を出したものの、今出した自分の携帯も初めて見るような感じで使い方が分からずぼーっとしていた。ふらふらと道端に歩いていって苦しんでいると、警察官がスジンに声をかけて助けてくれた。

会社へ向かう途中でスジンはめまいを感じ歩けなくなってしまう

チョルスは会長の家作りの現場でお昼ご飯の時間を迎えていた。チョルスの昼ごはんはスジンの手作りの弁当だったので、それを見た部下たちが「先輩はお弁当ですか?結婚すると違うなあ」とはやし立てた。どんな愛情がこもった弁当なのかとみんなが見ている中チョルスが重なっている弁当箱を開けると、上下共に白いご飯だけの弁当だったのでチョルスは驚いた。

これをきっかけに、ついにチョルスは自らイ先生の元を訪れ、スジンの病名について聞いた。アルツハイマー病のことを聞いたチョルスは驚きのあまり絶句し、天を見上げてしまった。そしてチョルスは同姓同名の別人か、もしくは書類のミスなのではないかと聞いたが、イ先生はきっぱりと「君の奥さんだ」と言った。事実を信じたくないチョルスは本当なのかと何度も聞くと、イ先生が「信じられないなら他の病院へ」と言って立ち去ろうとし、気が動転していたチョルスはイ先生に「確かなのか!違うだろ?」と大声でつかみかかった。
そこへ騒ぎを聞いた看護師が割って入り「先生もこの病気で奥様を亡くしました。この研究一筋の方です」と言ってチョルスを説得しようとした。看護師の言葉を聞いて少し手が止まったチョルスに、イ先生は「事実を受け入れるしかないんだ」と言った。病院を出たチョルスはすぐにスジンの携帯に電話をかけたが、出たのは知らない人で「この携帯を拾った者です」と電話の相手は答えた。スジンはめまいを感じて道端にうずくまっていた時、携帯を落としてしまっていたのだ。

その頃スジンは、自分を保護してくれた警察官と一緒に歩いていた。スジンの目はぼーっとしたままだったのだが、ある男性を見つけるとスジンは立ち止まって優しい目つきになった。それはヨンミンだった。スジンが警察官と一緒に歩いていたので「何かあったのか」とヨンミンは警察官に聞いた。警察官がどう説明していいか迷っていると、スジンが「ヨンミンさん」と言ってヨンミンの手を握った。病気のめまいのせいで、スジンの記憶は混乱していた。

その後スジンとヨンミンは近くのベンチに一緒に座った。ヨンミンが「俺たち、2年前に戻れないかな」と聞くと、スジンは「2年前?どうして?私たちが出会う前だわ」と答えた。スジンの記憶はヨンミンと付き合っている頃の状態に戻ってしまっていた。スジンの様子がおかしいのでヨンミンが「何て?」と聞くと、スジンは遠くを見つめ何か考えているような表情になった。「何を考えている?」とヨンミンが続けて聞くと、スジンはハッとした表情になりヨンミンの元からすぐに立ち去ろうとタクシーをとめて乗り込んだ。じっと考えている間にスジンの本来の自分の記憶(ヨンミンとは別れ、今はチョルスの妻である記憶)がよみがえったのだった。

警察官に保護されたスジンは記憶が混乱してしまっていて、ヨンミンを見かけると優しい表情になった

チョルスは昼間にスジンの携帯に別人が出て以降、ずっと街中を歩き回ってスジンを探していた。

あと心当たりがあるところはスジンと以前行ったバッティングセンターだったのでチョルスがそこへ向かうと、スジンがやけくそでバットを振っているのが見えた。チョルスが「ボールをしっかり見ないと」と声をかけるとスジンは振り向いて「(スジンの病気についての)話を聞いた?」と言った。チョルスが「何の話?」とはぐらかすと、スジンは「私の頭の中に消しゴムがあるんだって」と話した。
そしてスジンは意を決して「別れましょ。あなたの言うとおり幸せなんてないわ」と言った。チョルスが「何を言ってるんだ」と答えると、「もう終わり。記憶が消えるのよ。幸せとか愛とかそんなの無意味だわ。忘れちゃうから優しくしないで」とスジンは言った。しかしチョルスは「全部覚えておくよ。俺は頭が良くて建築士の試験にも受かったんだからな」と言ってスジンを笑わせようとしたので、スジンは以前チョルスが自分に言ってきた「あなた自信過剰ね。人生は怖いものなのに」という言葉をそっくりそのままチョルスに返した。「よく覚えていたな」とチョルスは言い、スジンは「忘れるはずが無いじゃない」と答えた。

もう泣かないと言っていたチョルスが、少し涙を浮かべながら「治療法がみつかるよ」とスジンを励まそうとしたので、スジンはまたチョルスが以前言った言葉をそっくりそのまま「親か国を失ったの?泣くなんてバカね」と言った。そしてスジンは「私は全てを忘れるわ。あなたのことも分からなくなる。私の記憶からあなたもわたしも消えるの。分かる?記憶が消えたら、魂も消えるのよ。私怖い」と言って泣き崩れた。チョルスも泣いていたが、スジンを立たせて「魂は消えない。俺に任せてくれ。俺が君の記憶で、君の心なんだ。分かった?これで終わり」と言って笑顔でスジンを励ました。そしてスジンとチョルスは抱き合い、2人で手をつないでバッティングセンターをあとにした。

記憶が無くなっていってしまう病気が判明してもなお、チョルスはスジンを支えようと決意したのだった。

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