私の頭の中の消しゴム(韓国映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『私の頭の中の消しゴム』とは、イ・ジェハン監督・脚本の韓国の映画。日本では2005年に公開。
建築会社社長の娘キム・スジンと、スジンの父が経営する建築会社で現場監督として働くチェ・チョルス。2人は偶然に出会い恋愛を経てやがて結婚し幸せな生活を送っていた。そんな中スジンが若年性アルツハイマー病におかされていると判明する。症状が進みスジンはチョルスの事も忘れ始めるが、それでもなおチョルスはスジンを支えようとする。病という困難を抱えながらもお互いを愛し続ける男女のラブストーリーである。

『私の頭の中の消しゴム』の概要

『私の頭の中の消しゴム』とは、2005年に日本で公開された韓国の映画。日本では興行収入が劇場公開時4週連続で第1位となり累計では30億円に達した(興行通信社調べ)。原作は、2001年読売テレビで制作された日本のテレビドラマ『Pure Soul〜君が僕を忘れても〜』である(脚本は『ごくせん』で知られる江頭美智留)。

1本の缶コーラをめぐる勘違いから偶然出会ったスジンとチョルス。その後再び運命的な出会いを経て、愛し合うようになりやがて結婚する。スジンはチョルスと出会う以前から物忘れが多かったが、ガスコンロの火を止め忘れたり、チョルスが真横にいるのにチョルスを探し始めたりするなど、だんだんと物忘れの度合いがひどくなっていった。そこでスジンが自ら病院に赴き検査を受けたところ、若年性アルツハイマー病であることが発覚する。医師の説明に絶望するスジン。しかしチョルスはその診断結果を知ってもなおスジンを懸命に支えようとする。
若くしてアルツハイマー病が発覚したスジンと、自分のことさえ忘れてしまうかもしれない病だと分かってもなおスジンを愛し支え続けようとするチョルスの切ないラブストーリーである。

イ・ジェハン監督は、日本の原作ドラマの中でヒロインが言う「私の頭の中には消しゴムがあるの」が物語の中で重要な言葉だと考えていた。まるで消しゴムがスジンの頭の中にあるように、愛するチョルスさえ忘れていく様子がこの言葉に表れているのだ。その為この台詞を映画タイトルに決定し、映画の中でもソン・イェジンが演じるスジンの台詞に採用した。

『私の頭の中の消しゴム』のあらすじ・ストーリー

スジンとチョルスの出会い

服飾の会社に勤めるキム・スジンは、不倫相手の上司ソ・ヨンミンと待ち合わせをしていた。ヨンミンは待ち合わせの1時間を過ぎても来なかったため、スジンは帰ろうとするも、悲しさから歩くことができずに電話ボックスの中で声を殺して泣いた。帰り道に立ち寄ったコンビニでは、ヨンミンが来なかったショックからか、缶コーラをレジに置き忘れてしまう。そのままコンビニを出たところで缶コーラがないことに気づいたスジンは、入り口で缶コーラを持ったチェ・チョルスと鉢合わせる。スジンは同じ缶コーラを見て、チョルスの行く手を阻もうとする。訳の分からないチョルスはあてつけで缶コーラを飲もうとすると、スジンが缶コーラを奪い、一気に飲み干し、大きなゲップをした後、その場を立ち去った。その後スジンがバスに乗ろうとしたとき、財布もコンビニに忘れたことに気づいて戻ると、店員が財布と缶コーラを持っていてくれた。それを見てスジンはチョルスに申し訳なく思い探したが、チョルスの姿は見えなかった。

春になったある日、スジンは父と食事に行くついでに、父の働く建築現場に寄ることになる。スジンはそこで現場監督をしていたチョルスを見かけ、見覚えがあったが思い出せなかった。

上司のヨンミンとのことで会社内での異動になったスジンは、紳士服部門で働いていた。ある日、新しいスーツギャラリーの開業が内装業者の倒産をきっかけに頓挫することになってしまう。そこでスジンは父に電話し、作業員一人を派遣してくれることになった。作業員が来る予定日、スジンはエレベーターの前で待っており、扉が開いてそこにいたのは、まさかのチョルスだった。チョルスとの再会にスジンはニヤニヤするほど嬉しく思っていた。

帰り道、タクシーを利用しようとしたとき、タクシーの背後から飛び出してきたバイクに乗った男によってひったくりに遭ってしまう。その様子を車から見ていたチョルスは、運転席のドアをバイクの男に当てることで、スジンのバッグを奪い返すことに成功する。日が暮れていたため、チョルスはフロントガラスが割れた車のままスジンを家まで送った。

チョルスのことが気になっていたスジンは、友達の協力のもと、道端の居酒屋で部下たちと飲んでいるチョルスに偶然を装い、声をかける。チョルスの部下とスジンの友達が帰った後も2人は残り、チョルスはスジンに抱き寄せキスをし、交際がスタートする。

2人の時間を楽しむ中、チョルスの製図の試験が近づいていることを知ったスジンは、試験日に合わせて友達とスーツを作ることにした。

スジンはチョルスとの結婚を考えていたが、チョルスは「責任が取れない」と否定していた。2人の意見は対立し、ケンカが続いた。そんな中、スジンは結婚を押し通すために、チョルスに内緒で自分の家族をディナーに呼んだ。スジンの父とチョルスは仕事で知り合いのため重たい雰囲気が立ちこめていた。トイレに向かったスジンが店の外で倒れているのを見つけ、チョルスはスジンを抱えて病院まで走った。それを見たスジンの父は、2人の関係を認めることになった。

スジンの病の進行

スジンとチョルスは無事結婚し、チョルスは建築士の試験に合格し仕事も好調、スジンも紳士服部門で働き、物事は順調に進んでいた。ある日の退勤後、スジンは帰り道が分からなくなるも、なんとか家までたどり着く。物忘れがひどくなっていることに悩んだスジンは、病院に行くことにした。病院では医学博士のイ先生の診察の後、MRI検査とCT検査を受けることになった。

スジンは、以前写真で見たチョルスの大工の師匠に会いたいことをチョルスに伝え、2人は師匠に会いに行くことにした。十数年ぶりに会ったため師匠は驚いていた。チョルスが席を外したとき、スジンは師匠から、チョルスとチョルスの母は関係が良くないことを知る。

スジンはチョルスが寝た後、以前チョルスが開けるなと言った引き出しを開けると、債務者にオ・チョンジャと記載がある、”仮差し押さえ決定に対する異議申し立て”と書かれた書類を見つける。後日、スジンはオ・チョンジャの家に向かうと、中には誰もおらず、家は差し押さえられていた。家に帰り、スジンはチョルスにチョルスの母を釈放するためのお金を払うよう要求した。しかしチョルスは「母親はいない」と否定し、怒りながら書類を破いてしまう。スジンは父からの「許しは、心の部屋を一つ空けること。本当の大工は心の家を建てる人だ」という言葉をチョルスに言い、抱きしめ、チョルスは母のためにお金を払うことを決める。

スジンが再び病院を訪れ、イ先生から「母親の姉をなんという?」や「18に19を足すと?」などと、いくつかの常識的な質問をされる。質問に答える途中、スジンは質問を忘れることがあった。その後MRI検査とCT検査をして診察は終わる。

ある日スジンが出勤すると、不倫相手であったヨンミンがスジンの上司に戻ることになった。仕事中もスジンはヨンミンと関わらざるを得なく、ストレスが溜まっていく。

スジンは診断結果を聞くために病院を訪れる。イ先生は言うのをためらいつつも、スジンはアルツハイマー病だと伝えた。記憶が消えていく病気で手術が不可能なため、会社を辞めるようにと同時に伝えた。帰り道、スジンは道端で泣き崩れてしまう。家に着いてからもチョルスに自分の病気のことを伝えられずにいた。

チョルスの決意

スジンが作ってくれた弁当が上下共に白ご飯だったのを見たチョルスは、イ先生を訪ね、スジンがアルツハイマー病であることを知る。チョルスはそれを受け入れられず、怒りでイ先生に掴みかかる。

会社までの道でめまいがしていたスジンは、自分の携帯の使い方が分からなくなってしまう。スジンは警察官から声をかけられ助けてもらうが、そこにヨンミンが合流したとき、ヨンミンのことを交際相手だと認識してしまう。

携帯に出ないスジンを心配したチョルスは、街でスジンを探し回る。チョルスがバッティングセンターに行くと、スジンの姿が見えた。スジンは「私の頭の中に消しゴムがあるんだって」と言うと、別れようと伝えた。チョルスは「治療法が見つかるよ」とスジンを励まし、彼女を支えていくことを決めた。

家にはスジンのために名前や住所などが書かれた付箋が貼ってあった。スジンはチョルスの母の誕生日を祝おうとする。スジンの私物を家まで届けてくれたヨンミンのことを旦那だと思ってしまい、ヨンミンは困惑する。家にチョルスが帰ってきてしまい、チョルスはヨンミンに殴りかかる。招待されたスジンの家族と師匠が家に来ると、その状況に驚いた。スジンの父は「娘の面倒は私たちが見よう」と言ったが、チョルスは自分が面倒を見ると伝えた。

チョルスはスジンと2人の家を建てる計画をしていた。チョルスが家を出るとき、スジンはチョルスに向かって「ヨンミンさん」と言う。チョルスは否定せず笑うが、家を出た後、涙を流した。

スジンからの手紙

家の中を歩いていたスジンはチョルスとの写真を見て、旦那の名前がチョルスであることを思い出し、申し訳なく思う。
チョルスが病院から帰ると、スジンはおらず、手紙だけが置いてあった。その手紙には、スジンはチョルスのことを忘れたくないが、記憶がなくなるため姿を消すとのことだった。チョルスは泣き叫ぶことしかできなかった。手紙には、スジンの父に会ってほしいとも書かれていたため、チョルスはスジンの父に会いに行くと、離婚届があった。

ある日、カンヌンにいるスジンから手紙が届いていた。それを見たチョルスは、急いでカンヌンに向かう。スジンは療養所にいた。スジンはチョルスのことを覚えておらず、チョルスは「初めまして。チェ・チョルスといいます」と言った。チョルスはスジンに思い出してもらいたくて、外出許可を得てコンビニへ向かう。そのコンビニは、スジンとチョルスが初めて出会ったコンビニだった。コンビニでは、スジンとチョルス2人の知り合いだけで、缶コーラを横取りする思い出の場面が再現された。

スジンとチョルスは車に乗り、ゆったりとした時間を過ごした。チョルスはスジンの目を見て「愛してる」と言い、涙を流した。

『私の頭の中の消しゴム』の登場人物・キャラクター

キム・スジン(演:ソン・イェジン、日本語吹替:小林さやか)

建築会社社長の娘。服飾の会社に勤めており、その会社の上司と不倫関係にあった。しかし駆け落ちの当日上司は来ず、失意の中コンビニに立ち寄った時運命の相手チェ・チョルスと出会う。やがてチョルスと恋愛関係になって結婚するが、物忘れがひどくなってきたため病院を受診すると、自分が若年性アルツハイマー病におかされていることを知る。やがてチョルスのことも忘れ始めたため、これ以上チョルスを悲しませたくないと姿を消した。
チョルスと付き合う前に作戦を立ててわざとらしく偶然会ったふりをしたり、建築士の試験を受けているチョルスを終わるまで待っていたりと、健気で可愛らしいスジンだが、チョルスとチョルスの母の関係をよくしようと懸命にチョルスを説得するなど、頼もしい一面も持っている。

チェ・チョルス(演:チョン・ウソン、日本語吹替:三木眞一郎)

スジンの父が社長を務めている建築会社の現場監督として働く。小さい頃に母親に捨てられ、預けられた寺で師匠に習い大工の知識を身に着けてきた。その培ってきた確かな大工の経験があるため、仕事中施工過程のことで上司と揉めることがあったが、建築に対する愛情がゆえの熱い行動だった。
スジンに対しては始めの頃はクールな対応をするときもあったが、付き合う前から密かにスジンをイメージした彫刻を彫ったり、スジンの病が分かってからも懸命に支えようとするなど、スジンへの深い愛情が見える。

ソ・ヨンミン室長(スジンの元不倫相手)(演:ペク・チョンハク、日本語吹替:堀内賢雄)

スジンの上司で、元不倫相手。スジンと駆け落ちを約束した日に待ち合わせの場所に来なかったにもかかわらず、仕事の都合で再びスジンの上司となった時(この時には離婚して既に独身)には、未練がましくスジンに言い寄った。会社を辞めたスジンのために家までスジンの私物を持っていったが、帰って来たスジンに見つかって殴打されてしまう。

アンナ・チョン(ヨンミン妻の同級生)(演:イ・ソンジン)

紳士服部門に異動になったスジンの新しい同僚。スジンが不倫していたヨンミンの元妻と友達であるため、なにかにつけスジンにきつい言動をとっている。

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