グランディアIII(Grandia III)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『グランディアIII』とは、2005年スクウェア・エニックスよりPlayStation 2用ソフトとして発売されたRPGゲームである。グランディアシリーズの第4作目にあたるが、今までの作品とは全く異なった舞台である。幼い頃、飛行王「シュミット」に憧れた主人公ユウキは、飛行機による大陸横断を目指す中で神人(コミュート)のアルフィナと出会う。行方不明の兄を探すアルフィナを助けるため共に旅立ったユウキは冒険の中で聖獣と神人の宿命を知り、世界の真理に触れ成長していく。

ガラス化するバース界の真実:希望を見出す長老ヘクト

心を閉ざしバイオリンを弾く長老ヘクト(左)

エメリウスがアークリフ神殿を破壊した時と同じ根のようなものが張り巡らされたバース界。植物や人などがガラスになってしまった光景を見て「この根が命を吸い取りあらゆるものをガラス化させているのだ」とアルフィナは確信した。そんな「ガラス化」が進むバース界にある集落、テラリウム。そこには、まだガラス化を免れている、残されたわずかな人たちが身を寄せ合って生きていた。
バース界の族長ヘクトは、かつてユウキとアルフィナがバース界へ迷い込んだ時に出会った少女だった。彼女の奏でるバイオリンは花を枯らし、生命を静かに奪った。それを止めようとしたアルフィナにヘクトは「地上の人々はいつも希望を運んでくる」と悲しげに言い、生き残った人々を町の広場に集めた。ヘクトは皆に、聖獣グリフが死んでしまった今、ゾーンに対抗する力はもう残されていないため我々がゾーンに負けたということ、あらゆるものがガラス化するゾーンの呪いを受け入れ穏やかに死を待つしかないことを告げる。人々はその言葉を受け入れ解散し、ヘクトは自室にこもってしまう。ユウキたちは彼らのことが理解できないままヘクトの家に泊まることになる。
翌朝、ヘクトの姿は無く、彼女が2、3日戻らないことを執事から聞く。ヘクトの帰りを待っていられないユウキたちは執事から、かつてエメリウスたちがこの地を訪れ、スルマニアの町の跡地であるスルマニア・ゼロに向かったことを聞くと、同じ場所を目指し旅立つことにした。
銀の河を越えた先には、フェムトと名乗る男が住んでいた。「ここがスルマニア・ゼロですか?」と尋ねるアルフィナにフェムトは「ここよりもう少し進んだところにある荒涼とした何もない場所がスルマニア・ゼロで、かつて聖獣ゾーンが守護しバース界で最も栄えていた町だが、他の聖獣たちによって滅ぼされたのだ」と教えた。聖獣たちがそのようなことをしたとは信じられないユウキたちだが、スルマニア・ゼロの様子を見るために進んでいくと荒れ果てた何もない大地が広がっていた。その中心にはヘクトの姿があった。ヘクトは、かつてエメリウスとデュンケルがこの地を訪れた時、自分も共にいたことを語りだした。
スルマニアを聖獣が滅ぼしたことに驚愕するデュンケルに、「憎み合い、傷つけあうのが聖獣の本性。そんなものを守っていたのだ俺たちは」と憤りをあらわにするエメリウス。聖獣を崇める習慣を断ち切り人の世界を作りたいと思っていたエメリウスは、スルマニア・ゼロの中心に封印されていたゾーンの身体の一部であるゾーンの爪の力に魅了されてしまう。この力を手にして自分が新しい世界を統べる存在になる野望を抱いたエメリウスはゾーンの爪に手を伸ばし、触れてはいけないと忠告するヘクトの言葉やデュンケルの制止も振り切って手に入れてしまう。神人として「全てと一体化し新しい未来を切り開け」というゾーンの声を聞き受け入れたエメリウスは、ゾーンの爪から剣を生み出し、封印を破壊し、新しい世界を作ることを宣言したのだった。
エメリウスの悪行を聞き、受け入れることのできないアルフィナだったが、「真実から目を背けてはいけない」というダーナの言葉に目が覚める。そして「それでも兄を愛しているから、この世界の真実を受け入れる」と気丈に振舞った。その姿に心打たれたヘクトは前向きになり、絶望を奏でるバイオリンをケースにしまい、「未来を信じる勇気をバース界の皆にも伝えたい」と言ってユウキたちを見送った。

最後の聖獣殺し:神人の宿命

不完全な紋章に傷をつけて狂ったように笑う幼いエメリウス。アルフィナの夢の中に出てきた。

地上に戻ると、ダーナはユウキたちに「昔、妹が森で聖獣の鳴き声を聞いたことがあると言っていた」と教える。その情報を元にユウキたちはバクラの集落でダーナの妹ルイリに詳しい話を聞いてからヴェジャスの森へと向かうことにする。森の奥にあるヴェージャ神殿の最深部大空洞で聖獣セイバに会ったユウキたちは、彼らがバース界に行っている間にドラクとヨウトもエメリウスによって殺されてしまったことを知らされる。セイバは「神人である前に人であれ。人と人の絆、それがお前の持つ最も強い力だ」とアルフィナに告げ、オーブを託した。
神殿を出ると、地上にはエメリウスとそれを追うデュンケルの姿があった。デュンケルはかつてバース界に行った際にゾーンの力に手を染めてしまったエメリウスを止められなかった責任を感じ、彼を止めるのは自分の役目だと思い刃を向けるのだった。そんな2人の元へ、大空洞から出てきたセイバが姿を現し「真実から目を背けてはならぬ」と諭す。その隙にエメリウスはデュンケルの拘束から逃げ出し、セイバの首を切り落とした。こうして全ての聖獣が殺され、エメリウスは歓喜の笑いと共にゾーンの剣を大地に突き刺した。すると大地が割けて浮上しスルマニアが復活したのだった。ゾーンの完全体が眠っているゾーンのさなぎが寄生したスルマニアは空へ浮かび、エメリウスはその大地に降り立ち、デュンケルは空を飛んでエメリウスを追った。アルフィナはその光景を見て気を失ってしまうのだった。
ひとまず野営して休むユウキたち。眠るアルフィナは夢の中で自身の精神世界へと旅立つ。幼い頃のアルフィナは、神人の証が兄と半分ずつ刻まれた手を見て「一緒に頑張ろう」と嬉しそうに言うが、エメリウスは口ごもってしまう。初めての儀式の前に逃げ出したエメリウスは神人の宿命を拒み、神官を傷つけ部屋にこもってしまった。最後の記憶を紐解くとそこにはエメリウスの部屋で、彼は自分の手に刻まれた紋章の反対側に傷をつけ「聖獣の力は俺だけのものだ」と狂ったように笑うのだった。
ふとユウキが目を覚ますとアルフィナの姿が無かった。ユウキが周辺を探すと、近くの川辺でアルフィナが泣いていた。「どうして2人で1つじゃだめなの?もう聖獣様がいない今、兄さんを止められるのは私しかいない。私一人で戦うしかない」と嘆くアルフィナを、「エメリウスの苦しみは分からないが、アルフィナの苦しみなら分かる」とユウキが抱きしめる。
そんな2人の元へ不思議な光と共に、「通じ合うこと、人の絆の力は言葉ではない、今こそメルクの扉を開きましょう」という声が届く。その声が聖獣の声だと確信したアルフィナは、まだ聖獣が生きていることを確信し希望を見出すのだった。
空に浮かんだメルク遺跡へ向かったユウキたちはそこで聖獣の幽霊ウナマに会う。神人を待っていたウナマはユウキたちにオーブを託すのだった。

スルマニアでの決戦:デュンケルの死

デュンケルの最期をダーナが看取る。

エメリウスを止めるため、スルマニアへ向かうユウキたち。エメリウスの手下であるヴィオレッタやロウ・イルと戦い撃破するが、ヴィオレッタだけは逃がしてしまう。
一方、エメリウスと一騎打ちで戦っていたデュンケルは、彼と互角に戦うため自らもゾーンの牙で手を貫いていた。最後の交錯時、エメリウスの剣はデュンケルを貫いたが、デュンケルの剣はエメリウスではなくゾーンのさなぎに突き立てられた。高い場所で戦っていた2人だったが、エメリウスの攻撃によってやられたデュンケルはそのまま落下してしまう。ダーナはデュンケルの元へ駆け寄り、最期の瞬間を看取るのだった。
逃げたヴィオレッタは「ゾーン復活のためには私のエメリウスへの愛が必要」と言い自らの命を捧げる。スルマニア最深部にたどり着いたユウキたち一行はエメリウスと対峙する。アルフィナが「兄さん、もうやめて」と訴えると、彼女の手に刻まれた神人の証が光りだし、それと共にゾーンが活性化しはじめた。その様子を見たエメリウスはアルフィナがゾーン復活に必要な存在であると確信し「来い」と言って彼女を攫い、側近グラウと共に飛び立ってしまった。ゾーンが活動しはじめ、ゾーンの呪いによって空が紫色に染まる。ゾーンの根は地上にまで広がり、ガラス化の呪いを広げていった。何とか飛行機に乗って離脱するユウキたちだったが、飛行機の動力源であるフライトユニットが故障し、雪山に墜落してしまうのだった。

もう一度空へ:シュミット最後の賭け

フライトユニットが使えない今、グライダーを使うことを思いつくユウキ(右)と親友のロッツ(左)

雪山に不時着したユウキたちは、近くにある町・ラフリドにたどり着く。エメリウスを止め、アルフィナを助けるためにはもう一度飛ぶ必要があった。その町でロッツと再会したユウキは飛行機の修理を依頼するが、ロッツは「空が紫になったらなぜかフライトユニットがみんなダメになっちまった」と話し、依頼に応えられないと告げる。ここでシュミットとも再会するが、再び飛ぶ理由がアルフィナを助けたいというものだと知ると「女の為になんて理由で空を飛ぶな」と言い放つ。ユウキは「見損なった」と言い、シュミットの工房を飛び出す。
何か方法がないかと空を見上げるユウキとロッツはグライダーで飛ぶ方法を思いついた。そこに黒い渦が現れヘクトが姿を見せた。アルフィナに呼ばれた、とヘクトは言って合流する。ユウキはグライダーを作り飛ぶことを試みるが雪山に墜落してしまう。その時、雪山の中で真珠のネックレスを見つける。それを持ち帰りラフリドに戻るユウキ。「もう一度だ」と言いながら倒れるユウキの元へ駆けつけたウルは「なぜユウキに飛行機を作ってやらないんだ」とシュミットに詰め寄る。全く応じる気がないシュミットだったが、いつの間にかウルの手にあったネックレスを見るや泣き崩れてしまう。そのネックレスはかつてシュミットが失った最愛の人のものだったのである。
翌朝ユウキが目覚めるとそこにはシュミットがいた。かつて自分が最愛の人を失った時に乗っていた、フライトユニットを使わないエンジンを乗せた飛行機を裏山に眠らせてあることを教えてくれたシュミットは、その飛行機でユウキの乗ったグライダーを気流で飛べる高度まで引き上げると約束してくれた。
ヘクトも仲間に加わり、裏山から飛行機を回収してきたユウキたちは、シュミットの作戦によってグライダーに乗り気流で飛べる高度にまで引き上げてもらった。しかしその時シュミットの乗る飛行機は火を噴き、墜落してしまうのだった。

アルフィナ救出:そして最終決戦へ

エメリウス(右)とアルフィナ(左)最期の別れ

気流に乗ったグライダーによって何とか崩壊したスルマニアに到着したユウキたちは、ゾーンの根のコアを倒した。これにより紫色に染まった空は元に戻ったのだが、サナギはまだ残ったままだった。ユウキたちはこれも壊し、先へと進んでいく。
一方エメリウスは最上部でアルフィナと共に紋章を合わせ、ゾーンの力を完全解放していた。その瞬間、世界のすべてがガラス化した世界に佇んだエメリウスは目の前でガラスになって砕け散るアルフィナのビジョンを見て崩れ落ちる。そんな兄をアルフィナは支え、「兄さん、温かいよ」と微笑みながら告げることで、エメリウスはまだ人としての心の温かさを持っていることを伝えた。するとゾーンの力によって足元は破壊され、アルフィナは落下しそうになってしまう。それを何とか支えるエメリウスだったが、その背後でグラウが彼の背中を剣で一突きにする。ゾーンの力を得て全てを手に入れようとしたグラウだったが、ゾーンの根に貫かれあっけなく死んでしまう。エメリウスは再び剣を手にし、ゾーンへ立ち向かう。そこへ駆けつけたユウキたちはアルフィナと合流し、ヘクトの力によって作られた光の道を渡ってゾーンの元へ向かった。
ゾーンの目前へ行くと、そこにはエメリウスの剣だけが残されていた。ゾーンとの最終決戦に挑み、倒したユウキたちは地上に戻る。消えゆくゾーンを見守っていると、流れ星が落ちる。そこにはガラス化したエメリウスがいた。エメリウスの死を悲しむアルフィナにガラスのエメリウスが動き出す。最期にエメリウスはアルフィナを抱きしめると「ありがとう」と告げて天に召されていった。
それから時が経ち、ウルは町で子供たちに囲まれ飛竜のシバと共に人気者になっていた。ヘクトはバース界でバイオリンを奏で、ダーナはバクラの集落にデュンケルの墓を建てた。ロッツは工房を建て、ミランダとアロンソは気ままな海の旅を続けている。そしてユウキとアルフィナは結婚し、娘のリティーを授かった。ユウキの作る飛行機を見て、娘もまた空へと憧れの思いを馳せるのだった。

『グランディアIII』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

ユウキ(CV:松風雅也)

本作の主人公。16歳。
アンフォグの村で母親のミランダと二人で暮らしている。幼い頃、飛行王「シュミット」の映画を見て以来、空を飛ぶことへの憧れを抱いており、「大陸横断」の夢を叶えるため親友のロッツと共に飛行機制作をしている。
完成した飛行機を試運転していたところ、コーネルに襲われていたアルフィナを発見し助ける。アルフィナと出会ったことで「神人(コミュート)」と呼ばれる種族と聖獣、そして聖獣の住む「バース界」を巡る宿命と戦いに巻き込まれることになる。
アルフィナと旅をするうちに恋に落ち、後に結婚して娘のリティーを授かる。

アルフィナ(CV:木南晴夏)

本作のヒロイン。16歳。本名は「アルフィナ・デ・パメラ」。
聖獣の意思を言葉にして代弁する「神人(コミュート)」と呼ばれる一族だが、その一族の宿命を憂いた兄エメリウスによって辺境の地に住む老夫婦に預けられた経緯がある。兄の真意を知るため、また神人として儀式に参加すべくアークリフを目指している。
料理の腕は最低で、まずい飯を何度か仲間たちに振る舞っている。後にユウキと結婚し、娘のリティーを授かる。

ミランダ(CV:若村真由美)

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