鳴り響くチェーンソーの轟音! レザーフェイス 虐殺の歴史

ホラーの金字塔と呼ばれる映画「悪魔のいけにえ」に登場し、チェーンソーで人を切り刻む残虐性と家族に頭の上がらない人間性を併せ持つ殺人鬼レザーフェイス。彼は「13日の金曜日」のジェイソンや「エルム街の悪夢」のフレディなどと並ぶホラーアイコンとして知られる。作品ごとに細かな設定が違う為にややこしくなっているレザーフェイスの生まれ育ちや家族、命運分け合った友人たちなど、その数奇な狂い咲き虐殺ロードを登場した作品ごとに紐解いていく。

窓辺でくつろぐレザーフェイス

先天性の皮膚病と梅毒を患って生まれる。幼少期から成人期にかけて、墓荒らしをしたり、付近を通りがかる人々を殺害して暮らしていた。
ある時、墓荒らしが頻発している(ソーヤー家の仕業)ことから、家の墓の無事を確かめるために帰郷がてらテキサス州を訪れていたサリー・ハーデスティと、その兄のフランクリンを含めた6人の若者がソーヤー家の近くにやってくる。
レザーフェイスはサリー以外の若者を殺害するも、偶然通りがかったトレーラーに乗りサリーは逃走。その後生き残ったサリーにより、ソーヤー家は警察に通報される。だが、若者たちの遺体は発見されず、一家も失踪したことにより、1ヶ月に及ぶ捜査にも関わらず、未解決のまま事件は幕を閉じる。

サリー。逃走成功で笑い泣き。

サリー逃走後(「飛び出す 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」の場合)

サリー逃走後、サリーの通報によってソーヤー家の前に駆けつけた保安官たちと自警団たち。
保安官のフーパーは、ドレイトンに対し最も凶暴なレザーフェイスを引き渡せばソーヤー家全員を殺害することはないという交渉を持ちかけ、ドレイトンもそれを受け入れる。
だが、自警団たちが勝手に火炎瓶をソーヤー家の家屋に投げ込み、家屋は全焼、ドレイトンは焼け焦げた死体となって出てくる。
自警団側についていたソーヤー家の近所に住む夫婦は、家屋から逃げ出して来たロレッタを蹴り殺し、自分たちに子供がいなかった為、ロレッタが抱いていた赤ん坊を盗んで名をヘザーとして育てる。
それから20年後、大人になったヘザーは養子であることを知る。
実の祖母に当たるヴァーナの遺産が入り、それを確認する為、仲間とともに出生の地であるテキサスへ赴く。
豪華な屋敷に着き、屋敷内を探索していると隠し扉を発見。
隠し扉の奥にはレザーフェイスが住んでいた。
ヘザー以外の人間はレザーフェイスにあっけなく殺害されてしまう。
ヘザーはカール保安官に保護され、警察署へ。
ヘザーは警察署で弁護士からヴァーナの手紙を読めと勧められ、そこでレザーフェイスがまだ生きていることが記されているのを知る。
同じ頃、カール保安官の父親でかつてソーヤー家を追い込んだ自警団のリーダーでもあったバート・ハートマン町長(ハートマン保安官の血筋と思われる)はレザーフェイス殺害を企てるが、レザーフェイスを殺害するにあたって邪魔者になるであろう(ソーヤー家の人間だと気付いたヘザーは、血の繋がっている家族であるレザーフェイスを守るために妨害してくるだろうとふんだ)ヘザーを先に殺害しようとする。
だが、ヘザーがソーヤー家の人間であり、守るべき存在であると気付いたレザーフェイスによって阻まれてしまう。
そこにフーパー保安官がやってくるも、フーパー保安官はかつてソーヤー家を捜査した時のバート町長のやり方に難色を示していた側の人間のため、レザーフェイスがバート町長を殺害するのをみすみす見逃すことに。
莫大な資産を得たヘザーは、レザーフェイスのお世話をしながら豪邸で生きていくことを決意する。

バート町長を殺害せんとするレザーフェイス

サリー逃走後(「悪魔のいけにえ2」の場合)

サリーが逃げ出してから13年後、ドレイトンがテキサスにオープンしたものの、すぐに閉園してしまったバトルランドという遊園地にソーヤー家は暮らしていた。
ある日、殺害した若者たちのせいで自分たちの悪行がラジオ局で放送されている(若者たちはラジオ局をハッキングし、勝手に自分たちの放送を電波に乗せて放送していた)と知ったババとチョップトップは、ラジオ局に突撃。
だが、ババはそこで出会ったストレッチというラジオDJに恋をし、殺害せずにラジオ局を破壊、ストレッチの同僚を拉致するだけに終わる。
これがレザーフェイス史上初めての恋である。
ラジオの音声を聴いていたレフティはホームセンターに赴き、チェーンソーを3つも購入する。
このレフティはサリーとフランクリンの叔父であり、13年間1人でソーヤー家の行方を追っていた。
ようやく掴んだ手がかりを元に、バトルランドへと向かう。
同じくストレッチも拉致された仲間を助けるため、別行動でバトルランドに潜入する。
だが、ストレッチはババに見つかってしまう。しかし、ババは見つけたストレッチを殺すどころか、ストレッチの前でダンスを踊ったり、人面皮をプレゼントしたりと上機嫌。そんなところをドレイトンに見つかって説教を食らってしまう。
ドレイトンは、かつて「屠殺の名人」と呼ばれたグランパにハンマーを持たせてストレッチを殺害させようとする。しかし、グランパは137歳のため握力が全くなく、幾度となくハンマーを落としてしまう。そこに、二丁チェーンソーを構えたレフティがやってくる。
戦闘態勢に入ったババたちソーヤー家。ババはレフティとチェーンソーで斬り合い、腹部を斬られてしまう。
よろめいたババはレフティに追い詰められ、錯乱し手榴弾で自爆しようとしていたドレイトンに接触。
その衝撃でドレイトンは手榴弾を手放してしまう。手榴弾はバトルランドごと爆破。
この時にドレイトン、レフティ、また、ババは死んだものと思われるが定かではない。
爆破から間一髪逃げ出していたストレッチは、落ちていたチェーンソーで追って来ていたチョップトップを斬って屋上から転落させて殺害し、天高くチェーンソーを掲げる。

チェーンソーを吟味中のレフティ

ジェディダイアの場合

「レザーフェイス -悪魔のいけにえ」のポスター。

5歳の誕生日に母親から誕生日プレゼントとしてチェーンソーを貰い、母親であるヴァーナから侵入していた泥棒を殺害せよとの命令を受けるが拒否する。
殺人に対して否定的だったジェディダイアだが、ある日、兄のドレイトンとナビンズに命令され、渋々近くを通りがかった少女・ベティを落とし穴に落としてしまう。ベティはハートマン保安官の娘だった。実際にベティを殺害したのは兄のドレイトンとナビンズだったが、ジェディダイアはハートマン保安官によって精神病院へと収監されてしまう。ちなみに、ドレイトンとナビンズは逮捕された。

チェックのシャツを着ているのがジェディダイア青年。中肉中背。この後何を食べて193cmの巨漢になったのかは不明。

精神病院で暮らすこと10年、正義感の強い勇敢な若者として成長していたジェディダイアは、患者である巨漢少年・バドたちと仲良く暮らしていた。
そんな時、新任の看護師であるリジーと仲良くなる。また、同時期にヴァーナが息子愛からジェディダイアの退院を望み、ハートマン保安官と掛け合っていた。だが、娘を殺されているハートマン保安官はそんなことを許すはずもなかった。
仕方なくヴァーナは病院へ強行突破し、精神病院の檻を開けてしまう。
動乱に陥った病院内。殺人衝動のある患者たちに看護師や医師たちは瞬く間に殺されてしまう。
ジェディダイアは気性が荒い患者のアイクからリジーを助けるが、「いい人質ができた」と、逃走を計画していたアイクとクラリスのカップルに言われる。
病院長を殺害して脱出してきたバドと共に車に乗り、ジェディダイア、アイク、クラリス、バド、リジーの5人で病院から逃亡を図る。
途中、立ち寄った喫茶店でアイクとクラリスが店員や客を虐殺し、金と新たな車を確保。
その間、バドは虫の息のまま発砲してきた客に腹を撃たれてしまう。
ハートマン保安官はジェディダイアたちを追って捜査を開始。
喫茶店で盗んだ車がガス欠になり、ジェディダイアたちは森の中にあった、所有者が自殺して誰も住んでいないトレーラーハウスで身を潜めることに。
皆が寝静まった頃、暴力で支配しようとするアイクとクラリスに嫌気がさしたジェディダイアとリジーは逃走を図ろうとするが、あっけなくアイクにバレてしまう。
見張りを任されていたバドは使えないデブだと言われ、アイクから直々にクビ宣告を受ける。
怒り狂ったバドはアイクを殺害。
翌朝、アイクを探しに外へ行ったクラリスは追ってきていたハートマン保安官に射殺されてしまう。ハートマン保安官はジェディダイアが逃げ出した怒りから既に狂人と化しており、見境なく人を撃つようになってしまっている。人質であるリジーですらハートマン保安官に助けを求められない状況になっていた。
逃げるジェディダイア、バド、リジーだったが、腹に銃撃をうけて体力の消耗が激しかったバドが撃たれ、顔面粉砕し死去。車を盗んで逃走するジェディダイアとリジーだったが、ハートマン保安官の追跡に遭い発砲を受ける。
ハートマン保安官の放った銃弾はジェディダイアの運転する車の後方ガラスを破って車内へ入り、ジェディダイアの顔面の肉をこそぎ落としてしまう。
バランスを失い、ジェディダイアたちの乗る車はそのまま横転。
息を吹き返したジェディダイアとリジーはハートマン保安官から逃げる。逃げた先にはソーヤー家があった。
ジェディダイアは、そのボロボロに崩れ落ちた顔面の肉をヴァーナに麻酔なしで縫って貰う。
そしてヴァーナから自分を精神病院にぶち込んだハートマンを殺すよう示唆され、遂に殺人衝動が芽生えたジェディダイアはチェーンソーを手にする。
ソーヤー家の仕掛けていたとらばさみにかかり、重傷を負って捕らえられていたハートマン保安官を首元から腹部にかけてをチェーンソーで切り刻むジェディダイア。
そして、ジェディダイアの真の姿を見てしまい、恐怖して逃げようとしたリジーの首もチェーンソーで一刀両断。
地下室にリジーの首を持ち帰り、顔面の皮を剥いでマスクにするとジェディダイアはそれを被り、レザーフェイスとして覚醒するに至った。

トーマスの場合

テキサスの精肉工場で働くアルコール依存症の女従業員スローンと、不倫していた主任との間にできた子で、スローンはトーマスを生んだ直後に死去。
トーマスは先天的な奇形で生まれてしまった為に不気味がられ、主任によってゴミ箱に捨てられてしまう。
そこをヒューイット家に拾われ、長男として生きていく事に。
6歳の時、自傷性の変性顔面異常症と診断される。その醜い顔を理由にいじめに遭っていた反動から、動物を切り刻むといった異常性が生まれる。
また、ヒューイット家特有の異常な縄張り意識(近隣に立ち寄った人間は皆殺し。ご近所付き合いもせず、腹の立つ人間がいれば殺害するなど)も芽生えていく。9歳の頃、虐めで不登校になった事から精肉工場で働き始める。12歳の時には知的障害があると診断された。

トーマスから唯一逃げ切った女。

突然精肉工場を閉鎖すると言い出した実の父である主任を殺害(実の父が主任であることを知ったショックと怒りによって)し、その調査に来たホイト保安官も殺害。その時にホイト保安官が着ていた服を、チャーリーが着ることとなる。
それ以降、殺人に目覚めたトーマスは近隣住民を殺害したり、チャーリーが連れて来た罪のない人たちを殺害したりし始める。
大勢の若者を殺害しては顔の皮を剥いでマスクを作って被っている為、トーマスにとってマスクにあまり深い意味はなく、ただ醜い顔を隠すためのもののようである。
ある時、チャーリーが連れて来た若者たちの中から1人だけ取り逃がしてしまう。彼女によってチャーリーは轢き殺され、レザーフェイスは片腕を切り落とされてしまうこととなる。その後、トーマスは彼女の通報によってやって来た警察官2人を殺害したのち、行方をくらませた。

人間としてのレザーフェイス

こうして「飛び出す 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲」編以外は生きているのか、死んでいるのか曖昧なレザーフェイス。
行為は凶悪そのものと言えるものの、恋をしたり、元々は正義感溢れる男だったレザーフェイスだが、狂ったハートマン保安官と母親ヴァーナに追い詰められた結果、怪物になってしまった。本来はそうなる予定ではなかったはずの人間が凶暴な怪物となってしまっている、という側面を持っている。これは、レザーフェイスという怪物が「エド・ゲイン」という実在の凶悪殺人鬼をモデルにしているからである。単なる殺戮マシーンとして描かず、人間としての側面も併せ持つことにとってキャラクターの深みを出し、殺戮一辺倒のつまらないキャラではなくしている。その創意工夫こそ、「悪魔のいけにえ」が未だホラー映画の金字塔として君臨し続けている証しなのである。

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