ドリームガールズ(映画)のネタバレ解説まとめ

『ドリームガールズ』とは、2006年にアメリカで製作されたミュージカル映画。ソウル/R&B系レコードのモータウン・レーベル所属の黒人女性グループ、ダイアナ・ロスとスプリームスをモデルに、実話を素に描かれたブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品。アメリカにおける60年代から70年代の音楽シーンと華やかなショービジネス界を背景に、デトロイトで結成された黒人女性ボーカル・グループ『ザ・ドリームズ』のサクセス・ストーリーと、その裏にある確執・裏切り・挫折など、様々な人間ドラマを描く。

「俺が流れを変えてやる!」

タレントコンテストに出場したドリーメッツだったが結果は落選。ガックリしている彼女たちに声を掛けて来たのが、中古車ディーラーを営むカーティス・テイラー・ジュニアという男だった。彼が「アマチュアコンテストなんかやめろ!」と言った後に自信たっぷりに放ったセリフ。そして、ジミー・アーリーという人気ソウルシンガーのバックコーラスを勧めた。

ドリーメッツの歌と彼女たちの姿を見てピンと来るものがあったカーティス。音楽業界には縁もゆかりもない彼が一か八かの大博打を討つきっかけとなった名セリフであり、カーティスとドリーメッツの出会いとなる名シーンでもある。

ザ・ドリームズ誕生

カーティスはドリーメッツをジミーから独立させ、「ザ・ドリームズ」に改名。ディーナをリードシンガーに据えたザ・ドリームズは、ファースト・シングル『Dreamgirls』で瞬く間に人気者となる。その後もヒット曲を飛ばし続け、TV番組への出演や雑誌の表紙を飾り、ロンドンでも人気を得るようになっていった。そしてディーナの美貌はますますスターとしての名声を向上させていく。

「ザ・ドリームス」誕生となった最初のステージのシーン。彼女らのファースト・シングル『Dreamgirls』は、本作のテーマ曲でもあり、夢が叶い、希望と自信に満ち溢れた3人の表情が印象的。本作中の最高のパフォーマンスを見せる名シーンとなっている。

ジミーの死

妻帯者でありながら相変わらずローレルとの不倫を続けていたジミーは、何年もヒット曲に恵まれないことにイライラが募りヘロインに手を出していた。そしてレインボーレコード10周年のステージで歌いながらズボンを降ろすという醜態を晒し、カーティスから解雇を言い渡される。そして数日後、ジミーがホテルの部屋で孤独死していたというニュースが飛び込んで来た。その死因はヘロイン中毒だった。

ソウル魂を愛し、C.C.と共に良質な音楽を作ろうとする彼は、ただただ売れる音楽を作ろうとするカーティスのやり方にイライラするばかりだった。ザ・ドリームスのサクセスス・トーリーと対照的に描かれるジミーの行き付く先は悲しい死であったが、たくさんの激しいステージを見せてくれたジミー。スターでありながらひっそりと行われた葬儀は余りに寂しい名シーンとなった。

「ザ・ドリームズは3人ではなく本当は4人です。」

ディーナ・ジョーンズとザ・ドリームズの生まれ故郷デトロイトで彼女たちの解散コンサートが行われた。ステージでは、別れを告げる曲『Hard to Say Goodbye, My Love』の熱唱が終わる。そしてディーナが最後の曲の前に観客に向かってコメントしたセリフ。

歌手になることを夢見た純粋な少女たち、ディーナ、エフィ、ローレルの3人は、カーティスの野望によって友情を裂かれてしまったが、彼と別れたことで新たな夢に向かって進む。3人の生まれ故郷デトロイトでのステージでまた一緒に歌える喜びが、ディーナのこのセリフに込められている。そしてミシェルを含めた最初で最後の4人でのステージは、本作最高の感動を呼ぶラストシーンであり名シーンと言えるだろう。

『ドリームガールズ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

映画化に至るまでのエピソード

1981年、ブロードウェイミュージカル「ドリームガールズ」は大ヒットを記録し、翌年のトニー賞で6部門を制覇した。世界中で上演され高い評価を得て、翌年には映画化の企画が持ち上がり、ブロードウェイミュージカル版に出資していた音楽界の重鎮でゲフィン・レコードの社長であるデビッド・ゲフィンが「ドリームガールズ」の映画化権を獲得した。その後、ミュージカル版の監督であるマイケル・ベネットと共に映画用の脚本に着手していたが、1987年にベネットが亡くなりやむなく中断となった。ゲフィンはやがて、ワーナーブラザースの映画制作会社としてゲフィン・ピクチャーズを設立。そこで彼は、ミュージカル版のプロデューサーであるハワード・アッシュマンと組んで再度「ドリームガールズ」の映画化に着手する。企画は順調に進み、主演のディーナ役にホイットニー・ヒューストンが決定したのだが、歌に対する彼女の主張が製作サイドと噛み合わずに、またしても挫折する。
1994年、ゲフィンはディズニーの製作部門のトップであったジェフリー・カッツェンバーグに誘われ、映画監督のスティーヴン・スピルバーグと共に、新しい映画スタジオであるドリームワークスSKGの設立メンバーとなったため、「ドリームガールズ」の映画化権をワーナーブラザーズにリースしたが、ワーナーでも映像化が出来ずにしばらく動きが止まっていた。
2002年、映画「シカゴ」の脚本でアカデミー賞を受賞したビル・コンドンと、映画プロデューサーのローレンス・マークがあるパーティで出会い、コンドンが手掛ければ「ドリームガールズ」の映画版もヒットすると確信したマークは、ゲフィンにGOサインを貰うと映画化は再び動き出す。だが、映画化権を保有するワーナーは、一度は出資を決めたが制作費が高額のために降りてしまう。その後パラマウント映画が参入したことで製作が続けられ、ローレンス・マークとゲフィンが共同でプロデューサーとなり、2006年にドリームワークスSKG/パラマウント、監督・脚本ビル・コンドンでようやく映画化に至った。

実話との相違点

本作に登場する「ザ・ドリームス」は、ダイアナ・ロスとスプリームスをモデルに描かれているとされているが、実話とはいくつか相違点がある。

モータウンの創設者で音楽プロデューサーのベリー・ゴーディ・ジュニアがモデルとされるカーティス・テイラー・ジュニアは、中古車販売経営者からドリーメッツがきっかけで音楽業界に乗り出すという設定になっている。事実は、スプリームス結成当時には、すでにモータウンを創設して社長を務めていた。
また、カーティス・テイラー・ジュニアは、エフィと恋仲であったり、ディーナと夫婦になる姿が描かれているが、事実は、ベリー・ゴーディ・ジュニアは最初からダイアナ・ロスがお気に入りで、自らもモーションをかけたが、ダイアナは全く靡かなかったそうである。因みにベリーの自伝『モータウン、わが愛と夢』によれば「ダイアナとは男女関係にはなかったが、一晩だけ共にした」と暴露している。

中盤でディーナがカーティスに映画の話を断るシーンがある。カーティスは映画を「クレオパトラ」と言い、ディーナはほとんどが16歳の役だと言っている。実際はダイアナ・ロスがマイケル・ジャクソンと主演した、「黒人版オズの魔法使い」として製作されたシドニー・ルメット監督の『ウィズ』(1978)を指していると思われる。

ジミーとドリーメッツの『Cadillac Car』を白人に盗作されたシーンがある。実際には無く、当時、チャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」をビーチ・ボーイズが「サーフィン・U.S.A.」として発表したことがあり、その事を暗喩していると思われる。

ラストシーン、ディーナが独立を決めた後の解散コンサートで、ザ・ドリームスを脱退したエフィが登場し、4人が再び共演するというパフォーマンスとなっている。実際、エフィのモデルとされるスプリームスのメンバー、フローレンス・バラードはグループ脱退後にメンバーと同じステージに立った事実は無い。因みにフローレンスはアルコール中毒により32歳で亡くなっている。

ブロードウェイ・キャストの俳優も出演

カメオ出演のロレッタ・デヴァイン

『ドリームガールズ』ブロードウェイのオリジナル・キャストで、ザ・ドリームズのメンバー、ローレル・ロビンソン役を演じたロレッタ・デヴァインが、本作のジャズ歌手役でカメオ出演している。デヴァインは大学卒業後にブロードウェイ出演を決め、 ローレル役がきっかけで注目を集めるようになった。以降、映画やテレビで活躍している。
また、ブロードウェイ・キャストでは、他にジェイムズ役のヒントン・バトルと、シャーリーン役(エフィの代役)のイヴェット・ケイソンも本作に出演している。

ミュージカル・ナンバーが追加された

本作のミュージカル・ナンバーは、舞台版に沿って構成されているが、舞台版に比べ、よりスプリームスやモータウンに近付けたイメージになっている。そのため、舞台版の『Ain't No Party 』という曲が削除され、『Patience』と『Listen』を含む計4曲の新曲が追加されている。因みに物語の設定上では、ジミーの死が追加され、場所がシカゴからデトロイトとなっている。
また、映画公開後の2009年の全米ツアー(舞台版の再演)では映画用の新曲が使用されている。

『ドリームガールズ』の受賞歴

第79回アカデミー賞
<受賞>
助演女優賞(ジェニファー・ハドソン)
録音賞(マイケル・ミンクラー、ボブ・ビーマー、ウィリー・D・バートン)
<ノミネート>
助演男優賞(エディ・マーフィ)
美術賞(ジョン・マイヤー、ナンシー・ヘイグ )
衣装デザイン賞(シャレン・デイヴィス)
歌曲賞
"Listen" (ヘンリー・クリーガー、スコット・カルター、アン・プレヴェン)
"Love You I Do" (ヘンリー・クリーガー、サイーダ・ギャレット)
"Patience" (ヘンリー・クリーガー、ウイリー・リール)

アフリカ系アメリカ人映画批評家協会賞2006
(African-American Film Critics Association Awards 2006)
<受賞>
Best Picture
Best Supporting Actor (エディ・マーフィ)
Best Supporting Actress (ジェニファー・ハドソン)
Best Director (ビル・コンドン)

アメリカ映画協会(AFI)賞 2006
<受賞>
Movies of the Year - Inclusion

第60回英国アカデミー賞
<受賞>
助演女優賞 (ジェニファー・ハドソン)

2006 Best Film Music (The Anthony Asquith Award)
<受賞>
”Dreamgirls”(ヘンリー・クライガー )

2006 Black Reel Awards
<受賞>
Best Film
Best Supporting Actress (ジェニファー・ハドソン)
Best Breakthrough Performance (ジェニファー・ハドソン)
Best Original Score (ハーヴェイ・メイソン・Jr、デモン・トーマス)
Best Original Soundtrack (DreamWorks SKG/Music World/Columbia)
Best Song, Original or Adapted
"And I Am Telling You I'm Not Going" (ジェニファー・ハドソン)
<ノミネート>
Best Actor (ジェイミー・フォックス)
Best Actress (ビヨンセ・ノウルズ)
Best Supporting Actor (エディ・マーフィ)
Best Song, Original or Adapted
"Listen" (ビヨンセ・ノウルズ)
"One Night Only" (ジェニファー・ハドソン)

2006 Broadcast Film Critics Association
<受賞>
Best Supporting Actor (エディ・マーフィ)
Best Supporting Actress (ジェニファー・ハドソン)
Best Song "Listen" (ヘンリー・クリーガー、スコット・カルター、アン・プレヴェン、ビヨンセ・ノウルズ)
Best Soundtrack
<ノミネート>
Best Picture
Best Acting Ensemble
Best Director (ビル・コンドン)

第64回ゴールデングローブ賞
<受賞>
作品賞(ミュージカル・コメディ部門)
助演男優賞 (エディ・マーフィ)
助演女優賞 (ジェニファー・ハドソン)
<ノミネート>
主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門) (ビヨンセ・ノウルズ)
Best Original Song in a Motion Picture ("Listen"; music & lyrics by ヘンリー・クリーガー、スコット・カルター、アン・プレヴェン、ビヨンセ・ノウルズ)

NAACP Image Awards 2006
<受賞>
Outstanding Supporting Actress in a Motion Picture (ジェニファー・ハドソン)
Outstanding Album (Dreamgirls Soundtrack)
<ノミネート>
Outstanding Motion Picture
Outstanding Actor in a Motion Picture (ジェイミー・フォックス)
Outstanding Actress in a Motion Picture (ビヨンセ・ノウルズ)
Outstanding Supporting Actor in a Motion Picture (ダニー・グローヴァー)
Outstanding Supporting Actor in a Motion Picture (エディ・マーフィ)
Outstanding Supporting Actress in a Motion Picture (アニカ・ノニ・ローズ)

Satellite Awards 2006
<受賞>
Best Motion Picture, Comedy or Musical
Best Director (ビル・コンドン)
Sound (Editing & Mixing) (Willie Burton, Michael Minkler, Bob Beemer, Richard E. Yawn)
<ノミネート>
Best Actress in a Motion Picture, Comedy or Musical (ビヨンセ・ノウルズ)
Best Actress in a Supporting Role (ジェニファー・ハドソン)
Best Screenplay - Adapted (ビル・コンドン)
Best Original Song
"Love You I Do" (Henry Krieger, Siedah Garrett)
"Listen" (ヘンリー・クリーガー、スコット・カルター、アン・プレヴェン、ビヨンセ・ノウルズ)
Film Editing (Virginia Katz)
Art Direction & Production Design (John Myhre, Tomas Voth, Nancy Haigh)

Screen Actors Guild Awards 2006
<受賞>
Outstanding Performance by a Female Actor in a Supporting Role (ジェニファー・ハドソン)
Outstanding Performance by a Male Actor in a Supporting Role (エディ・マーフィ)
<ノミネート>
Outstanding Performance by a Cast in a Motion Picture

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