Lobotomy Corporation(ロボトミーコーポレーション)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Lobotomy Corporation』とは、韓国のMoon Projectが開発したシミュレーションゲームである。
2016年にアーリーアクセスが始まり、シナリオやシステム面の改善を経て2018年に正式版がリリースされた。ゲームの目的は、巨大企業ロボトミーコーポレーションの管理人となって、不思議な存在「アブノーマリティ」を管理すること。公式で対応している言語は韓国語と英語のみだったが、現在では日本語に対応している。

ベンジャミン

Aやカルメンとともにロボトミー社を立ち上げた人物。
エリヤやガブリエルのように、創立当時のロボトミー社の職員のほとんどはカルメンの人柄に惹かれてチームに加わったが、ベンジャミンだけはAに惹かれてチームに加わった。
カルメンの死後、Aとともにカルメンの遺体を用いてアンジェラを生み出した。それ以降はAのことを見守っていたが、A亡き後のアンジェラの行動を止めるために、ベンジャミンではなくBという別人のふりをしてX(プレイヤー)に接触をはかる。
その後、アンジェラによって殺されたベンジャミンの遺体を用いてセフィラ「ホクマー」が誕生した。

『Lobotomy Corporation』のあらすじ・ストーリー

1~20日目

1日目、業務に向かうプレイヤーへ向けてアンジェラが応援する

エネルギー生産企業のロボトミー社が所有するエネルギー生産施設に管理人として配属されたXが、管理人を補助する高精度AIアンジェラと対面するところからシナリオが始まる。
アンジェラは自分がいかに優秀なAIであるかを説明を交えながらロボトミー社に入社したXを歓迎する。
その後、アンジェラは新たな管理人の紹介を待つセフィラたちと対面させる。セフィラとはアンジェラを補佐するためのAIであると教え、まずは運営初日から世話になるだろう施設上層にあたる部門のセフィラたちをXに紹介する。
最初に紹介されたのは職員への作業を監視・管理するコントロールチーム担当のマルクトである。マルクトは新しく配属された管理人であるXを歓迎し、仕事の能率を上げるために管理人を全力でサポートすることを約束する。
しかしそのミーティングの最中、とある職員が部屋の扉を叩き、「狂っている」「この会社は普通ではない」と喚きたてる。その職員はコントロールチームの職員だったため、マルクトが彼を「退社」させるよう手続きを取る。翌日、アンジェラが「退社」とは単にロボトミー社からの退職ではなく、「死亡」かつ「職員として所属していたデータも抹消すること」であると説明する。
つまりあの職員はロボトミー社によって殺害されたのだと知ったXに、「これがこの会社のやり方なのです。あなたもいつか慣れるでしょう」と淡々と言い残す。

その後、情報チームのイェソド、安全チームのネツァク、教育チームのホドと順に対面する(これらの対面イベントはゲームプレイによって前後するため、必ずしもこの順番であるとは限らない)。

イェソドはXと初対面するや否や服装のだらしなさを指摘し、厳しい態度を取る。
この厳しい態度は同僚であるセフィラにも同様で、自己紹介の途中で現れたネツァクに対しても冷淡に突き放す。規則やルールに忠実で、譲歩や妥協を許さないイェソドの態度は「毒蛇」と揶揄されているということが明かされるが、イェソドはそれを汚名と思っておらずむしろ気に入っていると答える。
イェソドがそこまで規則やルールに忠実なのは、過去のトラウマによるものであった。昔、ジェームズという名の職員と個人的な友情を築いたイェソドはジェームズに頼み込まれ、本来規則で禁止されているにも関わらず、ジェームズを異常存在「アブノーマリティ」への作業に加わらせることを許可してしまったのである。
その結果、ジェームズは発狂し、7人の職員を殺害し2体のアブノーマリティを脱走させてしまうという事態を引き起こした。最終的にジェームズの処分を言い渡したのは、不当な作業許可を出してしまったイェソド自身であった。
このことがトラウマとなり、イェソドはセフィラとして規則やルールに厳格であるようになったのであった。

ネツァクとの対面は、会議室の遠さに不満を漏らしながら簡単に挨拶を済ませるところから始まる。
自己紹介の後に、ネツァクはやる気のない態度で、社交辞令などこの会社に相応しくないと言い、彼は自分を今の地位に就かせた者は間違っていると不平をこぼす。
職務怠慢や仕事中の飲酒、果てはアブノーマリティから採取できる未知のエネルギーであるエンケファリンの摂取など数々の問題行動を起こしているのも、これらの問題行動によって管理人やアンジェラによってセフィラを辞めさせられることを期待しているためであった。
しかしいつまで経ってもネツァクはセフィラを辞めさせられることはなく、むしろ問題行動を起こすことこそが彼の役目であるのだとアンジェラが説明する。アンジェラ曰く、ネツァクの怠惰、破滅的な行為はむしろXのために必要なことなのであるという。

ホドは自己紹介の中で、ロボトミー社の暗い雰囲気と、多くの職員が正気を失う現状について説明し、自らが企画した様々なプログラムを試験的に導入していることを明かす。
その会話の途中、ティファニーという職員が現れ、ホドが企画したカウンセリングのおかげで命が救われたことを興奮した様子で話し、ホドに感謝の気持ちを伝える。
自分のプログラムが役に立っていることを知ったホドは喜び、ティファニーを激励し、この調子で可能な限り多くの人々を助けたいとXに話す。
しかしそのプログラムは直後、アンジェラによって止められることになる。
ホドのプログラムとは、メンタルケアという名目でエンケファリンを処方するだけだったのだ。
エンケファリンは服用すると多幸感をもたらす効果があった。
プログラムを受けたティファニーは躁うつ病を患った重度のエンケファリン中毒者となってしまい、「退社」させられてしまったのである。
エンケファリンの摂取は一時的に幸福感をもたらすが、それは真に職員のメンタルケアとはならない。メンタルケアという名目でエンケファリンを処方することは間違っていると指摘したアンジェラは、自身の権限でプログラムを終了させる。

これらのセフィラとのエピソードと並行して、Xの元にBと名乗る人物からメッセージが届くようになる。
Bは「諸事情により素性を明かせないが、ロボトミー社に詳しい人物である」と名乗り、Xが知りえないであろう真実を伝えると告げるが、そこで途切れてしまう。
翌日、アンジェラは業務の打ち合わせの途中「施設にネズミが入り込んだ」と言い、Xを管理人として導けるのは自分のみであり、誰に何を言われても耳を貸すなと忠告する。
その翌日以降に接触してきたBは、Xに「アンジェラは嘘をついている」ことを告げ、AIの嘘を見抜くというプログラム「キノピオ」をXのコンピューターへと送付する。
「キノピオ」を適用すると、AIが嘘をついていた場合に画面が赤く光るようになるということを説明したBだが、通信はそこで途切れてしまう。
次の日、ネズミを始末した(Bを殺害した)と言うアンジェラに、Xは「会社に害をなそうとしているか」もしくは「Xに害をなそうとしているか」について尋ねる。
質問をぶつけられたアンジェラは怒りを表してそれを否定するが、しかし「キノピオ」を適用した画面は赤く点滅していた。

怒りを表すアンジェラ

21日目以降

21日目以降、中央本部チームのセフィラ、ティファレトと対面することになる。
アンジェラに紹介された少年少女は2人とも自分を「ティファレト」と名乗り挨拶する。中央本部はとても広く、管理するためには2つ以上の身体が必要だったため2人のティファレトが誕生することになったのである。
ティファレトは自己紹介の中で、2人どちらも等しくティファレトであり、自分たちを区別するのは無意味なことであると説明を付け加える。
(以下、便宜的に少女の方をティファレトA、少年の方をティファレトBとする)

ある日、Xがティファレトから提示されたミッションを報告しに中央本部へと訪れると、そこにいたのはティファレトBだけであった。
ティファレトAは会議のため不在であることを話したティファレトBは、そのままXとの雑談に興じることにした。
その会話の中で、突然ティファレトBは「セフィラには誰かの感情と記憶が混ざり合っていることを知っているか」と尋ねる。
問題行動を続けるネツァクのことを暗に指しながら、セフィラにはあえて感情や欠点が設定されているのだと説明し、なぜこのように不完全な形で作り出したのかとティファレトBは疑問を口にする。
その答えはXにあり、Xの記憶の中にそれは眠っているのだと結論を述べるティファレトBだが、突然、自分たちは機械であって機械ではない存在だと、壊れたようにぶつぶつと呟き始める。
その時、会議のため不在であったティファレトAとアンジェラが現れる。様子のおかしいティファレトBを見たアンジェラとティファレトAは、「ティファレトは交換の時が来たのだ」とXに説明する。
交換の意味を知らないXに説明すると言って、アンジェラはX、両ティファレトを連れて倉庫へと向かう。

倉庫に到着したアンジェラは、Xにセフィラがどう見えているかを尋ねる。
感情豊かな人間の姿に見えているだろうとXの答えを先取りしたアンジェラは、それは偽りであるということを告げ、これまで見ていた景色はすべて認知フィルターによって歪められたものであるということを明かす。
直後画面が切り替わり、2体の直方体のロボットが突如としてXの前に現れる。アンジェラはロボットを指し、このロボットがティファレトであると説明する。
他のセフィラも同じようなものだと言ったティファレトAは、この倉庫こそ自分たちが生まれ、そして「破棄」される場所だと言う。
そして、作動したプレス機によってティファレトBは潰され、血肉と機械の残骸の塊と化す。
「次のティファレトはもっと長い間正常に動くといい」と、ティファレトAは冷静な様子で呟いた。

その後Xは懲罰チームのゲブラー、福祉チームのケセドと対面する。
ゲブラーはアブノーマリティへ強い殺意を抱いており、その理由を尋ねられると、「奴らは不死の化物である」と吐き捨てる。
そして「エネルギーを抽出される哀れな存在でも丁重に保護されるべきものでもない。死ぬこともできない命だ。できるだけ苦しませてやれ」と粗暴に笑う。
ゲブラーは過去、「赤い霧」と呼ばれていた傭兵であり、ロボトミー社の用心棒として雇われていた。しかし「ある事件」によってセフィラとなったのだと語る。

ケセドとの初対面中、福祉チームの職員が彼の元を訪れる。
ミスをしてしまったことを告白し謝罪する職員に気にするなと優しく言うケセドに、職員は規則やルールにうるさいイェソドと違っていいセフィラだと安堵する。
立ち去った職員を見送ったケセドは、「どうせ死ぬのだから、それまでは安らかにいられたほうがいいだろう?」とXに説明する。
どうせ死ぬどうでもいい存在なのだから、いちいちそれに入れ込むことはない。ただの道具、駒として見ているからそれが何をしようとどうでもいい、だから表向きは優しく接するのだ。
そこまでケセドが職員に対して淡々としているのは、過去のアンジェラとの確執によるものだ。
福祉チームのセフィラとして配属されたばかりのケセドは、できるだけ職員の犠牲を減らそうと奮闘し、数々の改善案を提出していた。
その中にはアブノーマリティへの作業をAIを搭載したロボットにやらせるというものもあった。だが、アンジェラは「人間がやらねばならない仕事がある」としてその案を却下した。
その提案が却下された直後、アブノーマリティの脱走が発生する。アブノーマリティ自体はゲブラー率いる懲罰チームによって鎮圧できたが、犠牲が出てしまった。
アブノーマリティ脱走の原因を探ったケセドは、あることに気がつく。アブノーマリティの収容されている部屋の扉の施錠を管理していたのはアンジェラであり、アンジェラはわざとアブノーマリティを脱走させたのだ。
そのことを指摘するケセドに、アンジェラはわざとであることを認め、「それこそが人間がやらねばならない仕事だ」と以前出した回答を引用しながら説明する。
アブノーマリティからエネルギーを抽出するためには人間の犠牲が必要不可欠であり、アブノーマリティへの作業を機械で代替するケセドの案は認められないものであった。
つまりこの脱走は、職員の犠牲を減らそうとするケセドへの見せしめであった。職員の犠牲が減ればエネルギー抽出は滞り、結果、運営に支障をきたしてしまう。
職員の犠牲を減らそうとするケセドの努力は全くの無駄であり、二度とこのようなことを提案しないようにとアンジェラはケセドに忠告する。
このエピソードがきっかけで、ケセドは職員を思いやることをやめ、職員のことを消費する資源や道具としてみなすようになったのである。

37日目以降

37日目以降にビナー、ホクマーと初対面することになる。

ビナーは、セフィラになる前は「頭」に所属していた自らの身分を明かし、アンジェラのことを狡猾なAIだと罵る。
ロボトミー社を潰す「頭」の一員である自分を捕らえ、ロボトミー社を運営する側であるセフィラとして「加工」し、抽出チームに配属したのだ。
アンジェラの行為はあまりにも悪趣味なAIだと罵ったビナーは、この抽出チームがどのような部門であるかをXに説明する。
抽出チームではコギトと呼ばれる薬品を取り扱っており、E.G.Oなどの抽出をはじめとした各業務を行っている。その抽出作業はE.G.Oだけにとどまるものではない、と言い、この部門でアブノーマリティを「抽出」していることを明かす。
人にコギトを投与することでアブノーマリティに変化させることもロボトミー社が「翼」となり得た技術である。
背景の石棺のような無数の箱の中身はその結果生まれたアブノーマリティのなり損ないであり、無数の失敗作であった。

Xと初対面したホクマーは、「初対面ではない」と言い、自身がBであることを明かす。
あの時はアンジェラによって阻止されてしまったが、BとしてXに忠告し、Xが真実にたどり着かないように仕向けていたのだ。
「真実を知れば必ずあなたは心を壊してしまうであろう、かつていた無数のXのように」と言ったホクマーは、Xの正体が記憶を消されたAであることを示す。
Aは自身が描いたシナリオに従って記憶除去処理をし、そして生まれたのが「この施設に新たに配属された管理人X」という存在であった。
そして、アンジェラの目的はAが描いたシナリオを完遂させることであるとも明かす。

そもそもAとは何者か、ロボトミー社とは何であるか。コギトとコギトを発見したカルメンとは何者か。
Xはビナーやホクマーの言うことを手がかりに、これらの事実をひとつひとつ明かしていくこととなる。
ロボトミー社は昔は小さな会社であった。マルクトの前身となったミシェルやイェソドの前身となったガブリエルをはじめとした社員を抱え、ティファレトのモデル(中身)となったエノクとリサを保護しながら運営されていた。
その運営の中心となったのがカルメンという女性であり、カルメンの人柄に惚れて集まった人々によって興されたのがロボトミー社であった。
カルメンは、「技術が行き着くところまで行き着いてしまったこの世界の人間は、かつてあった人間らしさや精神性を失った」「世界は病に包まれている」と考え、それを解決するための手段を探していた。
その模索の中で、ある日カルメンはコギトを発見する。コギトとはビナー曰く「井戸に対する釣瓶のようなもの」で、人間の自我や無意識を汲み上げ、実体として形成する作用があった。このことを発見したカルメンは、コギトによって抑圧された無意識を開放することで人間の精神性が取り戻せる(世界を包む病気が治る)と結論付け、コギト活用のための実験「コギト実験」を行う。
しかし実験は失敗し、被験者のエノク、ジェバンニが死亡し、さらには無断でコギトを持ち出したエリヤが死亡してしまう。このことを思いつめたカルメンは自殺してしまい、カルメンの存在によって保たれていたロボトミー社は崩壊への道を歩んでいく。
Aはベンジャミンとともにカルメンをモデルにアンジェラを生み出し、コギトを用いて世界の病を治すというカルメンの遺志を継ぐ。
残された職員たちはカルメンの実験を引き継ぎ、コギト実験を続けた。その結果、アブノーマリティが生まれ、アブノーマリティが生まれたことでロボトミー社は「頭」を脅かすものであるとして「頭」によって壊滅させられた。
この一連の出来事で死んだ人々をモデルとし、誕生したのがセフィラであった。

アンジェラ、そしてセフィラを生み出したAは、カルメンの遺志を継ぐためにとあるシナリオを描き、アンジェラに託した。
シナリオを託されたアンジェラは、その通りにAに記憶除去処理を施し、Aを「この施設に新たに配属された管理人X」という存在にした。
X(A)がどうなろうともシナリオを完遂させることという命令に従い、アンジェラはXがシナリオ通りに進むように操作してきた。
その途中でXが自我崩壊や自殺してしまった場合には、アンジェラが時間操作技術を用いて時間を巻き戻し、同様に他のセフィラたちも「交換」し、職員を「退社」させ記憶と情報の辻褄合わせをしていた。

「それらを知ってもなおこの先の真実を知るつもりなのか」とホクマーはXに聞いた。
ホクマーが管轄するこの記録部門には、これまでXが無限にやり直したすべての記録が残っている。ここに至るまでに死んだX、ここに至って死んだX、この先に進んで死んだXなど、時期や方法を問わず様々なXの「やり直し」が記録されている。そしてホクマーはそれらすべての結末を見ている。

この施設において、1日とはただ時間の経過ではなく、Xが進むと決めた時に進むものであるとホクマーは言う。
Xが望めば記憶除去処理をした上で1日目に戻ることもできるし、時間を停滞させこの先のn日目に進まないこともできる。
そんなホクマーに対し、Xはこの先に進むことを決意し、その意思を伝える。それならばとホクマーは「46日目」に時間を進めた。

エンディング

46日目に進んだXのもとに現れたのは、壮年の男性であった。
彼は、「この施設で生産されたエネルギーはロボトミー社の供給ラインに接続されていない」という話を持ち出し、ではこの生産されたエネルギーは何処に行っているのか、ということを説明する。
それはXがこの先(48日目、49日目、50日目)に進んで選んだ結末を実行するために使うためのものであった。だが本来の使用目的通りに使われることはなく、過去の無数のXが自我崩壊や自殺をしてしまい、「やり直し」が必要となった時に消費される。
この施設はAのシナリオのために用意された箱庭のようなもので、外界とは隔絶されており、この内部でなら時間操作技術によって何回でも「1日目」に巻き戻すことができる。
そこまで説明した彼はこの先がこれまでとは比べ物にならないほど過酷であると忠告し、準備ができていないなら「1日目」に戻るべきだと言う。
それでも先に進むというXに、「これから君が向かい合うのは、私達が答えられなかった問いである」と言い残し、Xを見送った。

47日目に進んだXの前に現れたのは、46日目に現れた男性であった。
彼はアベルと名乗り、「ここに至るまでの無数のXのうち、真実にたどりついたもの」であり、「ここに至るまでの選択の結果」であると答える。
Xをエンディングに導くための標識のようなものだと自己紹介したアベルは、コギトと、そしてカルメンがなそうとしたことについて改めて説明する。
先述の通り、科学技術が行き着くところまで行き着いてしまったこの世界では、人々は心を失いまるで画一的な機械の部品のように毎日を生きている。
この状態を病気ととらえたカルメンは人間らしさを取り戻そうとし、そしてその手段としてコギトを使用し、潜在的な自我や無意識を解放させるという手段に出た。
コギトを井戸に対する釣瓶のようなものとたとえ、「すべての人々に釣瓶(コギト)を渡せば、自分だけの水を組み上げられる」と考えたカルメンはコギトを用いてコギト実験を行った。
しかしその結果、人間らしさを取り戻すどころか生まれたのはアブノーマリティと呼ばれる化物であった。

アベルは「より良い結末を探すために何度も繰り返しているX」であり、Aの用意するシナリオの結末の1つである。
「カルメンの願いを最良の形で叶えるためにも何度も繰り返すことが必要である」と言ったアベルはXに自身(またやり直してより良い結末を探す)を選ぶように言う。
しかしXはそれは間違っている、今いるこのループこそが最も良い結末であると言い、アベルの手を振り払う。そして、47日目のアベルを越え、48日目へと進む。

48日目に現れたのはアブラムと名乗る男性であった。
彼もまた、46日目の彼やアベルと同じようにこれまでのXの選択の結末の一つであると名乗る。
そしてこの部屋は「彼女」の部屋であるとし、ここにカルメンがいるとXを案内する。
案内された先にいたのは、まるで脳と全身の神経網を広げて標本にしたかのような物体であった。アブラムはこれをコギトに沈んだカルメンだと言い、ここからコギトが絶えず生産されているという。

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