君の膵臓をたべたい(キミスイ)のネタバレ解説・考察まとめ

『君の膵臓をたべたい』とは、2018年に公開されたアニメーション映画。
住野よる著の2015年の同名小説を原作とした作品であり、2017年には実写映画版が公開されている。スタッフは本作が初監督となる牛嶋新一郎が監督・脚本を担当。制作会社はスタジオヴォルン。
孤高な主人公の少年「僕」と膵臓の病で余命わずかの快活な少女の青春模様や、キャラクターの葛藤・成長が描かれる。劇中の経過時間は約4ヶ月ほどで、独特なタイトルの本当の意味が劇中終盤でようやく明かされる。

「僕」に詰め寄り、桜良を傷つけたら許さないと告げる恭子。

旅行から戻りテスト休みが終わったある雨の日、「僕」は校舎の人気のない階段で恭子に呼び出された。
校内では「僕」が桜良に付きまとっているという噂が流れていて、恭子も彼と桜良が一緒にいることをよく思っていなかった。ましてや2人きりで旅行までするとなれば、桜良の身が心配でならなかった。
桜良は一見、快活だが、人一倍傷つきやすいのだという。中学の頃に彼氏と別れた際には、立ち直れないのではないかというぐらいひどく泣き、他にも仲の良かった教師が他界したときや、両親がケンカしたときなども深く悲しんだと、長年親友として彼女を見てきた恭子は語る。
故に、「あの子は誰かがそばにいて見ていてあげなくちゃいけないの!あんたにそれができる!?中途半端な気持ちなら、もうあの子に近づかないで!」と「僕」に掴みかかる。その拍子に、「僕」が読んでいた本が落ちてしまう。その本は夏目漱石の「こころ」だった。
恭子は最後に「もし桜良を傷つけたら、私、本気であんたを殺すから」と強く告げ、その場を去った。

桜良の家にて

恭子と話した後で図書室に向かい、桜良と2人で図書室で委員の仕事をしていると、本についての話になった。
「僕」は読書家で、特に太宰治が好きだった。桜良は本をほとんど読まなかったが、一冊だけ小さいときから好きな本があるという。それは、サン・テグジュペリの『星の王子さま』だった。
「僕」が『星の王子さま』を知ってはいたが、未読だと話すと、桜良は本を貸してあげるからと自分の家に招待する。家には桜良以外に家族は誰もいなかった。

本を貸すだけのはずだったが、雨が激しく降っていたため、少し遊んでから本を持って帰った方がいいと桜良は言う。2人はテレビゲームをして過ごしていたが、プレイ中に彼女が「君はさ、彼女を作る気はないの?」と唐突な質問を問いかける。友達すらいない「僕」は作る気も作れる気もしなかったが、「彼女はともかく、友達は作りなよ」と言われる。
続けて、「何があっても私を彼女にする気はきっとないよね」という問いに、「僕」が「ないよ」と返答すると、彼女は「よかった、安心した」と語った。

質問の後、「僕」は奇妙な不快感に包まれた。「僕」は居心地が悪くなり、早々に本を借りて帰ることにした。
「僕」が本棚から『星の王子さま』を探していると、突然彼女が背中に抱きついてきたため、硬直する。桜良は共病文庫に「死ぬまでにやりたいこと」をリストアップしていた。その中の一つが、「恋人でも好きな人でもない男の子と、いけないことをすること」だと語る。

桜良の部屋で見つめ合う2人。

「いけないこと」の意味は「僕」も察してはいたが、突然の言葉に戸惑い、何も行動に移すことができずにいた。「僕」は彼女に正面へ向き直され、無言で見つめ合う。「僕」の脳裏には恭子から告げられた「あの子は誰かがそばにいて見ていてあげなくちゃいけないの!あんたにそれができる!?」という言葉が響いていた。
桜良がキスしそうなほどの距離まで近づいてくるが、直前で彼女が吹き出したことで沈黙は破られた。

ただの冗談だと笑いながら彼女は告げるが、唖然としながら「僕」はこれまでにないほど怒りに駆られていた。確かに桜良の悪ふざけや唐突な行動はいつものことだったが、そのときの「僕」は無性に腹が立っていた。
「どういうつもりだよ」と高圧的に告げ、桜良の両腕を掴み、ベッドに押し倒して睨みつける。彼女の抵抗に耳を貸さず、ただ力任せに押さえつけ続けた。しかし、いかなるときも明るく笑顔だった桜良が、初めて涙を流していることに気がつき、「僕」はようやく彼女を解放する。

「僕」は桜良の家を飛び出した。

2人が出会った理由

桜良を傷つけてしまい、自責の念を抱えた「僕」は足取り重く雨の中を歩く。
家へ帰る途中、ある男子に声を掛けられる。クラスの学級委員の隆弘だった。クラスメイトではあったが「僕」とは全く関わりがなく、話したこともほとんどない。そんな彼が何故か「僕」を悪意のこもった眼差しで睨んでいた。

隆弘に殴り倒された「僕」。

自宅が反対方向である「僕」がこの近辺にいる理由は桜良であることを隆弘はわかっていた。クラスでも目立たず協調性もない「僕」のような人間が桜良と一緒に時間を過ごしていることが相当気に入らないらしい。隆弘に桜良との関係を強く詰め寄られるが、先程の桜良との諍いから精神的に疲弊していた「僕」は彼を相手にする気にはなれず、「彼女とは君が思っているような関係じゃない」とだけ告げて去ろうとする。
しかし隆弘は納得せず、「僕」を引き留める。苛立った「僕」は、彼に「あの子(桜良)は、しつこい人間は嫌いだそうだよ。前の彼氏がそうだったらしい」と敵意をもって告げた。
それを聞いた隆弘は憤慨し、「僕」を殴打する。雨の中、殴り倒された「僕」が見上げる隆弘は激しく動揺しており、「僕」の言葉が図星だったために逆鱗に触れたらしい。
その様子から「僕」は察した。桜良が以前付き合っていて最近別れた彼氏とは隆弘のことだったのだ。

雨の中座り込み、「人と関わるべきじゃなかった」と語る「僕」。

殴り倒された「僕」と隆弘が向き合っていると、そこに桜良が現れた。「僕」を追ってきたらしい。桜良に見られたことで更に狼狽した隆弘は、「そいつが桜良に付きまとってウザいから、俺がやっつけてやったんだ」と弁解するように訴える。
桜良はその言葉を聞き、「何それ… 自分の方が上だとでも思ってるの? 最低」と侮蔑を込めて告げる。続けて「私、もう隆弘嫌いになったから。もう二度と、私と私の周りにいる人達に近づかないで」と告げた。
強いショックを受けた隆弘は逃げるようにその場を去った。性格に難はあったものの、本当に桜良のことが好きだった彼にはこれ以上耐えられなかったようだった。

未だに倒れこんだままの「僕」は、「やっぱり僕みたいな人間が人と関わるべきじゃなかったんだ」と呟く。続けて、「こんな僕なんかより、彼や親友さん(恭子のこと)のように本気で君のことを想ってくれている人と一緒にいるべきだ。僕達は病院で偶然会ったに過ぎないのだから」と語る。

「あと少しの間でいいから、一緒にいてほしい」と涙ながらに願う桜良。

しかし、桜良はそれを真っ向から否定した。「君と私がクラスが同じだったのも、あの日病院にいたのも偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」と強く告げる。
本好きの「僕」が共病文庫を手に取ることを選び、桜良は「僕」と過ごす時間を選び、「僕」が桜良の願いを受け入れてくれることを選ぶという、様々な選択が積み重なって、今 自分達はここにいるのだと。そして今、「僕」が自分のそばにいてくれてることを本当に嬉しく思っている。だから、あと少しの間でいいから、一緒にいてほしいと切実に願う桜良。
その言葉に、「僕」はしばらく何も言えなかったが、「僕にできることは少ないと思うよ」と返した。それは彼なりのイエスの言葉だった。

こうして仲直りした2人だったが、おかげで両者ともずぶ濡れになってしまったため、一旦 桜良の家に戻ることになった。「僕」は初めて桜良に「ありがとう」と告げた。すると桜良はいつものように眩しい笑顔で微笑んで「何が?」とおどけた様子で返す。

桜良の家でびしょ濡れになった「僕」は着替えと『星の王子さま』の文庫本を借りると、自分は手に入れた本は順番に読むことにしているから、本棚に積んでいる他の本の後になるので、読み終わるまで時間がかかると告げる。すると桜良は、一年後に返してくれればいいと返した。
別れ際、「死ぬまで仲良くしてね」と言う桜良に、「僕」ははっきりと肯定の意思を告げた。最期まで彼女に付き合うと決心を固めたのだ。

入院、生きること、ハグ

パスタを食べに行ったりボーリングをしたりして共に過ごす2人。

その後、2人は共病文庫に書かれた「2人でやりたいことリスト」に沿って、パスタを食べに行ったり、ボーリングやカラオケなど様々な時間を一緒に過ごした。

しかし数日後、「僕」は、彼女が入院したことを知る。
「僕」は桜良のお見舞いへ行った。再会した彼女はこれまでと全く変わらずに快活だった。本人曰く、検査した数値が少しおかしかっただけで、体調は全然大丈夫だという。

2人はトランプでババ抜きをしながら、互いの近況報告をする。学校側や恭子のような友人には盲腸の手術ということにしており、医師と家族以外で桜良の病気を知っているのはやはり「僕」だけだった。
しかし学校側はもちろんそんなことは知らないので、「僕」が桜良をストーキングしたことで体調が悪化したのではという噂まで出回っているという。それを聞いて桜良は「君が他の人とちゃんと話さないからだよ」と注意する。

トランプが終わると、桜良は突然「一回だけでいいから『真実か挑戦』ゲームをやりたい」と言い出す。桜良には何か思うところがあるらしく、「僕」は了承する。
トランプをめくった結果、勝ったのは「僕」の方だった。「真実」の権利で、「僕」は桜良に「君にとって生きるとはどういうこと?」と問いかける。
真面目な質問だったため、桜良は暫し悩んだ末に応える。桜良は「私にとって生きることは、誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって言うんじゃないかな」と答えた。その言葉は、見舞いに来て病室のドアを開けようと立っていた恭子も外で聞いていた。

誰かと心を通わせるとは、誰かを認める、誰かを好きになる、誰かを嫌いになる、誰かと一緒にいて楽しいといったこと。
自分1人では自分がいるとはわからない。自分の心があるのは、「僕」や恭子や家族のようにみんながいるから。自分の体があるのはみんなが触ってくれるから。そうして作られた自身が今 生きている。自分で選んで、今ここで生きている。
それが桜良にとっての「生きる」だった。

その言葉で「僕」の中でまた一つ何かが変わった。「僕」は「本当に君には、色々なことを教えてもらう。ありがとう」と告げる。今まで自身が知りえなかったことを彼女から教えられていた。

病室で抱きしめ合う2人。

そろそろ「僕」は帰らなければならなかったが、桜良は最後にもう一つだけお願いがあるという。そう告げると、桜良は「僕」にそっと抱きついた。しかしそれは、以前の桜良の部屋のときのような悪ふざけではなく、純粋な抱擁だった。
最近、人の体温が好きなんだと桜良は語る。「僕」も桜良の体温を感じつつ、何かあったのかと気になったが、彼女は「ただ、君がくれる真実と日常を味わいたいだけ」と語る。

そうしてしばらく抱き合っていると、病室に恭子が入ってきた。2人の様子を見て激昂しかけるが、桜良が今度はじゃれるように恭子に抱きつき、「僕」に危害を加えるのを防いだ。その隙に「僕」は病室を後にする。

花火

2人で花火を見るシーン。

次の日、「僕」は桜良からのメールで入院期間が2週間延びたことを知る。気が気ではなくなり、夕方に彼女の見舞いへ向かった。
病室での桜良は、退院した頃には夏休みが半分以上終わってしまうことを嘆いていた。一見いつも通りに快活だったが、「僕」はどこか様子をおかしく感じていた。

日が沈み暗くなってくると、桜良はあることを提案する。
2人は懐中電灯を持って、夜の山道を登っていた。入院中なので本当は勝手に抜け出してはいけないのだが、桜良はすぐに戻るから大丈夫だと言う。2人が登った先は展望台となっており、そこからは綺麗な夜景が見えた。桜良はこの場所が病室から見えていたため、来たかったのだと語る。「僕」は、夜景が見たいだけなら退院後でもよかったのではと指摘するが、桜良は今日でなければいけなかったのだと返す。

次の瞬間、大きな打ち上げ花火が上がった。
今日は花火大会の日だった。桜良は祭りには行けなったがこの光景を見たかったのだという。暫し2人は花火に見とれる。
だが、「僕」は花火よりも桜良を見つめていた。今日ここに彼女が来たのは、もう二度花火を見に来れないとわかっているからではないかと思えた。不安は大きくなり、「僕」は思わず「死なないよね?」と問いかける。それは「いつかは死ぬ」、「膵臓の病気で死ぬ」という意味ではなく、「まだ、死なないよね?」という問いかけだった。そして、ここのところ桜良の様子がおかしいとも指摘する。

その問いに桜良は「なんでもないよ。君に嘘はつかない。死ぬときはちゃんと君に言うから」と告げ、再び花火に見つめる。そして笑いながら「今 幸せだなぁって思って。死んじゃうかも」と語る彼女に、「僕」は「駄目だよ。生きててほしい。とても」と真っすぐに告げた。

「僕」の真摯な態度を嬉しく思った桜良は、再び彼と抱擁を交わす。2人は何も語らず抱きしめ合った。

花火が上がる中で抱き合う2人。

退院、答え、メール

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