君の膵臓をたべたい(キミスイ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『君の膵臓をたべたい』とは、2018年に公開されたアニメーション映画。
住野よる著の2015年の同名小説を原作とした作品であり、2017年には実写映画版が公開されている。スタッフは本作が初監督となる牛嶋新一郎が監督・脚本を担当。制作会社はスタジオヴォルン。
孤高な主人公の少年「僕」と膵臓の病で余命わずかの快活な少女の青春模様や、キャラクターの葛藤・成長が描かれる。劇中の経過時間は約4ヶ月ほどで、独特なタイトルの本当の意味が劇中終盤でようやく明かされる。

共病文庫を最後まで読み終えると「僕」は桜良の母に、桜良の携帯電話を見せてほしいと懇願する。彼女が最期に受け取ったメールは、「僕」が送った「君の膵臓を食べたい」というメールだった。
自分の想いも彼女にちゃんと届いていたのだ。

「僕」は堰を切ったように泣き始めた。彼女が死んでから初めて流す涙だった。泣きながら「僕」は桜良のことを想っていた。自分達が正反対だったのは、反対側からずっとお互いを見ていたからだった。

去り際、「僕」は桜良の母から名前を聞かれる。「僕」は志賀春樹(しが はるき)と名乗る。

春樹の決意

後日、春樹がカフェで待っているとそこに恭子が訪れる。彼を敵視しているのは明白だった。春樹が桜良の葬儀に来なかったことから尚更その感情は強くなっていた。

春樹は恭子に共病文庫を見せ、桜良が病で余命わずかだったことを伝える。桜良は恭子を傷つけるようないたずらや冗談は絶対にしないはずだと説得し、共病文庫を渡した。

共病文庫を読むにつれ、恭子は泣き崩れていった。そして、最後の恭子宛ての遺書まで読み終えると、春樹を糾弾する。もっと桜良と一緒の時間を過ごしたかった、と。
そして例え桜良が病気のことを自分に伝えないことを望んで、彼女が春樹のことを大切に思っていたとしても、春樹を許すことはできないと告げてカフェを去って行った。

カフェに残された春樹は意を決し、カフェを飛び出して走り出し、恭子の後を追う。そして精一杯の勇気を振り絞って恭子に伝える。「少しずつでもいいから、僕を許していってほしい。そして許してもらえるなら…いつか僕と…友達になってほしいんだ!」

桜の花びら

それから1年後の夏、恭子と春樹は2人で桜良の墓参りに来ていた。
春樹は、自ら桜良のような人間になることを選んだのだ。人を認められる人間に、人を愛せる人間に。

春樹が墓を去ろうとすると、一瞬 桜の花びらが春樹の横をよぎった気がした。思わず振り返るが、そこには何も見えなかった。

2人が去った後、桜良の墓石には1枚の桜の花びらが乗っていた。

『君の膵臓をたべたい』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

「僕」 / 志賀春樹(しが はるき)

声 - 高杉真宙

本作の主人公。高校2年生。
名前は劇中では終盤まで明らかにされず、桜良からも「君」としか呼ばれていない。原作では名乗った際に桜良および桜良の母から「そんな名前の作家いるね」と評されており、志賀直哉と村上春樹から来ていると思われる。ほぼ一貫して彼の目線で物語が進み、モノローグも担当。

人と関わることに興味が持てず、幼い頃から友達が1人もいない。本人は特にそれを不満には思ってはなく、誰かと過ごすより1人で本を読んで過ごすことに関心があった。そのためクラスでも浮いており、ほとんどのクラスメイトから相手にされていない。両親には心配をかけないために、普通に友達がいるということで通している。
しかし、コミュニケーション能力に欠けるというわけではなく、話せばかなり流暢に皮肉や冗談を喋るため、桜良は「話すとすごく面白い人」と評している。
感情の起伏が少なく、無表情でいることがほとんどで、淡々としている。しかし感情が全くないわけでもなく、劇中では桜良に激怒したこともあった。
他者が自分のことをどう思っているかなどを深く詮索せず、自分の中で自己完結する傾向があるが、実際には誰かと触れ合ってその人を自分自身の特別な存在とすることを恐れていて、人付き合いを避けているらしい。そのため桜良からは「臆病な人」と評されている。

読書家で、家には多くの本があり、本棚に積んである順番に読むことにしている。一番好きな作家は太宰治。成績は優秀で、受験勉強はほとんど必要ないほど。

孤高な生き方をしていたが、病院で桜良の「共病文庫」を拾い、病気の秘密を知ったことがきっかけで彼女から気に入られ、日常が変化し始める。桜良から様々なことを教えられていくことで、本当になりたかった自分を知ることになる。

声を担当した高杉真宙は声優は本作が初。かねてよりアニメファンだったため、声優の仕事をするのが夢だったと語っている。

山内桜良(やまうち さくら)

声 - Lynn

本作のヒロイン。
春樹のクラスメイトだが、ほとんど喋ったことがなく彼の下の名前も知らなかった。

明朗快活な性格で、クラスの人気者。男女問わず人気があり、友人は多く、彼氏もこれまで3人できたことがあるという。容姿・性格 ともに周囲の者ほとんどが高評価している。いたずらや冗談が大好きでよく周囲をからかっているが、本当に傷つけるようなことはしない。
芯が強く、はっきりとした自身の意思を持つ。劇中ではチンピラ風の男に堂々と説教したり、春樹を傷つけた隆弘を追い返すなど気の強い面も見られる。

膵臓の病を患っており、ストーリー開始時点で余命1年を宣告されている。病名は不明で、症状は表にはほとんど出ず、食事制限などもない。しかし、鞄の中には大量の薬や注射器や検査機器などが常備されている。自身の余命を知りつつも、それを受け入れ、残された時間を明るく謳歌しようとする精神的な強さを持つが、本心では病気に対しての恐怖も感じている。劇中で入院した際には内心ではかなりの不安を抱えていた。
恭子曰く、一見明るいが人一倍傷つきやすいという。1人でいるときは涙を流すことも多かった。

本はほとんど読まず漫画しか読まないが、サン・テグジュペリの小説『星の王子さま』がお気に入り。
家族構成は両親と兄。子供の頃から快活で、よく「落ち着きのない子」と評されていたとのことだが、家族との仲は良好だった。

病院で自分の「共病文庫」を春樹が拾い、病気の秘密を知ったことがきっかけで彼と時間を過ごすようになる。
後に明らかになるが、実は病院で会う以前から春樹のことを気にかけていたという。誰かと触れ合うことを日常としていた自分の生き方に満足していたが、1人でも自分自身を確立していた春樹に憧れていて、彼のようになりたいと思っていた。

高校のクラスメイト

恭子(きょうこ)

声 - 藤井ゆきよ

桜良の中学時代からの親友。常に桜良のことを気にかけており、春樹からは「桜良の保護者」と評されている。
気が強く、劇中では春樹に敵意を向け睨んでいるシーンがほとんど。しかし根はいい子であり、桜良と一緒のときは年相応に楽しそうにしている様子も見られ、桜良は春樹と彼女に仲良くしてほしいと思っていた。桜良も彼女のことを単なる友人ではなく、一番の親友と思っており、共病文庫にも春樹と並んで個人向けに遺書を残していた相手。
中学時代から桜良のことを知っているため、共病文庫を見た際には、書かれているのが彼女の字だと即座に理解できた。彼女が本当は傷つきやすい性格であることから、「誰かがそばにいて支えてあげなきゃいけない」と考えている。

1年後には春樹と和解し友人となっている。ただし恋愛感情はなく、ガム君と交際間近の関係となっている。

隆弘(たかひろ)

声 - 内田雄馬

春樹と桜良のクラスの委員長。
才色兼備の優等生であり、女子からも人気が高い。人付き合いも上手く、交友関係は広い。

実は桜良の元・彼氏。詳細は不明だが、桜良曰く「友人としてはよかったが、恋人になるとしつこい」との理由で別れた。しつこいという点では、劇中で桜良と一緒に過ごす春樹を目の敵にし、春樹に付きまとって桜良との関係を追及するなどが見られる。あくまで桜良の身を案じて春樹を敵視している恭子とは異なり、桜良への独占欲に近い。
クラスでは良識的に振るまっているが実際は高飛車な性格で、春樹のことも見下しており、自分の方が上だと思い込んでいる。

しかし桜良のことが好きなのは本当であり、何とか彼女に振り向いてもらおうと必死になっていたため、春樹は嫌ってはいなかった。

ガム君

声 - 福島潤

春樹と桜良のクラスメイト。呼称はいつも「ガムいる?」と言いながらガムを差し出すことから。本名は不明。
誰にでも気さくに接する性格で、友人とまではいかないが、クラスで数少ない春樹にも声をかける存在。他の生徒と異なり春樹を避けたり陰口を叩いたりはしない。

恭子に好意を抱いており、1年後には交際間近の関係となっている。

幼い弟と妹がいる。

メインキャラクターの家族

kazuya2004m3
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@kazuya2004m3

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