アリス・ギア・アイギス(アリスギア)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アリス・ギア・アイギス』とは、コロプラより配信されているスマートフォン用ゲームアプリである。機械生命体ヴァイスの襲撃により地球を捨て宇宙船団による航海を続ける人類は、ヴァイスに対抗し得る高次元兵装「アリスギア」を開発。それから3世紀、若い女性だけが操作できるアリスギアによって宇宙船団の平和は守られてきた。その船団の一つ「東京シャード」のヴァイス対策企業「成子坂製作所」に新たな隊長が赴任したことで物語が始まる。

東京シャードコネクション

以前にノーブルヒルズによる妨害工作で頓挫した(「陰謀編」参照)成子坂製作所のスポンサー契約であったが、アキ作戦の成功により成子坂の社会的信用が大きく向上したことで事情が変わり、萬場盟華が社長を務める「マウンテンウィッチ」との全面的なスポンサー契約に至った。これは水面下で盟華との交渉を続けていた文嘉の努力の成果であった。この公式発表はマウンテンウィッチの新ブランド「テムドール」のファッションショーにて行われることになった。盟華から出撃予定のないアクトレスは会場に来るよう要請があったが、「リア充の巣窟は苦手」とシタラは参加を拒否。夜露、楓、怜、綾香、愛花は参加を決めるが、怜は「リンは打ち上げで焼肉パーティーでもない限り来ない」と言うのだった。そして、隊長は強制参加だと文嘉に念を押される。
そして「テムドール」のお披露目ファッションショーが開催された。モデルを務めるのはモデルアクトレスチーム「ドクソン」の君影唯と村尾未羅。ショーは大盛況に終わり、大喜びする盟華。業界向けの会見を終えてから一般向けの会見を行い、そこで成子坂との提携を発表するので隊長とアクトレスはその時に参列するよう盟華に要請される。そして、ショーを終えた唯と未羅が舞台裏にやって来たのを見た盟華は、二人を成子坂の面々に紹介する。盟華は、この二人を引き抜いてアクトレスチームを作りたかったがラスコルが手放してくれないと冗談めかして言う。盟華は、この二人を隊長と引き合わせたかったのだ。
その時、また夜露の目が赤い光を帯びる。これは未羅とのエミッション共鳴であったが、そのことに気付かない夜露。これにより体調を崩した夜露はそれでも会見に出ようとするが、夜露の体調が悪いことを察した楓に介抱されながら自宅へと戻る。一方の未羅も内面を触られたような気持ち悪さを感じ、それが夜露との共鳴であったことを確信するのだった。
その数日後、ラスコルの社長であるラトーヤ・利根川が唯と未羅を連れて成子坂の事務所を訪問してきた。ラトーヤは、アライアンスの事実上の指揮官である隊長に二人を売り込み、アクトレスとして活躍させることで一般層への知名度を広げようとしていた。しかし、唯はモデル業を優先させることを望んでおり、アクトレスとしての出撃回数を増やしたくなかった。未羅も唯の主張に同調する。そこに現れたのがドクソンの三人目である須賀乙莉であった。乙莉は、自分が成子坂へ出向することを提案する。乙莉は、憧れているシタラたちトライステラ☆のいる成子坂で働きたかったのだ。モデル業を優先したい唯たちも乙莉の提案に乗って、経験不足の乙莉を鍛えるために成子坂で使ってもらうよう後押しする。こうして、乙莉は成子坂に出向することとなった。
その後、成子坂の事務所内を見学していた未羅は夜露を見つけ、二人きりで話がしたいと持ちかける。しかし、先日舞台裏で未羅と出会った時の言い知れぬ不快感のことを思い出した夜露は、出撃待機中であることを理由に未羅の誘いを断る。「ふられた」と未羅をからかう唯は夜露の連絡先を聞いてくると言うが、未羅は夜露に対する関心は親しくなりたいという類のものではないとしてそれを止めるのだった。
一方その頃、成子坂の作戦司令室で情報交換をする真理、深沙希、芹菜。AEGiS情報本部による身分偽装で派遣社員としてギアメーカー3社に潜入していた芹菜は、宇時家に繋がる情報を集めていた。それによると、老舗のヤシマ重工は開発部門において成子坂製作所を敵視する動きが強く、成子坂の創業関係者である宇時家が入り込むのは無理だということであった。次いで新興メーカーである御成屋だが、以前に宇時家から売り込みの接触があったものの断っていることが判明した。そして調査の副産物として、現在の御成屋はアマルテアなど北条グループとの関係が深く、独立を標榜しながらも実質的に北条の傘下となっていることが判明した。最後にイズモであったが、この会社は国内の本社は決済業務のみで生産拠点は海外シャードへ点在、本社でも業務の全容を把握できていないという状態であった。
芹菜が潜入捜査を行っていたのと同時期に、真理は旧叢雲工業の関係者への聞き取りを行っていた。しかし、いずれも宇時家との接触はなく、とんだ見当違いだったと愚痴をこぼす真理。「SIN」の構成員であった叢雲の設計主任も、かつて宇時家が作った九品田凪の専用ギアをコピーしようとして粗悪なまがい物を作ったにすぎなかった。真理が入手した当時の叢雲製新型ギアの実証試験データもそのギアの劣悪さを証明するだけであった。真理が当初主張していた「叢雲は違法研究によって規制対象となるレベルの高性能ギアを作ったのではないか」という推測もまったくの的外れで、巨額の費用を投入して粗悪なギアしか作れなかったからデータを偽装したというのが真相ではないか、と。しかし、真理によると当時の関係者は皆その粗悪なギアを「成功した」と主張しているという。集団錯誤を疑う深沙希、口裏合わせを疑う芹菜。真理は、彼らの口ぶりからAEGiSに押収された実証試験データの方が何者かに改竄されていたことも考えられると言う。
そもそも、アリスギアについてはかつて磐田が言ったようにわからないことだらけであった。エミッションコアや積層回路についてはアウトランドから提供されるものを使用しているだけで原理すら不明である。深沙希は、アウトランドの研究者すらエミッションコアの正体を理解していないのではないかと言う。全てを知っているのは、既に失われた全能の人工知能「アリス」だけだ、と。話が怖い方向に向かい始めたのを止めに入る芹菜。深沙希も、これはただの妄想だと言う。裏付けが取れるまでは、アリスギアの真相は誰にもわからない。
話を切り替えた深沙希は、宇時家の足跡に関する手がかりを掴んだことを告げる。逮捕された「SIN」の工作員から得られた証言で、「SIN」と深い繋がりがある非公然研究者組織「コーカス・レース」に宇時家が関与していたというのだ。コーカス・レースは、世界各地の民間ギアメーカーのみならずAEGiS兵器開発局にも及ぶ違法研究ネットワークである。深沙希が言うには、コーカス・レースと「SIN」は必ずしもイコールではないが、アリスギアの研究開発において境界福祉法やアウトランドによる情報制限の範疇を逸脱したい、あるいはアリスギアによる対人戦闘データを取得したいという欲求にかられた研究者がその目的を達するために法整備の緩いシャードで実験を行うことで必然的に「SIN」との協力関係が発生するのだとのことであった。そして、「SIN」との協力関係を続けるうちに弱みを握られて脅迫される、または思想に感化される等で「SIN」に取り込まれてしまうのだ。
深沙希は、宇時家が開発した九品田凪のギアにはコーカス・レースと繋がっていた当時のAEGiS兵器開発局員たちが技術提供をした疑いがあると話す。そして、凪の最後の出撃についてはAEGiS内部のデータも抹消されており、関わった職員たちも既に退職し消息不明となっていた。深沙希は、宇時家自身もコーカス・レースの伝手で海外シャードへと逃亡したのではないかと推測する。そして、宇時家の逃亡先を割り出す手がかりは天満小梅の渡航歴にあるのではないか、と。小梅は、ここ数年来に不自然なほど多く中東シャード群へ渡航している。そして、最後の渡航歴はカタールシャード。それ以来帰国していなかった。深沙希は、そこから紛争地帯であるアルフライラシャードへと向かったのではないかと推測していた。真理は、自分たちもアルフライラシャードへ渡航することを提案する。

それから少し後、真理、深沙希、芹菜、そして隊長はアルフライラシャードを訪れていた。杏奈が司会を務める海外シャードの文化を紹介するバラエティ番組の取材というのが建前で、真理はカメラマン、深沙希は通訳兼コーディネーター、芹菜は新人レポーター、隊長は芹菜のマネージャーということになっていた。他の成子坂の面々に対しては、カメラマンとしての実績が欲しい真理とコスプレイヤーからタレントに転向したい芹菜を売り出すための企画というカバーストーリーになっていた。
建前とはいえ取材はしなければならず、芹菜は王宮であるシャフラザード宮殿前でレポーターとしての仕事をしていた。撮影を終え、まるでおとぎ話のように美しい王宮の様子に感嘆する芹菜。しかし、真理はアルフライラシャードで平和なのは王族であるベトロラム家の軍事力が及ぶ首都パールサ近辺だけで、他の地域は紛争地帯として渡航制限が敷かれているという現実を告げる。
アルフライラシャードが建造から現在まで紛争が絶えない状態にあるのは、地球脱出計画において月面政府が中東地域の民族、宗教的対立を無視して一つの大型連結シャードとしてまとめてしまったことに起因する、と語る真理と深沙希。そして深沙希は、月面政府とその後継組織であるアウトランドもアルフライラシャード内の紛争に対して原因の理解と解決ではなく抑圧をもって当たったことがシャード内に反アウトランド感情を生み、アウトランドにとって最大の敵である機械生命体ヴァイスを抑圧からの解放者と見做す「SIN」の誕生に繋がったのだ、とも語るのだった。更にアルフライラシャード内の紛争には治安維持の名目でシャードに内包された各国とかつて繋がりのあった旧東西両陣営が介入しており、300年以上前の地球で起きていた中東紛争と東西各国の対立が舞台を宇宙に移してもなお続いている。その理由は、アルフライラシャード建造時に転移された地殻に残された石油、そしてアルフライラシャードが所有する資源天体から採取されるプラズマ燃料「燃素(フロギストン)」にあった。時代が変わっても変わらない紛争の現実にげんなりする芹菜たち。アルフライラシャードの紛争地帯では、アウトランドの国際法に違反したアリスギアの対人戦投入も行われている。宇時家のような人物がその技術を生かすにはもってこいの場所であった。
パールサのバザール。ここはお金さえあれば何でも手に入る。高価な工芸品や貴金属、宝石。そして境界福祉法で制限されている最先端の電子機器や重火器、更にはアリスギアまで。深沙希は、ここで宇時家の情報を買うつもりであった。バザールの重鎮であるアルデシールは深沙希の養父であった籠目財団の当主・籠目武成と深い繋がりがあり、深沙希はそのコネを利用したのだ。アルデシールは、砂漠に隠棲する賢者「神智(アル・ヒクマ)」なら宇時家と小梅の去就について知っていると告げる。
深沙希は、渡航前にAEGiS情報本部の愛宕から言われたことを思い出していた。かねてから深沙希との繋がりがあった芹菜はともかく、真理は「凪の捜索」という目的が達成できなかった時はAEGiSを裏切る可能性がある、と。そして、成子坂の隊長もどう転ぶかわからないため、彼が裏切った際には処分する必要がある、とも。愛宕も個人的には成子坂の隊長を信頼しているが、万が一の保険をかけるのが諜報機関のやり方であった。深沙希に課せられた命令は、宇時家と小梅が持っている凪のギアに関する情報が「SIN」、もしくは他シャードの諜報機関の手に渡らないようにすることであった。
アル・ヒクマは、合流地点を「SIN」の勢力圏であるカヴィール砂漠と指定してきた。わざわざ危険地帯を指定してきたのは、最悪の場合こちらを殺害するという意志表示だと言う真理。真理は、2年前にアクトレスの軍事利用について調査している時にアル・ヒクマと会ったことがあり、警戒心が強く業突く張りの老婆であった、と零す真理。その真理を怒鳴りつけたのは、突然現れた灰色の髪の少女だった。アル・ヒクマの使いかと尋ねる真理。しかし、少女は自分こそがアル・ヒクマ本人であると名乗るのだった。アルデシールは、アル・ヒクマの一族は知識と経験を共有するのだと語る。少女の外見ながら老婆のような口調で話すアル・ヒクマ。深沙希は、彼女に宇時家と小梅の居場所について問う。それに対しアル・ヒクマは、代価としてAEGiS東京情報本部に対し超法規的措置として自身についての情報改竄を要求してきた。その要求を呑んだ深沙希に、アル・ヒクマは小梅についての情報を語る。宇時家が「SIN」に匿われていることを知った小梅は半年前にアル・ヒクマを訪ね、彼女の手配で「SIN」の支配地域に潜入したというのだ。そして、アル・ヒクマは「九品田凪は生きている」という推測を口にする。宇時家は凪のギアから発信された生体徴候のデータを受信し、凪が冬眠に近い状態で宇宙空間に存在することを確認。その情報を手土産に「SIN」へ匿われたというのだ。
アル・ヒクマがAEGiSに望んだ情報改竄。それは、「東雲チヱ」という名前の少女の戸籍を偽造し、それを自分のものとして東京シャードへ渡航することであった。アル・ヒクマこと東雲チヱは、こうして東京シャードへやって来て成子坂製作所のアクトレスとして所属することになった。それは、アル・ヒクマという人物の正体(註:「東雲チヱ」の項目を参照)に関わることであった。
アル・ヒクマからはもっと無茶な要求をされると思っていたAEGiS情報本部の愛宕は、その内容に拍子抜けすると同時に不審にも思っていた。有力な情報源ではあるが、危険人物でもあるとして深沙希に監視を要求する愛宕。深沙希は、アル・ヒクマのもたらした凪に関する情報に疑いを持っていた。しかし、愛宕は、「SIN」がその情報を信じて宇時家を匿ったということが本筋でありその真偽は些細なことだと考えていた。そして、宇時家が「SIN」に身を投じた動機である「アリスギアを使用したエミッション能力の無限拡張による新人類への進化」も、「荒唐無稽な話だが、それを信じて動いている人間がいる」ことが重要なのだと語る。
一方その頃、AEGiS特殊部隊の鳳加純は、ここ最近のヴァイス出現数減少や出現したヴァイスが東京シャードへ向かわず逃走する事例などを分析。その結果としてヴァイスの大規模侵攻部隊が東京シャードを遠距離から包囲、そのため侵攻部隊とは無関係のヴァイスは東京シャード近辺から逃亡しているという結論を出した。AEGiS防衛政策局次長の霧島は、その報告を受けて加純たちに調査を命じる。特殊部隊の加純、京、アンジーは、ただちに出撃するのだった。

闇の落とし仔

AEGiS兵器開発局の新型ギア性能試験という名目で東京シャードの排他的経済宙域に出撃した鳳加純たち特別部隊。いつもであればこの宙域まで移動する際にヴァイスと複数回の遭遇が当然であった。しかし、ヴァイスの姿はまったく見当たらず、不審に思う加純たち。その時、進路上にヴァイス群が出現し、特別部隊と交戦状態に突入した。そのヴァイス群には、これまでの交戦例が少ない小型ヴァイスの特異個体が多数含まれていた。

その頃、夜露と楓、そして隊長は乙莉の招きでラスコルの事務所を訪れていた。いかにも工場の事務所といった趣の成子坂製作所とは違うラスコルのお洒落なオフィスに驚く夜露たち。そこに現れたのは唯と未羅だった。唯は乙莉に社長と面会の約束を取ってあるかを確認するが、乙莉はすっかり忘れていた。乙莉の段取りの悪さを詫びる唯。唯はマネージャーの城島を通じて社長に成子坂の隊長が来たことを連絡。そして、乙莉が成子坂に出向してアライアンスの仕事をするようになって以降、アクトレスとしてもモデルとしても成長していることを伝えて隊長に感謝の意を述べる。乙莉の成長に感心した唯と未羅は、一度断った成子坂への出向を申し出る。モデルの仕事などもあるため、チーム単位ではなく個人枠でも仕事を請けるという唯。隊長はそれを承諾し、ドクソン全員がアクトレスとして成子坂に出向することが決まった。
一方、待機命令を口実に未羅との会話を拒んだこと(前話参照)を心苦しく思っていた夜露は、そのことを未羅に詫びると共に会話の機会を持とうと願い出る。その時、再び二人のエミッションが共鳴を起こした。未羅は夜露と自分が共鳴することに何らかの心当たりがあるようだが、それをうまく言語化できず口ごもる。夜露は、未羅と自分が特別な関係であることを嬉しく思う、という。未羅も、夜露の言葉から自分の気持ちが心を通じ合う相手を見つけたことによる「嬉しい」であると気付き、微笑む。
その様子を見た唯は、人付き合いの苦手な未羅がすぐに夜露と仲良くなったことを喜ぶ。しかし、楓はそんな夜露と未羅の姿を険しい表情で見ていた。唯は、楓のその感情は嫉妬ではないかと言うが、楓はそれを否定する。嫉妬であることを口では否定した楓だったが、その表情は夜露が憧れていたのは自分を通した姉・京の姿だったことを知った時と同じであった。

隊長と薫子は、AEGiS政策局次長の霧島に火急の用件で呼び出されていた。その用件とは、トラベルオーダー東京の外務審議官・志賀和樹からのものであった。テロリストであるアル・ヒクマこと東雲チヱを東京シャードに渡航させるにあたっての超法規的措置の調整を行ったのが彼であった。志賀は、アルフライラシャードの第一王女であるファティマ・ベトロラムが東京シャードへ留学すると話した。王女は一環でアクトレスとして活動することになったが、自身の引受先をAEGiS東京ではなく成子坂製作所と希望していた。要人の子女が公的機関のAEGiSでなく他国のアクトレス企業に勤務することは外交上極めて異例の事態であったが、王女のみならず国王のアルアブラ・ベトロラムの要望でもあった。かつて二人はお忍びで東京シャードを訪問した際、成子坂製作所のアクトレスらと交友関係を結んだのだという(註:イベント「タマちゃん探検隊」「初めてのコス参加がコミマでも許してくれますか?」より)。志賀は、トラベルオーダー東京の立場から、主要な燃素産出国であるアルフライラシャードとの関係を損ねないために是非とも成子坂製作所に王女の身柄を引き受けてもらわねばならない、と要請してきた。隊長と薫子は、アル・ヒクマの件で借りを作ったこともあり首を縦に振らざるを得なかった。
そして、ファティマ王女は成子坂製作所に着任。憧れの成子坂製作所でアクトレスとしての第一歩を踏み出すことになった。ファティマは自分を「王女殿下」と呼ぶ楓に、他のアクトレスと同等に扱うよう希望する。夜露と楓は、ファティマとなるべく自然体で接するよう心掛ける。夜露は、ファティマがなぜ成子坂を希望したのかを尋ねる。その時、シタラたちトライステラ☆の3人が出勤してきた。シタラたちは、遠いアルフライラシャードにいるはずの友人が成子坂の事務所にいることに驚愕するのだった。

真理は、琴村姉妹と杏奈に凪が宇宙のどこかで専用ギアと共に生存していることを伝える。7年間も宇宙を漂っている凪のことを思い、悲しむ琴村姉妹。すぐに助けに行けないかと言う朱音だったが、凪のギアの正確な座標を知っているのは宇時家だけだと答える真理。当の宇時家は現在アルフライラシャードの奥地で「SIN」に匿われているためとても手を出すことができない。絶望する琴村姉妹だったが、杏奈はそれでも絶対諦めないと宣言した。「この宇宙のどこかに凪がいる限り、希望を捨てない」と熱弁する杏奈の姿に、琴村姉妹は凪を必ず連れ帰るという決意を新たにする。真理は、たとえ凪が7年間宇宙にいたことでどんな状態になっていても助け出すことを誓う。

遭遇したヴァイス群を撃退した加純たち特別部隊。その戦闘を分析していたAEGiSのオペレーターたちは、このヴァイス群が従来とは構成も戦術パターンも違う存在であることを報告し、大規模侵攻部隊の尖兵である可能性が高いと結論付けた。その時、新たなヴァイス群が加純たちを追って超空間ゲートで転移してきた。その中には、超・超々大型ヴァイスの反応も確認された。オペレーターは加純たちに速やかな退避を要請。出鼻を挫いて機先を制するべきとする京、長丁場は不利として撤退を進言するアンジー。加純は、可能な限り情報を集めてからの退避を決定した。ヴァイスが東京シャード近隣宙域に侵攻拠点を構築するつもりであることを察した加純は、大規模侵攻が目前に迫っていることを確信する。

その頃、買い物を終えた夜露は誰かに呼ばれていると感じて裏通りへと向かう。そこで出会ったのは下校途中の未羅だった。夜露の気配を温かく優しいものとして感じる未羅。一緒に帰ることになった二人は、お互いの家族の話をする。夜露を産んだことで身体を壊し、以後は病弱になったという夜露の母・綾子。夜露は、そんな母を大事にしている。未羅は、実の両親とは死別して今の両親とは血縁がないことを語る。未羅の複雑な家庭環境に驚きつつもそれを受け止める夜露。未羅は、夜露の夢が「世界中の人を笑顔にする」ということ、夜露自身もそれは無理だとわかってはいるけれど手の届く範囲の誰かを笑顔にするための誓いであることを聞き、それを応援したいという。夜露も、未羅の仕事であるモデルはたくさんの人を笑顔にする大切な仕事だという。その言葉を嬉しく思った未羅は、今度夜露の家に遊びに行きたいという。歓迎する夜露。その時、また二人のエミッションが共鳴した。それは、外宇宙からの呼び声だった。遠くからの呼びかけに共鳴し、夜露と未羅の瞳は赤く輝く。未羅は、星の海から二人を呼ぶ声を「同類(なかま)」と言うのだった。

侵食編

人間たちが利益を巡っての政争に明け暮れる中、東京シャードに最大の危機が迫りつつあった

崩壊するもの

AEGiS特別高等作戦部隊の鳳加純と吾妻京、アンジェリカ・グラズノワはAEGiS防衛政策局次長である霧島良馬によりAGEiS東京本部の中央指揮室へ呼び出されていた。加純たちが先の偵察で発見した超空間ゲートは、300年前に月面政府シャードを消滅させた大規模侵攻に匹敵する規模のものだった。それに対して加純が提案した作戦プランは、ヴァイスが戦力を投入する前に超空間ゲートを制圧、ゲートを通って敵本拠地を叩くというものだった。まずAEGiS東京とアライアンスが総力を結集してゲートを制圧、その後に世論を喚起して他国シャードが協力せざるを得ない状況を作り出しヴァイスとの全面対決を行う。これが加純の目論見であった。霧島は、ヴァイスの進化速度がアリスギアの開発速度を上回ったら現状の均衡が崩壊し人類は滅亡すると読んでおり、その前にヴァイスとの最終決戦を行うべきであるとの考えから加純の作戦に賛同する。

一方その頃、聖アマルテア女学院では、学院長の井出山ダフネが「アマルテアにおけるアクトレス指揮権を生徒会から学院本部に移管する」と地衛理に告げていた。その理由について、アマルテアのアクトレス事業への本格参入がスケジュールを早めたのだと言うダフネだが、地衛理は指揮権移管を拒否する。功労者である地衛理の顔を立てて穏便に事を運ぼうとするダフネだが、地衛理は生徒の自主性を盾にダフネの提案をはねつける。これは学院理事会の決定であると言うダフネは、理事会内で「生徒会メンバーがアクトレスとしての活動を私物化しているのではないか」という疑惑があると地衛理に告げる。これは、成子坂との協調姿勢を強めている地衛理ら生徒会メンバーに対する北条グループからの圧力であった。地衛理は、経験不足のアクトレスをアマルテアの名の下に送り出すことには反対であると反論するが、ダフネは地衛理の主張を理解しながらも、理事会すなわち北条グループの決定には逆らえないと答える。地衛理は、北条グループが数の論理でアライアンスの主導権を握るつもりではないのかと反論する。それに対し、ダフネは、北条一族の臣下である紺堂家の人間である地衛理が北条グループの決定に異を唱えるということは、紺堂家や生徒会メンバーの椎奈、奏にまで悪影響を及ぼすのだと釘をさす。それを恫喝と断じた地衛理は、指揮権移管の即時撤回を要求。それが受け入れられない場合、地衛理、椎奈、奏の3人はアマルテアを離れて成子坂製作所へ移籍すると言う。狼狽したダフネは、卒業までのわずかな期間まで待てないかと地衛理を説得するが、地衛理の決意は揺るがなかった。
それとほぼ同じ頃。北条グループ会長の北条大洋はヤシマ重工会長の屋島富岳を酒席に招いていた。「仲良く酒を酌み交わす仲ではないはずだ」と警戒する屋島に、北条は成子坂製作所をアクトレス業界から排除するまでの間の共闘を申し出る。屋島も、子会社であった叢雲工業が解体された要因となった成子坂のことを面白く思ってはいなかったため、その提案に乗ることを決めた。北条は、次の防衛審議会におけるアクトレスの年齢制限撤廃案への賛同を屋島に提案する。屋島は、アライアンスの主導権を北条グループが握ってもヤシマ重工に利益はないとその提案に疑問を持つが、北条はその代わりにヤシマ重工の利益になる情報を提供すると言う。「成子坂はもう詰んでいる」と言う北条は、成子坂製作所の重大な機密を握っていることを仄めかすのだった。

それから少し後、成子坂製作所へ出社した隊長は、慌てた様子のリタに整備室へと連れて行かれる。そこでは、磐田が部下たちから激しく詰問されていた。「見損ないました」と語気を荒げる部下たちに対して理由がわからず困惑する磐田。隊長とリタに加えて薫子と文嘉も割って入ったことでようやく落ち着いた整備班の面々は、「成子坂製作所が北条グループと提携することになった、その主導役は整備部長の磐田」という内容の文書が整備部へ送られてきたと話す。それによると、府中工場の責任者で創業メンバーである森村元が持ち株をヤシマ重工に売却したため、乗っ取りを防ぐため同じく創業メンバーで整備部長の磐田は持ち株を北条グループへ売却し介入を求めたとのことであった。しかし、磐田は自分が北条に持ち株を売却したことを否定。そして、森村がヤシマ重工に株を売却したのも事実無根だと言う。薫子は、これらの文書はいわゆる「怪文書」だと言う。企業の内紛や不正選挙の時によく行われる誹謗中傷の手段である。これらの文書が撒かれたということは何者かが成子坂の買収に動いていると推察する薫子。ようやく矛を収めて仕事に戻る整備部の面々だったが、成子坂買収の動きは確かにあると考えた薫子は磐田に現在の成子坂製作所の株式保有状況を尋ねる。これは、AEGiS東京からの出向社員としての管理責任でもあった。磐田によると、持ち株の48%は所長の天満小梅とその親族が保有。創業メンバーの磐田と森村が13%ずつを保有。残りのうちおよそ13%は創業当時の社員やエンパイア中野などの主要取引先が保有。残り13%はやはり創業メンバーだった宇時家冬馬が保有していたが、これは7年前の事件の時に各方面への損害賠償やギア開発部解散時の退職金に充当するためヤシマ重工に売却されていた。文嘉は、かつて(註:メインストーリー「黎明編」冒頭)の叢雲工業による成子坂製作所買収の動きも、叢雲工業の親会社であるヤシマ重工が成子坂製作所の株を保有していたからではと推察する。薫子は、これらの株式のうち現在の保有者がはっきりしない数%が北条グループの手に渡っている可能性を指摘すると、念のため府中工場の森村にも確認することを提案する。磐田は、自分と隊長が府中へ向かうと答えた。所長が長期不在の今、アクトレス部門の経営責任者は隊長であるからだった。

府中工場で隊長と磐田を出迎えた森村は、府中工場の従業員にも怪文書が届いていたと言う。しかし森村は「ヤシマ重工による買収は悪い話ではない」と言い始めた。驚く磐田だが、森村は、北条グループはともかくヤシマ重工は創業時からのお得意さんで付き合いも長く、無理に独立を維持せずともヤシマ傘下でやって行けるのではないかと言う。会社の存続こそが大事だと言う磐田に対し、森村は成子坂製作所創業当時の夢が何だったかを磐田に問いただす。「自社でオリジナルのギアを開発する」という成子坂製作所の夢は、7年前の事故でギア開発部を解体した時点で終わっていたのだと言う森村は、もう無理に会社を存続させなくても良いのだと磐田に告げた。府中工場の売上の8割はヤシマ重工からの発注であり、「もう実態はとっくにヤシマの下請けだ」と自嘲する森村。森村は、「府中工場の従業員たちの待遇を考えるとヤシマ重工に買収された方が良い」と言うと、既に昨年のうちにヤシマ重工に自分の持ち株を売却したことを告げる。叢雲工業による買収劇の時点で既に森村が株を売却していたことを知り激昂する磐田に、森村は「会社のことを考えた結果なんだ」と穏やかに諭す。森村は、アクトレス部門と整備部の赤字をずっと補填してきたのは府中工場の売上ではなくヤシマ重工からの融資だったことを明かす。既に成子坂製作所は破綻していたと言う森村。7年前の時点で成子坂製作所は事実上倒産しており、ヤシマ重工からの融資とAEGiS東京からの案件斡旋で細々と命脈を保っていたにすぎなかったのだ。工場責任者として従業員を守るためにはヤシマ重工の傘下に入ることを選ぶしかなかったと言う森村の言葉に打ちのめされる磐田。
帰りの電車の中で、宇時家が去り小梅は行方不明、森村も離れたことで残った創業メンバーが自分だけになったことを嘆く磐田は、もし自分がいなくなったら成子坂製作所を隊長に託すと言う。しかし、すぐにそれは弱音だったと撤回し、整備部の面々やアクトレスたちのためにも成子坂を無くすわけにはいかないと改めて自身に活を入れるのだった。
会社に帰ってきた隊長を出迎えた薫子たちは、成子坂の一部株式を取得した北条グループから臨時株主総会開催の要求があったことを告げる。1週間以内に筆頭株主である所長を呼び戻さない限り、経営陣刷新のおそれがあるという。北条グループは、何らかの手段で所長の天満小梅が東京シャードへ戻ってこられない状態にあることを調べ上げていたのだ。

それと時を同じくして、吾妻楓は姉である京の所在を両親が知っていながら自分に秘密にしていた理由を問いただすために実家へと戻っていた。長い沈黙の末に父の重頼は、その理由を知れば平穏な生活は続けられなくなると言う。しかし、楓は覚悟を固めていた。楓の決心を知った重頼は、吾妻流の由来がこの件に関わっているということを話し始めた。
そもそも吾妻流とは、350年前に人類が宇宙船ムーンシャードで地球を脱出した際に、日本文化を保存するために開祖である吾妻源斎が古流武術など武芸百般を収集・系統化して構築したものであった。ここまでは楓も知っている話である。しかし、吾妻流には裏の顔が存在していた。それは、AEGiSと協力してシャード内の治安維持を行う武力集団としての側面であった。暴徒の鎮圧、テロリストや凶悪犯罪者に対する私的制裁などの非合法活動もまた吾妻流の役割だったのだ。地球脱出時の混乱期から現在に至るまで、吾妻道場は警視庁やAEGiSと密接な関係を続けている。技術指導や門下生の斡旋、そしてアリスギア開発への助言も吾妻道場の役割であった。戦闘技術のみならず、武術による精神鍛錬はアクトレスのエミッション能力安定にも寄与しているのだ。
そうであるならなぜ自分がアクトレスになることに反対したのかと問う楓。重頼は、「防衛機密だ」と答えるが、楓は、母や姉にもそのことを内緒にしていたのかと重ねて問う。沈黙の後、重頼は楓の母である芳乃がかつてAEGiS特殊部隊の隊員であったことを明かす。初めて知る事実に驚愕する楓。重頼は、吾妻流は日本の伝統武術存続のためにAEGiSに協力することで道場を維持してきたのだと語る。そして、吾妻道場を守るために楓か京のいずれかがAEGiSに勤めなければならず、京は自らの意思でAEGiSへ行ったのだと言う。

一方その頃、ジニーは老婦人を装った全米連合政府のエージェントと接触。アリス捜索の進捗について尋ねられていた。「おとぎ話じゃあるまいし」とぼやきながら全く手がかりがないと言うジニーだったが、エージェントは「アリスは物理的な形で現存しているわけではない」と言う。エージェントによると、アリスのバックアップはエミッションコアの内部に分散化・量子暗号化された状態で保存されており、そのアクセス中継地点が東京シャードなのではないかとのことであった。
だとすると自分にできることはない、としてスパイの役割を降りようとするジニーだったが、エージェントはもう一つの可能性として「エミッションコアを通じてアクトレスの脳神経内にアリスのバックアップが構築されている」という仮説を示し、ジニーに「特殊なエミッションを持つアクトレス」の捜索を命じる。ジニーは、もしそのアクトレスを発見したらどうするかを尋ねるが、エージェントは「確保、さもなくば破壊」と告げる。全米連合政府がコントロールできない神は不要であるというのが彼らの結論であった。そして、エージェントは「数週間から一ヶ月以内にヴァイスの大規模侵攻が始まる」と言い、それまでに該当アクトレスを探し出すことを重ねて命じるのだった。

突然、変異するもの

全米連合政府のエージェントがアリスの確保または破壊をジニーに命じたのと同じ頃、ニーナもまたミラナ・ユリエフ博士の研究室へ呼び出されていた。そこに待っていたのはミラナ博士だけではなく、ソビエト科学アカデミー所長のミハイロフ・ルチキンもであった。ルチキンは東京シャード周辺にヴァイスの大群が集結し大規模侵攻の準備をしているというウラジオストクシャードからの観測結果を提示し、ニーナに「シャード防衛戦で際立った戦功を挙げて戦後交渉を有利に進める材料にしてほしい」と要請する。長時間の戦闘はニーナを暴走させる危険性がある、と反対するミラナ博士だったが、ニーナはミラナ博士の政治的な立場を守るためにその要請を受け入れる。
さらにルチキンは、中東シャード群においてモスクワシャードの赤軍参謀本部情報総局(GRU)が西側シャードに対抗するために「SIN」と協力していることを明かし、その筋からの情報としてヴァイスの大規模侵攻に呼応したテロが東京シャードで計画されていることを告げる。そして、GRUもそれに協力すると言う。ニーナは、東京シャード内でのテロに便乗するGRUのやり方に反対するが、ルチキンは「東京シャードの治安が崩壊した時はGRU配下の革命勢力に協力して東京シャードを占拠せよ」と命じる。これはモスクワシャード上層部が掲げる、地球では成功しなかった「世界共産革命」の理想実現であると言うルチキン。「スラーヴァ・モスクワ(モスクワに栄光あれ)」と叫ぶルチキンに、ニーナとミラナ博士は釈然としない思いを抱えながらも賛同の意を示すのだった。ルチキンは、この計画にとって最大の障害は「死んだはずの神」、すなわち失われたはずのアリスであると言う。モスクワシャード上層部も、全米連合政府と同様に「アリスはエミッションコア内部への分散潜伏あるいは特殊なエミッションを持つアクトレスの脳内へ潜伏している」と結論付けていた。ルチキンは、ニーナに「思い当たる人物はいるか」と尋ねる。ニーナは「東雲チヱが怪しい」と言うが、ルチキンは「チヱは西側シャードの違法研究機関による実験の失敗作だ」として否定。KGBからの情報として、候補者は東京シャードのヴァイス研究所が作り出した第四世代型強化人間である村尾未羅と人工エミッションを搭載した人造人間の疑いがある御茶ノ水美里江の二人に絞られたという。ルチキンは、この二人について調査し、場合によってはギアのリミッターを解除して誤射に見せかけて殺害するようニーナに命じる。それ以外にも成子坂に特殊なエミッションを持つアクトレスがいないかを尋ねるルチキン。ニーナは、夜露から感じた奇妙な感覚のことを思い出し、しばらく逡巡した後に「わからない」と答える。そして、ルチキンはこれらの命令はたとえ親友である紅花にも話さないように念を押す。モスクワシャードにとって、上海シャードはかつての同盟国ではあっても改革開放路線で道を違えて以降は警戒すべき敵という認識であった。

一方その頃、池袋の紅龍苑では紅花が伯父の王健生から呼び出されていた。「上海から電話だ」と聞き、また父の剛から説教されるのかと眉をひそめる紅花だったが、電話に出た父は「上海シャードでのアクトレス時代の紅花の上官が紅花の活躍を絶賛していた」と珍しく褒める一方だった。そして、代わって電話に出たのはその当人であるAEGiS上海の沈成江だった。沈は、「上海シャードを代表してヴァイスコロニーとの戦いに協力した紅花は今や上海シャードの英雄、民族の誇りだ」と称賛する。いつも紅花を厳しく叱咤していた沈が自分を褒め称えることに驚く紅花だったが、沈は「今のきみは立派なアクトレスだ」と言う。そして、東京シャードで培った経験を上海シャードへ持ち帰り後進の指導に励んでほしいと期待を託す。AEGiS上海も華鈴武装有限公司も、二度と欧米列強シャードに侮られてはならないとする沈は、紅花こそが上海シャードの希望であると言う。そして剛も、料理人としてもアクトレスとしても無上の存在となってほしいと紅花に言う。代わって電話に出た兄の新良は、沈の紹介でAEGiS上海所属アクトレスのプロモーション映像を制作する仕事に就いたことを告げる。頼りなかった兄(註:紅花のキャラエピソード参照。紅花の兄である新良は父と喧嘩して出奔、東京シャードで屋台のアルバイトをしていたが、紅花の説得で上海シャードへ帰国した)がようやく定職を持ち頑張っていることを喜ぶ紅花。剛もまたAEGiS上海からの斡旋により上海シャードで開催される国際会議の総料理長へ就任するという大役を任されていた。沈は、重ねて紅花の活躍を願って電話を切った。紅花から剛も新良も活躍していることを聞かされ、その場では喜んでいるように装う健生だったが、弟とその一家の命運がAEGiS上海に握られてしまったことを理解した健生の心中は穏やかではなかった。

舞台は再び楓の実家へ戻る。
吾妻家の責務として自分と姉のどちらかがAEGiSへ行かなければならなかったことを知った楓。重頼は、京がAEGiSへ行ったのは、AEGiS東京の内部に浸透していた「SIN」を人知れず排除するためでもあったと言う。京が佐倉修道院で暮らしていたのはそのためであった。重頼と京は示し合わせて勘当を演じ、京は家からの放逐という形でエミッション特性を持つ身寄りのない子供を集めて何かを企んでいた佐倉修道院へ潜入していたのだ。また、京は楓こそが吾妻流の後継者にふさわしいと考えていた。それは重頼も同じであった。京は才能こそ恵まれていたが、その剣技は本人の天才性に由来するものであり唯一無二、後に伝えることのできないものであった。しかし、まっすぐな気性でたゆまぬ鍛錬を形にすることができる楓には、吾妻流をより高みへ導く理想の器となる可能性がある。そう考えた二人は楓に吾妻流の未来を託すため、徹底して吾妻流の暗部を隠そうとした。京が自分の行先を告げなかったのも、母の芳乃がAEGiS特殊部隊の出身者であることを隠していたのもそのためであった。そして、楓がアクトレスになることに重頼が反対したのも、楓がAEGiSと関わることで吾妻流の真実を知るのを避けるためであった。しかし、楓はアクトレスとなり、そして再び京と出会ってしまった。また、楓が「遮那仮面」と名乗り素性を隠して犯罪者に私的制裁を加えていたことに重頼が激怒した(註:楓の絆エピソード参照)のも、楓が本能的に吾妻流の持つ闇の側面と同じ振る舞いをしたことへの焦りと罪悪感からであった。
「これも血の宿命か」と肩を落とす重頼。楓も、自分が父や姉の願いを踏みにじっていたことを知って落胆する。落ち込む二人に、芳乃は「なっちゃったものはしかたない」と言うと、これは楓自身が選んだ楓の人生であると諭し、信じた道を貫くように励ます。母の言葉を受けた楓は、これまで通り自分の信じる正義を貫くことを決意するのだった。

臨時株主総会の開催要求を受けた成子坂製作所では、総会に向けた対策が話し合われていた。薫子によると、北条グループは外資系ファンドを通じて所長の親族が持つ株式の10%程度とかつての成子坂の取引先が持っていた株式の10%程度、合わせて2割ほどの株式を取得している見込みだという。そして、府中工場の森村が持っていた株式はヤシマ重工に渡っていた。つまり、元々ヤシマ重工が所有していた宇時家の株式と合わせてヤシマ重工が26%、そして北条グループが所有する株式が20%で約過半数が現経営陣に不満を持つ株主に占められている。そして、問題は最大株主である所長の天満小梅が株主総会に出席できる状況ではないということだった。このままでは賛成多数で経営陣刷新が可決されてしまう。「叢雲工業に買収されかけた時に対策を講じておくべきだった」と嘆く薫子と文嘉。事務所に顔を出した夜露とシタラも、今回は大型ヴァイスをいくら倒しても何の解決にもならないと理解し「万事休すか」と落胆する。そこに現れたリンと怜は、ヤシマ重工の子会社になるのならそれほど悪いことにはならないのではないかと言う。大きな資本が背後につけば待遇も良くなるはずだと言う怜だが、ゆみを始め成子坂の生え抜き組は「心情的に厳しい」と答える。そして、楓は「ヤシマ傘下になったらギアもヤシマ製品に統一されるのでは」と言う。磐田も、「ヤシマも趣味や道楽で経営をしているわけではない」と楓の発言を肯定する。文嘉は「だったらギアメーカーとの繋がりがない北条グループの傘下に入ればいいのでは」と言うが、そこに現れた綾香は「買収された側が好待遇を受けることはない」と言い放つ。怜も「北条会長は甘い人物ではない」と綾香の発言を肯定。アマルテアの完全な下請けになるのが関の山だと言う。薫子は、AEGiS情報本部に助力を求めることも可能だが、非合法な工作は見抜かれた場合に致命的なスキャンダルになるからやめた方がいいと言う。シタラは、ファティマを通じてアルフライラシャードの資金を買収防止策として使うことを提案するが、薫子は「アクトレス事業所やギアメーカーなどの防衛関係企業には強い外資規制がかけられている」と言い、その策は不可能であることを告げる。東雲チヱであれば所長に連絡がつけられるのではないか、と文嘉は最後の希望を託すが、チヱは所長の居場所はアルフライラシャード奥地であり、仮に連絡がついても早急の帰国は無理だと言う。これで本当に万策尽きたと思い泣き出した文嘉から事情を聞いたチヱは、「心配いらないよ」と言う。チヱは、こんな時のために隊長に「鍵を預けてある」と言う。しかし、隊長には心当たりがなかった。チヱが言う「小梅から預かって隊長に渡したはずの銀行の貸金庫の鍵」は、チヱがうっかり渡し忘れていたのだ。チヱは改めて貸金庫の鍵を隊長に渡す。貸金庫の中身は、所長が所有する全株式の譲渡契約書だった。全ての準備は終わっており、あとはこの契約書に隊長が署名すれば良いだけになっていた。
こうして成子坂製作所の最大株主となった隊長は臨時株主総会で正式に所長代理に就任、北条グループとヤシマ重工による敵対的買収の危機を乗り切ったのであった。

AGEiS東京本部の中央指揮室では、超空間ゲート制圧作戦へ向けての準備が進められていた。霧島が戻ってくるのが遅いと不平を言う京にアンジェリカは、霧島は東京シャード防衛会議やアウトランドの安全保障理事会に作戦決行のための根回しをしているところだと窘める。加純によると、成子坂の買収に失敗した北条と屋島が防衛会議の席上でアライアンス主導の作戦に不満を持ち進行を遅延させているという。その二人を抑えるために情報本部の愛宕が北条とヤシマのスキャンダルの証拠を持って動いていると言う加純に、アンジェリカは「一方的に勝ち過ぎると反感を買う」と言う。加純は、その対策として北条が提案したアクトレスの年齢制限緩和の受諾とヤシマ重工へのギア調達比率大幅増加を提示し矛を収めてもらうのだと答える。政争をしている時間が惜しいと嘆く加純。そんな時、超空間ゲートとは東京シャードを挟んで反対側の宙域で民間アクトレスの緊急脱出が発生していた。小型ヴァイス掃討案件を行っていた大学生のアルバイトたちが想定外の大型ヴァイスに遭遇したようである。一方の超空間ゲートにおいては未だヴァイス群は後続の集結を待って行動を起こしていない。偶発事故を疑う加純だったが、続いて東京シャードへ向かっていたフロギストン輸送船が何者かの攻撃を受け消息を絶ったという報告が入る。更に、北多摩地区の農業プラントがヴァイスの襲撃を受け全基損壊したとの報告が入った。シャード近辺に設置した大型超空間ゲートに注意をひきつけておいて、遠方に展開した複数の超空間ゲートによる多方面からの一斉攻撃を行うというこれまでにない戦術を駆使してきたヴァイス側に完全に先手を打たれ、シャード防衛の前線基地である宙堡群が次々と陥落していったという報告に驚きを隠せない加純たち。しかし、悪い知らせはこれだけでは終わらなかった。首都高速、鉄道および地下鉄、国際空港が立て続けに発生した爆破テロによって機能を停止。緊急事態に対応するため中央指揮室へ急いでいた愛宕は車輛に仕掛けられた爆弾により意識不明の重体となり救急搬送され、同じく移動中であった霧島もテロリストにより狙撃され瀕死の重傷であった。アンジェリカは「SIN」には霊的能力によりヴァイスと交信できる者がおり、このタイミングを合わせた同時多発テロもそうした「SIN」の指導者による手引きがあったのではないかと言う。交通インフラが停止し司令系統が麻痺した中でヴァイスによる大規模侵攻に対処しなければならなくなったAEGiS東京は、絶体絶命の危機に晒されていた。

『アリス・ギア・アイギス』のゲームシステム

このゲームは、3Dシューティングゲームである戦闘パートとアリスギアやアクトレスを強化する育成パートに分かれている。
戦闘パートに関しては「AP」「スタミナ」といった概念はなく、時間と端末のバッテリー残量が許す限りいくらでも戦闘を続けることができる。

アクトレス

プレイヤーが育成し戦闘に参加させるキャラクターの総称である。レアリティは☆1~☆4まで存在する。
また、一部のアクトレスには「アナザータイプ」と呼ばれる性能違いのバージョンが存在。アナザータイプは☆4のみ存在し、名前の末尾に【○○(漢字2文字などの称号)】が付いている。

アクトレスのレベルアップは主に「アニマ」と呼ばれるアイテムを消費することで行われる。戦闘においても経験値は入手できるが、その量は少ないためアニマを用いたレベル上げが主体となる。レベル上限に達したアクトレスが入手した余剰経験値はアニマに変換される。

ステータス

アクトレスには5種類のステータスがあり、これらのステータスに装備したアリスギアのステータスを加算したものがアクトレスの最終的なステータスとなる。
・HP:耐久力。どれだけ相手の攻撃に耐えられるかを示す。
・ATK(ショット):射撃攻撃力。この数字の後ろに付いている属性アイコン付きの数字は属性攻撃力である。属性攻撃力はレベルアップによって上昇しない。
・ATK(クロス):近接攻撃力。この数字の後ろに付いている属性アイコン付きの数字は属性攻撃力である。属性攻撃力はレベルアップによって上昇しない。
・DEF:基礎防御力。相手の攻撃を減算する。
・SPD:移動速度。レベルアップによって上昇しない固定値である。

属性

アクトレスとアリスギアには属性があり、属性が合致したアリスギアを装備したアクトレスはより攻撃力が上昇する。逆に属性が相反するアリスギアを装備すると攻撃力が減少する。
ヴァイスと相反する属性のアリスギアはヴァイスにより大きなダメージを与えることができるが、自身の受けるダメージも大きくなる。
攻撃をサポーターに任せて自分の被ダメージを抑えたい場合は、あえてヴァイスと同属性を選択してサポーターを相反属性にするのも手である。
アクトレスの所有する属性パッシブスキルが「出力変性(超特大)」「変質放出(絶大)」「放出特化(極大)」の場合、属性の相性が攻防ともはっきり出るようになる。

攻撃時の敵への与ダメージ相性は下記の通りとなる。(被ダメージ相性はその逆)
・焼夷:冷撃◎ / 電撃○ / 重力△ / 焼夷×
・冷撃:焼夷◎ / 重力○ / 電撃△ / 冷撃×
・電撃:重力◎ / 焼夷○ / 冷撃△ / 電撃×
・重力:電撃◎ / 冷撃○ / 焼夷△ / 重力×

パッシブスキル

アクトレスには、常時または条件を満たした時に発動するパッシブスキルという能力が設定されている。パッシブスキルはLv1状態で3つ習得しており、それ以降はLv5、Lv10、Lv20、Lv35、Lv50、Lv65、Lv80で習得する。Lv80のパッシブスキルは各アクトレス固有のものである。また、アナザータイプはLv80以外にも固有のパッシブスキルを有している。
全体的にパッシブスキルはアクトレスに設定された攻撃属性や得意・準得意武器に有利に働くようなものになっているため、装備させるアリスギアにはこれらに合致する組み合わせが要求される。

SPスキル

SPスキルによる攻撃は通常の攻撃よりはるかに高威力だ

ヴァイスに一定数の攻撃を加えることでゲージをチャージして放つ必殺技である。
回復系のSPスキルは1回の出撃で使用できる回数に上限がある。
☆1~☆3のアクトレスは汎用タイプのSPスキルを使用するが、☆4アクトレスは各キャラクター固有の専用SPスキルを持つ。
☆4通常タイプとアナザータイプの両方のアクトレスを所持している場合、SPスキルを付け替えすることが可能である。(通常タイプにアナザータイブのSPスキルを装備、またはその逆)
2019年6月のアップデートで異なるレアリティ(ex.☆4←→☆3)でもSPスキルの付け替えが可能になった。これにより、☆4アクトレスのSPスキルに癖があって使いづらい場合に☆3アクトレスのSPスキルを付け替えるという運用ができるようになった。また、最大上限レベルが上昇した☆3アクトレスはSPゲージ上限や回復系SPスキルの使用回数が増加するようになったため、☆4アクトレスよりもSPスキル再使用において優位性を持つようになった。

yuku_sakana
yuku_sakana
@yukusa_kana

目次 - Contents