ダンサー・イン・ザ・ダーク(Dancer in the Dark)のネタバレ解説まとめ

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とは、2000年公開のデンマーク映画。監督はラース・フォン・トリアー。世界的に知られる歌手・作曲家のビョークが主演を務めた事で話題になった。どこまでも救いようの無いストーリー展開とショッキングなラストも相まって、公開後10年以上経った今も尚「後味悪い系、鬱映画」の代表として君臨し続けている。また、作中の楽曲もビョークが手掛けており、その中でも「I've Seen It All」はゴールデングローブ賞、アカデミー賞ともにノミネートされるなど高評価を得た。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の概要

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とはラース・フォン・トリアー監督によるデンマーク映画である。日本での公開は2000年12月23日。
主演を務めるビョークは、「Jóga」や「Hyperballad」など数多くの名曲を生み出すアイスランド出身の歌手・作曲家であり、フジロックフェスティバルへの出演、来日公演も度々行っている。本作の大きな特徴は、見るに堪えないほど救いようの無いストーリー展開とバッドエンドにある。ミュージカル女優を夢見る主人公・セルマに、どこまでも不幸の波が襲い続け、ミュージカル映画としては他に類を見ない「トラウマ映画」として、今もなお鑑賞者を暗鬱のどん底に叩き落している。

また、劇中歌は全てビョーク作曲・歌唱によるものであり、これらの特徴は「ラストを除いて、全てセルマの空想の中で歌われる楽曲」という事である。
悲運極まりないセルマ自身の現実に相反して、まるで現実逃避するかのように、空想の中で彼女は歌い踊る。その空想と現実の対比が鑑賞者の憐れみを誘い、現実の悲惨な描写を助長しているのである。

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のあらすじ・ストーリー

息子の手術費のため、日々貯金に勤しむ

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主人公セルマ(左)と、同じ工場内で勤務し、セルマを献身的にサポートするキャシー(右)

チェコからの移民である主人公・セルマは、12歳の息子ジーンと共にアメリカで生活していた。セルマは町工場の勤めで、裕福ではないが警察官のビルとその妻・リンダの家にあるトレーラーハウスで平穏に暮らしている。

しかしセルマは先天性の目の病気を患い、間もなく失明する運命にあった。その病気は息子にも遺伝していたが、主治医によると手術に成功すれば、ジーンは失明から逃れられるのだという。
セルマは、昼間は工場で働き、夜は内職もしつつ、ジーンの手術費用のために必死で貯金をしていた。彼女に好意を寄せる男性・ジェフからのアタックも断って貯金に勤しみ、あと少しで手術出来る金額に達するところであった。

勤めていた工場をクビに。そして加速する不条理。

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セルマと揉み合いになり、倒れ込むビル

そんなセルマは、ミュージカル女優として舞台で歌って踊る事が何よりの楽しみで、日々舞台稽古に励んでいた。セルマと同じ舞台に立ち、同じ工場で勤務するキャシーは、健康診断の視力検査では事前に解答を教え検査をパスさせるなど、常にセルマをサポートしていた。しかし、舞台稽古で手渡される小道具の位置も把握出来ないほど視力が悪化しており、セルマの代役は新人女優が務める事となった。

自身の失明が間近となったセルマは、手術費の貯金のために昼間のみならず夜勤にも入ることとなった。キャシーは、セルマの夜間勤務には反対したものの、夜勤開始後は懸命にセルマのサポートに入った。
そんなある日、工場のプレス機や機械音などあらゆる音がリズムに聞こえ、その音に合わせ、セルマは空想の中で工員達と歌い、踊っていた。
しかし、その最中で悲劇が起こる。
通常ならプレス機に鉄板を1枚ずつ投入するところを誤って2枚投入するという、初歩的なミスを犯してしまったのである。もともと鉄板の位置が分からないほどに視力が悪化し、キャシーのサポートなしでは勤務不可能な状態であったが、このミスが致命傷となり、ひた隠しにしていた視力低下が発覚。セルマは勤務不能と判断され工場を解雇される。

さらに、今までの工場勤務・内職で貯金したお金がビルによって盗まれてしまう。実はビル夫妻は一見裕福な家庭に見えても、妻のリンダが浪費家であり、無一文同然で家を差し押さえられていたのだ。ビルはお金を奪っただけでなく、妻のリンダに「セルマに言い寄られた」と嘘をつき、激怒したリンダがセルマに出て行くよう促す。セルマは2階に上がり、ビルにお金を返すように告げたが、拳銃を持ち出され揉み合いになる。倒れ込んだビルは、底意地悪くも「金は渡さん」と言い放ち、手術費を取り返したいセルマは泣く泣くビルに銃を発砲する。

手術は確約。しかし、更に信じられない現実が待ち受ける。

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通気口からわずかに聴こえる賛美歌に耳をすますセルマ

ビルは愛するリンダを守るべく、リンダに警察に通報するよう促し、セルマには「自分に撃たなければ金は返さない」と告げ、セルマに銃を発砲させたのである。つまり、彼女を悪者に仕立て上げたのだ。
辛うじて手術費を取り戻したセルマは、その足で病院へと赴き、息子・ジーンの手術の予約をする。

空想のミュージカルに耽る最中、セルマはとうとう殺人の容疑で逮捕され、裁判にかけられる。
ビルの体には34ヶ所の刺し傷があった。これは、視力が低下していたセルマが、手術費を何としても取り返すために何度も刺したことによるものであったが、これも極めて残忍な行為として、一連の事情を知らない世間からは大きな非難を浴びせられる。そしてセルマは「計画的かつ残忍な犯行」「障害を理由に周囲を欺いた」「冷酷」などとレッテルを貼られ、法廷では極めて不利な立場に立たされる事になる。

キャシーらは、ジーンの手術費を使って弁護士を雇うべきだと助言するも、セルマは断固として拒否した。あくまでも息子の将来を最優先としたかったのである。しかし、法廷でも空想ミュージカルに耽る天真爛漫さの他、移民である彼女がアメリカ人警官のビルを殺害した事に対し情状酌量の余地なしと看做され、不条理極まりない絞首刑判決を言い渡されてしまう。その判決に、キャシーも絶句するしかなかった。

音の無い拘置所。セルマは無音の空間に不安に苛まれるも、女性刑務官から通気口に耳をすますとかすかに賛美歌が聴こえてくる、と教えられる。
セルマはその賛美歌の音を頼りに、かつて舞台で歌った「My Favorite Things」を口ずさみ、ステップを踏んだ。
誰も観客のいないミュージカル。死刑執行は日々刻々と迫っている。

最期に唯一の救い。空想ミュージカルが初めて現実化するが無情にも死刑執行。

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死刑執行直前、息子の無事を悟り、「最後から二番目の歌」を口ずさむセルマ

そして、死刑執行日。
死刑上に向かう途中、足がすくんでしまうセルマであったが、空想ミュージカルにより足取りを取り戻し、絞首台に立ち上る。
目隠しをされ、ロープを首に巻かれ、死を目前にしたセルマは恐怖と絶望のあまり取り乱してしまう。
それは死の恐怖もあったであろうが、息子・ジーンの手術が無事に終わっているのかどうか知り得ないまま死を迎える事となるやり切れなさによるものでもあった。絶望の中、セルマは何度もジーンの名前を呼ぶ。
絞首台の下では、キャシーの他、セルマに好意を寄せたジェフらも見守っていた。キャシーは僅かな隙を見計らって絞首台に上がり、セルマに息子の手術が終わった事を告げる。手術は無事成功したのである。

それが、救いの無いセルマにとって唯一の救いであった。息子の無事を悟り、落ち着きを取り戻したセルマは、初めて空想でないミュージカル「最後から二番目の歌」を歌い上げる。
死を目前にした絞首台の上で、セルマの空想のミュージカルは、ついに現実となった。観客は決して多いとは言えなかったが、セルマは最後の一曲を渾身を込めて絞り出していた。
しかし、無情にも刑が執行され、無音が訪れる。見物客、刑務官など、その場に居た誰もがやり切れなさを抱えたまま、セルマの人生最後の舞台が幕を閉じた。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の登場人物・キャラクター

セルマ(演:ビョーク)

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先天性の目の病気を患い、失明を間近にした母親。ビルとリンダ夫妻の家の敷地内にあるトレーラーハウスで、息子ジーンと共に暮らす。目の病気はジーンにも遺伝しており、手術をしなければジーンは失明してしまうため、周囲の人物に支えられながら工場勤務、内職をし日々手術費の貯金に勤しむ。また、舞台女優でもあり、ミュージカルが好き。

キャシー(演:カトリーヌ・ドヌーヴ)

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セルマの舞台仲間。同じ工場で勤務しており、日々セルマをサポートする。工場での健康診断の視力検査の際も、事前にセルマに回答を暗記させ、試験をパスさせていた。セルマの夜間勤務にも当初は反対したが、夜勤開始後は引続き懸命にセルマをフォローする。

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